MUGENと共に   作:アキ山

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 お待たせしました、21話完成です。

 事前に皆様に注意喚起いたします。

 今回は三大勢力へのアンチ・ヘイト表現ならびにSEKKYO染みた表現があります。

 そういった表現に不快感や嫌悪感を感じる方はブラウザバックをお願いします。


21話

「では、これより各神話勢力合同サミットを開催いたします」

 各神話の主神が集まった席の中央に立つ日本の主神、天照大神(あまてらすおおみかみ)様の発した号令が会議室に響き渡る。

 先ほどまでとは違う引き締まった空気の中、教室の隅に用意された三勢力用の椅子に腰かけながら俺は深々と溜息を吐いた。

 スッゲー居心地が悪い……。

 しかし、なんで俺ここにいるんだろうか。

 俺って悪魔歴3ヵ月の駆け出しの下っ端ですよ? 神滅具(ロンギヌス)とかいうチートアイテム持ってても指先一つで死んじゃう超クソザコですよ?

 そのチートアイテムにしても、後輩のパワーアップが『ドラグ・ソボール』の空孫悟(そらまごさとる)並みにインフレしてて役に立たないし。

 というか、アイテムの中に住んでるドラゴンが『あいつに勝つの無理』って白旗()げましたから。

《相棒、事実でもそんな事は言わないでくれ。虚しくなる》

 ……ああ、名乗りが遅れてすんません。

 俺、兵藤一誠って言います。

 駒王学園の高校2年、オカ研所属の悪魔です。

 あと、さっきの声は今言ったアイテム『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』に住んでるドラゴンのドライグ。

 俺共々(ともども)まるでダメな男、略してマダオです。

《その呼び名はやめろ。何故か心にグサッとくる》

 はいはい、やめますよ。

 ……え、普段よりテンション低いって?

 そりゃあこんな場違いな所にいたら大人しくもなりますって。

 いや、理由は解っているんですよ。

 今、壇上(だんじょう)で座っている部活の後輩、姫島慎が世界最強の龍をソロで狩る現場を見ちゃったからなんスけどね。

 とは言え、俺は主であるリアス部長のお供でしかないし、それ以前に所属している団体が強烈にハブられてるから話に混じることが出来ない。

 やる事と言えば、

「嘘です……(しゅ)が失われたなんて……。あんなの、何かの間違いに決まっています……」

 カテレアとかいう女悪魔がポロリと漏らした『聖書の神の死』にショックを受けているアーシアを()でてやる事と、

「…………」

 後輩のあまりの非常識さに屍状態になったリアス部長の看病くらいだ。

「会長! しっかりしてください、会長!!」

明訓(めいくん)……甲子園……ホームラン……殿馬(とのま)、野球の練習を……」

「殿馬って誰なんすか!?」 

 部長と同じくダウンした支取会長を看病している、会長眷属の兵士である(さじ)の声が聞こえる。

 匙よ、お互い苦労するよな……。 

 正直、部長達の気持ちはわかる、超わかる。

 対戦相手をバットで『シュゥゥゥーッ!! 超! エキサイティン!!』するのはまだいい。

 バットを武器にする奴だって、世界のどこかにいるだろうから。

 けど、アニメのオープニングが流れるってのは、どういう事だよ!?

 あれを見た瞬間、俺達はもちろん、会場内の神様達も『どういうことなの?』状態だったんだぞ!

 しかも、やった本人はゆうゆうとダイヤモンド一周してるし。

 あんな、どう見てもギャグにしか見えない技でやられたクル……なんとかさんは、マジに気の毒でならない。

《あれにはさすがの俺もたまげた。一応言っておくが、お前も食らったら一撃死だからな》

 やめろよ! あんな死に方、絶対嫌だぞ!!

 死ぬときはでかいおっぱいに埋もれながら、と決めてるんだ。

《お前が見ていたアニメで、それと似たようなセリフを吐いてた奴が死んだな。タイトルは『鉄血のなんとか』といったか》

 ……ドライグ、お前は俺に恨みでもあるのか。

《それよりもお前、聖書の神が死んだと聞いたのにショックを受けてないな》

 ん? 俺って元々神様信じてないし。

 そりゃあ驚きはしたけど、それに関してはむしろ納得がいったって感じだ。

《納得だと?》

 ああ。

 そもそも、聖書の勢力がここまで拙い状態になってるのに顔を出さない時点で不自然だし、俺やアーシアみたいに悪魔や堕天使のせいで不幸になる人がいるのに、助け舟の一つも出ないのも妙だ。

 聖書の神がいたとしたら、神に興味なんてなかった俺はともかく、敬虔(けいけん)な信徒であるアーシアに救いの手が伸びなくちゃおかしいだろ。

《まあ、奴が生きていたとしても、信者一人に手を差し伸べることはないだろうがな》

 マジかよ……。

 何か聖書の神って悪評ばっかだな。

「では、『第三の無限』である姫島慎に挨拶をしていただきましょう」

 司会進行役の天照様が慎を呼んだ。

 ホワイトボードを背に、みんなより一段高い位置に置かれた席から腰を上げる慎。

 背広姿だからか、その姿からは普段よりも貫禄(かんろく)を感じる。

 思えばあいつって、年下とは思えないくらい大人びてるんだよなぁ。

 あの年で一家の大黒柱やって、姉妹の学費と生活費稼いで、しかも仕事は神主だ。

 っていうか、ライザーの時といいこの前といい、俺ってあいつに教えてもらってばかりで、先輩らしいこと何もしたことねえじゃんか。

「ただ今ご紹介にあずかりました、姫島慎と申します。各神話を束ねる偉大なる主神の方々と(まみ)えられたことを誇りに思います」

 名だたる神々を前にスラスラと挨拶(あいさつ)をする慎。

 あいつ、本当に俺より年下なのか?

 実は二十歳越えてるって言われても信じられそうな雰囲気を出してるんだが。

《奴を常人と一緒にするな。世界最強の『無限』だぞ》

 いや、それは関係ないだろ。

「諸事情が重なった結果、私は『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』オーフィスを打倒いたしました。勿論、それ自体はむこうが仕掛けてきたのを迎え撃っただけですので、誰はばかる事はありません。ですが、この結果が世界に混乱をもたらし、各神話の皆様方に多大なご迷惑をおかけしたこともまた事実。その事に関して(つつし)んでお()び申し上げます」 

 机の後ろから出て、皆の見える位置で頭を下げる慎。

 その姿に神様達から騒めきが起こる。

 つうか、随分と腰が低いな。

 地上最強っていうくらいなら、もっと威張ってるもんだと思ったんだけど。

「さて、各神話の神々をして『触れ得ざる者』と言わしめたオーフィスを倒した私を、皆様は警戒なさっている事と思います。そこで私が『何を求め、どう動くつもりなのか』をこれからお話ししたいと思います」

 そこまで言うと、慎は机の上に置いてあったコップから一口、茶を喉に流し込んだ。

「まず、私が求めるのは家族や知人との平穏な暮らしです。それさえ保たれているのならば、現状の世界で何かを変えようとは思いません」

 慎の言葉に多くの神様達が意外そうな顔を擦る中、鎧を着こんだ(いか)つい神様が手を上げる。

 なんだろう。あの人を見ていると、寒気が止まらないんだが。

《あの神、龍殺しだな。気を付けろよ、相棒。俺を宿している以上、お前の体にも龍の特性が付与されているからな》

 マジかよ!?  そう言えば、このまえアスカロンを見た時も寒気がしたよな。

 弱点まで受け継ぐとか(たま)らんぞ、オイ!?

