MUGENと共に   作:アキ山

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 お待たせしました、24話の完成です。
 これにて4巻、駒王会議がようやく終了です。
  


24話

「さあ、行くぞ! 第二ラウンドだ!!」

 白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)からジェット噴射のように光を放ちながら、こちらへと突撃するヴァーリ。

 衝撃波を撒き散らしながら進むその踏み込みの鋭さは、先ほどとは比べ物にならない。

 しかし、そのスピードもこちらの目を逃れる事ほどではない。

 ギースが好んで使っていた構えである『無形(むぎょう)の位』で迎撃をしようとしていた俺は───

《Half Dimension!!》

 瞬間、視界の内から掻き消えた奴の姿に目を見開いた。

「なるほど、インチキ臭い空間への半減も精度が上がってるみたいだな……っ!」

 予兆も無く目前に現れたヴァーリの拳を寸でのところで受け止めながら、俺は白の兜の奥に光る蒼い瞳を睨み付ける。

「ああ、アルビオンを介さずに使用できるようになった。お陰で、こんな芸当も可能だ!!」

《Half Dimension!!》

 胸部の宝玉から放たれた電子音と共に、またしても消えるヴァーリ。

「食らえ! ジェノサイド・カッター!!」

 背後からの殺気に身を(ひね)るのと同時に、右わき腹から左肩に掛けて灼熱感が走る。

 ジェノサイド・カッター。

 自身のつま先に氣を集め、刀剣の鋭さを宿したそれを跳躍と共に足元から頭上まで半月状に回転させる。

 闇の武器商人にして格闘技の天才である、ルガール・バーンシュタインが数多の猛者を葬った魔技である。

 背の肉を(けず)られながらも咄嗟(とっさ)に裏拳を放つが、それも空間への半減によって上空へと間合いを取ったヴァーリの足元数センチ下を通り過ぎ、衝撃波によって岩山を砕くだけに終わる。

(もら)ったぞ!!」

 前方に回転する事で加速を付けた踵が、(まさかり)のように無防備になったこちらの右肩に突き刺さる。

 (きし)む肩に歯を食いしばりながらも地面を手で叩いて距離を取ろうとするが、それを上回る速度で突っ込んできた奴のバニシングラッシュをまともに食らってしまう。

 空間を爆ぜるような連撃に数メートルも吹き飛ばされた俺は、叩き付けられた岩山から身体を引き抜きながら口に溜まった鉄錆臭い液体を吐き捨てた。

 バニシングラッシュを使ってきた時点でルガールからある程度技をパクってるとは思っていたが、代名詞といえるジェノサイドカッターまで修得してるとはな。

 しかも空間を半減させて間合いを取ることで、撃ち終わりの隙を帳消しにしてると来た。

 カウンターを捕ろうにも、跳ね上がったスピードに加えて発動の予兆がほぼ無くなった半減の所為で、タイミングが掴みにくい事この上ない。

 本当に厄介極まりないな、あの能力は。

「どうした、慎! お前の力はこの程度か!?」

 ヴァーリが両腕を交差するように振り抜くと、三日月型の真空波がこちらに襲い掛かる。

 奴のソニックブームはナッシュと同じ片手撃ち、込める氣の量を調節すればああいう芸当も可能ってわけか。

 岩山が斬り刻まれるのを尻目に前転で(かわ)して体勢を立て直そうとした瞬間、前触(まえぶ)れもなくヴァーリが懐に現れる。

 このタイミング……半減を使ってソニックブームのすぐ後ろを追いかける形で、間合いを詰めて来たか!

 内心舌打ちをしながら防御を固めるが、またしてもその姿は掻き消えて足を払われると同時に、背中を襲う衝撃と共に上空高く撃ち上げられてしまう。

 先ほどのサマーソルトと邪王炎殺剣の複合技を食らったのだろう、ヒリつく背中に歯噛みする間もなくムーンサルトスラッシュを受けた俺は、そのまま地面に叩き付けられた。

『パワーアップしたヴァーリ選手の猛攻ー!! 姫島選手、為す術も無く地面に沈没ぅぅーーーーっ!!!』

 自身の巻き上げた土煙の中、上に乗った土片を振り落としながら身体を起こす。

 つうか、さっきから聞こえてくるのアナウンスはなんなんだ?

 なんか将軍様や美朱の声も時たま聞こえてくるし。

 これはプロレスじゃないんだがなぁ……。

 まあいいや。

 兎も角、スペック差のお陰でそこまでダメージは無いが、このまま食らい続けるのはさすがに拙い。

 半減の疑似瞬間移動に前振りが無いのもそうだが、なまじ奴の動きが見えてしまう所為で余計に惑わされてしまう。

 ……少々古典的ではあるが、ここは視界を捨ててみるか。

 呼吸を整えながら、俺はゆっくりと目を閉じる。

 視界を塞いだことによって鋭敏化した感覚は、脳内に周囲の様子を鮮明に描き出す。

 荒野を走る疾風に崩れゆく岩山、そしてこちらに向けて疾走する強烈な龍の氣も。

 正面から突っ込んでくるヴァーリの気配は、ランダムに軌道を変えながら更なる速度を纏う。

「おおおおおおおおっ!!」

 音さえ置き去りにして懐に飛び込み、咆哮と共に拳を振り上げるヴァーリ。

 だが、その姿は唐突にこちらの眼前から消え失せる。

 同時に張り巡らせた意識は、白い光翼によって奪われた空間の軋みを掴んでいた。

 音無き悲鳴を上げながら奪われた我が身を塞ぐ世界。

 その流れに乗ってヴァーリの姿が現れる先は……そう、後ろだ。

「なっ……」

「───捕えたぜ」

 振り下ろされた拳を捌いた俺は、ヴァーリが(さら)した一瞬の隙を突いて首と太腿に腕を回しながら跳躍。

 空中で胸の装甲に膝を当て、全体重を掛けながら地面に叩き付ける。

『あーっと! 姫島選手ついにヴァーリ選手を捕えました!! 相手の突進を利用して、その勢いのままパワースラムで地面に叩き付けたぁぁっ!!』

『今のはただのパワースラムではありませんよ。超スロー画像を見てください。地面に叩き付ける前に、姫島選手はヴァーリ選手の胸元に自身の膝を当てています。この状態で叩きつけられれば、体重と衝撃は膝の一点に集中しますから、その危険度は通常のパワースラムの比ではありません!』

『それだけでは無い。彼奴は技を決める瞬間に、膝から寸打を放っているはずだ。鎧に守られていたとしても、白龍の小僧の肋骨は無事では済むまい』

 的確にこちらの技を把握する将軍様に内心舌を巻きながらも、俺は胸を押さえて呻くヴァーリの身体を蹴り上げた。

 打ち上げられる白い鎧姿を舞空術で追い抜き、上がってくるヴァーリを受け止めると奴の両足をこちらの足でフック。

 ヴァーリが頭から堕ちるように調整し、地面へ向けて加速する。

『あ~~とっ! 姫島選手、自身の足でヴァーリ選手の膝と足首をロックし、地面に向けて加速し始めた!!』

『あの体勢はキン肉星王位争奪戦で阿修羅マンが使用した必殺技、阿修羅イズナ落としですよ!!』

 確かにこの体勢は阿修羅イズナ落とし、しかし今から俺が放つのは別の技だ。

「おおおおおっ!!」

 気合と共に前方に体重を掛けると、身体は阿修羅イズナ落としの体勢のまま前転を始める。

『おおっと! 姫島選手、ヴァーリ選手をイズナ落としの体勢に捕らえたまま、もの凄い勢いで前方に回転する!!』

「うがぁっ!?」

 風切り音と遠心力で足が引き絞られているヴァーリから苦悶の声が聞こえるなか、空転する視界が迫りくる大地を捉えた瞬間────

「食らえ、阿修羅火車落(かしゃお)としぃッ!!」

  俺は全身のバネを使って頭からヴァーリを叩き付けた。

『これは驚きましたっ! 姫島選手が放ったのは、阿修羅イズナ落としの改造版です!!』

『阿修羅イズナ落としはその体勢を8の字で表される通り、上下を逆転すると攻守が入れ替わることが弱点だった。しかし、奴の放った火車落としは前方に高速で回転する事でその弱点を帳消しにしてみせたのだ』

