MUGENと共に   作:アキ山

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 みなさん、お待たせしました。
 リアルで転勤やら何やらと忙しかったために、大幅に投稿が遅れてしまい申し訳ございません。
 


閑話『兵藤一誠救出作戦(急)』

 みなさん、お元気ですか?

 現在、リアルでゾンビムービーの世界を体験している、姫島慎です。

 さて、MUGENを知らない諸兄は『バイオハザードのキャラでドット絵の格ゲー出てるのなんて、ジルだけだろ!』などと鼻で笑っているかも知れないが、それは大きな間違いだ。

 MUGENのクリエイター諸氏は、貪欲かつ創作意欲に溢れている者が多い。

 格ゲーはもちろん、ベルトアクションゲームや世界一有名な赤い配管工に代表されるアクションゲーム、果てはシューティングやシミュレーション、RPGのキャラまでも格ゲーキャラにする猛者がいるのだ。

 MVC2のジルから抽出したデータからゾンビやゾンビ犬、タイラントを作成するのはもちろん、手書きのハンターや追跡者などを創る輩が現れてもそれは自然の流れと言えよう。

 何が言いたいのかと言うと、俺達が入ったラクーンシティは原作さながらの再現度ということだ。

 辺りを漂う鉄錆に似た乾いた血と腐臭、そして何かが燃える焦げ臭さ。

 高層ビルやアメリカさながらの大きな邸宅が立ち並ぶメインストリートには、バリケード代わりに使われたであろう、道を塞ぐように停車されたパトカーや事故車両が放置され、辺りにまともな人影はない。

 あるのは、生者の生肉を狙う動く半ば腐り落ちた生きる屍と、人為的に生み出された異形の怪物だけ。

 無限の闘争(MUGEN)さん、気合入りすぎである。

 こんなところまで頑張って仕事しなくていいと思います。

 言うまでもないと思うが、今だって襲われている最中で、朱乃姉や美朱、サイラオーグの兄貴が頑張って進路を確保してくれている。

 かく言う俺はというと、

「ヒャッハー!! 汚物は粉砕だぁぁぁぁ!!」

 将軍様との死闘から生還できた喜びからハイテンションで拳を振るい、衝撃波で並みいるゾンビ共を爆砕していたりする。

 俺の放つ衝撃波は大砲レベルの威力があるようで、一発放てばゾンビの人垣に大穴が開き、建物なんかもガンガンブッ潰れていく。

 うん。なんと言うか、スッゲエ気持ちいい。

 過去の俺ならば、あの生き腐れの中に飛び込んで、血と腐汁に(まみ)れながら暴れていたはずだ。

 しかし、今は違う。

 拳も服も汚れないし、気持ち悪い肉も臭い汁も触らなくていいのだ。

 ヤムチャさんは本当に良い技を教えてくれた。

 もう彼には足を向けて眠れないな。

「ふはははははははっ! 飛び道具サイコー!!」

「オロロロロロ……」

 俺の隣で酸っぱいモノをぶちまけてるのは、リアス姉である。

 どうも、モツや肉片が乱れ飛ぶ光景に耐えられなかったようだ。 

 まあ、悪魔といっても必ずしもグロ耐性があるわけではない、ということだろう。

 いや、生粋のお嬢様であるリアス姉にそんなものを求めるのが間違ってるんだが。

 しかし、残姉の次はゲロインか。

 着々とマイナス方向に属性を()っていってるな。

 まあ、色々と今さらなので見る目が変わることはないが。

 ん、俺は大丈夫なのかって?

 この程度で参ってたら、モーコンキャラの相手なんてできませんぜ、ダンナ。

 因みにミリキャスとアーシア先輩はギャスパーのシェルターに避難させている。

 こんなゴア表現100%の街にいるのは、心の汚れた大人で十分である。

「塔城、イッセー先輩の反応はどこにある?」

『……ウップ……街の中央にある一番大きなビルです』

「調子悪そうだな、大丈夫か?」

『……誰が原因だと思ってるんですか。ご飯時にあんな光景を見せるなんて、悪意しか感じません』

「ブラックホール級の食欲を持つ塔城でも、戻す時があるんだな」

 ゲロインならぬゲロ猫か、新しいな。

『……情報支援を打ち切ります』

「正直すまんかった」

 塔城が本気で怒っているようなので、素直に頭を下げておいた。

 冗談はさておき、リアス姉の体調がすぐれないのは確かだ。

 バイオハザードに関してはステージ設定なので、ウイルス感染は無いとは思うが万が一という事もある。

「ギャスパー、そのシェルターに集団感染対策の除染機能ってあるか?」

「ちょっと待って。…………あるよ。使用者への滅菌処理機能付きだって」

「そいつは重畳(ちょうじょう)。じゃあ、リアス姉を収容してくれ。滅菌処理を入念にしてな」

「ウッ……! 慎、私はまだ大丈夫よ」

 住宅の角に手を置いて戻していたリアス姉が、少し嗄れた声で抗議を上げる。

 気丈にこちらを向いているが、蒼白な顔は冷や汗塗れな上に戻した際に出た涙と(よだれ)で酷い有様だ。

「いや、全然大丈夫じゃねえから。街には入る前にウイルスの話はしたよな? 体調崩して感染したら動く死体の仲間入りだぞ。もしそうなったら、小父さんとサーゼクス兄になんて言えばいいんだよ」