「アルメニア神話代表のヴァハグンだ、話の途中だが、無礼を承知で発言をさせていただきたい」

「ヴァハグン様。アルメニアが誇る龍殺しの英雄神ですね、お会いできて光栄です。どうぞ、遠慮なさらずお話しください」

「姫島慎殿、貴殿はそれだけしか求めないのか? その力があれば、新たな勢力を築き世界に覇を唱える事も不可能ではないのだぞ?」

「質問にお答えします。ヴァハグン様がおっしゃった様な事をする気はありません。先ほどの旧魔王達にも言いましたが、私は生まれも育ちも小市民です。権力を得ても困るだけですし、富も普通に働いて稼ぐ分で事足ります」

 慎の身も蓋も無い答えに、唖然とするヴァハグンや他の神様。

 まあ、あれだよな。

 神様に一般市民の気持ちをわかれってのが無理だよなぁ。

 俺? 俺はあいつの気持ちスッゲー分かるよ。

 俺だって偉くなりたいし金も大事だけど、それって戦争してまで欲しいもんじゃないし。

 まあ、『夢はハーレム』とか言ってる奴の台詞じゃないのはわかってるけどさ。

 けど、改めて考えれば、悪魔社会で立身出世するって闘ってのし上がるって事なんだよなぁ。

 ハーレムは欲しいけど、やっぱ小市民にはキツいわ。

 俺みたいな奴は綺麗でおっぱいのデカい嫁さん貰って、普通に暮らすのが一番なのかなぁ……。

 いや、嫁候補なんていませんけどね。

 ああ、いろはに言ったら付き合ってくれたりすんのかなぁ。

《ふん。俺のオーラを使いこなすことが出来れば、雌などすぐに寄り付いてくるぞ》

 ふざけんな! お前の力で好きになられてどうすんだ。

 俺自身の力で惚れてもらわなきゃ、意味無いだろうが!

《どうせヤル事は同じだろうが。分からん奴だ》

 うっせ!

「なるほど。其方(そなた)とその身内に手出しさえしなければ、敵対することは無いという事か」

「ならば、オーフィスと変わらんか。いや、社会というものを理解し交渉が出来るだけ、あ奴よりマシかもしれんな」

 神様達の騒めきと共に張りつめていた空気がゆっくりと緩くなっていく。

 だが、それに水を差す者がいた。

「ふむ。逆に言えば、その身内に手を出せば我等に牙をむくという事になるのぅ。そして()の者の父親は堕天使の幹部、姉は転生悪魔。他にも三勢力に知人が山とおる。彼奴等を仮想的勢力としておる我々には、ちぃとばかり都合が悪い話じゃわい」

 腹の辺りまで伸びた白い髭を(しご)きながら不穏な事を言い始める爺さん。

 あれって確か、RPGとかによく出るオーディンとかいう神様だったな。

 せっかく無難に(まと)まりかけてたのに、空気読んでくれよ!

「ふん、確かにな。その辺をはっきりさせるには、ちょうどいい機会だ。小僧、お前は有事の際は三勢力に(くみ)する気か?」

 今度は黄土色の鎧を着たゴツイ神様が慎へ質問を投げかける。

 ちょっ!? あんたその質問はダメだろう!

《まあ当然だな。奴らは聖書の勢力を目の敵にしている。あの小僧が付くかどうかで、これからの戦略が大きくかわるだろうからな》

「また厳しい質問ですね、ダグザ様。とは言え、お茶を濁しても皆様は納得しないでしょう」

 苦笑いを浮かべていた慎は、一度、二度と呼吸を整えると真剣な顔で眼前の神様達を見据える。

「……万が一、皆様方が聖書の三勢力と戦端を開いた時は、私は彼等に与します」

 瞬間、会議室の空気が凍った。

 先ほどまでの穏やかな空気から一転して、肌が引き攣れるような張りつめた気配が会場を満たす。

 それは目の前の神々が発する威圧なのだろう。

 慎へ向けられた余波だけでも、正直腰が抜けそうだ。

《この程度の威圧で情けない奴だ。少しはあの小僧や白いのの相棒を見習え》

 うるへー、俺は一般ピーポーなんだよ!!

「言い切ったな、小僧。それが我等全てを敵に回すのと同義である事はわかっているのだな?」

「正直、遠慮したいですけどね。厄介な事に恩人や知り合いが軒並(のきな)み三勢力の要職に就いてるものでして、『身内だけ囲って三勢力とはおさらば』という訳にはいかんのですよ。とはいえ、こちらも無条件で付くつもりはありません」

 ダグザと呼ばれた神が兜の奥から放つ眼光を苦笑いで受けた慎は、いったん言葉を切ってこちらを向いた。

 その目はいつも俺達に向けているモノとは打って変わって、此方を貫くような鋭い光を湛えている。

「三勢力各位には今から出す条件を飲んでもらう。これを拒否するのなら、俺は今後一切三勢力に助力するつもりは無い」

「……その条件とは?」

 普段とは全く違う慎の様子に若干気圧されながらも、サーゼクス様が問いを返す。

 それを受けて、慎はゆっくりと息を吸うと意を決したように言葉を(つむ)ぎ始める。

「まずは天界から。天界および下部組織の教会には、今まで各神話から奪った宝物や武器を即時返還。また現在も行われている『聖剣計画』をはじめとした人体改造及び実験を停止してもらう」

 慎が提示した条件に、天使たちの顔色が変わった。

 隣で固いモノが(きし)む音がしたので見れば、木場が怒りの表情で天使達を(にら)んでいる。

 つうか、あいつ等まだ『聖剣計画』やってたのかよ!?

随分(ずいぶん)とふざけた事を言いますね。こんな内政干渉も(はなは)だしい条件を飲めるとでも?」

「飲めないなら構わんさ、何かあっても俺はそっちに付かないだけだ」

「言いがかりはお止めなさい! 我々の所有物の中には他の神話から奪った物などありませんわ!!」

 不敵な笑みを浮かべる慎にミカエルの横に控えていた天使の女性が反論する。

 ていうか、おっぱいスゲエなあの人! 朱乃さんに匹敵するんじゃないか。

 話すだけでプルプル揺れて……眼福です、ありがとうございます!

