MUGENと共に   作:アキ山

31 / 59
 本編の合間に思いついた話です。
 時期的には冥界から帰った後、オーフィス戦の前になります。


閑話『駒王神社業務日誌』

 駒王神社の社務所の机に、使い込まれた日記帳が一つ。

 表題には『駒王神社業務日誌』と記されている。

 

 

 

 

 6月●日(晴)

 

 頭が痛いし胃も痛い。

 今日、出張を終えて帰って来ると、鳥居のところで(うずくま)っている身重の悪魔を発見した。

 黒髪に十二分に美人と言える東洋人風の風貌、巫女服を着ている事から転生悪魔とは当たりを付けたが、はぐれ悪魔である可能性も否めない。

 万が一の事も考えて警戒しながら進んでいると、こちらを発見した相手に土下座で命乞いされた。

 不審者とは言え身重の女にここまでされては流石に手は出せず、取り敢えず社務所で事情を聞く事に。

 正直、ここで手を出さなったのは本当に正解だったと思う。

 彼女の名は櫛橋青奈(くしはしせいな)

 五大宗家が一つ、東の守護を司る神獣『青龍』の力を受け継ぐ櫛橋家。

 その宗家直系の令嬢だったらしい。

 何故過去形なのかというと、旧七十二柱30位フォルネウス家の次期当主ゼーロス・フォルネウスに誘惑され、転生悪魔になったからだ。

 なんでも呪術への高い適性があったものの、当主候補である他の兄弟に比べて能力が劣っていた彼女は、いつ見込み無しの烙印を押されて家から捨てられるかと常に怯えていたらしい。

 そんな中でゼーロス・フォルネウスと偶然出会い、彼に惹かれた青奈女史は悪魔の駒を受け入れて櫛橋家を出奔(しゅっぽん)

 しかし、神器も持たず呪術の修行も中途半端だった彼女は、与えられた『僧侶』としての役割を十全にこなすことが出来なかった。

 レーティングゲームの中で捨て駒として囮や斥候(せっこう)を命じられる一方、ゼーロスの情婦でもあった彼女は彼の子を身籠(みごも)ってしまう。

 ゼーロスを愛していた青奈女史は喜びと共に奴にこの事を伝える。

 しかし、返って来たのは嫌悪の表情浮かべたゼーロスの『堕胎(だたい)しろ』という命令だった。

 この一言でゼーロスが己を愛していない事を悟った青奈女史は、万が一の為に隠し持っていた転移符を使ってフォルネウス家を脱出。

 偶然、駒王町に転移した彼女は櫛橋家に帰る事も出来ず、ウチの前で途方に暮れているところを俺に見つかったらしい。

 拾った女性は核弾頭付きの地雷だったでござる。

 日本から立ち退かない不法滞在悪魔やはぐれ悪魔問題でガッツリ悪魔へのヘイトが溜まっているのに、なんでこんな不祥事が起きるのか……。

 天照様に報告したら、爺ちゃんに相談しよう。

 

 6月■日(雨)

 

 爺ちゃんが青奈女史と顔見知りだった件。

 昨日、爺ちゃんに連絡したところ、明日(今日の事だ)朝一で迎えを寄越すから、青奈女史を連れてこいと返答があった。

 とはいえ、鍛錬を休まず行う。

 日々の積み重ねこそが強さに繋がるのだ。

 まあ、時間が無いので今日も『狂ランク千人組み手』なんだが。

 で、本日の戦果。

 

 対戦相手:ベジータ

 

 ノーマルモード相手に10倍界王拳で必死に食らいつく。➡ ベジータの忍耐が限界突破➡ これがスーパーベジータだぁぁ!!➡ ワンパンであべしっ!?

 

 うーむ、まだまだ戦闘民族の域には達していないらしい。

 超サイヤ人相手とはいえ、一撃死とは格好が悪すぎる。

 精進せねば……。

 