「でも、また貴方に頼ることになってしまうわ。……私は姉なのに」

 そういうことは、幼児退行を治してから言ってください。

「それこそ気にする事じゃないさ。ここは俺の能力が繋いだ世界だから、俺が矢面に立つのが一番効率的なんだよ。ほら、よく言うだろ『餅は餅屋』ってさ。リアス姉は自分の為べき事をやればいいんだよ」

「私のすべき事?」

「眷属の長として、イッセー先輩が戻ってきた時に暖かく迎えてやることさ」

 俺の言葉にリアス姉は虚をつかれたように目を丸くする。

「……それだけでいいの?」

「ああ。先輩が安心して帰れる場所になる、王であるリアス姉以外に誰も出来ない重要な仕事だろ」

 ポン、と頭に手を置いてやると、乾きかけていたエメラルドグリーンの瞳がまた涙に濡れる。

 ん、対応を間違えたかな。

「私、迷ってたの。次のグレモリー家当主を辞退しようかって」

「リアス姉……」

「だって……次期当主って言われてるのに、慎や美朱に手伝ってもらわなきゃ駒王町の管理もできない。それに聖剣事件の時も、何も出来ずに言われるままに冥界に逃げ帰るしかなかった。春の堕天使の件もそう。初めてのレーティングゲームもライザーに負けた。こんな私が当主になったらグレモリー領がおかしくなっちゃう」

 涙と共に、心にため込んでいたものを吐き出し始めるリアス姉。

 思い返せば、あの時の俺の態度は日本神話の構成員としてはともかく、グレモリー家の弟分では配慮が足りなすぎたのではないか。

 俺としては危険な目にあってほしくない一心でみんなを冥界に送った。

 しかし、それが管理者としてのリアス姉のプライドを傷つけたとしたら……

 祐斗兄にしてもそうだ。

 彼が聖剣に並々ならぬ執着を持っていたのはわかっていた。

 しかし、俺は公の都合であっさりとそれを切り捨てた。

 あの時の対応は間違ってるとは思わないが、もう少しやりようがあったのではないだろうか。

 なんにしても、この件が終わったら祐斗兄には謝らないとならんだろう。

「ごめん、リアス姉。聖剣事件の時はっ、配慮がっ! 足りなかった、ダラァッ!!」

 顔を覆って泣くリアス姉に、見えないのはわかっていても俺は頭を下げた。

 うん、謝罪のわりに声がおかしいって?

 いや、ふざけてるワケじゃないぞ。こうしてる間にも黒光りするGみたいに四方から集まってくるんだよ、あの生き腐れ共。

 片っ端から吹っ飛ばさないと、シェルター組はともかくリアス姉が危ないからな。

「慎?」

「リアス姉がッ! そこまでッ! 気にしてるとは…リャアッ! 気づかなかった。当主のことはッ! わからないけどッ! 自分が笑えなくなるとッ! 思うならッ! 辞めてもいいんじゃないかッ! 俺達が大事なのは、『リアス・グレモリー』じゃなくてッ! リアス姉だからな。……しつこいぞ、くたばりぞこない共ッ! テュホンレイジ(偽)!!」

「……慎」

「なんだ?」

「移動して話したほうがいいかしら?」

「そうしてくれると助かる」

 空気が読める子は大好きです。

 

 大暴れしたお陰で一時的に周辺のゾンビ共がいなくなったので、進路を確保してくれていた三人と合流した。

 さっき胸の内をぶちまけたからか、リアス姉もシェルター入りに同意してくれたので、ギャスパーに声をかけたのだが、どうも様子がおかしい。

「ギャスパー。どうしたんだ、ギャスパー」

 シェルターの頭頂部を軽く叩きながら呼びかけると、(しばらく)くしてくぐもったギャスパーの声が返ってきた。

「慎君、どうしよう!? シェルターが電力不足で稼働を停止するってアナウンスが流れてる!」

「はぁ!?」

 寝耳に水な事態に驚いていると、シェルターから唸るような音が聞こえ、子供の拳程度の大きさの入り口からミリキャス、アーシア先輩、ギャスパーの順に飛び出してきた。

 唖然(あぜん)とする一同を余所に、件のシェルターは役目を終えたと言わんばかりに自らの体を縮めていき、ついにはポケットに入るサイズにまで小さくなってしまった。

「……どうなってるの、これ」

「僕にもなにがなんだか……」

 地面に転がるシェルターを見ながら呟いた美朱に、ギャスパーは白旗を上げる。

「これの取り扱い説明書はないのか?」

「は、はい。これですぅ」

 人見知りが発動したのか、ギャスパーがおずおずと差し出した紙束を受け取るサイラオーグの兄貴。

「ふむ。これが原因ではないか?」

 パラパラと走り読みしていた兄貴は、とあるページで手を止めて、みんなに見えるように説明書を出してきた。

 一同が覗きこんだページには『購入時には最低限の電力しか備蓄されていません。使用前には必ず、発動機で原子力単三電池の発電を開始してください』との注意書きがあった。

 原子力単三電池って魔界都市製かよ、このシェルター!