《お前という奴は……》

「あんた、時と場所を選んで発言した方がいいぞ。公の場で口にする以上、しっかりと裏は取ってるんだよ。北欧神話のシグルスが振るった『魔剣グラム』をはじめとして、スウァフルラーメ王の『魔剣ティルヴィング』にヘグニの『魔剣ダインスレイブ』。さらに日本の三種の神器の一つ、『天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)』も持ってるよな。なんなら、保管しているブツの目録を出してやろうか?」

「なっ!? 我等が至宝の一つにまで、手を出しているのですか!!」

 慎の言葉で天照大神様が椅子を激昂(げきこう)しながら立ち上がり、神々が騒めく中で顔色を無くす天使たち。

「こちらの魔剣を三振りも持ち出していたとはのぅ。慎殿、その目録を見せてもらえんかの?」

「ええ。玉藻、頼む」  

「承知しました、ご主人様」

 玉藻さんが(かたわ)らに置いていた(かばん)から取り出した書類を神様達の席に配ると、その騒めきが大きくなる。

 ところどころから『これは私の宝剣だ!』だの『これは我々の宝物!』だの『近頃は老眼が進んで見えにくいわい』なんて声が聞こえてくるんだが、あいつ等いったいどれだけの物を奪ってたんだよ。

《前に姫島慎も話していたが、聖書の勢力は世界中の多神勢力を押しのけて信仰を広げて来た。奴らは意地汚いからな、その際の戦利品など数多(あまた)とあるだろうよ》

「聖剣事件があったんで同じ事が起きるかもと探りを入れたんだが、ビンゴなんてもんじゃなかったな。まったく、いくら貯め込んでんだよ」

「よもやバアル神の戦槌『ヤグルシ』もあるとはな。『無限』殿、どうやってこれを手に入れたのだ?」

「アスガルドに出張に行った帰りに、イタリアの協会本部と天界に寄って拝借してきたんですよ。これでも忍者の始祖の血を引いてるんで」

 なんかエジプトっぽい金目のイケメンの質問に答える慎。

《あれはアメン・ラー。エジプトの太陽神にして主神だ》

 ドライグ、解説ご苦労。

 そう言えば、あいつ等ってそういう家系だって言ってたって────うおっ!?

 トンデモない寒気を感じて目を向けると、女神様の一人なのだろうヤギみたいな角を生やした女の人が、怒り心頭って感じで会議室から出て行った。

 今の人、スッゲー怖かったんですけど。

 物凄い美人なのに般若(はんにゃ)みたいな顔をして……正直、目が合ったら殺されると思った。

《その予感は正解だ。あれはウリガット神話の主神バアルの妻にして、殺戮の地母神アナトという》

 殺戮って、なにその物騒な名前!?

《恐ろしいほどに気性の荒い女でな。戦争の祝勝会で気が(たかぶ)ったと自軍の兵士を殺戮して、会場を血の海にしたという逸話があるくらいだ》

 なにそれ、怖い!?

 でも、バアルって慎の話に出て来たベルゼブブに堕とされた神様だよな。

 奥さんの名前って『アスなんとか』じゃなかったか?

《……アスタルテだ。古代の神は大体が一夫多妻制だからな、さっきの女もバアル神の妻なのだ》

 おおう……!! なんと(うらや)ま……しくないな。

《どうした? いつもハーレムがどうこうと騒いでいるではないか》

 え~、ヴァイオレンスな方はちょっと……。

「皆様方。話は少し横道に()れますが、私は万屋(よろずや)という失せ物探しから揉め事の解決まで、数多の事を依頼により代行する商いを営んでいるのです。もしよろしければ、彼等から宝物を取り戻すお手伝いをさせていただきますよ」

 天使たちが答えを渋る中、慎が(あお)ると神様達が『俺も』『私も』と手を上げ始める。

 おいおい、あのままじゃ天界が多神勢力に袋叩きにされちまうぞ。 

「────わかりました。宝物は順次返却しましょう」

「最初からそう言え。で、次の件は?」

「その前に一つ質問を。何故こんな条件を付けるのです? 貴方には関係がない事と思いますが」

「関係はあるさ。俺の知り合いが『聖剣計画』の被害者だったからな。そうだろう、祐斗兄」

「え……?」

 突然話を振られた事で、木場の口から間抜けな声が漏れる。

「祐斗兄。聖剣事件の後、俺も独自のルートで教会や天界が実行した『聖剣計画』を始めとする人体実験を知ったんだ。……あんたが被験者の生き残りであることもな。あの時、あんたを冥界に避難させた事は間違っているとは思わない。でも、知らなかったとはいえ祐斗兄の復讐の機会を奪った事。そしてあんたへの配慮が欠けていた為に嫌な思いをさせてしまったことを、この場を借りて詫びたい」

 謝罪の言葉と共に木場に向けて頭を下げる慎。

 そう言えば、あれから今まで木場とあいつが話しているのを見た事が無かった。

 あいつ、ずっとあの事を気にしてたのか……。

「木場。むこうは頭を下げたんだ、なんか言ってやれよ」

 隣で呆けている木場の背中を思い切り平手で叩いてやると、(ようや)く事の次第が呑み込めたのか、木場は席を立つと真っ直ぐに慎を見つめる。

「頭を上げてくれ、慎。僕の方こそ未練がましく引きずっていて、すまなかった。あの時の君の判断は正しかった。でも、エクスカリバーへの復讐心から僕はそれを認めることが出来なかったんだ。……本当にごめん」

 慎が頭を上げるのに入れ替わるように謝罪する木場。

「なるほど、だからこその条件ですか。ですが、『聖剣計画』は発足から今まで信者の自主的な志願によって成されてきました。その過程で背信者による不幸な事件もありましたが、その魂は『主』の元に召され穏やかに暮らしているはずです」

「祐斗兄、本当にそうか?」

 慎の問いに顔を上げた木場は、ミカエルに刺すような鋭い視線を向ける。

「いいや、僕も他の『聖剣計画』の被験者も同意なんてしていない。孤児として拾われた僕たちは司教の言葉を疑わない様に教育された。奴らはそこに付け込んで僕達をモルモットにし、そして不要となれば虫けらのように毒ガスで皆殺しにしたんだ」

「それは背教者パルパー・ガリレイが勝手にやった事。主はそのような非道はお認めになっていません」

「けど、あんたの言っていた『全ての信者が同意し志願した』ってのは嘘だったな」

 木場の言葉に反論するミカエルを、さらに慎が切り返す。

「なかなか冗談が上手いではないか、ミカエルよ。とっくに消滅した聖書の神が『認めていない』とはな。死者の声が聞こえるなど、貴様は何時から死神に宗旨替(しゅうしが)えしたのだ?」

「貴様……ッ!?」

 ダグザの真っ黒い冗談に、憤怒の表情で顔を赤くするミカエル。

 やっぱ聖書の神は死んでたのか。

 思えば神社の時にだって、慎はチラッと言ってたしな。

 隣を見れば、ショックで気を失ったアーシアが力なく椅子にもたれ掛かていた。

 クソッ、こんな事なら参加させなければよかった。

「ふん。そこの赤龍帝の主という小娘たちに隠すために三文芝居を打っていたようだが、そんなものを俺達の前で見せるな。不愉快だ」

 兜の奥から物凄い眼光でミカエルを黙らせた後、ダグザは(あご)で慎に続きを促す。

「さて、話が横道に逸れちまったな。じゃあそっちの疑問も消えた事だし、答えをもらおうか」

「……その条件を飲む」

 怒りで真っ赤に染まった顔を歪めながら、食いしばった歯の隙間から絞り出すような答えに慎は鼻を鳴らす。

《ふん。ミカエルめ、いい気味だ》

 お前、封印されたからってそれは無いと思うぞ。

「さて、次は堕天使だな。神器所有者の抹殺は、グリゴリ上層部ですでに中止が決定しているけど、それが末端にまで浸透していない。まずはそれを徹底させる事と、研究の為の神器の摘出と人体実験を辞めてもらおうか」