「ぐはっ……!?」 

 マスクの下を自ら吐き出した血で汚しながらダウンするヴァーリを見ながら、俺は小さく息を付いた。

 ヴァーリの奴に発破をかける為に使った『真人(しんじん)』だが、まだまだ未完成な所為で体力の消費が思った以上にキツい。

 ギースのものに比べれば熟練度は3割程度。

 内外での氣の精密操作が必要な為に制御が大変だが、次の段階に行くには必要な技能だ。

 基本スペックの向上という観点では、今まで使ってきた潜心力では力不足が否めなくなってきている。

 界王拳を活かす為にも基礎能力を向上させる新たな技能が必要になる訳だ。

 正直、超サイヤ人になれれば一番なんだが、生憎とこの身はサイヤ人の血など引いてはいない。

 自身の手首に目を向ければ、そこには淡い藍色の光を湛えた霊的な(かせ)が巻き付いている。

 だとすれば、俺に出来る事は地道に鍛錬を重ねるだけだ。

 十五年もの間、どんな無茶にも付いてきたこの身体を信じて。

 意識を逸らした一瞬の間を突いてヘッドスプリングで起き上がったヴァーリは、後方にトンボを切りながら間合いを取る。

 胸骨や首にダメージが残ってるくせに、よくやる。

《まだやれるのか、ヴァーリ!》

「当たり前のことを聞くな! それよりもモードR・G・Sだ!!」

《R・G・Sだとっ!? あれはお前自身が制御できてないだろう!》

「あれでなければ、奴の虚を突く事は出来ん! 」

《……わかった!》

 なにやら揉めていたアルビオンとの会話も決着がついたらしく、地面にクレーターを穿つほどの踏み込みでこちらに突進するヴァーリ。

 そのスピードは真に覇龍を使いこなしてからと比べても格段に速い!

「食らえッ! 衝撃のぉぉぉぉっ! ファーストッブリットぉぉぉぉぉッ!!」

「ぐあ……ッ!?」

 瞬間、腹で何かが爆発した様な衝撃に、俺は肺の中の空気を絞り出しながら吹き飛んだ。

『ヴァーリ選手の渾身の飛び蹴りぃぃっ! 姫島選手が岩山をなぎ倒しながら吹っ飛んでいくぅぅっ!!』

『凄いですよ、これは。見てください、バトルフィールドをサーチしている超スローモーション映像でも、ヴァーリ選手の姿を捉えきれていません。神速なんて言葉でも生ぬるいですよ』

 固いナニカを数度ぶち抜いたような感覚の後に、ようやく勢いが弱まったことでなんとか受け身を捕ろうとするが、足が地面を噛むよりも一瞬早く、強烈な衝撃に顎が跳ね上げられた。

 思わず蹈鞴を踏んだところに背中への一撃、さらに左右のローで膝が落ちたところに、強烈な中段蹴りを食らって再び身体が宙に浮く。

 拙い……。

 どういう絡繰りかは分からんが、野郎のスピードが俺の動体視力を超えやがった。

「ふははははははっ!! 見ろ、アルビオン! ラディカル・グッドスピードが、まるで手足のように使えるぞ!!」

《真の覇龍を極めて身体の強度が増したとはいえ、こうまで使いこなすとはな。一歩踏み出しただけで、足が複雑骨折したのがウソのようだな》

 バカみたいにはしゃぐヴァーリを余所にカメのように防御を固めるが、今度は全身を次々と打撃が襲う。

 さっきのように心眼で相手を掴もうにも、こうも攻撃を続けられては集中もままならない。

 こうなったら範囲攻撃で根こそぎ吹っ飛ばすしかないか。

「レイジングストームッ!!」

 防御の合間に両手に氣を集中させた俺は、攻撃が止んだ刹那の間を狙ってレイジングストームを放つ。

 しかし、蒼色の衝撃波によって吹き飛ばされるのは周りの瓦礫ばかりで、その中にヴァーリの姿は無い。

「甘いぞ、慎! そんな技では今の俺を捉える事は出来ん!!」

 声の方に目を向けると、レイジングストームの範囲外で大地に足を噛ませているヴァーリの姿が見えた。 

 奴の姿をよく見れば、翼とは別にシャープに変形した脚部装甲がスラスターのように燐光を放っている。 

 この馬鹿げた加速はあれが原因か!?

「壊滅のぉぉぉぉぉぉぉっ! セカンド・ブリットぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁっ!!」

 雄叫びと共に鎧から放たれる燐光がその量を増し、衝撃波を撒き散らしてヴァーリの姿がさらに加速する。

「うがあぁっ!?」

 大気を纏いながら放たれる全身ごとぶつかるような蹴りを腹に受け、強制的に吐き出された血反吐を残して吹っ飛ばされる。

「瞬殺のぉぉぉぉぉっ!! ファイナル・ブリットぉぉぉぉっ!!!」

 さらに上空からの振り落としの踵を食らい、俺の身体は隕石さながらのスピードで、地面に激突する。

「がはっ……!?」

『ヴァーリ選手の神速の連撃ィィッ!! 隕石もかくやという勢いで叩きつけられた姫島選手を中心に、割れた地盤がささくれ立っていく!!』

 衝撃と痛みに霞む視界の中、宙に浮かぶヴァーリから身の丈を超すような巨大な黒炎が立ち昇るのが見えた。

 その黒い炎はヴァーリの身体を中心にとぐろを巻くように身をよじらせると、その姿を龍のそれへと変えていく。

 ……ちぃっ!? ヤバいッ!!

「俺の勝ちだ! 邪王炎殺……黒龍波ぁぁっ!!」

 ヴァーリの咆哮と共に放たれた黒龍が、歓喜の声を上げながら牙も剥き出しでこちらに飛翔する。

 食い込んでいた地面から身体を起こした俺は、ありったけの氣を両手に集中させる。

「~~~~ッッ!?」

 瞬間、全身を襲ったトンデモない衝撃に俺は声を噛み殺した。

 俺を中心として赤黒い照り返しに周囲が染まり、身体が埋まっている大地や宙に巻き上げられた岩が、黒龍がうねる度に蒸発していく。

 合氣鏡殺の結界越しに飢餓に目を紅く光らせた黒龍がこちらに喰らいつこうと口を開いているのが映り、奴が暴れる度にさらに地面へと身体がめり込んでいく。

『あ~~~とっ! ヴァーリ選手、ダメ押しの必殺技ぁぁっ!! その白き籠手から放たれた炎の黒龍が姫島選手を食いつくさんと襲い掛かるぅぅっ!!』

 獲物を前に猛り狂う黒龍とこちらを押し込もうとするヴァーリの姿に、食いしばった奥歯がガリリッと軋みを上げる。

 こんな状況じゃあランダム瞬間移動なんて真似も出来ないし、目の前で元気にピチピチ跳ねてる龍から逃げる術は俺には無い。

 今の状況は誰がどう見ても、絶体絶命ってところだろう。

 しかし、この程度ではまだ温い。

 こちらも伊達に修練をしてきたわけではないのだ。

 超ベジータのビックバンアタックを初めとして、ポップのメドローア、本気になったMr.カラテの覇王獅咬拳等々。

 黒龍波と同クラスの必殺技とて受けるのは初めてじゃない。

ならば────真正面からねじ伏せる事も可能という事だ!

