MUGENと共に   作:アキ山

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 お待たせしました、20話の完成です。
 筆の進みが速いわりに遅々として進まない話の内容……。
 これは4巻分が終わるのはあと2話いるかなぁ。


20話

 え~と、皆さんこんばんは。

 姫島美朱です。

 突然ですが、我が兄が人間はおろか神魔の限界すらもぶっちぎっている件。

 『いきなり何を言ってるのか』と混乱する人もいるだろうけど、瞬間移動なんてやられたらそれも仕方がないと思うんだ。

 話は少し前、三勢力の和平締結した直後にまで(さかのぼ)る。

 オーディン様が話題を変える為に声を上げると同時に、議会場である職員会議室でギャー助の神器『停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』の結界が発動した。

 視界内のモノにしか効果が無いはずの時間停止がギャー助の目が届かないここまで影響している事に『何者かが意図的に暴走させたのでは』と当たりを付ける、自称『神器研究の第一人者』のアザゼルのおっちゃん。

 まあ、直後に慎兄の邪気祓(じゃきはら)いで時間停止は呆気なく解除されたんだけど。

 今更だが我が兄よ、その使い方はおかしい。

 それって新築の家とか改築する前の家を清めたりする、生活密着型のお(まじな)いだから。

 神器の結界吹っ飛ばす効能なんて無いからね。

 いとも容易く行われたえげつない行為に周囲が(ざわ)めく中、またまた妙な氣の流れを感じて慎兄に目を向けてみると、我が兄の姿が『ピシュンッ』という音と共に掻き消えてしまった。

 一緒に見ていた玉藻さんとクー兄が唖然とする中、今の怪現象に心当たりがあった私は戦慄を憶えていた。

 あの兄貴、ついに『ドラゴンボール』の瞬間移動まで覚えよった!?

 あの額に指を当てる仕草とアニメさながらの擬音からして間違いはないはず。

 という事はあれか。慎兄は日本が誇るアニメの主人公『孫悟空』と闘ったという事なのか?

 『無限の闘争』の性質上、いつかは訪れるものと覚悟はしていたが、現実になるとやっぱりインパクトが違う。

 ついに強さのインフレワールドに足を踏み入れた兄に顔を引き()らせていると、窓から射しこむ色とりどりの閃光。

 外に目を向ければ空には無数の魔法使い風の人間が浮かんでおり、私達がいる校舎に向けて多種多様な魔法攻撃を掛けている。

 もっとも、その攻撃の全てが張られた結界に阻まれてまったく届いてはいないんだな、これが。

 リーア姉とソーナ会長が手掛けた元々の結界なら耐えられなかったかもしれないけど、今回の会議は各神話のVIPが集う事になっている。

 当然ながら警備は強化されており、今ここに張られているのはあの慎兄が有り余る氣を込めて造った凶悪結界である。

 製作者曰く『大陸弾道弾の直撃にも耐える』とのことなので、あんなしょぼい魔法では傷一つつかない。

 状況の把握の為にアザゼルのおっちゃんに詰め寄るリーア姉とイッセー先輩。

 イッセー先輩はともかく、リーア姉はギャー助がテロの道具に使われいるのが気に入らないようで、憤怒の表情で全身から赤い魔力を(ほとば)らせていた。

 ……しかし、リーア姉の魔力ってあんなに少なかったかな。

 なんか、この前『無限の闘争(MUGEN)』で戦った『ドラゴンクエスト5主人公の娘』こと、タバサちゃんの方が凄かったんだけど。

 まあ、あっちは腐っても天空の勇者と双子の兄妹だし、公爵家令嬢とは言え普通の悪魔のリーア姉と比べちゃダメだよね。

 でもって、リーア姉と首脳陣との協議の結果、襲撃の主犯を特定するためにうごけない首脳陣に代わって、リーア姉達がギャー助を助けるという事が決定。 

 しかし、その判断は遅きに()していた。

 この時点で旧校舎に慎兄の気配があったのだ。

 キャスリングがどうのと息巻くリーア姉にこの事を知らせると、何か言いたそうに口を開こうとした後、肩を落としてイッセー先輩と共に元の場所に帰っていった。

 リーア姉、ウチの兄がすまぬ……本当にすまぬ……。

 イッセー先輩共々ただでさえ影が薄いのに、活躍の場を奪ってしまった。

 しかし、フリーになったせいか行動に躊躇が無くなったよね、あの兄貴。

 さて、微妙な雰囲気の中で対応に追われる三勢力を見ていると、アザゼルのおっちゃんがヴァーリ君に外の魔法使いたちを蹴散らしてこいと命令を出した。

 もの凄く暇そうにしていたヴァーリ君はこれ幸いと窓から飛び出したのだが、壁に投げ付けられたスーパーボールよろしく結界に跳ね返されて戻ってきた。

 目を白黒させる彼に結界の事を教えると、何故か闘志を漲らせながら禁手化(バランスブレイク)

「この結界があいつの手による物なら、これを破れば地上最強に挑戦する権利を得られるという事だろうっ!!」

 などと口走りながら、結界をブチ抜いて外に出てしまった。

 破れた場所から破片を()き散らし、ゆっくりとその姿を消していく結界と、それを目の当たりにして頭を抱える三勢力首脳陣。

 そしてそれを冷ややかな目でみる来賓席の神様達。

 ぐだぐだだった空気が一瞬で氷河期になったわけだが、世の中と言うのは悪いことが重なるモノである。

 なんとも居た堪れない空気の中で誰も声を上げられないでいると、閃光を(ともな)って円卓の前に魔法陣が浮かび上がった。

「————レヴィアタンの魔法陣」

 心っ底嫌そうな顔で呟くサーゼ兄。

 こっちは魔法陣を見分ける知識なんてないのでポケっと見ていると、魔法陣から褐色の肌に胸元が大きく開いた大胆な黒いドレスを着た女性と、黒髪を後頭部で一本に結った黒ずくめの男が現れた

 同時にリーア姉達の前にも数名の上級悪魔が転移で姿を現し、各々が武器を構えて威嚇(いかく)を始める。

「ごきげんよう、現魔王サーゼクス殿」

「此度の会談の為に随分と強力な結界を施していたようだな。ここまで来るには少々骨が折れたぞ」

 女性の方は眼鏡をかけた知的美人って顔に不敵な笑みを浮かべ、男は臆病者を見るかのように蔑みの目を向ける。 

 その態度にサーゼ兄とセラ姉の顔がどんどん不機嫌になり、アザゼルのおっちゃんの顔は紙のように白くなった。

 ていうか、和平締結前に来れなかったのって、慎兄の結界を突破できなかったからなのね。

 それとドンマイだ、おっちゃん。

「先代魔王の血族、カテレア・レヴィアタンとクルゼレイ・アスモデウスか。これはどういうつもりだ?」

 ……そういえば、聞いた事がある。

 セラ姉のレヴィアタンって名前、あれって歌舞伎(かぶき)でいうところの『何代目●●●』みたいに受け継いだ芸名のようなモノだって。

 なんでも初代の魔王を尊敬して云々って話だけど、私には関係ないって思ってたからよく覚えてないや。   

「旧魔王派の者達の殆どが『禍の団(カオス・ブリゲード)』に協力することを決意しました」

 言葉と共にもの凄いドヤ顔を決めるカテレアという女性。

 うん、知ってた。

 というか、前の聖剣事件で旧ベルゼブブとかいう鬼太郎君(仮)がいたじゃん。

 『禍の団』の悪魔って仲間の行動も把握してないの?