「……了解だ。その程度ならウチには大して被害はいかねえからな。蹴ったらバラキエルにハーフ組、他にどれだけの人材が抜けるか分からねえし、そっちの方が被害は甚大(じんだい)だ。一つ確認しとくが、既存(きぞん)の神器研究はいいんだろ?」

「他の種族、特に人間に迷惑を掛けないんならな」

 堕天使側はスムーズに話が終わった。

 慎の奴、俺がレイナーレに殺された時の事、まだ憶えててくれたんだな。

「最後は悪魔側だが、そっちの条件は『悪魔の駒(イービル・ピース)』による転生悪魔の作成禁止と、残留希望者以外の転生悪魔の解放だ」

「ふざけないで!? 慎、あなた何を言ってるのよ!!」

 思わず立ち上がって声を荒げる部長。

 魔王様二人も信じられないって顔してるし、匙をはじめとする支取会長の眷属も慎を睨みつけている。

 慎に悪感情をぶつけていないのは俺と朱乃さん、木場だけだ。

 少し前なら、俺も部長の尻馬に乗って慎に詰め寄っていたんだろうが、あの話を聞いた後だとそんな気は起きない。

《ほう、少しは賢くなったではないか》

 うっせーや。

「座れ、リアス・グレモリー。一介の貴族令嬢が口を挟める話じゃない事くらい、わかるだろ」

「……ッ!?」

「彼の言う通りだ。座りなさい、リアス」

 慎から冷たい視線と言葉を向けられた部長は、サーゼクス様に促されて言葉も無く座り込む。

 弟分から向けられた態度がショックだったのだろう、(うつむ)いたまま『どうして……』とつぶやく部長の手を、俺は少しでも慰めになればという思いを込めて握りしめる。

 間違っても柔らかいとか、良い匂いだなんて思ってはいない。

《まったく締まらんな、お前は》

 仕方がないの、思春期の男の子なんだから! 

「先ほどのミカエルではないが、返答する前に何故そんな事を条件にするのかを聞いてもいいだろうか?」

 慎の方を見据えながら問い返すサーゼクス様。

「あんた等の人間蔑視(べっし)と扱いが、多神勢力の神々が三勢力を嫌う大きな理由の一つだからだよ」

 放たれた答えに三勢力の全員が言葉を発せられなかった。

 ……これって、喫茶店で言ってた話だよな。

「おい、慎。そりゃどういうこった?」

「おっちゃん。ここにいらっしゃる多神勢力の神々はな、自らの生み出した人間を我が子同然に愛しているんだよ。だからこそ、その人間を見下し粗末に扱うあんた等を許せないのさ。サーゼクス兄、グレイフィア姉さん」

 声を掛けられたサーゼクス様とグレイフィアさんが顔を上げた。

 サーゼクス様はともかくグレイフィアさんは、突然の指名に戸惑いを隠せないようだ。

「ミリキャスが日本の鬼に攫われて奴隷のように(あつか)われた挙句、化け物になって戻ってきたら、貴方達は許せるか?」

「……無理だ、許せるわけがない」

「……間違いなく攫った相手を八つ裂きにするでしょうね」

「じゃあ、親父。仮に俺が殺されたとして、殺した相手が『あなたの息子さんは我々にとって危険な力を持っていたから始末しました。分かってくれますよね』と友好の手を差し伸べてきたら、それを取るか?」

「取る訳がないだろう!!」

 慎のえげつない例えにサーゼクス様とグレイフィアさんは不快感をあらわにし、慎の親父さんは憤怒の表情で拳を机に叩き付ける。

 みんなが怒るのは当たり前だけど、これって堕天使や悪魔が人間にしてきた事なんだよな。

「三勢力は、今までそれと同じことを他の神話勢力に()いてきたんだよ。サーゼクス兄やセラフォルー姉さんは和平路線で手を差し伸べていたみたいだが、並行してそんな真似をされたら誰も応じるわけねえよ」 

 慎の放った冷たい言葉にこちらは誰も口を開けない。

「いまいち自覚が足りないみたいだから、改めて挙げて行こうか。あんた等三勢力は一部を除いて人間を下等生物と見下している。堕天使は危険という理由で神器保有者を抹殺するほか、有用な神器の摘出や研究の為の人体実験。天使は『聖剣計画』に代表されるように自身を信仰する者を兵力にするために人体改造を行い、教会の悪魔祓いと共に他の宗教の信者を邪教崇拝(すうはい)者と一方的に殺害している。悪魔も『悪魔の駒』で生み出される転生悪魔を『次世代の担い手』と称している割に、その扱いは酷くぞんざいだ。蔓延(まんえん)した貴族主義の所為で転生悪魔は純血悪魔より下等とされ、『悪魔の駒』を所有する貴族の(ほとん)どはレーティングゲームの駒か自身のステータスを飾るファッションの一部。酷い場合は情婦や性のはけ口とされる場合もある。さらに、その劣悪な環境により反逆した者や逃げ出した者は『はぐれ悪魔』のレッテルを貼られて討伐対象にされ、よしんば追手から逃げおおせたとしても『悪魔の駒』に刻まれた術式により身も心も化け物になる。異形となった彼らがどんな被害を及ぼすかは、言うまでもないな」

 ……アカン、これはアカン。

 もうこの時点でウチはお通夜モードだ。

 俺達眷属のテンションも最低だが、部長や支取会長、両陛下は顔色が紙みたいになってる。

 というか、改めて並べられると強烈すぎる。

 そりゃあ神様達も怒るワケだ。

「この前も日本の五大宗家直系の女性を、フォルネウス家のバカボンが転生悪魔にしやがった。しかもその女性と関係を持っておきながら、子供が出来たら堕胎を強要。逃げたらはぐれ悪魔扱いで刺客を放ちやがった。他にも神器持ちの日本人が事故ったのをいいことに、本人の承諾も無しに悪魔に転生させて奴隷扱いし、神器が防御系と分かればレーティングゲームで前線の弾除けにしたウァプラ家のクソ女も居たな。その人は、そんな生活に耐えかねて脱走したけど、『悪魔の駒』に込められた術式の所為で化け物になって、駒王町に住む小学生の女の子が犠牲になっちまった」

 出された事例が生々しすぎて言葉も出ない。

 俺達と扱いが天と地以上にあるじゃないか。

 部長も心当たりがあるのか『あの時の』って口を押えているし。

「知ってるか? 駒王番所の人間は、はぐれ悪魔をはじめとした裏の事件の被害者の家を説明して回ってるんだよ。はぐれ悪魔に喰われると死体が出ないから、犠牲者は行方不明という扱いになる。そうすると遺族は待ち続けちまうんだ、永久に帰ってこない被害者を。だから、故人が亡くなった事の説明と、護れなかった事を詫びに行くのさ」

 穏やかな口調とは裏腹にその内容は酷く重かった。

 じゃあ、レイナーレに殺されて悪魔にならなかったら、父さんや母さんは死んだ俺を待ち続けたってのか?