「少年、この発動機でというのに心当たりは?」

「えっと……、もらった時に大きな機械が付いてたんで、それじゃないかと」

「その機械はどこにいったの? シェルターの中?」

「重くて持てなかったから、控え室に置いてきちゃいました。……ご、ごめんなさいぃぃぃ!?」

 リアス姉の追求に、頭を抱えてうずくまるギャスパー。

 その姿に思わずため息が洩れる。

 充電不足とは間抜けな理由だが、こちらも、アテにしながら『ギャスパーのものだから』と詳細を確認しなかったのだから、迂闊(うかつ)なのはお互い様だ。

「ともかく、こっからは全員歩きって事だね。アーシア姉とミリ君は、みんなからはぐれないように気をつけて」

「は、はい」

「わかりました」

 美朱に注意を受けて戸惑いぎみのアーシア先輩と、元気に答えを返すミリキャス。

『……聞こえますか、皆さん。小猫です』

 塔城から通信が入ったのは、街の中央のビルに移動を初めてすぐだった。

「どうしたの、小猫?」

『……あの、今コンソールに妙な文字が浮かんでるんですけど、そちらは大丈夫ですか?』

「妙な文字?」

「こっちはギャスパーのシェルターが使用不能になった事以外は問題ない。コンソールには何て浮かんでいる?」

 首を(かし)げるリアス姉を余所に問い合わせると、塔城はたどたどしくその文字を読んでいく。

『……登録者増加及びシステムリニューアルを記念し、サービスクエスト実施中。参加メンバーに脱落者なくツアーをクリアすると、参加者全員にツアーガシャ十連1回無料プレゼント、だそうです』

 その通信を聞いた俺の顔は、さぞかし微妙なものだったろう。

 え、なにこれ?

 なんで、ウチの無限の闘争がソシャゲーみたいになってんの?

「えーと、塔城?」

『……なんですか?』

「登録者増加って書いてるけど、誰が増えたんだ?」

『……リストでは、リアス部長に朱乃先輩。アーシア先輩とミリキャス君ですね』

 今回の参加者じゃねーか! 俺はした憶えはないぞ、なに勝手に登録してんだ!?

「すまん。塔城、一度そっちに戻る」

『……無理みたいです。クエスト発動と同時に、ログアウト以外で控え室に戻る事は出来なくなったと書いてますから』

「なんですとっ!?」

『……コンソールで見れる地図でも道が分断されているので、本当に帰れないみたいです』

「なんてこった……」

 しまった、完全に油断してた。

 設定は変わっても、これが前回猛威を振るった無限の闘争ツアーである事には変わりはなかったんだ。

「塔城、今回のツアーの目的はどうなってる?」

『……爆撃される前にラクーンシティから脱出すること、だそうです』

「爆撃ですって!?」

『その街は生物兵器として開発されたウイルスが漏洩(ろうえい)したことにより、大規模な生物災害が発生しているという設定なので、感染拡大を防ぐ為に核ミサイルで消し飛ばすそうです』

 リアス姉を筆頭に動揺を隠せない皆に、冷静に説明を行う塔城。

 ヤッパ、最後はゾンビ映画恒例の爆発オチか。

 そんなところまで原作再現せんでもいいだろうに。

「そっちで爆撃までの時間とかわかるか?」

『コンソールには、20時間を示すタイマーが出てます』

 それが今回のカウントダウンだとすれば、残り時間は1日を切っているという事にはなる。

 その間にイッセー先輩を見つけ出して、脱出しなくてはならない。

 ノンビリしてるワケにはいかなくなったな。

「状況は理解した。そっちは引き続き情報支援を頼む」

『……わかりました』

 塔城からの通信が切れるのを耳にした俺は、小さく息を吐いた。

 ここからが無限の闘争ツアーの本番らしい。

 制限時間があるのは痛いが、準備等は前回とは比べものにならない程に充実している。

 後は人員だが、こうなると非戦闘員は強制ログアウトすべきだろう。

「ねえねえ、慎兄」

 誰を戻そうか頭を捻っていると、美朱が声を掛けてきた。

「なんだ」

「さっき小猫が言ってたガシャってなに?」

「ああ。このツアーモードは成績によって、アイテムを(もら)ったり無限の闘争(MUGEN)にいる闘士を仲間にできたりするんだよ。まあ、いつの間にかそのシステムがガシャになってて、俺も驚いてるんだが」

「へー。それでどんなのが出るの?」

「アイテムは装飾品か消耗品、武器は出なかったはずだ。闘士はCランクまでをランダムで。Bから上は直接勝たないと仲間にできんらしい」

「そうなんだ。それで慎兄はどんなの引いたの?」

 答える度に質問をぶつけてくる美朱。

 妙に食い付きがいいな、と視線を巡らせると、奴は妙にキラキラした目でこちらを見ている。

 ……なんかイヤな予感がするぞ。

「俺が当てたのは、お前等にやった装飾品とサイラオーグの兄貴に渡した薬。他の奴が引き当てたのは、ゴンっていうティラノサウルスの子供に白湯ってパンダ。あとオトモアイルーか」