「このメンドクサイ状況で何言ってんだ、あのクソアマ……! 死ね……! 氏ねじゃなくてマジで死ね……!!」

 いつもの能天気さはどこへやら。

 濁り切った目でカテレアを睨みつけながら、ブツブツと呪詛(じゅそ)(つぶや)くセラ姉。

 うわっ……完全にキャラ崩壊してるよ。

「君達が『禍の団』に所属しているのはこちらでも把握している。だが、ここでそれを公言するということは、現政府への宣戦布告という事で構わないのだな?」

「その通りだ。偽りの魔王とその下で堕落した腑抜(ふぬ)け共。その全てを粛清(しゅくせい)し、我々真なる魔王が悪魔を本来の姿に立ち戻らせるのだ」 

 ……なんか恍惚(こうこつ)とした表情で語り始めたんだけど、あの男の人。

「御大層なお題目はけっこうだがな、もう少し現実を見ろってんだ。ウチもお前らも関係なしに三勢力は他の神話に嫌われてんだ。そんな状況で世界中でテロを起こしまくりやがって、このままだと悪魔政府をどうこうする前にお前らが潰されるぞ」

「ふん、有象無象の神話勢力に恐れをなすとは、堕天使総督もヤキが回ったものですわね」

 もしもーし。

 おばさん、目はちゃんと見えてますか?

 貴方の後ろのいる方々、その神話勢力の責任者なんですけど。

 皆さん、不機嫌そうにそっち見てるんですけど。

「ねえ、パパ。昔の魔王ってどんなだったの? 出てくる自称子孫がみんな残念なんだけど」

 ふと疑問に思ったので、みんなの目を盗んでパパの元に行ってみる。

「うむ、私の知る限りではみんな真面(まとも)だったな。少なくとも、己に酔って自身を取り巻く状況が見えないような愚か者ではなかったはずだ」

「ふーん。旧魔王家って没落したって聞くし、ちゃんとした教育受けてないのかもね」

「かもしれんな。まったく、お前達とは大違いだよ」

「はわっ、急に抱っこしないでよぉ!?」

 もの凄く嬉しそうに笑いながら私を抱き上げるパパ。 

 頬ずりするのはいいんだけど、チクチクするからお髭剃って欲しいかな。

「そこ! 真面目な話やってんのに、トロケ顔でほのぼのしてんじゃねえよ!!」

「別にいいではないか。ムサいお前に付き合ってばかりで、可愛い娘との触れ合いが不足してるんだ。ここらで娘分を補給しなければ、私は死んでしまう」

 アザゼルのおっちゃんのツッコミをモノとせずに私を抱きしめるパパ。

 鳶兄やラヴィ姉以外の三勢力の面々が信じられない顔で見てるけど、私と会うときのパパっていつもこうだよ。

 たまに『朱乃もこうやって抱っこしたいなぁ』て言って泣くし。

 離れて暮らしてても私がパパの事嫌いにならないのって、こうやって会えば全力で愛情を表現してくれるからだもん。

 この歳の娘に対するスキンシップとしては『それはどうだろう』と思うときもあるけど、関心を持たれないよりはずっといいよね。

「……堕天使総督だけではなく『雷光』と恐れられたバラキエルすらこの体たらくか。もはや堕天使は恐れるに足らずだな」

「何とでも言うがいい。娘と過ごせるならお前達に見損なわれる程度、バッチ来いだ!!」

 クルゼディだったっけ? の(さげす)みの視線にドヤ顔でビシィッとサムズアップするパパェ……。

 はっちゃけるのはいいけど、そろそろ降ろしてね。

 朱姉が凄い目で見てるから。

 パパの所為で張りつめた空気が弛緩(しかん)したところで氣の揺らぎを感じて目を向けると、消えた時と同じ音を立てて慎兄が現れた。

 突然の事で度肝を抜かれる一同をよそに、慎兄は氣を高めると上級悪魔達の間を縫って超スピードでリーア姉の前に移動する。

「……北斗有情断迅拳」

 ハイ、またトンデモない台詞キター!!

 『キン肉マン』に飽き足らず、『ドラゴンボール』の次は『北斗の拳』とか!

 ジャンプか! ジャンプ黄金期攻めなのか!?

 正直ブッたまげたけど、私も前世では少年漫画も(たしな)んだ身。

 ネタを振られたのならば、返すのが礼儀であろう。

「その動きは……トキッ!」 

 うん、本当は速過ぎて動きなんて見えませんでしたけどね。

 こちらの返しにドヤ顔で振り向く慎兄。

 それに一拍子置いて、上級悪魔達の身体の身体がアニメと全く同じ効果音を上げて変形していく。

 あ、本当に『ピーリー』って鳴るんだ、北斗神拳。

 さて、本編と効果が同じならあの上級悪魔達は快楽の中、恍惚とした表情と共に爆発するワケだが……いや、そんなゴア表現なんて絶対見たくないけど。

 朱姉達へ向かっていた足を止めて上がるであろう血飛沫が上がらない位置まで距離を取ったところ、次々と苦悶の声と例の珍妙な断末魔を上げる被害者達。

 ……おい、有情は何処に行った。

「今のって、有情って言うより無情断迅拳だよね。腑抜けたか、兄者」

 私のツッコミに原先生ばりの劇画調な悪い顔になる慎兄。

「……ん、間違ったかな?」

「なんだ、ただのアミバか」

 いや、声まで真似なくていいから。

 ていうか、上手いな初代アミバの真似。

 慎兄の繰り出した『アミバ流北斗神拳』によって、リーア姉達を牽制(けんせい)していた悪魔が二目と見れない姿になったわけだが……ホントにグロいわ。

 なんか両手足の関節が十個くらい増えてるし。

 ここまで破壊されたら、『フェニックスの涙』でも治らないだろう。

 (ちまた)ではよく勘違いされているけど、『フェニックスの涙』って万能じゃないのだ。

 あれはフェニックスの再生能力の下位互換と言うべき、即効性の外傷治療薬だ。

 だからフェニックスのような出鱈目(でたらめ)な再生能力は無く、治癒可能範囲内の傷にしか効かない。

 要するに、ミンチとか消滅といったどう考えても元に戻らない傷は治らないということだね。

 今回もあれだけ複雑怪奇にひん曲がれば、骨折はもとより神経や筋肉、健に至るまで修復不能なダメージが行っているはず。

 これでは自然治癒だと、まず元には戻らない。

 それって治癒力を促進する魔法や『フェニックスの涙』では対処できないという事なんだ。

 もし動かせるようにしようと思うなら、外科医師による整形手術が必要になる。

 もっとも、あれを元に戻すには『ブラックジャック先生』か『ドクターK』レベルの腕がいるだろうけど。

 少々可哀想とは思うけど、ウチのお姉たちに手を出そうとしてたんだから自業自得だよね。

 あと、リーア姉とソーナ先輩が錯乱してるけど、どうしたのだろう。

 北斗神拳には驚いたけど、慎兄がトンデモ武術を仕入れてくるのは、いつもの事じゃん。

 1年、2年の付き合いじゃないんだから、いい加減に慣れてもらいたいもんだ。

「美朱、こいつ等って旧校舎を襲った奴等の仲間でいいんだよな?」

「うん。っていうか、その辺は確認してから動こうよ」

「細けえ事はいいんだよ」

 細かくない、細かくない。

「ご主人様、どちらへ行ってらっしゃたんですか?」

「ああ、塔城とギャスパーの奴が捕まってたんでな。ちょっと助けに行ってた」

 玉藻さんに慎兄が説明を返していると、先程の旧魔王二人組が歩み寄って来た。 

「『第三の無限』姫島慎ですね?」

 愛想というには妙に妖艶(ようえん)な笑みを浮かべるカテレアに、三つの尻尾を膨らませて威嚇する玉藻さん。

 うん、そんなに警戒する必要ないと思うよ。

 むこうもそんな気はないだろうし、なにより慎兄にハニートラップ通用しないから。

 あと、向こうでアザゼルのおっちゃん達が『第三の無限』ってどういう事だ!? とか騒いでるんだけど、知らなかったのかな?