 帰ってくる事のない俺を待ち続ける二人の姿が頭に浮かんだ途端、吐き気がして思わず口を押えた。

 なんだよ、それ! 酷すぎるだろ!!

《落ち着け、相棒。奴の挙げている事もお前の事も、別に珍しくない世界中で起きている事だ。気にしていてはキリがないぞ》

 ふざけんなよ、人間は玩具(おもちゃ)じゃないんだぞ……。

「殺された女の子の事だけどな。その子の遺族に会いに行く時に俺も初めて同行したんだ。……本当に修羅場だったよ」

 その時の事を思い出しているのか、慎の顔が苦々しく歪む。

「母親は半狂乱で娘の名を叫んで、父親は涙を流しながら俺達に殴りかかってきた。……痛かったよ、相手はどこにでもいるサラリーマンだったのに。あれは娘を失ったあの人の痛みなんだろうな」

 そこまで言って、くたびれたようにため息をつく慎。

 その話が俺の両親に重なって耳を(ふさ)ぎたくなったが、必死に耐えた。

 悪魔になった以上、俺も無関係じゃないんだ。

 逃げるわけにはいかないよな。

《ふん……》

 俺達は元よりアザゼル総督やセラフォルー様も言葉を発っせない中、サーゼクス様がどこか戸惑いながらも口を開いた。

「君の言いたい事は良く分かった。しかし、『悪魔の駒』も転生悪魔も我々の種族の生存の為には不可欠な物なのは、君も承知しているはずだ」

「ああ。俺が挙げたような事は、世界中で起きてる珍しくもない事件だってこともな。けどよ、サーゼクス兄がそれを悪魔の生存の為に放置するっていうなら、俺も人間の生存の為に多神勢力が悪魔を滅ぼすのを見逃してもいいよな?」

 今度こそ、サーゼクス様は言葉を出せなかった。

 こっちに向いた目を見ればわかる。

 ────あいつはマジだ。

「勘違いしてる奴が多いけどな、俺の半分は人間なんだぞ。目の前でそんな真似されて平気な面してると思うのか?」

 そう言いながら威圧を掛けていた慎だが、こちらの意気が完全に消沈したのを確認すると、小さく息を付いて厳しかった表情を少し緩める。

「そもそも、転生悪魔の運用方法が根本的に間違ってんだよ」

「どういう事かな?」

「転生悪魔は悪魔という種族の個体減少の対抗策なんだろ? だったらなんで純血悪魔の下僕とか、レーティングゲームの駒なんてさせてんだよ。普通に種族増加に使えよ」

「だから我々は転生悪魔の数を増やす事で、悪魔の総数を増やそうとしているのだが」

「それだったら人間に寄生してんのも同然じゃねーか。それが多神勢力の不興を買ってるって今言ったとこだろ。そうじゃなくて、悪魔の伴侶になってもいいって人間に『悪魔の駒』を使って、そいつとの間に子供を作ったらいいんだよ」

 えっと、伴侶って結婚相手って意味だよな。

 て事はあれか? 部長みたいな悪魔の貴族の結婚相手に眷属を使えって言ってのか!? 

「慎君。それって、悪魔と人間が恋をしてって事だよね?」

「当たり前だろ。産む機械とか種馬なんて扱いにしたら、今なんて比じゃないくらい反発が来るわ。まあ、出会いのチャンスなんてそうそうないだろうから、有志(つの)ってお見合いみたいになるだろうけど。それで上手くいけば本人も合意の上だし、夫婦なんだから転生悪魔が蔑ろにされる事もない。さっきの事件を例に挙げるのは不謹慎だけど、出生率だって悪魔同士で作るよりよっぽど高いはずだから、少子化問題も解決だ」

 おおっ!  あいつ、転生悪魔の問題を一気に解決させやがった!!

 これが天才か!!

「でもさ、そう簡単に行くかな? 人間と悪魔なんて恋愛できなさそうだけど……」

「セラフォルー姉さん、誰を前にして言ってんだよ。俺と美朱は堕天使とのハーフで、見ての通り親父は超子煩悩だぞ。フェニックスの三男のライザー氏だって、眷属のユーベルーナ女史と結婚する事になってるし」

 会場の全員の視線が、美朱ちゃんを膝の上に乗せた親父さんに向く。

「こっちみんな!!」

 顔を真っ赤にしてガーッと喚く美朱ちゃんと、表情を緩ませてその頭を撫でる親父さん

 場違い感が凄いけど、この上ないほどに説得力あるわ。

 あと、ライザーはできちゃった婚だろ。

 それって人間社会じゃあ最悪の方法だからな。

 そう言えば、匙も会長とそれを狙ってるって言ってたけど、やらかしたらセラフォルー様に殺されるんじゃないか、あいつ。

「なるほど、確かに一理ある。しかし、残念ながらそれは今の悪魔社会では難しい。貴族の殆どは自身が純血悪魔である事を誇りとしている。だからこそ転生悪魔をそういった対象に見ようとしないし、一時の火遊びで子供が出来たとしてもそれを認知しようとはしない」

「そうかい。思い付きの案だからどう受け取るかはそっちの勝手だが、だからと言って条件を変えるつもりはないぞ」

「ねえ、本当にこの条件じゃないと駄目なの? 禁止じゃなくて段階的に減らしていくとかさ、少し緩めてくれるとこっちも飲めるんだけど」

「駄目だ。理由はさっき言っただろ」

「でも、こんな条件を実行に移したら、絶対に他の貴族が反発しちゃうわ。レーティングゲームだって機能しなくなるし、冥界の政治が立ち行かなくなっちゃう!」

「それをなんとかするのが、あんた等の仕事だろ。それとも、条件を蹴って多神連合と殺り合うか?」

 甘ったるい声で(すが)ろうとするセラフォルー様に、慎の声が一気に低くなる。

「俺の後ろを見てみろ。あそこにいる神様方はな、みんなあんた等の首を掻っ切りたいと思ってる。この会議の結果如何(いかん)じゃあ、明日にでも連合組んで冥界にカチコミ掛ける可能性だってあるんだ」

「明日まで悠長に待つか、虚け。お主が加勢せぬなら、日が昇る前に悪魔領の首都を落としてくれるわ」

「だとさ」

 猛獣みたいな笑みを浮かべたアナトとかいう女神の声に、他人事のように肩をすくめる慎。

 しかし、今日はマジに辛辣(しんらつ)だな、あいつ。

 もしかして、他の神様の目を気にしてるせいなのかな?