 氣功反射の結界を両手に纏わせた俺は、上顎と下顎から剥き出しになった黒龍の牙を掴んだ。

 渾身の力で締め上げると、軋むような感覚と共に炎の塊であるはずの黒龍から悲鳴のような鳴き声が上がり、此方への圧力がほんの少し緩む。

「ぐ……ぎ……ぎ……ッ!?」

 その好機を逃さずに、地面に埋まった体を起こしながら黒龍を押し返すと、発生源のヴァーリも少しづつ後退していくのが見えた。

「……っ! なんだと!?」

≪この状況で黒龍波を押し返してくるとは、奴は化け物か……っ!?≫

『なんとっ! 黒龍によって地面に押し潰されていたはずの姫島選手が、その顎を押し返しながらゆっくりと起き上がってきたぁ!!』

『信じられません! モニターに映る地面がガラス状に溶け始めていることからして、姫島選手のいた中心部は灼熱地獄になっていたはずです!! その中で生きていた上に反攻に打って出るとは、とんでもないタフさですよ!』

 驚愕を露わにする実況と共にギャラリーのざわめきが周囲に響き渡る中、ようやく足が大地を噛んだ。

「そうはさせん! はあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ヴァーリの魔力放出によって両腕に掛かる負荷が増し、踏みしめた大地が砕けて破片が舞う。

 自身の顎を封じている手を振り払おうと黒龍は荒れ狂うが、その力は再びこちらを地に沈めるほどではない。 

 先ほどのように押し込まれるような状況ならともかく、こうなれば後は単純な力比べ。

 そうなれば、分があるのは俺のほうだ。

 黒く照らされた大地が高温で煙を上げる中、再び練り上げた氣を両手に込めて掴んだ顎を支点に龍の首を左右に捻り上げると、甲高い鳴き声と共にさらに圧力が緩む。

「おおおおおおおっ!!」

 その隙を逃さずに黒龍を投げ返すと、頭をヴァーリに向けた奴は大気を焼き払いながら自らを呼び出した主に牙を剥き出しにする。

「しまっ────!?」

 言葉を発する暇も与えずにヴァーリを胃に収めた黒龍は、とぐろを巻いてその身をただの黒炎に戻っていく。

『なんとぉっ! 姫島選手が投げ返した黒龍波がヴァーリ選手を直撃ぃぃっ!! ヴァーリ選手のいた場所では、巨大な黒炎が天をも焦がさんとばかりに逆巻いています。これは、決着かぁぁ!?』

 吉貝アナの実況が響くなか、俺は黒炎を睨みながら氣を練り上げる。

 一見すれば吉貝アナの言葉通り決着だと思うだろうが、そうでない事を俺は知っている。

 奴が真の意味で黒龍波を極めているのならば、むしろここからが本番なのだ。

 そうやってしばらく様子を見ていると、渦巻き時よりプロミネンスを生み出していた黒炎の中から、白い光と共に莫大な魔力が放たれた。

 逆巻いていた黒炎はどんどん中心に吸い寄せられていき、その体積を減らしていく。

「うおおおおおっ!!」

 世界を揺るがす咆哮を上げて黒炎に代わって現れたのは、やはりヴァーリだった。

 ただし、先ほどと同じ姿と云うわけではない。

 白一色だった鎧は肩と籠手、そして胸当ての部分が黒く染まっており、全体の造形がどこか鋭いものになっている。

 なにより違っている点は、奴の神器の代名詞と言うべき翼だ。

 一回り巨大になっているにも関わらず鎧が司っているのは骨組み部分だけで、龍の物を模した翼の大半を形作っているのは黒炎だ。

「手に入れたぞ! 俺は……覇龍を超える力を手に入れたぞ!!」

 歓喜の声とともに黒炎の翼を広げるヴァーリ。

 同時に鎧の継ぎ目からも炎が吹き上がり、放たれた魔力は周囲の岩山と地盤を吹き飛ばす。

「見るがいい、慎! これが俺の覇龍の進化形『獄炎の銀覇龍』だ!!」

『どういうことでしょうか!? 黒龍波に呑まれたはずのヴァーリ選手、新たな形状の鎧を纏って現れました!!』

『不思議ですねぇ。技のダメージが見当たらないどころか、明らかにパワーアップしていますよ』

『姫島美朱、貴様なら知っているだろう。説明するがいい』

『……ヴァーリ君が使っていた炎殺黒龍波。一見すればただの強力な飛び道具に見えますが、あの技の本質は別にあるんです』

『それはいったい?』

『黒龍波の本来の用途、それは術者の能力を爆発的に高める餌。邪王炎殺拳を極めるということは、黒龍波の膨大なエネルギーを受け入れる事ができるだけの肉体を作り出すことなんです』

『なるほどな。白龍の小僧は真の覇龍に覚醒することで、その条件をクリアしたということか。なかなか楽しませてくれる』

『会場の皆様、お聞きになられましたでしょうか! ヴァーリ選手がここに来て更なる切り札を切ってまいりました!! 決着かと思われたこの一戦、まだまだ波乱が待ち構えていそうです!!!』

 盛り上がる実況席をよそに、腕をかざしてヴァーリが吹き上げた熱波から顔を守る。

 予測はしていたが、まさか一気にオーフィスの域にまで到達するとはな。

 内心呆れながら視線を落とすと、手首と足首に巻きついた青白い光の枷が目に入る。

 さっきまでは霊視しないと見えなかったのだが、黒龍波を跳ね返すのに氣を練った影響で肉眼でもわかるようになったらしい。

 やれやれ……こいつは着け始めたばっかりなんだがなぁ。

 まあ、こっちも出し惜しみなんてする余裕はないし、仕方ないか。

(アンテ)