 あ、慎兄がリーア姉に口止めしてたんだっけ。

「そうだが、あんた等は?」

「私はカテレア・レヴィアタン、そしてこちらがクルゼレイ・アスモデウス。共に初代魔王の血を引く者にして、真なる魔王です」

「先代魔王の血族、ね。それで俺に何の用だ?」

「この誤った世界を変革する為に、貴様の力がほしい。我らに(くだ)れ」

「変革ねえ。そんな大言(たいげん)を口にするって事は、あんた等も『禍の団』の一員って事か」

「ええ。聖書の神が死に絶え、天使と悪魔、そして堕天使が手を取り合う歪な世界。それを破壊して、世界をあるべき姿に戻すのです!」

「ふーん。やだ」

「「……は?」」

 そりゃあもうスッパリと断った慎兄に、間抜けな声を上げる二人。

「あんた等が槍玉にあげてる内の堕天使と悪魔の中に、俺の親父と姉貴がいるんだわ。あと、幼馴染みに恩人もな。そっちに手を貸すのってその人達を裏切る事になるんだけど、その辺は考えてるか?」

「しかしっ! この歪んだ世界は正さねばならないのです! その為には必要な犠牲───」

「俺って生まれも育ちも小市民だからさ、世界がどうこうとか興味ねーの。現魔王に兄貴分と姉貴分がいるから手を貸してるけど、ぶっちゃけ家族と知人がしっかり暮らせれば誰が頭でも文句はないし。あと、あんた等オーフィスを神輿(みこし)に担いでんだろ。俺に声かけてるけど、あいつはどうすんの?」

「問題ない! 貴様がこちらに降るのならば、我等もオーフィス討伐に手を貸そう!!」

「それって、俺も負けたらポイ捨てされるってことじゃん。やっぱないわー」

 うわー、あの二人、口を開く度にバンバン墓穴掘ってるよ。

 まあ、元から協力する気無いのに話聞くふりしてる慎兄も結構酷いんだけどさ。

 というか、男の方が話しながらこっそり右手に魔力集めてるんだけど、バレてないと思ってるのかな?

「……っ、どうあってもこちらに協力する気はないのだな?」

「沈没寸前で船体の先っぽしか浮かんでない船に乗る程、マゾじゃないんで」

「我らの崇高(すうこう)な理想を理解できないとは、所詮(しょせん)は下等な人間との混ざり物か。ならば……死ね!!」

 言葉と共に至近距離で魔力弾を放つクルゼレイ。

 しかし、戦闘に置いて私が感づく事に慎兄が気づかないワケがなく、彼の渾身の力が籠っているであろう魔力弾は、

「えい」

 無造作に放たれた慎兄のデコピンであえなく消滅した。

「……へ?」

虎煌破砕掌(こおうはさいしょう)・デコピンバージョン。Mr.カラテが使ってたのを真似(まね)してみたんだが、うまくいったな」

 シュッシュッとデコピンを放ちながら満足げに頷く慎兄。

 Mr.カラテって、サイラオーグ兄の覇王翔吼拳をパンチで『パコーン』と消していたあれか!

「うむ、実験台ご苦労。先に手を出してきたのはそっちだからな、これは正当防衛ということで……!!」

 魔力弾を予想外すぎる対処法で返され、呆然としている隙にクルゼレイの懐に入る慎兄。

 その手にはどこから取り出したのか、木製のバットが握られている。

 そして野球なんてやった事ないくせにえらく綺麗なフォームでスイングされたバットは、クルゼレイのどてっ腹を捉えて彼を吹き飛ばす。

 ……って、ちょっと待って。

 なんでインパクトの瞬間から『ドカベン』のオープニングテーマが流れてるの!?

 なんか、打たれた衝撃で『見せられないよ!!』状態になってるクルゼレイの身体に『ドカベン』のオープニング画像がモザイクみたいに張り付いてるし!

「う~ん、ナイバッティン……ッ!!」 

 星になったクルゼレイだったモノを見送った後、吹っ飛んでった際に空いた穴から外に出てグラウンドを回り始める慎兄。

 って、なにやってんの、あれ?

『なにをしているんだ、慎?』

『見てわかんねーか? ホームラン打ったからベース廻ってんだよ』

『ホームランというのは、さっき飛んで行ったミンチよりヒドい肉塊(にくかい)の事か?』

『ああ。クル……なんとかっていう旧魔王の家の奴』

『なるほど。これが(ぞく)に言う『野球やろうぜ! お前、ボールな!!』という奴か』

『まあ、そんなもんだ』

 ヴァーリ君との聞いているだけで頭が悪くなりそうな会話を終えて、会議室に戻ってくる我が兄。

 ツッコミどころは山ほどあるが、とりあえず一番疑問に思っている事をぶつけてみよう。

「ねえ、慎兄。今のってどうせ『無限の闘争』で覚えた技なんでしょ。なんて技なのさ?」

「うん? 『やーまだたーろうー』って技だぞ」

「えっ!? なにそれ! ホントにそんな名前なの!?」

「ああ。覚えた時の対戦相手も文字だったし」

「文字ぃ!?」

「文字っていうかロゴだな。ほら『ドカベン』の表題に使われてるヤツ」

「いやいやいや……!? ロゴって、そんなのどうやって闘うのさ?」

「ボールが飛んできたりキャッチャーミットが出てきて投げられたり、他には地面から『山田太郎』が生えてきたりもしたな」

「カオスすぎる!?」

 なんじゃそりゃ!? あまりにも意味不明すぎて想像もできないよっ!