「スゴイ! アイルーもいるんだ!!」

 俺の話に飛び上がって喜ぶ美朱。

 おいおい、なんかテンションがヤバくないか。

(たぎ)ってきた、(たぎ)ってきましたよ!! この美朱ちゃん、ハマって課金中毒になるのが怖くてソシャゲーには手を出さないと心に決めてましたが、このガシャは別!! なんとしてでも忍犬を、赤目(あかめ)様のような忍犬を手に入れてみせますよ!!」

 ゴーストタウンのど真ん中で、犬欲しさに吼える愚妹。

 そのあんまりな姿に思わず目頭を押さえてしまう。

 しかし、何故俺の周りにいる女性はこうなのだろうか。

 というか、赤目ってまたレトロだな。『銀牙』なんて古いマンガ、憶えてる奴なんて少ないだろうに。

「美朱、この十連は無しだぞ。非戦闘員はこれから、強制ログアウトで引き上げてもらうつもりだからな」

「このチャンスを捨てるなんて、とんでもない!?」

「なにドラクエで、重要アイテムを売ろうとした時みたいなセリフ吐いてんだ。ここからはいつ闘士が襲ってくるかもわからんルナティックモードに入るみたいだからな。自分の身を守れない奴は連れて行けん」

「えー。でも、誰を帰らせるのさ」

 ブーたれながらも返してきた美朱の言葉に、俺は候補者に目をむける。

 まずはアーシア先輩……

「私は絶対についていきますから!!」

 ……わかったんで、血糊がベッタリな包丁を素振りするのはやめましょう。

 先輩が浮かべるステキすぎる笑みのせいで、傍らに倒れてる頭を割られた生き腐れについてツッコミが入れられないんだが。

 え、シメサバ丸さんがやってくれた?

 シメサバ丸ってその包丁のこと?

 あー。そういえば美神令子いたな、MUGENに。

 しかし、シメサバ丸って持ち主を乗っ取って通り魔に変える妖刀だったはず。

 どこで手に入れたの、そんな物騒なモノ。

 なに、ポイント交換で貰った?

 おかしいな、あのリストに武器なんて無かったはずなんだが。

 調理道具で登録されてたの?

 たしかに見た目は包丁だけど、いいのか、それ……。

 なあ、先輩。その包丁持った時に変な感覚とか無かったか?

 妖刀さんが話しかけてきたけど、説得したら大人しくなってくれたって?

 マジか……、聖女パねえ。

 ……次、ミリキャス。

「兄様! 僕の冒険は終わってませんよ!」

 なんか、サイラオーグの兄貴相手に打ち込み始めてるんですけど、あの子。

 ……あれ?

 ミリキャス君、その手足に纏わせてるのって、ひょっとして滅びの魔力かな?

「はい! 兄様が以前教えてくれた内氣功を僕なりにアレンジしてみました!」

 理屈を軽く教えただけなのに魔力で応用とか。

 やだ! この子、天才……!

 リーチのみじかさや経験の少なさに不安が残るけど、これなら自衛はできるかな。

「いい打ち込みだ! 基礎がしっかりできているな。これなら、極限流に入門すればもっと強くなれるぞ」

 そこ、ドサクサ紛れに勧誘しない!!

 ……さて、最後はギャスパーか。

「こんな居心地のいい場所を追い出されるなんて、オレは御免(ごめん)だぜ。こうまで死と終末の匂いが濃い街なんてそうは無いからな」

 高めのボーイソプラノに視線を巡らせると、そこには薄汚れたトラッシュボックスの上に腰掛けるギャスパーがいた。

 ヒラヒラとこちらに手を振るその姿に、俺は視線が細まるのを感じた。

 たしかに見た目はギャスパーだが、さっきの口調といい玉座の上のようにトラッシュボックスで足を組む姿から放たれる覇気といい、ヘタレで引き篭もりだった彼とはまったくの別物だ。

「ふむ、どなたかな?」

「ギャスパー・ブラディーだよ、ただし裏のな。宿主の小僧が現状に耐えられなくて目を回してるんでな、ちょいと入れ替わってやったのさ」

 ナルホド、わからん。 

「だれー! ギャーに千年アイテム与えたの! 女装ショタの裏人格とか、あんまり需要無いよー!」

「美朱、ギャスパー君が変わったのは、その千年アイテムが原因なの?」

「多分そうだと思うよ、朱姉。千年アイテムは古代エジプトで造られたもので、その中にファラオをはじめとした有能な当時の権力者の魂が封じられているの。それで、魂はアイテムの封印を解いた者に乗り移ってもう一つの人格として住み着いちゃうんだ」