 シャワーで血とか体の中の内容物を洗い流し、身支度を整えたところで爺ちゃんの使いが到着。

 姫島の別荘に着いた俺達を迎えたのは爺ちゃんと婆ちゃん、当主の朱雀(すざく)さんだった。

 聞けば、青奈女史と朱雀さんは幼馴染の親友という間柄だそうな。

 涙ながらに再会を喜ぶ二人を他所に、爺ちゃんと青奈女史の今後について話し合った。

 俺の相談を受けた後、爺ちゃんは青奈女史と櫛橋家について調べたそうなんだが、なんと数年前に青奈女史の死亡届が出されていたらしい。

 勘当(かんどう)を通り越して死亡届とか、旧家って怖え。

 しかし、これには参った。

 青奈女史は公的には死人という事になる。

 腹の中に子供がいるのに、現状では病院に掛かる事も出来やしない。

 内心頭を抱えながらも青奈女史の意見を聞いてみると、彼女は冥界に帰らずに日本で暮らしたいらしい。

 五大宗家同士のしがらみで姫島では青奈女史は預かれないらしいので、取り敢えず爺ちゃんが死亡届の取り消しと戸籍回復の法的手続きを行い、その間は俺のところに来てもらう事になった。

 まあ、ウチは表向きには姫島と関係ないしフォルネウス家が追手を差し向けてきた場合、こちらで保護したほうが安全だろう。

 帰り際に朱雀さんから迷惑をかけて申し訳ないと頭を下げられたので、気にするなと言っておいた。

 巻き込んだのはこちらなんだし、この程度は請け負わねばなるまい。

 

 6月●×日(晴)

 

 本日の千人組み手。

 対戦相手:キングギドラ

 12倍に限界が上がった界王拳をフルに使って狂雷迅撃掌を放つが、首の鱗が2、3枚剥がれただけで終了。

 奴さんは痒そうに隣の首でカリカリ搔いてました。

 秘奥義とはいったい……。

 その後、真ん中の首に噛みつきからのゼロ距離引力光線でティウンティウンした。

 

 うん、体格差って偉大だよね。

 対抗するにはサイズ補正無視が必要みたいだ。

 スパロボのキャラクターなら持ってるかもしれんので、当たってみるか。

 

 先日からウチの居候になった青奈女史。

 その境遇と五大宗家の事を伏せているお陰で、ウチの女性陣との仲は良好である。

 黙っておくわけにもいかないのでリアス姉にこの事を報告したところ、自分が対処するから引き渡せと言ってきたが拒否した。 

 リアス姉、聖剣事件の時に交わした条約で、日本にいる転生悪魔の処遇は日本神話が管理することになっているのだよ。 

 

 青奈女史に関してだが、日本で生きていく以上『駒落とし』で人間に戻るべきなのだが、生憎と彼女は身重の体である。

 一から肉体を再構成するあの術式を、何の準備も無しに妊婦に掛けるのは危険が大きすぎる。

 ある程度目途が立つまでは保留すべきだろう。

 

 6月●■日(曇り)

 

 本日の千人組み手。

 対戦相手:トキ

 

 ジョインジョイントキィデデデデ ザタイムオブレトビューション バトーワンデッサイダデステニー

 ナギッペシペシナギッペシペシハァーンナギッハァーンテンショーヒャクレツナギッカクゴォ

 ゲキリュウデハカテヌナギッナギッゲキリュウニゲキリュウニミヲマカセドウカナギッカクゴーハァーンテンショウヒャクレツケンナギッハアアアアキィーン

 テーレッテーホクトウジョーハガンケンハァーンFATAL K.O. セメテイタミヲシラズニヤスラカニシヌガヨイ ウィーントキィ (パーフェクト)

 

 ……何が何だか分からん内にボコボコにされたうえ、最後は有情破顔拳で『チニャッ!?』ってなった。

 あれが北斗神拳。

 あれだけ攻撃しといて気配を全く感じないとか、理不尽にも程があるだろ。

 ていうかアへ顔晒して爆死とかナイワー。

 秘孔には氣脈も関連しているようだし、早いとこ秘孔封じの方法を考えねば……。

 

 明日から地上げの為に遠野へ出張である。 

 なんでも悪魔に座敷童(ざしきわらし)(とら)われているとか。

 こっちの事もあるし、早急にカタをつかねばなるまい。

 青奈女史に関しては玉藻と美朱に任せておいたので心配ないと思う。

 あと、黒歌からはぐれ悪魔になった際の情報を聞いとかなきゃな。

 

 6月●◇日(雨)

 

 緊急の呼び出しの為、日誌は記載できず。 

 詳細は事が落ち着いてから。

 

 6月●☆日(雨)

 

 本日の千人組み手。

 対戦相手:ARCHETYPE:EARTH

 良い子のみんな。

 生き物をいきなり真空状態に放り込むと、その健康に多大な悪影響を及ぼしてしまうから、絶対にやってはいけない。

 お兄さんとの約束だ!