「まあ、あれだな。『無限の闘争』じゃよくある事だ」

「こんな滅茶苦茶な事がよくあってたまるかぁっ!!」

 リーア姉、ソーナ会長、ナマ言ってゴメンナサイ。

 私もまだまだ慎兄にはついて行けないみたいです。

「おのれ……おのれっ! よくもクルゼレイをぉぉぉぉっ!!」

 同僚のあんまりな最後に呆然としていたカテレアが、憤怒の表情で魔力を展開する。

 わかる、その理不尽に怒る気持ちはよ~く分かる。

 しかし、それをさせる訳にはいかない。

 右手に宿した魔力を慎兄に放つよりも速く懐に潜り込んだ私は、振り下ろそうとしていた腕を掴んで固定し、右拳を脇に添えて体重移動と共に氣を解き放つ。

 重い打撃音と共に吹き飛び、床を二転三転して慎兄の開けた穴から外に落ちていくカテレア。

 それを追いかけて宙に身を躍らせた私は、カテレアが地面に叩き付けられると同時にグラウンドに降り立った。

 うん、なんか今のって、DOAの吹っ飛ばしでステージ変更した時の演出みたいだったなぁ。

 受け身も取れずに落ちて来たカテレアも含めて。

「おのれ小娘……ッ! 混ざり物の分際で私の邪魔をするか!!」

 うつ伏せから顔を上げてこちらを睨みつけるカテレアに、私はあえて不敵な笑みを浮かべて見せる。

「とーぜん。あんな理不尽の権化みたいなのでも、私のお兄ちゃんだからねぇ」

「なんだ。さっき慎が出てきたと思ったら、こんどはお前か、美朱」

 風を感じて目を向けると、純白の鎧姿のヴァーリ君が横に降りて来た。

「おや、ヴァーリ君。襲撃者の掃討はすんだの?」

「とっくに終わっている。まったく歯ごたえの無い連中だった」

 不機嫌丸出しの声音で肩を(すく)めるヴァーリ君。どうやら不完全燃焼だったようだ。

「白龍皇! 我々と同じ高貴な血を持ちながら、そのような下賤(げせん)の者と馴れ合うのですか!?」

 打たれた脇腹を(かば)いながら立ち上がったカテレアの言葉を、ヴァーリ君は鼻で笑う。

「高貴な血だと? 俺はあのクソ共から押し付けられたモノを誇りに思った事など一度も無い。俺が誇るのは母から貰った人間の血と、己の手で鍛え上げた力だけだ」

「魔王筆頭であるルシファーの血を持つ者が、このような愚か者だとは……!? 貴様に真なる魔王たる資格は無いッ!!」

「馬鹿が。そんなモノは熨斗を付けてくれてやる。俺が目指すのは魔王程度のちっぽけなモノではない、『無限』を超えた『白龍神皇』なのだからな!!」

 憎しみに満ち満ちたカテレアの視線を受けながら、高々に宣言するヴァーリ君。

 きっと兜の下の顔にはこの上ないほどのドヤ顔が浮かんでいるのだろう。

 この子も育ての親に似たのか、けっこうな厨二病だからなぁ。

 さて、喧嘩を売った身としてはこのままカヤの外にいる訳にはいかない。

 そろそろ、事の主導権を取り戻さないとね。

「はい、そこまで。ヴァーリ君、悪いけどこれは私が売った喧嘩なの。横取りは駄目だよ」

 前に出てヴァーリ君とカテレアに割り込むと、ヴァーリ君は何故か感心したように声を上げる。

「珍しいな、美朱。仕事絡みではないのに、お前が荒事に積極的なのは」

「身内が地上最強になっちゃうと色々大変なんだよ、下心丸出しで私達に近づいてくる奴がいたりしてさ。だから、この会議で各神話の皆さんに見せつけとこうと思ったの」

「何をだ?」

「『私に当たると痛えぞ!』って事」

 私は言葉と共に、腰に下げていた御神刀をヴァーリ君に投げる。

「おい」

「ちょっと預かってて。あの程度の相手に表道具(おもてどうぐ)はいらないから」

 不意を突いたわりに危なげなくキャッチするヴァーリ君を尻目に、ゆっくりと息吹を発しながら構えを取る。

 相手を(あなど)っているつもりはない。

 慎兄ほど無茶苦茶じゃないけど、私も冥界から帰ってずっと『無限の闘争』で修練を積んだのだ。

 不意を突いたとはいえ『雷打(らいだ)』も躱せない程度の相手だ。

 無手で倒せなければ、ここの連中に脅威を印象付けるのは難しいだろう。

「下賤者がっ! この魔王レヴィアタンを愚弄するか!!」

 憤怒を通り越して般若(はんにゃ)の形相を浮かべたカテレアは、全身に魔力を(みなぎ)らせながら飛び掛かろうとする。

 しかし、それはカテレアの背後に現れた女によって止められた。

 次いで先ほどと同じく旧レヴィアタンの魔法陣が浮かび上がり、そこから6人の上級悪魔の男性が現れる。

「気をお鎮めください、姫様。敵の挑発に乗るなど、貴女らしくありませんよ」

「イリーナ……」

「鴉との混じり物の小娘など、姫様が手を下すまでもありません。貴女の眷属たる我等にお任せを」

 カテレアの前に出ながら両手に着けた黒革の手袋を引き絞る執事姿の女。

 拳闘、それもかなりの腕前だ。

「眷属ねぇ、その割には随分数が少ないじゃん。後の8人はどうしたの?」

「白々しい事をっ!? 貴様の兄が二目と見られぬ姿にしたのではないか!!」

 ああ、『アミバ流北斗神拳』の犠牲者だったのか。

「ふーん。で、あんた達だけでいいの? こっちは全員でがかって来ても構わないんだけど」

「ほざけ。貴様のような小娘は我々だけで十分だ」

「————そうはいきませんわ」

 言葉と共に、私とイリーナと呼ばれた女王を(へだ)てるように雷が降り注ぐ。

 見上げるとそこには黒の翼を羽ばたかせる巫女装束を纏った朱姉と、鎧を着込み戦闘モードのパパの姿が。

「『雷光』のバラキエル!! それにグレモリーの小娘の眷属か!」

「私の娘に手を出すとは……んんんんー、許るさーんッ!!」

 全身を帯電させながら荒ぶるパパ。

 うん、ちょっと落ち着こうか。

 なんかセリフが『餓狼伝説』にあった、ギースの誤植みたいになってるから。

「ええ。私はリアス・グレモリーの女王、姫島朱乃。ですが、この場においてはその娘と『第三の無限』の姉として起たせてもらいます」

 怒りのパパを尻目に、イリーナを見据えながら私の(そば)に降り立つ朱乃姉。

 相変わらずの塩対応。

 朱姉、もう少しパパに優しくなろうよ。

「美朱。眷属は私が(おさ)えるから、貴女はカテレアをお願い」

「いいの? テロリストっていっても冥界には旧魔王の支持者が多いはずだよ。手を出したらリーア姉や眷属のみんなの立場が悪くなるんじゃ……」

 心配になったので言葉を掛けると、朱姉に笑顔で頭を()でられた。

「いいのよ、そこはリアスも覚悟の上だから。それに————」

 こちらから視線を外してイリーナを見すえる朱姉。

 その視線はいつものなんちゃってSではなく、ママが亡くなって日本や冥界を放浪していた時のような、刃物の如き鋭さを宿している。

「貴女の言う通り、慎の足手纏(あしでまと)いにならない為に力を示さないといけないでしょう」

 言葉と共に練り上げた魔力を(まと)う朱姉。

「ほう……」

 その姿に私は思わず息を飲み、ヴァーリ君は感嘆(かんたん)の声を上げる。

 纏った魔力が以前とは比較にならない程に増大しているのもそうだが、注目すべきはその制御の高さだ。

 ひと月前、『無限の闘争』の中で見た時は今の十分の一の量でも雷撃として周囲に漏れていたのに、今は氣の様に体内を巡るだけでまったく漏れ出していない。

「どうやら相当な修練を積んだようだな。以前見た時とはまるで別人だ」

 何故か嬉しそうな声で何度も頷くヴァーリ君。

 もしかして朱姉と闘おうなんて考えてないよね?

 もしそうなら、禁じ手の『恥骨(ちこつ)割り』かましちゃうからね。

「ならば、朱乃は女王を叩くがいい。私は他の有象無象の相手をしよう」

 私達の前に降り立ち、仁王立ちで腕を組むパパ。

 それを朱姉は忌まわしそうに睨み付ける。

「貴方の言葉なんか聞きたくないけど、今回は特別よ。私達の足を引っ張らないでね」

「今はそれでいい。お前も油断しないようにな」

「気を付けてね、二人とも。危なくなったら慎兄が助けに来ると思うけど、それでも危ないのは変わりないから」

「心配いらん。パパの強さを信じなさい」

「大丈夫よ、私だってこのひと月遊んでいた訳じゃないから。それに、これ以上あの子の奇行を晒すわけにはいかないでしょう?」

「き、奇行って……」

「まったく、何処の世界に闘っている相手をバットでホームランする人がいるのよ。しかもご丁寧にダイヤモンド一周までして。あれを見た所為で、リアスとソーナ会長が寝込んじゃったのよ」

「うわぁ……」

 プリプリと怒る朱姉の言葉に私は顔を引き攣らせる。

 そっかぁ、リーア姉達寝込んじゃったのかぁ……。

 きっと『北斗』から『ドカベン』のコンボがキツかったんだろうなぁ。

 うん、まったく擁護できない。

「この後にあの子の処遇(しょぐう)を決める会議があるんだから、これ以上戦わせては駄目。あっちは私達で片づけるわよ」

「はいはーい」

 緊張をほぐす為に軽い感じで応えると同時にカテレア側も動き出す。

 野郎衆6人を前面に出してカテレアが指揮、女王は彼女の護衛という布陣のようだ。

「バラキエルさえ倒れれば、あとは小娘二人だけ。イリーナ以外の面々は協力してバラキエルを叩きなさい!」

「「「「「「応ッ!!」」」」」」 

 カテレアの命令で武器を手にこちらに突進する男達。

 迎え撃つウチのパパは眼前で腕を十字に組む独特の構えを取る。

 ……あれ?