 覚悟を決めた俺は教えられたキーワード、文字通り枷の鍵となる言葉を口にする。

 すると次の瞬間、ガラスが割れるような澄んだ音と共に手足に填められた枷が砕け散り、身体を巡る氣の量が跳ね上がる。

 『霊光波動拳・修の行 呪霊錠』

 対戦した幻海師範から教えてもらった術で、要約すれば霊力(氣)養成ギプスだ。

 肉体のみならず氣の方面でも強化をしようと始めたのだが、着けた当初は常時氣を全開にしないと動けないのには参った。

 この呪霊錠は自縛術式なので、使用者が強くなれば錠も強化されるし、任意で負荷も上げられる。

 その上、使用者の氣を吸って維持に当ててくれているのでメンテナンスも必要ないときた。

 個人的には適性のない霊丸なんかよりも、よっぽど役に立つ代物である。

 オーフィス戦の後に着けたので初めて三日ほどしか経っていないが、その効果は覿面。

 こちらの見立てでは、氣の総量が以前より1.5倍に強化されている。

 気脈に直接作用する術式ゆえに、付けていると精密操作が要求される界王拳は使えなかったが、その甲斐はあったようだ。

「界王拳っ!!」

 こちらの気合いと共に再び世界は鳴動する。

 枷を解かれた朱い氣勢は紫電を纏いながら身体を中心にして逆巻き、生み出された圧が大地を大きく抉る。

 引き上げた界王拳の倍率は10倍。

 『真人』化による氣の操作の影響でこれが今の限界倍率だが、強化された肉体と氣の総量を考えればオーフィス戦で使用した15倍に相当するはずだ。

『あぁ~~~~っと! 地鳴りと共に姫島選手の体から炎を思わせる朱いエネルギーが吹き上がったぁっ!! これは黒い炎を操るヴァーリ選手に対抗してのものか!?』

《バカな……今のオレ達の力をこうも容易く超えるとは》

 黒く染まった胸当てに填め込まれた宝珠から発せられたアルビオンの声に、返ってきたのはヴァーリの馬鹿笑いだ。

「見ろ、アルビオン! あれが俺のライバル! 超えるべき壁!! 赤龍帝でもア・ドライグ・ゴッホでもない、奴こそが俺の『赤』だ!!!」

 ヴァーリの激情を表すように羽ばたいた翼が、周囲に衝撃波と黒炎をまき散らす。

 どうやら、むこうは我慢の限界らしい。

「さあ! 無限を喰らうぞ、アルビオンッ!!」

 火の粉と燐光と共にヴァーリがこちらへ襲い掛かるのと同時に、俺もまた地をけっている。

 初速から容易く音を置き去りにするところを見ると、先ほどのラディカル・グッドスピードとやらを使っているのだろうが、今はこちらの感覚も界王拳で強化されている為に見逃すことはない。

「「おおおおおおおおおっ!!」」 

 激突同時に衝撃に脳が揺れた。

 どうやら、奴の右を顔面へモロに受けてしまったらしい。

 もちろん、こちらも黙ってやられてはいない。

 俺の右も奴の顔面を捉え、フェイスカバーに亀裂を入れている。

「炎殺煉獄焦ッ!!」

「白虎咬ッ!!」

 一撃で跳ね上がった上体を戻すと同時に放った連撃は、黒い火の粉と氣の残滓をまき散らしながら互いを相殺するに終わる。

 技同士の激突による衝撃からいち早く立ち直った俺は、腹への蹴りでヴァーリを吹っ飛ばすと同時に舞朱雀で追撃を掛ける。

 しかし────

「させるかっ! ソニックブレイクっ!!」

 奴が黒く染まった両の籠手を振りぬくことで放たれた、黒炎を纏った真空波によってこちらの残像が次々に迎撃される。

「チイッ……!?」

 2、3発食らったものの、奴の頭上を取ることに成功し肘を振り下ろすが、氣の刃が奴の兜に傷を付けたところで前転でこちらの一撃を躱したヴァーリの踵蹴りを肩口に地面へと叩き落とされる。

 ……ッッ!? 今のは刃牙が使ってた回転踵落としのカウンターか!

 激突する寸前で地面に片手をついて受け身を取った俺が腕の力で大きく後方に跳ぶと、一瞬遅れてヴァーリの黒炎を纏ったムーンサルトスラッシュがその場所を溶断する。

「逃がさんぞ!!」

 打ち終わりの踵を地面に打ち込む事で踏込みにしたヴァーリが、拳を振りかぶりながらこちらに突っ込んでくる。

 コンマ一秒で間合いを殺し切るその速度は大したものだが、こちらを取るにはまだ甘い。

 放たれた拳を紙一重で躱しながら腹部に一撃、さらに下がった顎を撃ち抜くと同時に腕を取った俺は、ツボから経絡に干渉して無力化した奴の体を上空高く放り投げる。

 これより放つはギース・ハワードが得意とした必殺技────  

「はあぁぁぁぁぁぁぁっ! 羅生門!!」

 練り上げた全身の氣が込められた双掌が頭から落ちてくる奴の腹を捉え、炸裂音と共に吹き飛ばす。

「玄武金剛弾……行けぃっ!!」

「ソニック……ハリケェェェェンッ!!」

 追撃に放った朱い竜巻状の衝撃波は、奴が両手を交差することで生み出した黒い炎を孕んだ旋風によって相殺される。

「やるじゃねえか! ずいぶんと使える技も増えてるみたいだしよぉ!」

「言ったはずだ! 遊んでいたわけではないとなぁッ!!」

 軽口を叩き合いながら再び激突する俺達。

 お互いが申し合わせたように小細工無しの真っ向勝負に移行すると、拳や蹴りを合わせる度に大気が軋み、余波で大地がめくりあがる。

 実況席の声が途絶えたところを見ると、将軍様はともかくとして美朱や吉貝アナ達はこちらの動きを捉えることができなくなってるのだろう。

 まあ、そんな事はどうでもいいか。

 今は割れた兜の奥で爛々と眼を輝かせている馬鹿の相手に集中することにしよう。

「はああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!」 

 同時に放った右拳がお互いの頬に炸裂する。

 楽しいよなぁ、おい!!

 

 

 

 

 今や姫島慎とヴァーリ・ルシファーの一騎打ちの観戦会場となった駒王学園の会議室。

 先程までうるさい位に沸き起こっていた歓声も姿を顰め、室内にいる者は神・悪魔・人・混血の区別なく中央に浮かび上がった投影ディスプレイに目を奪われている。

 ヴァーリが覇龍を制御してからリアルタイム超スロー画像に移行した中央の投影ディスプレイの中では、それでも二人の動きに追いつけていないのか、二人の姿が消えたり映ったりを繰り返している。