 

 接近戦を挑もうとしたら、いきなり目の前に真空の断層が出てきたでござる。

 さすがの俺も、生身で宇宙空間と同じ環境では生きられない。 

 前回のトキと同じく爆発オチなんてサイテー!

 ていうか、アーキタイプ・アースって誰だよ!?

 

 愚痴はこの辺にして先日起こった事を纏めよう。

 遠野への出張は特に問題なかった。

 座敷童の能力はその家に富と幸運を与える事だ。

 戦闘に関する付加は無かったので、舞空術で不法滞在している悪魔のヤサまで行って頭上から強襲。

 相手がアクションを起こす前に叩き潰した。

 助けた座敷童から『礼としてお主の家に憑いてやろうか?』と言われたが、故郷から引き離すのも悪いしこちらだと荒事に巻き込まれるので、やんわりと辞退しておいた。

 で、駒王町に帰って来るとすぐに少彦名(すくなひこな)様に番所に来るように言われた。

 なんでも高天原の指示ではぐれ悪魔を捕まえているので、そいつに駒落としをかけてほしいとの事。

 少彦名様を伴って番所の地下牢に行くと、(あり)人間みたいなのが鎖につながれていた。

 相手が抵抗しない様に魔のショーグン・クローを掛けつつ『駒落とし』開始。

 この件は高天原が計画している『転生悪魔救済策』の一環なんだろう。

 しかし、ここまで変質した者が元に戻るのかと疑問に思っていたが、そんな懸念は無用とばかりに施術は成功。

 蟻人間は30代くらいの平凡な日本人の男性へと戻った。

 男は初めは何が起こったのか理解できない様だったが、自身の状態を認識すると(かたわ)らに落ちていた兵士の駒を思い切り踏み付けた。

 鬼気迫る表情で自身の主だった悪魔や同僚への罵倒を叫びながら、親の仇の様に何度も何度も悪魔の駒を踏みつける男。

 駒が耐えられずに壊れると、彼はその場に崩れ落ちて地下牢全体に響く程の大声で号泣し始めた。

 その様子によほどの事情があるのだろうと判断した俺達は、彼が落ち着くのを待って事情を聞くことにした。

 応接室で彼から聞いた話はこうだ。

 男性は東京に住む普通のサラリーマンだったが、ある時巻き込まれた交通事故で致命傷を負った。

 自身の死を自覚していた彼は観念して意識を手放したのだが、次に目覚めると石造りの牢屋の中だった。

 状況の理解できない男にウァプラという家名の悪魔を名乗る女は、彼が悪魔に転生した事を伝えて下僕となる事を強要してきた。

 男性は当初拒否していたのだが、女とその部下から与えられる私刑に耐えられずに嫌々ながら承諾。

 牢から出たと思ったら、今度は自身に神器がある事を教えられ、それを覚醒させるために無茶な訓練を強いられた。

 命からがら神器『闇夜の大盾(ナイト・リフレクション)』に目覚めてみれば、防御系の神器という事でレーティングゲームでは前線の弾除け扱い。

 あげく新参者という理由で主や眷属仲間からはもちろん、ウァプラ家の家臣からも虐げられる日々。

 そんな扱いに耐えかねてウァプラ家を脱走した男性は、死ぬ思いで日本へ帰りつくことが出来た。  

 しかし、彼の不幸はそこで終わりではなかった。

 地上に辿り着いてすぐ、男性は自身の異常に気が付いた。

 身体は指先から肘までが甲殻に覆われたおぞましいモノに変化し、道行く人を見る度に異常なまでの食欲が湧くようになっていたのだ。

 襲い来る体と心の変化に怯えながら各地を転々する男性。

 だが、ホームレス同然の日々と異形の者へと近づいていく身体に、耐えようとする理性も擦り切れていき、駒王町に着いたのを最後に身も心も化け物になり果ててしまったそうだ。