 パパってこんなどっしりとした戦い方だったっけ?

 前に見た時は相手が近寄ってくる前に落雷で迎撃していたような気が……。

「娘たちの戦いがあるのでな、貴様等ごときに時間は掛けてられん! 我が奥義で一気に葬ってくれる!!」

 向かってくる男達に、妙なオーバーアクションで指を突き付けるパパ。

 なんか背中に『ドギャーンッ!!』とか擬音が見えたような気がしたが、きっと気のせいだろう。

「食らってくたばれぃ! バラキエル・ブレイク・ダークサンダーッ!!」

 気合一閃、奇妙なポーズと共に全身から男達に向けて雷撃を放つパパ。

「ちょっ、バオーかよッ!?」

 思わずツッコミを入れた私は、パパの姿を見て咄嗟に口を押えた。

 チラッと見えた限りでは堕天使ナンバー3の実力は伊達ではなく、迅る雷は男達を次々と撃破していた。

 それはいい。

 問題は予想外のところにあった。

 ヤバい……ッ!?

 耐えろ……耐えろ、私ッ!!

 気を抜けば漏れそうになる笑いの衝動と、ねじ切れそうになる腹筋を必死になって堪える。

 朱姉が奇妙な物を見るような目を向けてくるが、かまっている余裕はない。

 我慢だ、パパは真剣に助けに来てくれたんだ。

 ここで笑ったら失礼にもほどがあるだろ……ッ!?

 自然と『くの字』に折れる身体を支えながら、必死に自己暗示をかける。

 ああ、わかっている……わかっているとも!

 こんな事をしている場合じゃないのは百も承知だ。

 しかし、あの絵面は強烈すぎた。

 自分の父親がノリノリでジョジョ立ちしながら、全身を光らせて雷撃を放ってるんだぞ。

 あんなん見たら誰でも笑うわ!

 雷撃が炸裂する轟音に紛れて、校舎の方から笑い声が聞こえる。

 視線を向けると、腹筋崩壊した慎兄が腹を抱えて爆笑していた。

 くっそー!? あのヤロー、楽しそうに笑いやがって!!

 こっちは地獄の苦しみを味わってるっていうのに……!?

 あの薄情な愚兄に呪いあれ……ッ!!

 兄への怒りでなんとか笑いを噛み殺した私は、気を取り直して忍者の体術によって一度の跳躍で女王の頭上を越えた。

「チィッ!? しまった……ッ!!」

 抜かれた事に舌打ちをしながらこちらを迎撃しようとするイリーナ。

 しかし————

迂闊(うかつ)ですわよ」

 今の朱姉がその隙を見逃すほど甘くはない。

 雷撃を放つ……のではなく、目を見張る程に鋭い踏み込みでイリーナの懐に潜り込むと、右腕を捕って己を軸にしての振り回し、遠心力も加味した勢いのまま地面に投げ落とした。

 あれって合気道……違う、柔術だ。

「ぐはっ!?」

 受け身を取る事も出来ずに仰向(あおむ)けに地面へ叩き付けられ、肺の空気を吐き出すイリーナ。

 しかし、追撃に放たれた首への手刀は辛うじて回避し、捕られた腕を振り払って間合いを取ることに成功。

 朱姉もまた足を前後肩幅に開き、手刀にした両手を胸の前に置く空手の『前羽の構え』に似た構えを取る。

「『魔導士(ウイザード)』スタイルと思わせておいて、その実は接近戦主体の『格闘士(グラップラー)』スタイルとは……やってくれるなッ!」

「あら、私は『魔導士』スタイルで間違っていませんわよ。こんな風に」

 今までのような大振りではなく、ジャブを撃つような感じで雷撃を放つ朱姉。

 しかし、敵も()る者。

 顔面に向けて(はし)るそれをダッキングで(かわ)すと、一気に間合いを詰めてラッシュをかける。

 顔面、腹部と角度を変えて放たれる拳の連打。

 そのどれもが一流の鋭さにも(かかわ)らず、巧みな足(さば)きによって躱され、あるいは力に逆らわない柔の防御でいなされて朱姉を(とら)える事はできない。

 これには本当に驚いた。

 朱姉はいつの間にあんな接近戦のテクニックを身に着けたのか。

 ……ととっ。

 むこうに見入ってる場合じゃない、こっちはこっちで集中しないと。

「私を前にして他に気を取られるとは、とことん馬鹿にしてくれますね……!!」

「いやぁ、ゴメンね。ウチのお姉ちゃんが予想以上のパワーアップをしててさ、つい」

「舐めるな、ガキがぁっ!!」 

 鬼女さながらの顔芸でこちらに魔力弾を放つカテレア。

 うんうん、安い挑発だったのにガッツリ乗ってくれちゃって。

 某木星帰りの男も言ってたじゃないか。

 『生の感情丸出しで戦うなど、これでは人に品性を求めるなど絶望的だ』と。

 怒りによって照準が定まっていない魔力弾の下を掻い潜った私は、低い体勢からの掌底アッパーでカテレアの顎をカチ上げた。

 脳を下から揺さぶられて棒立ちになったカテレアに、背後を向けた状態からの振り向きざまの手刀二発に再び掬い上げの掌底。

 そして足を蹴り払って尻もちをついたところで錐もみ回転を加えたドロップキックを顔面に叩き込む。

 地面を転がりながら大きく吹き飛び、樹に背中を預けて座り込む形で止まるカテレア。

 『羅刃昇破(らじんしょうは)』から水面蹴りを得て『幻夢槍(げんむそう)』で(しめ)と。

 うん、結構つかえるじゃん『霧幻天神流忍術覇神門(むげんてんしんりゅうにんじゅつはじんもん)