「よもや、白龍皇まで無限の龍神の域にまで達するとはのぅ」

 一角に備えられた各神話の主神がその姿を並べる席、その中でアスガルドの支配者であるオーディンが髭を扱く。

 その隻眼が捉えているディスプレイでは、慎の拳でヴァーリが吹き飛ばされるところが映っていた。

 もっともそれも一瞬の事で、次の瞬間には二人の姿は掻き消えてモニターから流れるのは激突の轟音とその際に生じた衝撃波が周囲の地形を変えていく様になっているが。

「この一戦で奴が覚醒した回数は二度、この成長速度は異常だ。普通では考えられん」

 土色の兜の奥から刃の様な眼光で二人の闘争を見据えながら、ダーナ神族の長ダグザはその丸太のような腕を組む。

「無限の進化……。その対象は己だけに留まらず自身に相対した者にまで及ぶのか。ともすれば、それが彼の者の真の力なのかもしれんな」 

 褐色の肌に古代エジプトの王装を身に纏った男、アメン・ラーはその太陽色の双眸を細める。

「そういえば実況席に座る異形の男、たしか悪魔将軍と言ったか。聞けば、奴は姫島慎の格闘の師だそうだな」

 漆黒の闇を固めた様な甲冑に身を包んだハーデスは、ドクロを象った兜の眼窩に灯る紅い篝火を件の男に向ける。

「……あの男、闘神の類か。しかし、奴から感じる強大な力は何だ?」

「信じられん事じゃが、あの男の力は外の二人を上回っておる」

 ヒンズー教の破壊神であるシヴァは、悪魔将軍から放たれる威圧感に頭巾の奥にある三眼を鋭くし、横にいた細君であるパールヴァティの顔には汗が浮かんでいる。

 神々の中でもトップクラスの権能を持つシヴァ達の言葉に、列席していた者達がにわかに騒ぎ出す。

 それも当然だ。

 灼熱のるつぼと化した荒野で鎬を削っている姫島慎とヴァーリ・ルシファー。

 二十年も生きていない混血の小僧が神々に一目置かれるのは、世界最強と言われていた『無限の龍神』オーフィスを超える力を身に着けているからだ。

 実際にオーフィスを打倒した姫島慎はもとより、現在進行形でそれに迫る成長を見せているヴァーリでも、ここにいる者達の多くは勝つことが出来ないのだ。

「妙な話だ。それほどの力がある者なら、我らが知らぬはずがない」 

「しかし、悪魔将軍などと言う名は聞いた事が無いぞ」

 神々の中から困惑の声が上がる中、沈黙を続けていた中国道教の最高神である天帝が口を開く。

「もしかすると、彼の者はこの世界の住人ではないのかもしれぬな」

「天帝殿、何故そう思う?」

「先ほどから見ていて気付いたのだがな、慎殿やその妹御である美朱嬢の使う氣功は我らが知るモノとは大きく違うのだ」

「違う? それはどのようにだろうか?」

「我等が使う氣功は仙術とも呼ばれ、その目的は名前の通り神仙へと至る事にある。しかし、彼らの使う氣功は戦闘に特化しすぎている。今、慎殿が行っている『小周天』と『大周天』の同時使用など、仙道の極意といえるもの。本来、氣功の腕があの域にまで達すれば、神仙に成っていなければおかしいのだ」

「たしか、悪魔将軍なる男が言っていたな。無限殿が使う技は氣功闘術という名だと。誰か、聞いた事がある者はいるかね?」

 アメン・ラーの言葉に、全能であるはずの主神達の中で名乗り出る者はいない。

「なるほど。その技を知っていたという事が、彼が異世界の存在である証明という事か」

「しかし、それだけで決めつけるのは早計ではないか? その氣功闘術とやらも第三の無限が生み出した物かも知れぬではないか」

「それはアリエマセーン。あの氣功闘術の技術体系は、驚くほどしっかりしていまシタ。十年、二十年であんな風になるのは無理デース!」

 仏僧衣に身を包んだ中性的な青年、大日如来の疑問を南米の民族衣装に身を包んだ金髪の女性、ケツアルコァトルが否定する。

「そうであれば、姫島少年はこことは異なる世界に繋がりがあるということか。それはまた、実に興味深いのぅ」

「嬉しそうですね、オーディン殿」

「当然よ。かつて世界樹にこの身を吊るし、片目を代価とする事で得た知識。それが及びもしない世界があるというのじゃ。昂らぬわけがないわい」

 遺された目をギラギラと輝かせながら、普段の好々爺然とした雰囲気をかなぐり捨てているオーディンに、天照大神はこっそりとため息を突く。

 実は天照は慎が異界と繋がりがある事を以前から察していた。

 姫島慎という少年は、身内と認識した者に対しては対応が甘くなる。

 彼が日本神話に所属していた折、天照にも時よりこの世界では見た事も無い贈答品を送っていたのだ。

 たとえば、今も首飾りの中央で蒼く輝く命の石と呼ばれる秘石がそうだ。

 慎の話では、致死性の呪詛や攻撃に対して一度だけ着用者の身代わりとなる効果を持つらしい。

 身代わり系の護符やお守りは世界各地にあるが、神にまで効果がある品など聞いた事も無い。

 知識の神である思兼神が解析してみれば、この世界のどこにも存在しない未知の物質と術式で出来ているという。

 その報告を聞いた時は、あの少年のあまりの非常識さに、神でありながら意識が遠のいたものだ。

 当時の事に頭痛を憶えながらも、他の神達に気付かれない様に周辺を見渡した天照は、その目を冷たく細めた。

 慎に恩があるアメン・ラーやある程度の付き合いがあるダグザ、自身の配下である朱雀と美朱の繋がりに興味を示す天帝などはその限りではないが、未だ地上に復権を得ていない者達の中には慎を通じて異界の知識や技術を手にしようと画策している者もいるようだ。

 外で行われてる超絶の戦いを見てもなお、そのような欲をかくとは本当に愚かな事である。

 彼を人間風情と侮って阿呆が地雷を踏み抜くのは知った事ではないが、それによって神仏全体を敵視されては堪らない。

 そういったことにならない為にも、慎に友好的な勢力と協力して予防線を張っておくべきだろう。

 冷えてしまった緑茶を啜りながら、天照はこの会合の後でアメン・ラーにコンタクトを取る事を決めたのだった。

 

 

 

 

 暗雲と邪炎の黒く炙られた荒野に生身の肉体がぶつかり合う音とは思えない轟音が響き、その度に撒き散らされる黒炎と衝撃波が周りの地形を変形させる。

 現状の界王拳と互角とは……あいつ、完全にオーフィス超えたな。

 それにしても、さっきから妙な感覚に襲われている。

 体力も減って身体にもダメージが蓄積しているはずなのに、動きがドンドン鋭くなっていく。

 さっきまで見えなかった相手の連携も見えるようになってるし、『真人』や界王拳の氣の運用も使うたびに効率が上がっている。

 こいつはいったいどういう事だ?

『これは……また珍しいものを見せてくれるな』

『どういう事でしょうか、悪魔将軍さん? 我々は両者の様子を見ることが出来ないので、何が起こっているのかわからないのですが……』

『ミックスアップ。極めて実力が近しい者同士が闘う事によってお互いがお互いを高め合い、限界を限界でなくす現象だ。格闘技においては極めて稀な現象だな』

 ……なるほど、得心が行った。

 どうりで、こっちの動きがよくなってるのにあいつを仕留められないワケだ。

 とはいえ、向こうはそろそろ限界のようだ。

 互いに動きを止めてみれば、こっちは全身に傷を負って血塗れだが、体力的にも身体的にもまだ余裕はある。

 対してヴァーリの方は、鎧の殆どは砕け散り黒のインナーに包まれた身体は血だらけ。

 さらに身を包んでいた黒の炎はその勢いを無くし、息もずいぶんと上がっている。

『神速の鎬の削り合いから両者生還! 激しい攻防を表す様に両名共に全身傷だらけですが、明らかに消耗しているのはヴァーリ選手の方だ!!』

『悪魔将軍さんの言葉では両者の実力は拮抗していたはずですが、何故このような差が着いたのでしょうか?』

『それはヴァーリ君の黒龍波による能力ブーストが、時間制限がある上に肉体にかかる負荷が大きいからでしょう。慎兄が使う界王拳は限界以上に能力を上げなければ肉体への負担はそこまでではないので、その差が出たからと思います』

『それだけではあるまい。魔力と氣の相乗による強化や炎殺黒龍波によるブースト、そして『獄炎の銀覇龍』。いずれも白龍の小僧がこの戦いを通して覚醒した技だ。急激な能力強化というものは、肉体に多大な負担を掛ける。今回の場合も度重なるパワーアップに肉体がついて行けてないのだ』