《それもあるだろうが半分は奴の本心だろう。気を付けろよ、相棒。このままだと三勢力は奴に見限られるぞ》

 しゃ、シャレになってねぇ……。

「どうして待ってくれないの!? 貴方の言う通り、不遇な扱いを受けてる転生悪魔がいるのは知ってる。私達もそれを変えようとがんばってるけど、古い貴族たちの考えを変えるのは時間がかかるの!」

「その間にまた貴族共がバカやらかしたりはぐれ悪魔が暴れる所為で、人間達や他の勢力に迷惑をかけるのか? 当然、天使や堕天使も今まで通りに地上で好き放題するんだろうな。それで、その尻拭いで俺が走り回るハメになるわけだ」

 皮肉げに口元を歪めた慎の全く笑っていない目に、セラフォルー様は言葉を飲み込む。

「いい加減にしてくれよ、マジで。俺がこの一か月、どれだけ三勢力のケツを拭いて回ったと思ってんだ。悪魔による他者の領土の不法占拠に、英国を追われて北欧に逃げた新教の信者による現地信仰への虐殺。堕天使は神器欲しさに村一つ壊滅させるし、行く先々ではぐれ悪魔が人間を襲ってる……!」

 当時の苦労を思い出しているのか、話す度に慎の放つプレッシャーが増していく。

「おい、クソ天使共」

「クソ……ッ!? 神の使徒たる私達へ冒涜にも程があります! 撤回なさい!!」

「やかましい。その綺麗な面がピカソにされたくなかったら、下らねえペラ回すんじゃねえ」

 抗議の声を上げるおっぱい天使さんを、一喝で黙らせる慎。

 なんかガラが悪くなってるぞ、あいつ。

「テメエらのクソ信者共が現地の信者を殺りやがった所為でな、地域の安全を守る道祖神(どうそしん)(たた)り神に化けちまったんだよ。そいつが周辺に疫病と呪いを振り撒いたお陰で、地域住民に数千人単位で犠牲者が出たし、土地は呪詛に汚染されて異界に堕ちる寸前だった。鎮めて浄化するのに、どんだけ手間がかかったと思ってやがる」

「あの時は本当に助かったわい。並の神では呪詛に汚染されて堕ちてしまうからの。それに日本神道の浄化法を見る事も出来たしな」

「……教会の信者はどうなったのですか?」

「これだけの迷惑をかけておいて、自分の信者の心配か。皆、地獄の女王であるヘルの元に行ったわ。今ごろガルムの餌にでもなっとるんじゃろ」

 髭を扱きながら笑うオーディンを睨む天使達。

 いや、あんた等が悪い、これはあんた等が悪いぞぉ!!

「次に堕天使。テメエ等が下の手綱握ってないせいで、下級のアホがインドの農村一つ消したんだよ。しかも死体の処理もしないで消えやがって。こっちが着いた時には殺された人の怨霊が神器を核に集まって、レギオンに成長してたんだぞ。現地の僧侶さんも何人か呪われたし、(はら)うのに滅茶苦茶苦労したわ」

「うむ。感謝するぞ、小僧」

「あの時は世話を掛けた。其方がいなければ、我らが地上に降り立たねばならぬところであった」

「……すまん。マジで末端まで指示を徹底させる。あと当面の間、下の奴は地上には出さない」

 14歳くらいの態度Lな女の子を横に座らせたイケメンが二人して慎に声を掛け、アザゼル総督が頭を下げる。

 あれってインドの神様なのか?

《シヴァとパールヴァティだな。シヴァは破壊神であり、サーゼクスを上回る程の強者だ》

 ……破壊神っスか。

 イケメン滅びろって思ったのがバレてませんように。

「最後に悪魔。不法占拠やはぐれ悪魔もそうだけど、ちょっと貴族の動きを監視しとけよ。ガミジン家の馬鹿が、アルケイデスの転生体の嫁を無理やり悪魔にしようとしたんだぞ。しかもその嫁さんがメガラの転生だったからアルケイデスのブチキレ方がトンデモ無くて、その馬鹿を殴り殺した後も住んでた山を更地になるまで暴れてるしよ。嫁さんの浄化が失敗してたら、あの人ハーデス様のところを通って冥界にカチ込んでたぞ」

「あの時はご苦労であった。あ奴は前世で最初の妻と悲劇的な別れをしているからな。神の部分と一緒に弟から受け継いだ色ボケがオリュンポスに昇った今生こそは、幸せになって欲しいと思って居ったのだ」 

 めっちゃおっかないドクロの人が、目の穴をピカピカさせながら慎にねぎらいの言葉を掛けてる。

 ところで、アルケイデスって誰?

《ヘラクレスの事だ。アルケイデスは奴の幼名だな》

 ヘラクレス!? 超メジャーな英雄じゃねえか!

 そんなんが冥界に来たらお手上げだわ、さすがに沖田総司じゃヘラクレスに勝てんだろうし。

 つうか、本当にイラン事しかしてないな、ウチの勢力。

 けど、なんで慎ばっかりが後始末してんだ?

 こっちの責任者に言えば、誰か派遣しただろうに。

《他の神話の奴等は、三勢力の者を領地に入れたくなかったんだろうな。姫島慎が動いた事に関しては、日本神話の外交戦略と三勢力のイメージダウンを嫌う奴の思惑が噛みあった結果だろう》

 ……もう言葉もねえよ。

 そりゃあ、こんな無茶な要求するわ。

「そろそろ答えを聞こうか。条件を飲むのか、飲まないのか?」

「……」

 決断を迫る慎に、サーゼクス様は顔を俯かせて答えを返さない。

「サーゼクス。こいつはお前だけじゃなくて、三勢力全体に関わる事なんだぞ。蹴るわけにはいかねえだろ」

「こっちも相応の条件を飲むのです。そちらの態度でこの話が流れるのなら、同盟は破棄させてもらいますよ」

「……わかった。こちらも条件を飲ませてもらう」

 慎に加えて天使・堕天使のトップからも迫られたサーゼクス様は、言葉の端に苦渋を(にじ)ませながら同意した。

「さて、少々強引なところはあったがこれで全ての合意が得られたわけだ」

 いや、少々どころじゃねーよ。

 ほとんど脅しだったじゃねえか。

 気持ちは分からんでもないが、キッツい追い込みだったと思うぞ。

「皆様、お待たせしました。思ったよりあちらの決断が遅かったもので、お時間を取らせてしまい申し訳ありません」

「構わん。思ったよりも面白いモノが見れたからな」

「左様。奪われた宝物の件もそうだが、民について我らの言いたい事を言ってくれたのだ。奴らのしかめっ面を見れて溜飲が下がる思いであったぞ」

「ありがとうございます。ところで、彼らが条件を飲む事で私は有事の際にはむこうに付く事になったのですが、本心を言わせてもらえば戦争なんて御免です。そこで、私としてはここにいらっしゃる多神勢力の皆様には『禍の団』への対処が終わるまで、三勢力への不干渉をお願いしたいのです」

 再び会場の空気が凍った。

 俺達もそうだが、神様達の方にも困惑の色が見える。

 それはそうだ。

 さっきまであれほど三勢力に厳しい言葉をぶつけ、自身の要求を飲ませてきた慎が今度は俺達を(かば)うような事を言ってるんだから。

 俺が向こうでも『なに考えてんだ!?』って思うだろう。

「ふむ。お主らしからぬ態度から何かあると思ったが、こう来たか」

「さすがはオーディン様。お見通しでしたか」

「当たり前じゃ。20も生きとらん小僧に化かし合いで負けるほど耄碌(もうろく)しとらんわ。」

「先ほどの三勢力への態度も我々に利の有る条件を飲ませたのも、すべてはこの為か」

「仕方あるまい。お主が慎殿に決断を迫った時点で、答えはどうあれ我等は戦に向けて動かねばらない状況になったのじゃ。それを避ける提案など、向こうに相応の痛みを強いてからでなければ挙げる事も出来まい」

「不細工な真似を見せて申し訳ありません、ダグザ様。ですが、この足りない頭では戦争を回避する方法は、この位しか思いつかなかったもので」

 ちょっと待て!