 あのワガママボディを見せつけられながらも、がんばってあやねちゃんを倒した甲斐があるってものだ。

 チラリと朱姉に視線を向けると、先程よりスピードが落ちたイリーナの拳を捕ると同時に、空中に放り投げているところだった。

 縦回転しながら宙を舞い、顔面から地面に突っ込むイリーナに思わずしかめっ面になってしまう。

 あれって絶対、前歯か鼻が逝ってると思う。

 しかし、朱姉の動きは見事なものだ。

 柔術は『無限の闘争』で習得したんだろうけど、あの打撃に関する防御勘はどうやって身に着けたんだろう。

 今のやり取りで気づいたけど、捌きや相手の身体を捕った際に雷光を流し込む余裕まである。

 ああいった勘は経験によって(つちか)っていくもので、短期間でモノになんてできないはずなんだけど。

 思考に(おちい)ろうとした私は、殺気と共に高まる魔力を感じて顔を反らせた。

 次の瞬間、鼻先を紫色の魔力弾が(かす)めていく。

 放たれた方を見れば、鼻梁(びりょう)が曲がり顔の下を血で濡らしたカテレアが、樹に座り込んだまま血走った目でこちらを(にら)んでいる。

 さすがは腐っても魔王の血族、あの程度ではやられないか。

「あああああああっ!! 死ね、死ね、死ねぇッ!!」

 憎悪に塗れた絶叫と共に狂ったように魔力弾を撃ちまくるカテレア。

 悪魔の貴族連中が接近戦を好まないのは知ってるけど、こうまで射撃特化だとは。

 真の魔王を自称するなら接近戦も一流なところをみせてほしいもんだ、まったく。

 とは言え、今や放たれた魔力弾は視界を埋め尽くすほどの弾幕を()している。

 流石にこれを馬鹿正直に掻い潜るのは骨だ。

 だったら、忍者らしくいこうじゃないか。

 呼吸を整え氣を練り上げながら駆けだした私は、剣指で九字を切りながら弾幕の渦中に飛び込んだ。

 迫りくる魔力弾の壁を前に、ミニ美朱を生み出す術式をアレンジして発動。

 生み出すのはミニサイズではなく、私と寸分違わない分身一つ。

 思考AIの代わりに火遁(かとん)術式を仕込んだそれを盾にして飛び退くと、無数の弾幕に貫かれた分身は周囲の魔力弾を巻き込んで盛大に爆炎を上げる。

 巻き起こる紅蓮の炎の中を駆け抜けた私は、此方(こちら)の姿に驚愕の表情を浮かべるカテレアの腕を捕り右掌を胸元に当てる。

 先ほどの『雷打』とよく似た体勢だが、今から放つのはそれほど優しくはない。

「はあぁっ!!」

 振りではなく体重移動を威力に変える寸打の要領で掌を撃ちこんだ私は、そのまま練り上げた氣と雷光をカテレアの体内に叩き込む。

 寸打で『くの字』に折れたカテレアの身体は勁と電撃が走る度に大きく跳ね上がり、背後の樹はカテレアの身体を突き抜けた衝撃によって砕け散った。

 氣を放ち終えて身体を放すと、血塊を吐き出したカテレアは前のめりに崩れ落ちる。

 これぞ秘技『鎧通し』

 戦場で甲冑を付けた相手を素手で葬る為に生み出された必殺の奥義だ。

「カテレア様ッ!?」

 一歩間合いを取って残心を留めていると、悲痛な声が響いた。

 視線を向けると、そこには朱姉に背中を向けてカテレアに駆けよろうとするイリーナの姿。

 しかし、その行動は迂闊に過ぎる。

「あらあら、私に後ろを見せてどうしようというのです?」

 にこやかな口調とは裏腹に一瞬で奥襟(おくえり)と右手を捕らえる朱姉。

 そして次の瞬間————

「エレクトリッガー」

 両手から流し込まれた高圧電流にイリーナは声も無く悶絶し、余剰となった雷撃はその身体を突き抜けて天を焦がす。

 しかし、朱姉の攻撃はまだ終わらない。

 全身から黒い煙を脱力するイリーナを自分を軸にブンブンと振り回して上空に放り投げると、全身に雷光を宿しながら地を蹴り、空中で縦回転するイリーナの顔面を両膝で捕らえて頭から全体重と共に地面に叩き付けた。

 地響きと共に何かが砕ける鈍い音が響き、頭部へのダメージと雷撃のダブルパンチを食らったイリーナの身体は、一度痙攣(けいれん)するとその動きを止めた。

 ……えーと、なにあの連続技。

 人の事言えた義理じゃないけどエグ過ぎやしませんかね。

「ふぅ……。なんとかなったけど、『極楽鳥』は使うと足が痛いわね」

 小さく愚痴りながら、緋袴(ひばかま)の上から膝をさする朱姉。

 技は憶えても武術用に身体を造っているわけじゃなさそうだから、痛めるのも仕方ないよね。

 ともかく、これでテロリストの掃討は終了。

 少々地味だったかもしれないけど私達の力も見せられたし、誰も大きな怪我をしなかったから万々歳かな。

 こちらに向かって歩いてくるパパと朱姉の姿にホッと息をついたこの瞬間、私の左腕が何かに絡め捕られた。

 凶悪な力で締め付けられる痛みに顔を(しか)めながら目をやると、そこには幽鬼のような表情のカテレアが触手に変化した右腕を私に巻きつけている。

「————ただでは死なない。小娘、お前も一緒に来てもらうぞ」

 言葉と同時にカテレアの身体に浮かび上がる術式の紋様。

 あいつのいう通りなら、おそらくあれは自爆用の術式だろう。

 触手を振りほどこうとしてみるが、骨が軋む程に締め付ける拘束は片腕では外れそうにない。

 舌打ちをしながら、触手へ雷撃を流し込もうとすると、

「無駄だ。今、私とお前は絡みついた手の一部が同化し繋がっている。この状態で私が死ねば、呪詛によって貴様の命も尽きる事になるぞ」

 言葉と共に死相が浮かんだ顔を醜悪に歪めるカテレア。

「美朱!」

「待っていろ、今助ける!!」

「来ないで!」

 こちらに駆けよろうとする朱姉とパパを制止した私は、不敵な笑みを顔に張り付けてカテレアを睨み返す。

「ふん、いいのか? 家族の手を借りなくて。もしかしたら助かるかもしれんぞ?」

「そうなったらパパ達が来た瞬間に、術式を暴走させて自爆するつもりのくせに。そんな手に乗るわけないじゃん」

「可愛げのないガキだ。ならば、このまま私と共に死ぬがいい」

「生憎だけどそれもパス。あの世にはあんただけで逝きなよ」

 言葉と共に私は大きく息を吸う。

 息吹を放って呼び覚ますのは、経絡よりももっと深いモノ。

 『無限の闘争』で戦った羅将神(らしょうじん)ミヅキに殺されかけた時に感じた、私の血の中に眠る力。

 すなわち、姫島が代々受け継いできた南方を守護せし四神『朱雀(すざく)』の炎! 

「ぎゃああああああああ……ッ!?」

 目を見開くと同時に布を裂くようなカテレアの悲鳴が響く。

 見れば、私と繋がっていた奴の右腕は肘から下が炭化して消滅し、代わりに私の右腕には煌々(こうこう)と燃え上がる紅蓮の炎が宿っている。

「ぎぃぃ……ッ!? 同化していたはずの細胞を私のモノだけ焼き払うとは……なんだ、なんなのだ! その炎は!?」

「これは四神『朱雀』の聖炎。この炎の前では邪悪の一切が焼滅(しょうめつ)し無に還る」

「朱雀だとッ!? 馬鹿な、そんな強力な神獣の力をただの混ざり物に制御できるはずが……ッ!?」

「死に逝くあんたに語る必要はない。消えなよ『星火燎原(せいかりょうげん)』!!」

「……ッッ!?」

 大きく右手を振り抜くと大地を舐めるように炎が(はし)り、紅蓮の波に飲み込まれたカテレアの身体は一瞬で消滅した。

 カテレアと共に炎が消えると、襲ってくる脱力感によって私はその場にへたり込んでしまう。

 荒くなった息を整えながら額を拭うと、手にべったりと汗が付いている。

 この一気に押し寄せる疲労感は何と説明すればのいいだろう。

 例えるなら、校内マラソンのスタートからゴールまでの疲労を一瞬で味わうと言えばいいか。

 やっぱり『朱雀』の力は制御が難しい。

 通常の必殺技で5回、超必殺技だと1回撃ったらガス欠だ。 

 こんな有様では、怖くてとても実戦では使えない。

 使いこなせるようになるのはまだまだ先かな、これは。

「美朱、大丈夫か!?」

「怪我は無い?」

 駆けよって来たパパと朱姉に、フラフラ右手を振って無事をアピールする。

「身体はなんともないけど、力を使いすぎて動けない。パパ、会議室まで運んでもらっていいかな?」

「お安い御用だ。さ、掴まりなさい」

 片手でヒョイと抱き上げられた私は、落ちないようにパパの首に手を回す。

 パパ、そんなに顔がユルんでると朱姉に呆れられちゃうよ?