 ここまで語り終えた男性は久延毘古(くえびこ)様と少彦名様に(こうべ)を垂れ、懺悔をするかのように言葉を絞り出した。

 『化け物になってから、女の子を一人殺めてしまった』と。

 涙ながらの言葉と共に差し出した物は小学生の着ける名札。

 そして、この子の両親に謝罪をして然るべき場所で罪を償いたいと慟哭する男に、俺を含めた番所の面子はかける言葉を持たなかった。

 その後、(ふみ)さんの情報検索によって被害者の自宅が分かったので、俺と少彦名様、久延毘古様は男の謝罪に同行した。

 今までもこういった事はあったのだが『子供は見る必要はない』と、付いて行くことは許可されなかったのだ。

 ただ、むこうで見た物はそれはもう酷いモノだった。

 娘さんの名前を呼びながら半狂乱で泣き叫ぶ母親に、土下座していた男に馬乗りになって、涙と共に殴り続ける父親。

 普通なら信じない裏の世界の荒唐無稽(こうとうむけい)な話も、久延毘古様達の異様が証拠となって受け入れられてしまった。

 俺も父親を止めようとした時と、監査官として謝罪した時に殴られた。

 肉体的には全く効かないはずなのに、あの拳は酷く痛かった。

 久延毘古様達が俺等年少組を連れて行かなかった理由が解ったような気がした。

 その後、被害者宅を離れた男は腫れ上がった顔のまま警察署に足を運んだ。

 少彦名様が言うには、裏の事件なので立件は難しいらしい。

 それを聞いた男は、有罪無罪に関わらず出家して生涯被害者を弔うつもりだと言っていた。

 本当に、後味が悪い事件だった。

 

 6月●@日(晴)

 

 本日の千人組み手。

 対戦相手:バルバトス・ゲーティア

 昨日の事を引きずって凹んでいたメンタルごと、三連殺からワールド・デストロイヤーで吹っ飛ばされました。

 ありがとう、CV若本。

 お陰で素早く立ち直ることが出来ました。

 

 少年誌の不良漫画にボコボコにされて立ち直るってシチュエーションがあるが、自分が体験するとは思わなかった。

 まあ、こっちはボコボコどころか塵も残さず消し飛ばされたんですが。

 

 さて、今日は朝一で番所に足を運んだ。

 理由は黒歌からはぐれ悪魔についての情報を得るためだ。

 昨日は聞く機会がなかったが、男の話を聞いて一つ疑問に思う事があった。

 それは『同じはぐれ悪魔なのに、何故黒歌は異形にならなかったのか』だ。

 猫魈(ねこしょう)の持つ種族故の特性か、もしくはあいつが仙術と呼んでいる氣功術の賜物(たまもの)か。

 恐らくはこのどちらかだろう。

 さて、件の黒歌(現在の偽名は美依(みい))に問いただしたところ、答えはやはり氣功術だった。

 黒歌曰く、悪魔の駒には受領する際に所有者の魔力が登録されており、眷属の体内に埋め込んだ後も所有者と駒は魔力で(つな)がっているらしい。

 そして所有者の魔力が途切れると駒の内部にある術式が起動し、宿主の体を侵食して化け物に変えてしまうらしい。

 黒歌は内氣功の効果によって浸食を抑えながら逃亡生活を続け、駒を摘出する手段を探していたらしい。

 ちなみにこの情報は、駒を解析していた堕天使の施設から仕入れたものらしい。

 なるほど。

 『駒落とし』の源も氣である事を思えば、関係があるのかもしれん。

 

 黒歌の話が本当ならば、青奈女史の中にある悪魔の駒を放っておくわけにはいかない。

 異形化が始まって『偽典(ぎてん)・女神転生』屈指のトラウマである母子合体悪魔みたいなものになられらたら、こっちの精神がマッハだ。

 とはいえ、このまま取り出せば青奈女史はともかく、魂と肉体の形が決定していないお腹の子の命が保証できない。

 ……これは天照様に一肌脱いでもらう必要があるか。

 ここ最近ブラック企業も真っ青なこき使い方をしてくれているのだ、嫌とは言わせん……!

 

 

 6月●#日(曇り)

 

 本日の千人組み手。

 対戦相手:拳王様

 『世紀末小パン王』とか嘘でした。

 向かって行った途端に風のヒューイの如く拳の一撃で体力はレッドゾーン。

 体勢を立て直す暇も無く、天将奔烈(てんしょうほんれつ)で『あろっ!?』と逝きました。

 

 ……なんかこの業務日誌が俺の修行のDIEジェストになっている気がする。

 こうまで連敗記録を伸ばすとは、俺もまだまだ弱者という事だろう。

 強者への道は長く険しい。

 

 さて、先日の続きである。

 いつものように地上げを熟して高天原に乗り込んだ俺は、天照様の伝で強力な助っ人を用意してもらった。

 木花咲耶姫(このはなさくやひめ)様と菊理姫(きくりひめ)様が来てくれたのだ。

 この二柱は共に安産を司る女神様、施術の際にお腹の子に何かあった時は護ってくれるだろう。

 さて、これに薬学・医学に明るい少彦名様がいれば備えは万全だ。

 これから本人に説明するから、準備等の時間を考えれば施術は明日の夕方になるだろう。

 よっしゃ、気合をいれねば!!