 じゃあ、さっきまでのキツイ態度は全部フリだったって事かよ!?

 いやいや、落ち着け。

 さっきドライグが半分本気って言ってたじゃねえか。

「して、不干渉の手土産は彼奴等に飲ませた条件だけかな?」

「いいえ。皆様の怒りを思えば、あれだけでは足りないでしょう」

 アメン・ラーの言葉を首を振って否定すると、慎は自分の席に戻って神様達を見据えた。

「ですので、私の提案に応じてくださる方にはその地域への対『禍の団』の応援と、オーフィス出現時の対処をお約束します。あと、帰還するであろう転生悪魔の対処も請け負わせていただきます」

 慎の言葉に神様側が大きく騒めく。

 これって『禍の団』関係に限って、慎があそこの神様の助っ人になるって事だよな。

《破格の条件だな。世界最強の男が増援に来ることもそうだが、一度オーフィスを下した奴がつく事で、どれだけ優勢になった場合でも、かの龍神の影を警戒して手を緩める必要が無い》

 でも、あそこにいる神様ってかなりの数だぞ。

 大丈夫かよ、あいつ、また世界を飛び回る事になるんじゃないか?

「あの子ったら、またあんな無茶を……」

「仕方ないよ、慎兄だもん」 

「慎……すまん」 

 声の方を見れば、朱乃さんと美朱ちゃんは頭を抱えて親父さんは涙ながらに謝ってた。

 ……そうだよな、家族からしたら堪らんよな。

 聖剣事件の時もそうだけど、三勢力ってあいつに助けてもらってばっかりじゃねえか?

 なんかこの頃、魔王様への尊敬の気持ちがどんどん目減りしてるんだけど。

《奴等は戦闘力を買われて魔王の座を継承したからな、政治力はそれほどでもないぞ》

 マジか! それってこの状況だと最悪なのでは……。

 こりゃあ、これからも世界情勢に目を光らせとかないとヤバいな。

 気づけば滅亡ルートに乗ってました、なんてシャレにならん。

「ところで転生悪魔の対処と言ったが、どのように対応をするつもりかな?」

「その件につきましては日本神話の機密も関係しますので、詳細は後ほど天照様にご確認ください。なお、私が対処の際に使う方法は日本神話が生み出した物ですので、処置を受けられた際は天照様に一言お礼を言っていただけると助かります」

「応援と言ったが、襲撃があってからお主に連絡を取っても間に合わんのではないか?」

「大丈夫です。私は瞬間移動を修得していますので、連絡があればすぐに参上いたしますよ」

 おいおい、なんかまたトンデモない事を言い始めたぞ、あいつ。

「瞬間移動? 転移ではないのかね?」

「ええ。氣を利用した、術というよりは技ですね。ですので、転移阻害の結界等が張られた場所でも問題なく移動できます」

 『では、一つ実践を』と言いながら額に指を当てると、いきなり慎の姿は消えた。

 突然の事にみんなが唖然とする中、再び現れる慎。

 その手には先程まではなかった荷物が乗っている。

「オーディン様、ロスヴァイセ女史からルーペを受け取ってまいりました。ダグザ様にはダヌー様より夜食の粥を、ハーデス様には奥方様からのお土産希望リストです」

「むぅ……、確かにこれは儂のルーペじゃわい」

「母上、何故これを小僧に持たせたのだ……」

「ペルセポネよ……」

 手渡された荷物に三者三様のリアクションを示す神様達。

 まさか、あの神様達の本拠地に行ってきたのか!?

「まったく、『無限』殿には驚かされてばかりだな。其方には大きな恩がある以上、我はその提案を飲んでも良いと思っている。しかし、その前に一つ聞かせてほしい」

「何でしょうか、アメン様」

「三勢力に飲ませた条件、今のままでは口約束にすぎん。奴らが約定を破った際にはどうする?」

「その時は……俺の手で三勢力を潰します」

 エジプトの主神の太陽色の瞳を見つめ返しながら、慎は静かな口調ではっきりとその言葉を口にした。

「其方が身を挺して守ろうとしてきた者達、それを己が手で討つというのか?」

「はい。今回、俺は各勢力の皆さんに相当な無茶を要求しています。天照様やオーディン様の様に自領を護る為に機を狙っている方も、アメン様やアナト様のように三勢力に多大な恨みを持つ方もいるでしょう。そんな方々にこちらの都合で時間をよこせと言っているのです。その条件で義理を欠くような真似をするのなら、俺の手でケジメを付けます」

 慎とアメン・ラーの対話に、俺達は言葉を出すことが出来なかった。

 威圧なんて一切感じなかったけど、あいつの背中からは本気なんだって言うのは痛い位に分かる何かを感じた。

≪あれが覚悟というものだ。公言までしたという事は、三勢力の内一つでも条件を反故にしたら奴は本気で潰しにかかるな≫

 あそこまで身体を張ってくれてるあいつの為にも、そうならない事を祈るわ、マジで。

「───いいだろう。我々エジプト神話は貴殿の案を受け入れよう」

「我等アース神族もお主の話に乗ろう。『禍の団』の問題がある以上、お主を敵に回して二面戦争などやってられんからの」

「我々ダーナ神族も乗ってやる。だが、奴らが妙な真似をすれば即座に破棄させてもらうぞ」

 アメン・ラーが慎の話に同意すると、オーディンを初め他の神々も声を上げる。

 その光景に俺は全身の力が抜けるのを感じた。

 つうか、三勢力の同盟会談だったのに、どうしてこんな話になったんだよ。

《ダグザが奴に三勢力に与するか否かを聞いたからだろうな》

 ……そうだったなぁ。

 あれって、YESでもNOでも三勢力を責める理由になったんだよなぁ。

《そうだな。付くのなら奴の存在が危機感をあおって多神勢力は連合を作るだろうし、付かなければ恨みを持つ奴等がこれ幸いと攻めて来ただろう》

 詰んでるじゃないですかやだー!!

《ダーナ神族は聖剣事件の時から、お前らの首を虎視眈々と狙っているからな。意図的なところもあったのかもしれん》

 うわ、俺達の陣営恨み買いすぎ……。

 ともあれ、これで話も終わりだ。

 もう金輪際こんな会議には参加せんぞ。

《まあ、お前は今後の身の振り方でも考えておけ。迷いを抱えたままやっていけるほど、この世界は甘くないぞ》

 わかってるよ。

 ちょうど学校も夏休みに入るし、ゆっくり考える事にするわ。

 会場内の空気も緩まり、流れ解散になったのかアナトというおっかない女神が出て行くのが見えた。

 こちらは部長の指示が無ければ引き上げる事が出来ないので眠っているアーシアの様子を見ていると、視界の隅に慎が銀髪のイケメンと向き合っているの見えた。

 ……堕天使側の関係者だったと思うが、誰だったっけ?