「美朱、さっきの炎なんだけど、本当に『朱雀』の物なの?」

「うん。『無限の闘争』での修業中に使えるようになったんだ。燃費がもの凄く悪いから、すぐにガス欠になっちゃうけど」

「身体への負担はどうなのだ。悪影響は無いのか?」

「体力的にヘロヘロになる他は特に何も。それより朱姉はどこであの柔術覚えたのさ? 私はそっちの方がびっくりしたよ」

「貴女と同じ『無限の闘争』でね、鼎二尉(かなえにい)っていう女性自衛官の方に教えてもらったのよ」

 鼎二尉……? 知らない名前だな。

 慎兄に聞けば詳細がわかるかも。

「じゃあ、あの防御勘は? あれって相当上級……ていうか、私とトントンくらいに見えたけど」

「あれはね、別に勘や経験で躱している訳じゃないのよ」

「え? じゃあどうやって」

「それは体の周りに魔力で微弱な電波の結界を張っていて、その変化で相手の攻撃を感じ取っていたのよ。レーダーみたいにね」

 笑顔で説明する朱姉の顔を見ながら、私は呆然となってしまった。

 ゑ、それってもしかして『テラフォーマーズ』のアドルフさんの能力と同じ原理じゃね?

「たまたま見たテレビの番組で電気ウナギの事が特集していてね。その感覚器の原理をマネられるじゃないかなって、やってみたら上手くいったのよ」

 やっぱり電気ウナギか!

 テレビで見ただけで再現するとか、地味に朱姉の才能もチートがかってるじゃん。

 もしかして、姉弟で一番弱いのって私だったりするのかな……。

 内心ヘコミながらもパパに抱かれて入った会議室は、その様相をがらりと変えていた。

 中央に会った円卓は撤去され、代わりに来賓用の机と椅子が普通の教室の様に順序良く置かれている。

 そして、それに相対する教卓の位置には慎兄の席が用意されていた。

 これが天照様が言っていたサミットの会場なのだろう。

 しかし慎兄と玉藻さんの姿が見えないのだが、何処にいったのだろうか。

「ふむ、我々の席はどこにあるのかな?」

 パパの言葉に視線を巡らせてみると、リーア姉達の席があった三勢力の席は教室の外れに用意されていた。

 はい、安定のディスりようですね。

「もし、少し良いか?」

 親子三人ため息をつきながら三勢力の席に行こうとすると、横から声を掛けられた。

 見ればそこには中華風の豪華な衣装に身を包んだ男性が立っている。 

 たしかこの方は道教の最高神である天帝様だったっけ。

「このような姿で申し訳ありません。パパ、降ろして」

「よい。声を掛けたのは(ちん)の方だ。それに身体が本調子では無いのだろう? 気にせずに楽にするがよい」

 人を安心させる笑顔で天帝様はそうおっしゃると、私の方に手を向けて頭から足までなぞる様に動かした。

「ふむ。やはり朱雀の力を感じるな。盟約を結んだ血族とはいえ術式も無しに彼奴が力を貸すとは、よほど其方(そのほう)の事を好いているようだ」

 私に向けていた手を降ろし、納得したように頷く天帝様。

 そう言えば、朱雀を始めとした四神、麒麟(きりん)や応龍なんかの瑞獣(ずいじゅう)って天帝様の(しもべ)なんだっけ。

「娘よ。人外の血を持つとはいえ、人の身で朱雀の力を振るうのは難儀(なんぎ)であろう。しかし、奴を忌避(きひ)しないでほしい。あれが其方に貸し与えている浄炎は、必ずや助けとなるであろうからな」

「ありがとうございます」

「うむ。もうすぐ会議も始まる、其方らも席につくがよい」

 そう言い残して天帝様は立ち去って行った。

 何と言うか主神の皆様って普通にいい方が多いよね。

 悪評がすんごいゼウス様とかには会った事が無いから、そう思うのかもしれないけどさ。

 各々に散っていた主神の皆さまが席につき始めたので、私達も用意された席に腰かける。

 といっても、私は未だに動くことが出来ないのでパパの膝の上に座らされているのだが。

 その際、朱姉とどっちの膝の上に乗せるかでひと悶着あったのだが、それは割愛しておく。

 あと、クー兄は普通に私の後ろに椅子を持ってきて座っている。

「そう言えば、クー兄ってなんでさっきの闘いに参加しなかったの?」

「ありゃあ、お前等の家族の戦だろ。そこに首を突っ込む程、俺は無粋じゃねえよ」

 ふむ、どうやら気を使ってくれたらしい。

「ありがと。駒王神社の上司として、この事を査定に加味するように慎兄に言っといてあげるね」

「頼むわ。そろそろ懐が心許ないからな、ここらで賞与なんてくれると助かる」

「残念ですが、賞与は勤続半年以上ではないと発生しません」

「……世知辛ぇ」

 シャラップ、賞与が出る事が約束されているだけでも破格の待遇と思いなさい。

 パパがチラチラとクー兄に疑わしげな視線を送る中、他愛もない会話を続けていると、職員室の扉が開いて慎兄と玉藻さんが入ってきた。

 ようやく会議が始まるようだ。

 今更だけど、無事で終わりますように……。




 ここまで読んで下さってありがとうございます。
 今回は必殺『困った時の美朱視点』を使わせていただきました。
 あと朱乃がパワーアップしたのはいいのですが、なぜこうなった?
 本当は魔導士方向に上げるつもりだったのに、育成失敗したというのか……
 そういえば、朱雀の事を調べていたら『ふしぎ遊戯』という漫画の事を知りました。
 少女マンガは読まないのでまったく知らなかったのですが、主人公の名前を見てビックリ。
 美朱(漢字まで同じ)でしかも朱雀の巫女とか、偶然の一致ですかねぇ。
 そう言えば、連載初期の頃に感想欄で指摘された読者様がいたなぁと、同時に思い出したり。
 うん、偶然とは不可思議ナリ。
 という訳で、今回の用語集です。

〉ドラゴンクエスト5主人公の娘(出典 ドラゴンクエスト5)
 『ドラゴンクエスト5-天空の花嫁-』の後半で仲間になる主人公の娘。
 エルヘブンの民の子である父と天空の勇者の末裔たる母の間に生まれた、新たな天空の勇者、の双子の妹。
 息子とは対照的に攻撃よりの魔法使いで、イオ系やヒャド系といった複数対象の攻撃呪文で敵を纏めて薙ぎ払うのが得意。
 補助の呪文も敵を眠らせるラリホーや味方の攻撃力を増加させるバイキルトなど、攻めに向いたものを覚える。
 ただし回復魔法は一切覚えないので、互いに補う兄妹の連携が勝利への鍵と言える。
 また、母親の勇者の血を色濃く受け継いだ兄とは対照的に、動物や魔物とすぐ仲良くできるという、父親譲りの素質をもつ。
 リメイク版以降に導入された会話システムにより性格がより詳細に明らかになった性格では、高い所が苦手だったり詩人に憧れていたりと、歳相応の女子らしいデリケートな部分やロマンチストなところがあり、比較的フローラに近い性格といえる。
 デフォルトネームは『タバサ』

〉虎煌破砕掌(出典 龍虎の拳(ゲーメストコミカライズ版))
 天獅子悦也氏著のコミカライズ『龍虎の拳』において、Mr.カラテがリョウとの対戦中に使用した技。
 作中ではリョウの虎煌拳を掌底で掻き消していた。
 これは原作のゲーム『龍虎の拳』において、飛び道具に通常技をタイミングよく当てれば飛び道具を掻き消せるという、ゲームシステムに名前を付けた物と思われる。

〉ドカベン(出典 MUGEN)
 某氏が作り出したキャラクター。
 いわゆる『やきう』キャラで、『ドカベン』のロゴがそのまま戦う。
 その戦闘スタイルはボールを投げる、キャッチャーミットで相手を投げる、『山田太郎』を召喚、とカオス極まりない。
 その中でも最も凶悪なのが、バットで相手をホームランする超必殺技。
 その名も『やーまだたーろうー』(技名は全てドカベンの主題歌の歌詞から取られている)
 これを食らうとあのテーマ曲と共に、画面いっぱいにドカベンのオープニングのロゴ
が映し出されて、相手は死ぬ。
 しかもゲージ使用は1でバンバン使ってくるため、見た目に反して『狂』キャラ認定を受けている。