 

 6月●%日(雨)

 患者の容態が急変。

 これより緊急の施術を開始する。

 詳細は後ほど。

 

 6月●π日(雨)

 

 本日の千人組み手。

 対戦相手:デス=アダー

 名作アクションゲーム『ゴールデンアックス』のラスボスである。

 相手は右手に斧、左手に盾を持った巨漢なのでクロスレンジでの勝負を仕掛けたら、鬼のようなブロッキングで捌きまくられた。

 そして、攻撃を当てても謎の『食らいキャンセル』で背後に回られてボコボコに。

 最後は『ダンジョン&ドラゴンズ』のラスボスそっくりの竜を呼びだされて、ブレスでこんがり上手に焼かれてしまった。

 

 ……ブロッキングを使っている身でいうのはなんだが、現実で『食らいキャンセル』とか卑怯だと思うの。

 いや、この理不尽さこそがMUGENの醍醐味(だいごみ)、乗り越え甲斐があると考えよう。

 

 さて、恒例のDIEジェストも終わった事だし、本来の業務日誌に戻るとしよう。

 昨日の昼に青奈女史の容態が急変した。

 彼女が足に激しい痛みを訴えて来たので確認してみると、脚部が一つに融合し、蛇のように鱗が現れ始めたのだ。

 黒歌や男の言っていた異形への変態が始まった事から、俺は悪魔の駒を摘出する事を決断。

 青奈女史を本堂に運び、木花咲耶姫様と菊理姫様を呼んで施術開始。

 こっちは『駒落とし』に集中しなくてはならない為、お腹の子に関してはお二人にお任せした。

 結果から言うと施術は成功。

 青奈女史は異形になる前に人間に戻ることが出来た。

 お腹の子も一時は危なかったが、姫神のお二方の力で何とか一命を取り留めた。

 ただ、術の影響で父親の遺伝子が消えた為に、青奈女史のクローンに近い形で生まれてくるとの事。

 ショックを受けるかと思っていた青奈女史は、この子が元気で生まれてくるならそれでいいと涙を流していた。

 空気が読めないのは重々承知で父親について訊いてみると『あんな下種の事はもうどうでもいい。むしろ、この子に奴の影響が無くなってせいせいした』という答えが返ってきた。

 まあ、お腹の子を『降ろせ』なんて言われれば、千年の恋も醒めるか。

 姫神様二人をお見送りした後で念のために青奈女史を産婦人科に連れて行ったところ、母体の血圧がかなり高くなっていたらしくそのまま入院と相成った。

 入院の手続きをして、必要な物を美朱に必要な物を見繕って持ってくるように伝えた後、爺ちゃんに報告。

 悪魔の駒の副次効果には肝を冷やしたみたいだが、施術の成功と母子共に命に別状はない事を伝えると、ホッと胸を撫で下ろしていた。

 青奈女史が入院した旨を伝えると、健康保険証が無い事を気にしたのか費用は後で返すと言われた。

 事の発端はこっちなので出すつもりだったのだが、断るのは失礼と思ったので言葉に甘えることにした。

 この件に関して俺の出来る事はここまでだろう。

 青奈女史の今後については爺ちゃんと朱雀さんにおまかせだ。

 

 6月●√日(晴)

 

 本日の千人組み手。

 対戦相手:さいごのスターマン

 今回の相手は懐かしの名作RPG『MOTHER2』の極悪敵キャラである。

 何が極悪かって、シールドβ(打撃と投げのダメージをそのまま跳ね返す)とサイコシールドβ(飛び道具反射)を張りまくる上に、辺り一面に星形のエネルギーを雨霰と降らせるのだ。

 さらに、謎の仲間を呼びまくって弾幕を張るわ、それに混じってこっちが無防備になる精神攻撃を仕掛けてくるわとやりたい放題。

 挙句、即死級のエネルギー弾で面制圧とかどうしろと……?