「それがギャスパー君が変貌した原因……」

「いやいや。オレはその千年なんとかに封じられてたワケじゃないよー。というか、そんなアイテム初耳だし。俺はこいつが産まれた時から一緒にいるんだよ」

 美朱と朱乃姉達の真に迫った的外れな意見に、すかさずツッコミを入れる裏ギャスパー。

 なかなかノリのいい奴である。

 しかし、産まれた時からの付き合い、か。

「お前さん、もしかしてバロールか?」

「察しがいいねぇ。さすがは『第3の無限』なんて厄介なもんを背負ってるだけはあるわ」

 おどけるように両手を広げるバロールに、俺は嘆息する。

 まさか、聖剣事件で立てた予想が当たっていたとはな。

「くたばったとはいえ、フォモール族屈指の魔神だったあんただ。なんで知っているなんて野暮な事は聞かない。ただ、『第三の無限』(それ)は機密事項なんでな。濫りに口に出さないでくれるか?」

「嫌と言ったら?」

「正直困る。機密と言ってもこっちの都合だからな。強制的に従わせるってのは、また違うだろ」

 頭を掻いて言葉を選ぶ俺を、おもしろいモノを見るように笑みを浮かべるバロール。

 奴の瞳が紅から血を固めたような紅黒い色に変化すると同時に、全身から力が抜ける感覚が襲ってきた。

 ッ! まさか、ギャスパーとは視線の効果が変わってるとは……!?

 時間停止とタカを括って無防備だった自分の迂闊さに内心歯がみする。

 『悪しき目のバロール』の異名に表される呪詛の視線、一度死んだくらいで衰えるものじゃないってことか。

 萎えそうになる足に喝を入れて、俺は呼気と共に氣を体内に循環させる。

 経絡(けいらく)を巡り内功に昇華した氣が体を満たすと、全身に活力が戻ってくる。

 視線を合わせた瞬間に吸い取られるような感じがあったのでもしやと思ったが、やはり強力なドレイン系の呪いだったか。

「ストップ! 止めだ、止め」

 吸われる量を(はる)かに超える氣を纏った俺を見て、ホールドアップで降参の意を示すバロール。

「で、どういうつもりだ?」

「人の夢に勝手に出てきた、無限様の力を見てやろうと思ったんだよ。しかし、今のドレインを平然と破るとはなぁ。このナリじゃ逆立ちしたって勝てねえな、こりゃ」

 ぼやきながら、ボリボリと頭を掻くバロール。

 どうやらこいつも夢見で俺の事を知ったクチらしい。

「貴方、バロールと言ったわね。慎を無限と呼んでるけど、どういう意味なのかしら?」

 剣呑なやり取りが終わったのを見計らったリアス姉が、厳しい表情でバロールに問いを投げかける。

 対するバロールは、当たり前の事を聞かれたかのように首をかしげる。

「そのままの意味さ。そこのアンちゃんはオーフィスやグレートレッドに次いで、三つ目の無限の力を宿す個体なんだよ。というか、お前さん言ってないのか?」

「最初に機密だって言っただろうが。なにバラしてんだ、このアホ」

「慎、どういう事なの?」

「機密事項だ。忘れてくれ」

 有無も言わせぬ口調でバッサリと斬り捨てた俺の態度にリアス姉は不満げな表情を浮かべるが、それ以上何も言わなかった。

「それで、バロール。お前さん、どうするつもりだ?」

「さっきの試しの借りもあるしこの街も気に入った。ギャスパー坊やが目覚めるまで、お前達に手を貸してやるよ」

 トラッシュボックスから降りてニカッと少年らしい笑みを浮かべるバロールに、俺は胡乱(うろん)げな視線を向ける。

「お前さんがメインで出て、ギャスパーに影響はないんだろうな?」

「無問題。言っただろ、俺とこいつは産まれた時からの一緒だって」

「……ならいい。お前さんはミリキャスとアーシア先輩の護衛に回ってくれ」

「随分と簡単に信用するじゃないか。オレがこの嬢ちゃん達を、さっきのドレインで喰っちまうとは思わないのか?」

「思わんね。もしお前さんがそんなゲスなら、態々(わざわざ)こっちに顔を見せずにギャスパーのフリしてるだろ。それに───」

 軽く手を振るうと、退魔の力を存分に含んだ純白の稲妻が、バロールの数センチ横に轟音と共に着弾する。

 大南流合気柔術秘奥義『狂雷迅撃掌(きょうらいじんげきしょう)』。

 ギース・ハワードが意図して体得したのか、あるいは周防辰巳から学んだ大南流合気柔術が導いた偶然か。

 自身の氣を外氣功によって拡散、操作する事によって破魔の雷光を生み出すサンダーブレイクは、この技と瓜二つだ。

 無限の闘争の特性の一つに技を研けば研くほど、熟練度と共に技への造詣が深まって行くというのがある。

 サンダーブレイクの熟練度が上がったことにより、こちらとの相性もあって技が本来の大南流奥義へと変化したのだろう。

 その証拠に、今の俺なら技本来の退魔力に光力を上乗せして、他者の体内に潜んだ悪霊だけを焼き尽くす事が可能だ。

「もし、そんな舐めた真似(まね)をしたら、その存在を滓も残さずに消滅させるだけだ」

「……信じられねえ。小源(オド)大源(マナ)をとんでもない純度で融合させて、身体に循環させてやがる。その年でどんな修業したら、そんな事ができんだよ」

小源(オド)大源(マナ)、内氣功と外氣功の事だな」

 大仰に驚くバロールに疑問符を浮かべる周囲の為に、言葉を引き継いだサイラオーグの兄貴。

 その視線を受けて、俺も口を開く。

「周囲から氣を取り込む外氣功の究極は、自然そして空間全ての支配にあり。そして、自身の内なる氣を操る内氣功の究極は、氣脈経絡そして髪の毛一本、細胞一つに至るまでを己がものとし、身体にある宇宙を完全に掌握する事にある」