《奴は今代の白龍皇だ。お前のライバルになる男なんだから、顔ぐらい覚えておけ》

 知らんがな。

 俺に必要なのは女の恋人であって、断じて男のライバルではない。

《畜生……。何でこんな奴が俺の相棒なんだ》

 黙らっしゃい。

 巡り合わせに不満があるのはお互い様じゃい。

 俺だってお前を宿してなかったら、殺される事も無く平穏無事に暮らしていけたんだ。

《その場合、そこのシスターやメイドとは知り合わなかったがな》

 うおぉ……、何というジレンマ。

「俺と闘え、慎!!」

 突然響いた声に目を向けると、部屋の中央で慎を指差してドヤ顔を浮かべる、白龍皇とかいうイケメンの姿が。

 ……何事?




 ここまで読んで下さった方、ありがとうございます。

 拙作の中でも恐らく最もアンチ表現が多い回だと思います。

 三大勢力、その指導者のファンの方には不快な思いをさせてしまい、申し訳ありません。
 
 正直、難産でした。

 慎の今後に関して、『三大勢力に手を貸すのか』という課題はどうしても避けて通れないもので、彼の身の振り方によっては多神連合結成やメガテンの世界張りの全面戦争という可能性が十分にありました。

 ぶっちゃけ、慎が三大勢力に協力しないというルートも考えたのですが、違和感を感じてボツにしました。

 さて、次回は空気の読めないと感想でボロクソな白龍皇のターンです。
 閑話1から出番が無かった彼がどれほどパワーアップしているでしょうか。

 では今回の用語集です

〉明訓(出典 漫画『ドカベン』)

 正式名称は明訓高等学校。
 架空の高校で、作者の水島新司が入学を果たせなかった新潟明訓高等学校が名前の由来。

 神奈川県にある私立校であり、主人公である山田太郎ほかチームメイトの母校である。
 高校野球の強豪校であり、山田在籍時には甲子園に5回出場4回優勝と化け物じみた成績を残している。

〉殿馬(出典 漫画『ドカベン』)

 ドカベンの登場人物で明訓高校野球部員。
 フルネームは殿馬 一人。
 ポジションは二塁手で打順は2番。音楽センスを活かしたリズム打法を得意とし、奇想天外な打法で放つ『秘打』が代名詞。
 中の人は初代スネ夫。

〉ヴァハグン(出典 アルメニア神話)

 アルメニアに古代から語り継がれる太陽と火と戦いの神。

 アルメニア神話は、キリスト教が入る以前の古代アルメニア(メソポタミアの一部であるアルメニア高原を中心とする地域)で信仰されていた神話であり、彼はギリシャ神話のヘラクレスと同一視されることもある。

 エウヘメリズム信仰(王や英雄といった偉人が死後に祭り上げられたのが神の起源であるとする説)では、全ての神は元は人間であり、ヴァハグンも同様に紀元前6世紀のエルワンド王の息子でバブとティランの兄弟、アルメニアの王位継承者として記録されている。

 歴史家モーセス・ホレナツィのアルメニア史には、彼の誕生とドラゴン(ヴィシャップ)殺しの偉業を謳った歌が収録されている

〉グラム(出典 北欧神話)

 北欧神話に登場する剣。その名は古ノルド語で『怒り』を意味する。
 鉄や石を容易く切り裂く程の切れ味を持ち、ファフニールを討った。
 『ニーベルンゲンの歌』のバルムンク、『ニーベルングの指環』のノートゥングのモデルとされる。

〉ティルヴィング(出典 北欧神話)

 北欧神話の古エッダ、サガに登場する魔剣。
 オーディンの血を引く王、スウァフルラーメが二人のドワーフを捕らえて助命の大小として造らせた剣で、黄金の柄と鉄を切り裂く切れ味を持ち、狙った相手を逃がさず錆びる事が無い。
 しかし制作者のかけた呪いにより『悪しき望みを3度は叶えるが持ち主にも破滅をもたらす』と言われている。

〉ダインスレイブ(出典 北欧神話)

 北欧神話に登場する魔剣のひとつ。
 その名は『ダーインの遺産』を意味し、ファフニールの貯め込んでいた財宝の中にあったと言われている。
 『一度鞘から抜けば返り血を浴びるまで鞘に戻らず、所有者に破滅を齎す』という呪いがかけられた、北欧神話に登場する『呪われた道具』の中でも筆頭格の魔剣。
 これを所持したヘグニは兄と共に破滅の道を歩んでいる。

〉天叢雲剣(出典 日本神話)

 日本における「三種の神器」と称される神宝のひとつに数えられる御剣。
 別名草薙剣とも呼ばれ、八尺瓊勾玉・八咫鏡と並んで「三種の神器」と称されている。
 素戔嗚尊が八岐大蛇を討伐した際に尾から出てきたと言われる神剣で、源平合戦の最後の決戦である壇ノ浦の戦のおりに失われたと言われている。

〉ヤグルシ(出典 ウリガット神話) 

 嵐の神・バアルが持つ2本の棍棒の一振り。
 もう一振りの名はアイムール。
 海の神ヤムを倒すために、工芸神コシャル・ハシスが与えた。
 ヤグルシの意味は『追放』アイムールの意味は『撃退』であり、ヤムにトドメを刺した。

〉ペラを回す(出典 刑務所用語)
 刑務所用語で『しゃべる』『会話をする』という意味。
 同じ意味で『アゴを回す』という言い回しもある。

〉道祖神(出典 民俗信仰)
 集落の境や村の中心、村内と村外の境界や道の辻、三叉路などに主に石碑や石像の形態で祀られる神。
 村の守り神、子孫繁栄、近世では旅や交通安全の神として信仰されている。

〉祟り神(出典 日本神道)

 荒御霊であり畏怖され忌避されるものであるが、手厚く祀りあげることで強力な守護神となると信仰される神々。
 また、恩恵をうけるも災厄がふりかかるも信仰次第とされる。
 その性質から、総じて信仰は手厚く大きなものとなる傾向があり、創建された分社も数多い。
 代表的な祟り神としては八岐大蛇や菅原道真公、平将門公がある。

〉レギオン(出典 聖書)

 人間に取り憑いていたが、イエスによって追い払われた悪霊の一群。
 『マタイによる福音書』に登場し、この悪霊に取りつかれた男は墓場に住み、裸で歩き回って昼も夜も大声で叫びながら自分の体を石で切りつけたという。
 また、鎖や足かせも引きちぎるほどの力を持っていた。
 イエスによりその男から出た後は二千頭ほどの豚の群れに取りつき、崖から落ちて溺れ死んでしまった。
 同書ではキリストの問いかけに、大勢なのでレギオンの名を名乗っている。

〉アルケイデス(出典 ギリシャ神話)

 ギリシャの大英雄ヘラクレスの幼名。
 12の功業を行う際、デルポイの巫女から『ヘラの栄光』を意味するヘラクレスの名で呼ばれるまでは、彼はこの名を名乗っていた。


〉メガラ(出典 ギリシャ神話)

 テーバイの王クレオーンの娘であり、ヘラクレスの最初の妻。
 ヘラクレスとの間に3人の息子を設けるが、女神ヘラの呪いにより狂気に陥ったヘラクレスにより、三人の息子共々殺害された。
 これがヘラクレスが12の試練を行うきっかけになったと言われている。

 今回はここまでとさせていただきます。
 また次回でお会いしましょう。



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