 今回は相手に触れる事無く敗北してしまった。

 やっぱり、俺ってまだまだ弱いなぁ。

 

 今日も今日とてお仕事である。

 出張の準備を終えて出ようとしたら、リアス姉から連絡が来た。

 なんでもフォルネウス家の使いが部室に来ているので、事情を説明してほしいとの事。

 出張先の飛行機の時間には余裕があったし、今後もちょっかいを掛けられるのは面倒なので話を付けに行くことに。

 部室の応接室に入るとリアス姉の他に初老の執事が一人。

 執事は何やらごちゃごちゃと話していたが、要するに『青奈女史はウチが出したはぐれ悪魔だからこちらで始末する。黙って身柄をよこせ』と言いたいらしい。

 色々言いたい事はあったが揉めても時間の無駄なので、青奈女史から取り出した僧侶の駒を渡して『化け物に変質したから始末した』と伝えた。

 『駒落とし』を除いて、悪魔の駒は宿した者が死なない限り、取り出すことはできない。

 あの駒は青奈女史が死んだことを示す何よりの証拠という訳だ。

 駒が本物であることを確認した執事は、リアス姉に礼を言って冥界に帰っていった。

 これでもう青奈女史に追手が掛かる事はないだろう。

 万が一向こうが手を出そうとしても、今や青奈女史も生まれてくる子も人間だ。

 こっちも大手を振って叩き潰すことが出来る。

 リアス姉は何か言いたそうにしていたが、飛行機の時間を理由に部室を後にした。

 少しばかり不義理だとは思ったが、『駒落とし』は日本の最高機密だ。

 こればっかりは仕方がない。

 さて、出張先の終わった事だし明日は久々のオフだ。

 気分を変えて長崎観光としゃれこむとしよう。

 

 

 

 

 日誌の記述はここで終わっている。

 




 ここまで読んで下さってありがとうございます。
 ここ数日、日刊ランキングに自分の作品が乗っていてマジにビビった作者です。
 今回は会議後半の伏線作りも兼ねて閑話を刺しこみました。
 初の日記形式だったのですが、これが思った以上に難しい。
 何とか纏めようと悪戦苦闘しましたが、上手くいったかどうか……。
 次は元の形式に戻して4巻後編となります。
 1年以上書いてるのに4巻分しか進んでないとか……展開遅いなぁ。

 これからも頑張りますので、よろしくお願いします。

 それでは、今回の用語集です。

〉キングギドラ(出典 ゴジラシリーズ他)
 特撮怪獣映画『ゴジラ』シリーズに登場する怪獣。
 黄金に輝く身体、巨大な翼と二股の尻尾、そして3つの頭をもつ。
 最大の武器は口から放つ稲妻状の引力光線で、あらゆる物体を宙に巻き上げて破壊する。
 出演作品における扱いはそのほとんどが悪役・敵役となっており、ゴジラとの交戦回数が最も多い。
 このことからファンの間ではゴジラのライバルというイメージが浸透している。

〉アーキタイプ・アース(出典 月姫 メルティ・ブラッド)
 『MELTY BLOOD Actress Again』の隠しキャラ。
 真祖アルクェイド、姫アルクとも呼ばれる。
 真祖の姫。
 アルクェイドの真形で最高純度の真祖・星の触覚としての側面を表わしたもの。
 本質は同じであるが、権限は通常のアルクェイドより上であり、シエルに「上位機種」「埋葬機関が全員でかかる相手」とも言われる。
 本質は同じであると言われているように、星の内海より出た観光夢気分で世界を滅ぼそうとした。
 能力的には北極と南極の氷を溶かしたり、大陸でピンボールをしたり、地球の自転を止めて創世の地獄にすることも可能なようである。

〉バルバトス・ゲーティア(出典 テイルズオブデスティニー2)
 『テイルズオブデスティニー2』のボスキャラ。
 長くウェーブのかかった青い髪と青と黒を基調とした全身タイツに腰布と緑のマントといった容姿で、巨大な斧を片手で振るう屈強な肉体を持つ。
 前作の主人公、スタン・エルロンの持つ意思持つ魔剣「ソーディアン・ディムロス」の人格ベースとなったディムロス・ティンバーとは浅からぬ因縁を持ち、「英雄」という言葉、概念に非常に強烈な執着心を持つ。
 序盤から終盤まで合計3度も戦う機会があり、しかもその全てにおいて強敵。
 その強さとCV若本の凄みのある声に、トラウマになったプレイヤーも多い。