 目を凝らせば実況席の推測通り、ヴァーリの肉体はいたる所で筋肉が細かく痙攣をおこしている。

 あと少しでも無理をすれば、肉離れは元より筋肉や靭帯の断裂が起こりかねない。

 しかし、そんな状況でも奴の目に宿る闘志は煌々と燃え上がっている。

「勝負は終わっていない! そうだろう、慎!!」

 わかっていた事だが、やっぱりあいつは大馬鹿である。

 とは言えそんなバカヤロウでも、ここまで来たら最後まで付き合ってやるのが人情というものだろう。

「当たり前だ! とは言え、このままダラダラと長引かせんのも芸が無い。ここは一丁、一発勝負でケリと行こうや!!」

 こちらの提案にヴァーリの顔が獰猛な笑みに変わる。

「やはりお前は最高だ! ならば行くぞ、アルビオン!!」

《応! こちらの思いを汲んだ礼として、我らの最強の一撃を見せてやろうではないか!!》

 後方に飛び間合いを広げたヴァーリから、先程を倍するほどの魔力が溢れ出す。

「さあ、魔界の炎! 全てを焼却する黒き龍よ! 再び我が魔手に宿れ!!」

《Divide!!》《Divide!!》《Divide!!》《Divide!!》《Divide!!》《Divide!!》《Divide!!》《Divide!!》

 再び召喚されてヴァーリの右手を中心にうねり始めた黒龍は、わずかに残った胸当ての宝珠が電子音を放つたびにその身を銀色に染めてあげていく。

 邪王炎殺拳と白龍皇の光翼、奴が信用する二つの力を最大限に引き出した一撃か。

 食らえば無事に済みそうにないが、あれだけの大口を叩いたからには逃げるワケにはいかない。

 となれば、こちらも正面からねじ伏せるにふさわしい技を放たねばならないだろう。

「はあああああああっ!!」

 俺は体内を巡る全ての氣を解放し、それを右拳に集中させる。

 右手に集った氣はその密度を増す毎に赤から朱金へとその色を変え、こちらのイメージ通りの物を形作っていく。

『あ~~っと! これはどういう事だぁ!! 互いの最大の一撃を放つと申し合わせた両者! その身に纏ったエネルギーが同じ物へと変化していっているぅ!!』

『ヴァーリ選手は翼を広げた銀龍、そして姫島選手は自身の身体に絡みつく金龍。これはとても偶然とは思えません!』

「どういうつもりだ? お前は俺のようにその身に龍を宿すわけではあるまい」

「偶然さ。だが、こういう幕引きも悪くないだろ? ────最強の龍は一匹でいいんだからよ」

「……そうだな。お前の言う通りだ!!」

《Longinus Smasher!!》

 白銀に染まった炎と共にヴァーリが宙を駆ける。

 同時に俺も宙を蹴り、金色の氣勢を放ちながら加速する。

「覇王獄殺銀龍牙ぁぁぁっ!!」

「龍拳ッ!!」

「「撃ち抜け、奴よりも疾くっ!!!」」

 インパクトの瞬間、此方に振りかかる衝撃と閃光。

 右の頬と肩口の肉を抉り飛ばされるような痛みを皮切りに、右半身を灼熱感が襲う。

 同時に右拳に感じた肉を打つ手ごたえに痛みをおして強引に振り抜くと、辺り一面を揺るがすような轟音と共に土煙が舞った。

 少しの間を置いて閃光と粉塵に閉ざされていた視界が開けると、先程まで荒野を覆っていた暗雲や黒い照り返しは姿を消し、蒼穹の中で輝く太陽が照らし出す荒野には、山を三つは飲み込んで余りあるほどの巨大なクレーターが出来ていた。

 残り滓の氣を使って降りてみると、クレーターの中心ではヴァーリの奴が大の字になって伸びていた。

 胸の中心にはくっきりと拳の跡が残っているが、微かに氣を感じるところを見ると死んではいないようだ。

 まったくタフな奴である。

『互いの意地とプライドを賭けた最後の一撃勝負! その軍配は姫島慎選手に上がりました!!』

 吉貝アナの絶叫と共に、悲喜交々の歓声が荒野に響き渡る。

 というか、誰だよ、トトカルチョしてるヤツは。

 勝手にケンカを始めたのはこっちだけど、失礼にも程があるだろ。

「アルビオン、話せるか?」

 ため息交じりにヴァーリではなくアルビオンに声を掛けると、砕けて欠片となった宝珠から小さく光が漏れる。

《俺達の負けか。未だ、我らの力は『無限』には届かないようだな》

「そうでもねえさ。最後の一撃、まともに食らってたら地面に這ってるのはこっちだったはずだぜ。見ろよ、外したのに右の頬や肩の肉は抉れてるし、腕の方も半分はハンバーグだ」

 引き攣れる痛みに耐えながら上げた右手は、肩口から指の先まで真っ赤に灼け、皮膚の中には炭化している部分もある。

 肩口も肉が抉れて半ば骨が見えてるし、頬の方も薄皮一枚深ければ咥内にトンネルが開通しているところだ。

 まあ、損傷と同時に傷が焼かれた事で出血が無かったのがせめてもの救いだな。

「ヴァーリの身体を動かせるなら、こいつを食わせてやってくれ。放っておいて死なれたら寝覚めが悪い」

 ズボンのポケット中に入れていたピルケースから仙豆を取り出して投げてやると、アルビオンの操作によって動いた右腕がそれを掴む。

《これは?》

「仙豆って『無限の闘争』由来のアイテムだ。負傷者が喰えば、傷がたちどころに治って体力も回復する。こんな風にな」

 説明しながら一粒口に放り込むと、全身の傷は血の跡を残して消えて無くなった。

《相変わらずデタラメだな。フェニックスの涙なぞ、比較にならんではないか》

 愚痴りながらも宿主の口に仙豆を押し込むアルビオン。

 二、三度口を動かして嚥下すると全身に刻まれた傷は癒え、ほどなくしてヴァーリが目を覚ました。

「目が覚めたか?」

「…………そうか、俺は負けたのか」

「ああ、今回は俺の勝ちだ」

 まだ意識がはっきりしていないのか、仰向けのまま言葉を漏らすヴァーリに手を差し出すと、すぐに握り返してきた。

「随分と素直だな。少しは悔しがると思ったんだが」

 少々意外に思いながらも立ち上がらせてやると、手を放したヴァーリはニッと口元を吊り上げる。

「悔しいさ。だが、それ以上に今回の闘いは収穫があったからな」

「収穫ってのは、覇龍と邪王炎殺拳を極めた事か?」

「そうだ。真の覇龍と黒龍波を極めた先にあった獄炎の銀覇龍。あれこそが俺の可能性、まだまだ強くなるという証拠だ」

「ふーん。つうか、お前覇龍を極める時に爆発的に基礎能力が増したけど、あれも神器の効果なのか?」

「いや。あれはお前の氣の操作を真似て、魔力と外部から取り込む氣を練り合わせてみた結果だ」

「俺のパクりって、んな簡単に『真人』を真似るんじゃねえよ。あれって無茶苦茶難しいんだぞ」

「そうなのか? まあお前も赤龍帝の能力を真似てるんだから気にするな」

「それって界王拳の事か? いや、どっちか言えば赤龍帝の籠手の方がパクリなんだが」

「? まあそんな細かい事はどうでもいい。それよりもこれからどうするんだ?」

「どうって、会議室に戻って流れ解散だろうな」

「ふむ。ならば、俺はここで別れる事にしよう。ここでの目的はもう達したしな」

「待てや」

 さらりと帰ろうとするヴァーリの頭を鷲掴みにして引き留める。

「放してくれ。俺はもうここに用は無いんだ」

「オーフィス並みの実力を身に着けた奴を野放しに出来るか。お前はこれから俺の万屋の従業員になるんだよ」

「なぜだ!?」

「お前が俺に負けたから。敗者は勝者のいう事を聞くもんだろ」

「ぐぬぬ……」

 俺の完璧な理論にぐうの字も出せないヴァーリを引きずって会議室に戻ると、寄って来た身内やハーフ組に二人してもみくちゃにされた。

 チビ達は「にいちゃん、カッコいい!」だの「わたしもおそらとびたい!」と纏わりついてくるし、サイラオーグの兄貴やミリキャス、クーの兄貴は「すげえ喧嘩だった」と口々に俺達を称えながら背中やら肩やらを叩いてくる。