「双方において極まった者を『真人』と呼び───」

「その者が生み出す力を『覇動』と称す、だったよな。俺はまだまだだけど、極限流総帥のリョウ師範はその域にいるんだっけ」

「ああ。師範は『真人』の域にその身を置き、『活殺合一』の理を悟らんと、日々修業に励んでおられる」

 『活殺合一』

 活人拳の中に殺人拳の理を宿す、活殺自在の拳。

 対戦相手の生き死にも思うがままの、神の如き拳、か。

 そんなとんでもない(いただき)を目指してる人なら、今俺がぶつかってる壁のヒントを持ってるかもな。

「兄貴、この件が終わったら、一度師範と会わせてもらえないか?」

「構わんが、なにか用があるのか?」

「打撃技でちょっと行き詰まっててな。新しい刺激を受ければ、違ったアプローチも見えてくるかと思ってさ」

「そういう事ならばいいだろう。今度道場に行った時に話は通しておこう」

「サンキュー、頼むよ」

 話が脱線しまくったので元に戻そうとリアス姉達のほうを向くと、何故かみんな頭上にはてなマークが見えそうな表情で頭を抱えていた。

「どうした、みんな?」

「はーい。二人がマニアックすぎて、なに言ってるのかほとんどわかりませーん」 

 みんなを代表して手を上げる美朱。

 ……氣功の奥義についての話が、マニアックの一言で片付けられてしまった。

 女性には求道の浪漫はわからないんだなぁ。

 

 

 

 

 裏ギャスパーあらためバロールの協力を得てから、俺達の進行速度は大幅に上がった。

 というのも、バロールの『略奪の魔眼』(ドレイン・アイの事)がゾンビや生物兵器に覿面(てきめん)な効果を発揮したからだ。

 なんでも、本来『略奪の魔眼』はアンデッドには効果が薄いのだが、あの生き腐れ共は死んだ身体をウイルスによって強制的に生かされているので、そのウイルスから活力を奪っているらしい。