〉偽典・女神転生
 正式名称は『偽典・女神転生 東京黙示録』。
 女神転生シリーズ唯一のPCゲーム。
 背景設定としては、大破壊後、『真・女神転生』の主人公が金剛神界に留まっている間の物語とされている。
 また、コミック版の『真・女神転生 東京黙示録』とも繋がりがあり、未完のため不明となっていた漫画版での謎がごく一部であるが補完されている。
 PCゲームという事で、女神転生シリーズの中では、屈指の性的描写やグロテスクな描写が存在する。

木花咲耶姫(このはなさくやひめ)(出典 日本神話)
 日本の国土に天孫降臨した瓊瓊杵尊(にぎぎのみこと)の妻で、富士山の神様。
 山の神大山積神(おおやまつみのかみ)の娘で石長姫(いわながひめ)という姉がいる。
 大山積神は石長姫も共に嫁がせようとしていたが、瓊瓊杵尊はそれを拒否。
 理由は木花咲耶姫は桜の花のような美女であったが石長姫は外見が醜かったからである。
 大山積神曰く、妹は天孫に桜の花が咲くような繁栄を、姉は岩のような永遠の命をもたらすはずだった。
 しかし、瓊瓊杵尊が石長姫を拒絶したことで子孫である天皇の寿命は短くなり、やがて普通の人間と同じになってしまうことになる。
 また、木花咲耶姫は結婚後すぐに妊娠したために瓊瓊杵尊から国津神との不義を疑われた。
 この際『天津神の子なら何があっても産まれるはず』と自分の居る産屋に火をつけ、その中で無事に出産したことで身の潔白を証明したという。
 この逸話から富士山の神、火山の神、安産の神、子育ての神として、関東・東海・甲信地域(富士山を眺められる地域)を中心に分布する浅間神社に祀られる。

菊理姫(きくりひめ)(出典 日本神話)
 日本書紀の一書に登場する女神。
 伊邪那岐は死した伊邪那美を迎えに黄泉に降り、黄泉路での伊邪那美の変わり果てた醜さに彼女を置いて逃げ帰った。
 その際、黄泉平坂で言い争う両者の言葉を菊理姫が取り次ぎ、その結果伊邪那美は黄泉に帰ったという。
 菊理姫は(ククリヒメ)とも呼ばれる。
 「ククリ」はものごとを「くくってとりまとめる」が語源である。
 つまり、死者であるイザナミと生者であるイザナギの間をとりまとめたことに由来するというのが一般的である。

〉デス=アダー(出典 ゴールデンアックスシリーズ)
 セガから発売されたベルトスクロールアクションゲーム『ゴールデンアックス』のラスボス。
 デス=アダー軍の総帥で悪しき巨人族の末裔。
蛇へ変身することができ、マムシを大量に飼っている(捕虜を餌にしていた)。
 人間の手にあったゴールデンアックスを騙し取り、その魔力によって闇の力を解き放つ。
 そして闇の力でファイヤーウッド王国を滅ぼし、この世を地獄に陥れた。
 『ゴールデンアックス』主人公3人は、デス=アダー軍に肉親や友人を殺されており、復讐の為デス=アダーへ挑んで行く。

〉さいごのスターマン(出典 MOTHER2 ギーグの逆襲)
 任天堂のRPG『MOTHER2 ギーグの逆襲』のラストダンジョンの最終盤に出てくる敵 。
 ギーグと共に地球侵略を目指す宇宙人の殺し屋、「スターマン」一族の一人。
 「さいごのスターマン」はその名が示す通り、スターマン系統の中で最強のタイプ。
 決まれば一撃で戦闘不能になるPSI、PKビームγや、全体に即死級のダメージを与えるスターストーム系のPSIをを使ってくるのに加えて、他のスターマンには存在するPKスターストームΩ使用のカウントダウンが無く、いきなり使ってくる。
 そのうえ最初から「はんげきのサイコシールド」(こちらのPSIを全て反射する)を張った状態で登場するという超難敵。
 更に全員を同時にへん状態(混乱)にするブレインショックΩも使ってくるため、パーティ全員のレベルがマックス状態でも一瞬で全滅する可能性があるという恐ろしい敵である。

 今回はここまでとさせていただきます。
 また次回にお会いしましょう。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。