 朱乃姉や親父に玉藻はこっちの怪我の具合を心配するし、もう滅茶苦茶である。

 ただ喧嘩しただけでこうも盛り上がられるのは気恥ずかしいが、皆が喜んでくれるなら悪い気はしない。

 興奮冷めやらぬ感じの皆を掻き分けると、次に俺を待っていたのは将軍様だった。

「ご苦労だった。なかなか見ごたえのある仕合だったぞ」

「どうも」

 なんでここにいるのかという疑問が脳裏を掠めたが、その気になれば現世に干渉できる将軍様なら、半分『無限の闘争』と融合したこの空間にいてもおかしくないと思い直す。

 しかし、将軍様の力は大きく増しているのはどういうことか。

 具体的に言うと前までは鬼ランクだったのが、今では神ランク相当まで上がっている。

 氣を探ってみると、前に闘った時とは桁違いに身体を流れる量と質が向上している。

 これってもしかして───

「将軍様、本来の身体を取り戻しましたか?」

「うむ、過去の因縁を清算する時が来たのでな」

 重々しく頷く将軍様に、俺は内心首を傾げる。

 過去の清算とはどういう事なのか?

 将軍様の過去に関わる存在など、弟のシルバーマンを除けばゴールドマンだった将軍様を悪魔に誘い込んだ平行世界のサタンくらいしか思いつかないのだが。

「慎よ、お前に闘ってもらいたい漢がいる」

「それはいったい……」

「キン肉スグル。我が弟シルバーマンの末裔にして後継者だ」

 将軍様の口から出た名前に俺は目を細める。

 キン肉スグル。

 漫画『キン肉マン』の主人公で第58代キン肉星大王。

 超人オリンピックを二度制覇した実績を持ち、現存する超人の中で最強と言われている男だ。

「いいですよ。将軍様が対戦相手を指名するって事は、ちゃんとした理由があるんでしょうし」

『会場の皆さん、お聞きになられましたでしょうか! 激戦を制した姫島選手の次の相手が決定しました! それは超人オリンピック二連覇の偉業を持つ正義超人最強の男! 奇跡の逆転ファイター、キン肉マンです!!』

 興奮した様子で実況席でシャウトする吉貝アナと、期待に顔を輝かせる中野さん。

 アニメでは何回も見てるけど、生になると感慨深いものがあるな。

 それはともかく、なんで美朱やイッセー先輩まで実況席に座ってんだ?

 にわかに沸きだつ会議室の喧騒の中、将軍様は玉座に掛けていたマントを纏い直して背を向ける。 

「慎よ、心するがいい。奴とのリングには、お前は私の後継者として立ってもらう」

「将軍様の後継者として、ですか。それは責任重大ですね」

 そう言うと、将軍様は足を止めて振り返り、こちらに刺すような眼光を向ける。

「勘違いするな。悪魔将軍ではなく、完璧・壱式ゴールドマンの後継者としてだ」

 将軍様の有無も言わせぬ迫力に、俺は出かかっていた疑問の声を飲み込んだ。

 完璧・壱式というのは解らないが、ゴールドマンの名前を出したからにはキン肉マンとの試合は、別の意味を持つという事だ。

 かつて思想の違いから袂を分かち、決闘の末に相討ちになった将軍様とその弟のシルバーマン。

 俺とキン肉マンの仕合は、互いの後継者として引き分けとなった決闘の白黒をつける意味もあるのだろう。

「……了解。貴方に恥をかかせない様に精進しますよ」

「うむ。仕合の日取りについては追って知らせる。それまで更なる研鑽に励むがいい」

 そう言い残し、自身が発生させた時空の歪みに消える将軍様。

 その後ろ姿を見送って、俺は小さく息を付いた。

 やれやれ、次の仕合が組まれたのはいいが責任は重大だ。

 こりゃあ、鍛錬を怠けるにはいかないな。

 胸中で決意を新たにしながら、携帯端末でバトルフィールドを解除する。

 空間が軋むような鳴動が会議室内に響くと、窓から見える光景は夜の帳が降りた駒王町へと立ち戻る。

 さて、随分と妙な展開になったが、今回の会議もこれにてお開きだろう。

「天照様。申し訳ありませんが、会議の閉幕宣言をお願いできますか」

「待て。貴殿は白龍皇の処遇をどうするつもりなのだ?」 

 周りの喧騒も落ち着いたところで天照様に締めの言葉を貰おうとしたら、ヴァハグン様が待ったをかけて来た。

 懸念は案の定ヴァーリについてだが、その辺はもう対処済みである。

「ヴァーリは今の勝負の結果により、私の万屋で働くことになりました。手綱は私が握ってますし、妙な事をしようとしたら容赦なくシバキ倒しますので、ご安心ください」

 ニッコリと営業スマイルを浮かべて答えたのに、ヴァハグン様は顔を青くして黙り込んでしまった。

 何故だ、我ながら渾身の笑みだったのに……。

「まあ、無限殿が手綱を握るなら一先ずは安心かの。ところでお主、嫁を貰う気はないか?」

 ……うん? オーディン様が妙な事を言いだしたぞ。

「いや、私はまだ十五歳ですので結婚できる年じゃないんですが」

「十五歳といえば一人前の大人じゃろう。好いた女子がおらんのなら、ウチのヴァルキリーなんてどうじゃ? 才能も容姿も優れておるが、嫁の貰い手が無い奴が一人おるんじゃが」

「待て、オーディン殿。それならば、我が配下の妖精にも器量よしがいる。娶るならこっちのほうがよい」

「ふむ、あの小僧と縁を結ぶというのであれば黙ってはいられんな。我が方も冥府に住むニンフがおる。見目麗しく、教養もペルセポネの教えを受けているので問題はない。妻に迎えるのなら、こちらの方がよいぞ」

「何を勝手な事を! 彼の元にはすでにわたくしの分霊である藻女がいます! 他の者が入り込む余地はありません!!」

「待たれよ、天照殿。彼の者は無限の体現者だ、連れ合いが一人では無くはならない道理はあるまい」

「おおっ! ならば我等の勢力からも妻を娶ってもらおう!」

「我等も!」

「私達もだ!」

 …………なぁにこれぇ。

 唖然としてる間に話がさらにトンデモナイ方向に進んでるんですが。

「ちょっと待ってください! 俺は結婚するだなんて一言も言ってませんよ!! なんか一夫多妻とか言ってますけど、俺にそんな甲斐性ありませんし、複数の女性を同時に愛するほど器用でもないですから!! マジで勘弁してください!!」

「なにを覇気のない事を。男なら女の二人や三人、囲って見せんか」

「どうせ、まだ女を知らんのだろう。これを機に知っておくのも悪くあるまい」

「無茶苦茶言わんでくださいよ! この歳で女性経験なんて、ある方がおかしいでしょうが!!」

「ふむ、現代ではこのような場合はどう言うのであったかな?」

「確か、童貞乙と言えばよかったはずだぞ」

「シバくぞ、お前ら!!」

 ここぞとばかりにおちょくってくる主神達の相手をすることしばし。

 こちらが半ギレになった事でようやく、馬鹿騒ぎも収まりを見せ始めた。

「ともかく、結婚なんて早すぎますよ。日本の法律では男は18にならないと結婚できないんですし、そういった話はもっと時間が経ってからにしましょう」

 妙な疲れを感じながら、強制的にこの話題を打ち切る俺を主神達は不満そうに見ている。

 くそっ、みんなしてブーたれやがって。

 お前ら、絶対諦めてねえだろ。

 まったく、こっちは朱乃姉と美朱を嫁に出すまで、そんなこと考えてる余裕なんてないっつーの。

 