 塔城のナビに従い進む事、1時間ほど。

 ミリキャスやアーシア先輩の様子に疲れを見て取った俺達は、ここらで休憩する事にした。

「ふふ……私が手に入れた豪邸が日の目を見る時が来たようね。これを見れば、残虐手当てMAXな弟分も、私のことを浪費女なんて呼べないはずよ!」

「ねーよ」

 豪邸が収納されたホイポイカプセルを掲げて大見得切ってるリアス姉を(はた)く。

 誰が残虐手当てMAXやねん。

「痛いわね! なにするのよ!?」

「こんな障害物だらけの狭い通路に、どうやってそのバカでかい家出すつもりだよ」

「それは、私の滅びの魔力で邪魔なモノをチョチョイと……」

「アホか。サーゼクス兄ならともかく、リアス姉程度の魔力じゃ消してる途中でビルが倒壊してぺしゃんこになるのがオチだ。ここは俺のを使うからしまっとけ」

 不満げに頬を膨らませる年の割に幼い姉貴分は置いといて、俺は肩に掛けたのは4次元リュックから茶色のホイポイカプセルを出した。

 頭にあるスイッチを押して少し離れた場所に投げると、立ち上る煙の中から中程度のログハウスが姿を表す。

 これが今回の宿として俺が購入した家だ。

 オール電化の上にソーラーバッテリー式の自家発電装置付。

 水道もホイポイカプセルを流用した100㌧貯水ボンベを3つ完備している優れ物だ。

「みんな、休憩だ。中で休んでくれ」

 こちらの声に従ってゾロゾロと小屋に入って行く一行。

 自分のカプセルハウスを使うと意気込んでいたリアス姉が先頭だったのは、ツッコまないでやろう。

 念のためログハウスの周辺に認識阻害の結界を張って中に入って空気清浄機を起動させていると、風呂に入ろうと盛り上がっている女子メンバーの声が聞こえた。

「ねえ、慎。貴方も一緒に入らない?」

 イタズラ心満載といった表情で囁いてくるリアス姉に、これ見よがしに深い深い溜息をついてやる。

「ショウジキナイワー」

 感情を一切籠めずに棒読みしてやると、リアクションを期待していたであろう駄姉の顔が引きつる。

「あれ? 朱姉ほどじゃないけどリーア姉もボンッ、キュッ、ボンッの凄い体だよ。ムラムラッてこない?」

「くるワケねーだろ。こっちは肥溜め嵌まって泣いたり、寝小便の罪をなすり付けようとしてるのを見て育ったんだぞ。劣情より先に心配が沸くわ」

「私や朱姉も入るけど?」

「お前等に反応したら人としてダメだろ」

「アーシア姉は?」

「そういう対象として考えたことも無いから興味も沸かん」

「ギャー助?」

「あれは男だろーが。バカ言ってないで、風呂入ってこい」

「ちぇー、慎兄の恋愛感とか分かると思ったのにぃ」

 プーと頬を膨らませて風呂場に向かう美朱を見送った俺は、二階に上がり窓から周囲を警戒する。

 建てる時はいなかった生き腐れ共も、今では結構な数がロッジの周りを彷徨いている。

 幸い、事前に張った認識阻害の結界のお陰で、ロッジに向かってくる奴はいないが。

 ウイルスも生物だ! と、ダメ元で張ってみたがどうやらその発想はビンゴだったらしい。

 このままいけば、しっかりとみんなを休ませられるかもしれない。

 小さく欠伸を漏らしつつ監視を続けていると、木製の階段を微かに軋ませながら男衆が上がってきた。

「なんだよ、下でゆっくりしてればいいのに」

「なんと言うか、湯浴みをしている女性と近くにいるのは落ち着かんのでな」

「リアス姉様が一緒に入ろうって、下着姿で詰め寄ってくるので避難してきました」

「ギャスパー坊やの身体じゃ妙な事をされかねんからな」

 口々に理由を説明する男衆。

 まあ、気持ちは解らんでもない。

「それでどうだ、外の様子は」

「今のところ問題無い。結界も上手く効果を発揮してるみたいだしな」

「そうか。女性陣は入浴を楽しんでいるようだからな、最後まで邪魔が入らねばいいが」

「まったくだ」

 まあ、この状況でも風呂に入れるのは、ある意味すごいとは思うが。

「そういえば、慎よ。先ほど言っていた行き詰まっている技とは、何なのだ?」

 下から聞こえてくる女性陣のはしゃぐ声を尻目に監視を続けていると、サイラオーグの兄貴が問いを投げかけてきた。

 普通は他流の人間に技の事を聞かせるなんてしないんだが、兄貴にはリョウ師範を紹介してもらう事になっている。

 あの壁を超える手助けになるかもしれないのなら、さわり位を教えるくらいはいいか。

「俺が詰まっている技は天地神明掌(てんちしんめいしょう)といってな、神極拳の奥義なんだ」

 なんでもないように出した言葉に、サイラオーグの兄貴は息を飲む。

 まあ、俺も兄貴も未熟とは言え、武術家の端くれだ。

 いきなり奥義の話を切り出されば、こうもなるか。

「……いいのか。奥義の事を余人に話すなど」

「いいさ、全部を話すわけじゃないしな。でだ、この天地神明掌は潜心力を含む身体にある全ての力を、拳に集中させて相手に叩き込むって技なんだけど、俺の場合は氣の総量が多すぎて教えられた撃ち方じゃ技の反動に拳が保たないんだよ」

 神極拳の打法は、衝撃を体内に伝わるように平拳(指だけをたたみ、掌を伸ばした状態で造る特殊な拳)で打撃を放ち、インパクトの瞬間に平拳を潰して普通の拳にするというものだ。