〉んんんんー、許るさーん!!(出典 餓狼伝説)
 初代『餓狼伝説』で発した伝説の誤植。
 ストーリー間のデモでギース・ハワードが憤慨してその台詞を言った。
 正しくは「んんんんー、許さーん!! 私の遊びを邪魔しおって!!」 で、明らかに「る」が多い。
 しかも、この後のシリーズではこれが公式になってしまった。

〉雷打(出典 ストリートファイターⅢ)
 女子高生忍者いぶきの使用する必殺技。
 ヒットすると相手の腕を片手で持ち上げ、もう片方の腕で脇腹に拳を当ててそこから気を放って相手を吹き飛ばす打撃投げ。
 ストリートファイターⅢでは、発生が早くブロッキング不能で受け身も不可の為、反撃や起き攻め・連続技、リープアタック後や飛び込み後などの対ブロッキング対策となった。

〉バラキエル・ブレイク・ダークサンダー(出典 オリジナル(バオー来訪者))
 バラキエルが慎の部屋でたまたま見つけた『バオー来訪者』をヒントに編み出した超高圧雷撃。
 オリジナルの『バオー・ブレイク・ダーク・サンダー・フェノメノン』を参考に、体内で雷撃の電圧を増幅して放っている為、通常の雷撃とは段違いの威力を誇る。
 初披露ではカテレア・レヴィアタンの眷属六人を一瞬で消滅させるに留まらず、使用時のビジュアルから我が子二人の腹筋をも破壊させた。
 間違っても『ウォォォーーム』と吼えたり『バル! バル! バル!』と鳴ったりしない。
 また、武装現象でもないし、触れても死を意味したりはしない。

〉鎧通し(出典 ストリートファイターⅢ)
 女子高生忍者いぶきの使用するスーパーアーツ。
 打撃を打ち込んだ後、そこから気を流し込んで相手を吹き飛ばす。
 初段が投げ判定なので発生時に投げ間合い内であればコマンド投げに、投げがはずれた場合は近距離前方を広くカバーする打撃技になる珍しい性能を持つ技。


〉エレクトリッガー(出典 ザ・キングオブファイターズ)
 二階堂 紅丸の超必殺技。
 手の頭を掴んで大量の電流を浴びせるコマンド投げ。
 離した後に放電しながら両手を左右に広げるポーズを取る。
 元々は『96』における没技である。
 投げ間合いは広くなく、威力も超必殺技としては低めであるが、紅丸のスピードや小攻撃主体の攻めに絡めると脅威になる。

〉極楽鳥(出典 アカツキ電光戦記)
 アカツキ電光戦記に登場する女性自衛官『鼎二尉』が使用する必殺技。
 飛び上がり相手を掴む対空投げで、単発でも機能するが四方投げの〆や攻性防禦のダメージアップで使うのが主な使い方。
 特攻(EX)版は股で相手の頭部を捕らえるいわゆる幸せ投げとなる。

〉あやね(出典 DEAD OR ALIVE・NINJA GAIDEN)
 デッドオアアライブのキャラクター。
 紫色のショートヘアの女性。
 主人公『かすみ』の異父妹なのだが、不義の子であるために霧幻天神流忍術の中でも暗殺などの汚い仕事を請け負う裏の顔(覇神門)で育つ。
 まだ十代半ばのくノ一でありながら同門最強の忍と言われ、天才の名を欲しいままにしている。
 また妖術にも長けており、『深山の女天狗』という異名を持つ。
 異父兄である疾風が雷道に敗北したのを切っ掛けに、抜け忍となったかすみを始末する為に追手として付け狙っている。
 また、リュウ・ハヤブサを主人公とした外部作品『NINJA GAIDEN』(忍者龍剣伝のリメイク)にも出演しており、この時はDEAD OR ALIVEの2年前という設定で14歳。
 リュウの部下としてサポートを行っていたが、『2』からはプレイヤーキャラとして使用できるようになった。

〉霧幻天神流忍術覇神門(出典 DEAD OR ALIVE)
 DEAD OR ALIVEに登場する架空の忍術流派。
 霧幻天神流忍術の裏の流派であり、忍びの怛のとおり秘密主義に覆われた霧幻天神流にあって、さらにその存在を秘匿とされる神秘の忍術。
 通常の忍術、体術のほかに超常現象的な術である妖術に優れるとされ、覇神門が恐怖される所以もここにある。
 使い手は極めて少なく、一般に表の天神門を補完・援護して暗躍する。
 その力に反して、一門の掟により表の流派である天神門の忍びに対しては絶対の服従を余儀なくされている。

〉羅刃昇破(出典 DEAD OR ALIVE)
 あやねが使う連続技の一つ。
 敵に背中を向けた状態から振り向きざまの手刀を二撃放ち、最後に掌底で撃ち上げる。
 地上よりも、空中コンボ時の浮かし直し性能が高く、この後に連続技や大技を決めるチャンスがある。
 
〉幻夢槍(出典 DEAD OR ALIVE)
 あやねが使う蹴り技の一つ。
 相手に向かって跳躍し、錐もみ回転を加えた両足飛び蹴りを放つ。
 高威力を誇り当たれば相手は吹っ飛ぶのだが、その分外した際の隙が多く使いどころを間違えると手痛いしっぺ返しが待っている。
 
〉羅将神ミヅキ(出典 サムライスピリッツ)
 サムライスピリッツの登場キャラクターの一人。
 『真SAMURAI SPIRITS 覇王丸地獄変』の最終ボスとして初登場。
 約1000年前の隠岐で、生まれると同時に口減らしの為に海に棄てられた赤子がいた。
 赤子は棄てられた憎悪から、朽ちゆく自身の肉体を生け贄とし暗黒神・アンブロジァと仮契約、仮初めの不死を得る。
 その後、アンブロジァの力で陸奥に漂着した赤子は「みづき」と名付けられ、恐山の霊力を吸収しながら育つ。
 やがて13歳になり、十分な霊力を蓄えたミヅキは自らを拾い育てた養親を含めた村人全ての命を生け贄に、アンブロジァと正式に契約を果たし、以後「羅将神ミヅキ」を名乗り数百年間に渡り世界に災厄を振り撒く。
 初登場の真サムでは圧倒的な性能と非常にパターンにハメづらいCPUアルゴリズムでラスボスに君臨。
この頃のアンブロジァはオプション動物扱いで、 ぶっちゃけるとパピーのコピペ ではあるが。
非常に怒りやすく、怒り持続時間も長く設定されており、ワープで翻弄され、空中から地面に叩きつけられ、犬に咬まれ、
レバー操作を逆にされ、ピンボールの球にされ、玉串でバッサリとやられて乙るのは誰もが通る道である。
乱入キャラの黒子がやたら強いことといい、真サムのCPU戦は歴代屈指の難易度となっている。

〉星火燎原(出典 幕末浪漫 月華の剣士)
 『幕末浪漫 月華の剣士』の登場キャラクタ-『嘉神 慎之介』が使う超奥義(超必殺技)の一つ。
 右手を下から掬い上げる動作で放った炎で、地面を薙ぎ払う。
 パワーウェイブ等のような地を這う飛び道具で、ヒットすると相手を燃やした後、その場に崩れダウンさせる。
 ガード不能で弾速も速いが、発生が非常に遅いため連続技に組み込むことができない。
 確定状況が地対空の弾き(特殊動作で相手の攻撃を弾いて隙を作るシステム)が成功した時くらいしかない。
 さらに見た目に反して攻撃判定が地上にしか無く、相手が少しでも地面から離れているとヒットしないため、見てからジャンプなどで簡単に回避される。
 また、技を放った後の硬直も非常に大きく、起き攻めに使える程度で、基本的には魅せ技である。

 今回はここまでとさせていただきます。
 また次回でお会いしましょう。

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