 

 

 

 さて、最後の最後でカオスが渦巻いた会議もようやく終わり、俺は美朱と共に帰路に着いていた。

 あの後はグダグダな空気のまま流れ解散となり、朱乃姉や親父は各々が陣営の後始末。

 ヴァーリはこっちに来るのに準備があるとの事でグリゴリに戻ったし、玉藻は何故か天照様に引っ張られて、高天原に連れていかれてしまった。

 時計を見れば、針が示すのは深夜二時。

 神職の朝ははやいってのに、まったく困ったもんである。

「お疲れ、慎兄。いろいろ大変だったねぇ」

「まったくだよ。まさか結婚云々なんて話になるとは思ってもみなかった」

「でもよかったの? イッセー先輩じゃないけど、ハーレムも造れそうだったじゃん」 

「馬鹿言え。俺にそんな甲斐性ねえよ」 

「私達を養ってる時点で十分あると思うんだけど……。まあ、いきなり結婚するとか言われても困るから、私としては断ってくれてホッとしてるけどね」

「ないない。家の事やらなんやらでゴタゴタしっぱなしなのに、嫁を迎えるとかマジでない」

 顔の間でひらひらと手を振りながら否定してやると、安心したのか美朱の顔に笑みが浮かぶ。

「うむ、余はその言葉を信じるぞよ」

「なんだよ、そのしゃべり方は。馬鹿言ってないで、お前も朱乃姉も彼氏の一人でも連れて来いっつーの」

「どうせ連れて来ても『妹はやらん!!』とかいう癖に」

「当たり前だ。手塩に育てて来た妹なんだ、納得いく奴にしかやれるか」

「ちなみにその基準は?」

「俺の膝を地に付かせる事」

 胸を張って堂々と言ったのに、妹の視線が冷たい。

「……ナニソレ。私達、一生結婚できないじゃん」

「いや、普通にいけるだろ。例えば音速以上で動いたり、氣弾で大陸すっ飛ばしたり。あとは異世界の勇者を捕まえて来てもOKだ」

「貴様、いい加減しろぉ!!」

 何故か美朱が切れたので、親父の『ブレイク・ダーク・サンダー』の真似をして腹筋崩壊させといた。

 うーん、裏の世界を探したらこの位はいると思うんだがなぁ。

 もしかして、俺の基準はおかしいのか?

   

 




 ここまで読んで下さって、ありがとうございます。
 今回は対戦のイメージが中々浮かばず、思った以上に苦戦しました。
 ともあれ、これでようやく四巻目終了です。
 拙作ではレーティングゲームが中止になる方向にしてしまったので、5巻の話が丸々すっ飛ぶ形になるのですが、何とか頑張っていきたいと思います。

 さて、掲載が遅れましたが用語集です。

〉ジェノサイド・カッター(出典 キングオブファイターズ)
 ジェノサイド・カッターとはルガール・バーンシュタインの必殺技。
 跳び上がりながら片脚を弧を描くように振り上げ、相手を切り裂く対空技。
 初出の『94』ではでは、パワーMAX発動中かつ密着状態でヒットさせると相手を即死させるうえに、無敵時間が異常なほどに長く着地の隙が皆無という、脅威的性能で多くのプレイヤーを苦しめた。
 過去にハイデルンの妻クララ・娘サンドラの命を奪い、片目を失明させた技がジェノサイドカッターとされている。

〉衝撃のファースト・ブリット(出典 スクライド)
 アルターと言われる物質変換能力を使用して自身の肉体を再構成し、その力を使って強力な打撃を放つ技。
 劇中では主人公であるカズマ、その兄貴分であるストレイト・クーガーが使用した。
 カズマは自身の右腕を装甲変化させたアルター『シェルブリット』を使って全力で殴りつける、大してクーガーはアルター能力『ラディカル・グッドスピード』での蹴撃である。
 技を放つ回数によって、二発目は『撃滅のセカンド・ブリット』(クーガーは壊滅のセカンド・ブリット)三発目は『抹殺のラスト・ブリット』(瞬殺のファイナル・ブリット)と変化する。
 『衝撃のファースト・ブリット』は元はクーガーの技だったが、カズマへ与えたという経緯がある。

〉ラディカル・グッドスピード(出典 スクライド)
 スクライドの登場人物、ストレイト・クーガーの使用するアルター能力。
 あらゆる乗り物を高速化出来るアルターで、『具現型』と『融合装着型』二つの形態を持ち、それぞれを同時に使用することも出来る。
 作中にて乗っている車両を能力で改造していたのは具現型。
 凄まじい走行性能を誇るが、車にかなりの無理をさせている為、アルター化を解くと爆発してしまう。
 融合装着は脚部限定、全身装甲二種類があるが、両形態共にその超加速を活かした足技を主体とした戦法を使う。
 ネイティブ最強と称されている通り、脚部限定ですらカズマを圧倒、そのスピードは他の追従を赦さず、劉鳳の絶影すら翻弄する。
 監視衛星ホーリーアイやイーリャンのアルター『絶対知覚』が知覚出来ない事から、容易に音速を超える事ができる。
 作中、ヴァーリが使用したのは白龍皇の鎧を変形させた模倣であり、加速という一点では本物に及ばない。

〉霊光波動拳・修の行 呪霊錠(出典 幽遊白書)
 修の行 呪霊錠とは霊光波動拳の修行の一つで、特殊な霊気で作る枷を両手足に嵌めて、霊力の向上に努める荒行である。
 相当な霊気を動員しなければ動けず、着けていると底力がつく。
 解放するには「開(アンテ)」という合言葉を用いる。
 劇中では幻海は「霊力養成ギブス」と例え、幽助は「鉛でできたバネ」と例えた。

〉白虎咬(出典 スーパーロボット大戦OG)
 スーパーロボット大戦OGに登場する特機ソウルゲインの使用する武装の一つ。
 拳にエネルギーを纏わせての連打から両腕を合わせた掌を撃ちこみ、至近距離でエネルギーを炸裂させる。
 慎はこのエネルギーを氣で代用している。

〉ソニックハリケーン(出典 ストリートファイター)
 ストリートファイターのキャラであるガイルの超必殺技。
 その場に留まる大きなソニックブームを前方に張り巡らせる。
 作品によってヒット数やリーチは異なるが、総じて発生が速く裏側にも攻撃判定があり、隙が比較的小さいので使いやすい。
 
〉龍拳(出典 ドラゴンボール)
 ドラゴンボールシリーズに登場する孫悟空の技の一つ。
 初登場は劇場版ドラゴンボールZ「龍拳爆発! 悟空がやらねば誰がやる!」と思われているが、実は初代ピッコロ大魔王を打倒した最後の一撃である。
 悟空の技の中でも元気玉に次ぐ威力を誇るものの、体当たりに近い形の直線的打撃なため、使用回数は少ない。
 かめはめ波や元気玉等の有名所の技と比べたら遥かにマイナーだが、近年ゲーム等の媒体でメジャーなものとなる。

 今回はここまでとさせていただきます。
 また次回でお会いしましょう。

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