 ぶっちゃけるなら、簡易版『二重の極み』である。

 それゆえ、インパクトの際の衝撃を逃がす事が出来ずに威力が反動となって拳を潰してしまうワケだ。

 もちろん、こちらも考えつく限りの撃ち方を試してみたのだが、結果は威力が激減するか拳が砕けるかのどちらかしかなかった。

 色々やった結果、拳が砕けた回数は都合二十。

 聖母の微笑が無かったら確実に右手が無くなっているところだ。

「高木先生も懸命に対策を考えてくれたんだけど、打開策は見つからなくてな。結局、俺自身で新しい撃ち方を編み出すしかないって結論になったんだ」

「それで師範の協力を得ようとしたのか」

「極限流空手は無限の闘争にある流派の中でも打撃の最高峰の一つだろ。その総帥と会えば、何かヒントが得られるかもって思ってさ」

 サイラオーグの兄貴に言葉を返した俺が窓の外に視線を戻す。

『……皆さん、緊急事態です』

 事態が動いたのは、約半刻後。

 下から風呂から上がった女性陣の声がするようになってからだった。

「どうした、塔城」

『……イッセー先輩のマーカーが移動を開始しました』

 塔城から告げられた言葉に、思わず眉根が寄る。

 仮に捕らえられているとすれば、素人に毛が生えた程度であるイッセー先輩が自力で脱出したとは考えづらい。

 どこか別の場所に移送されていると考えるのが自然だ。

 そして、この仮説が正しければ、どういう事情であれ移動を開始している今が合流のチャンスだろう。

 人質奪還は輸送時を狙うと、昔から相場は決まっているからな。

「塔城、先輩の現在位置をトレースできるか?」

『……可能です。現在はここから北に8㎞先にあるラクーン総合病院の付近から、皆さんのいる方向に進んでいます』

「なら、こっちから迎えに行けば早めに合流できるってことか」

『……はい』

「了解した。今から移動するから、イッセー先輩と合流できるまでナビを頼む」

『……了解しました』

 塔城からの通信が切り、室内に目を向けると男衆は既に立ち上がっていた。

「休憩は終わりですね、兄様」

「ああ。とっとと、イッセー先輩を回収して帰ろう」

 頷き返してくれる皆を引き連れて下に降りると、女性陣も出立の準備を済ませていた。

 手際が良くてなによりである。

「慎、こっちはいつでも出られるわよ」

「よし、ならすぐに出よう。イッセー先輩はこちらの方向に向かっているらしいから、邪魔が入らない様に俺達は空から移動する」

「私とアーシア姉はどうするの?」

「美朱は俺に、アーシア先輩はリアス姉に掴まってくれ。他に質問はあるか?」

 言葉と共に視線を巡らせるが、口を開く者はいない。

「なければ出発する。外を出る際には十分に注意するように」

 皆が頷くのを確認し、俺は出口に向かって足を踏み出した。

 

 

 

 

 

 建物の3階程度の高度を維持して15分ほど飛行する。

 視界の先には薄っすらと、病院らしきものが見えてきているが、肝心のイッセー先輩の姿は見えない。

 もう少し高度を落として捜索すべきだろうか。

「塔城、先輩の位置は?」

『……こちらの地図上ではその辺りにいる筈です』

 ふむ、なら一度地上に降りるか。

「美朱、降りるから元の位置に戻れ」

「むぅ……。乗り心地よかったのに……」

 いつの間にか、おんぶから背中の上で胡座をかいている美朱が不満げな声を上げる。

 空を飛ぶなんてコイツからしたら稀有な経験だろうと気を遣って何も言わなかったのだが、後で拳骨でも落としとくか。

「みんな、イッセー先輩の反応はこの辺にあるらしい。降りて捜索するぞ」

「それはいいんだけど……貴方、翼も無いのにどうやって飛んでいるの?」

 こちらを見ながら、何とも不思議そうに首を傾げる朱乃姉。

 さっきからチラチラ見てたと思ったら、それが聞きたかったのか。

「舞空術っていう氣を使った武術の技だよ」

「なんでも出来るのね、氣って」

「そうでもないんだけどな」

 いくら氣功の才があっても先天的な資質がモノを言う、草薙や八神の炎は出せないからな。

 それに相変わらず氣弾を撃つことはできんし。

 いや、これについては考えるのはやめよう。

 今の俺にはテュホン・レイジ(偽)があるじゃないか。

 自分で自分を慰めて内心虚しくなっていると、病院の方から男のモノと思われる絶叫と轟音が聞こえた。

 視線を向けると、住宅や店舗と言った障害物を突き抜けて爆走する、黒のゴスロリ姿をした小学生ほどの金髪の少女を抱いた赤い鎧姿の男と、それを追いかけるなぜか上半身裸のヒゲ面のおっさんが見えた。

「ここで会ったのも何かの縁! 貴方に染みついた邪気、私の愛で(はら)ってあげましょう!!」

「ふっざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! てめえみたいなおっさんに掘られてたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「私の愛が気に入らないのでしたら、貴方が私に愛を注いでもよいのですよ!!」

「具体的に何する気だよッ!?」

「貴方が私を(パキュン!)(パキュン!)するのです!!」『先ほどの台詞に倫理上大変不適切な表現があったことを、お詫び申し上げます』

「イィィィィィィヤァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?」

 騒々しい破砕音に紛れて、二人の大変聞き苦しい会話が聞こえてくる。

 あのおっさん、蒼いツナギの某氏と同じ属性らしい。

 というか、あのムサい長髪とヒゲ面に下半身にたなびく緑の法衣。あれって『ワールドヒーローズ』一のネタキャラ、怪僧ラスプーチンじゃないか。

『……慎、イッセー先輩の反応はそちらに向けて高速で移動しています。距離、200m』

「ああ……、こっちも肉眼で確認した。案の定厄介事に巻き込まれているようだから、なんとかしてみるわ」

 コメカミ当たりで疼く痛みに頭を押さえながら、俺は塔城に通信を返す。

 さて、どうしたものか。

 何とかすると言ったものの、あのマンイーターの同類とは関わり合いになりたくない。

 しかし、このまま先輩を男として見殺しにするのは、人としてあんまりだ。

 皆がドン引きして言葉も出せない中で何か使えるモノはないかと視線を巡らせると、道路の片隅で一昔前に一世を風靡(ふうび)した韓流スターに似たゾンビを見つけた。

 ふむ、人道的には完全アウトだが、背に腹は代えられんか。

 そのゾンビの背後に回った俺は襟首を引っ掴み、イッセー先輩? を追いかけるラスプーチンへ向けてポイと投げ入れた。

「はははははははははっ!!」

 髭の中年と接触した瞬間、大笑と共に足元に現れた謎の薔薇園へ引きずり込まれるイケメンゾンビ。

 その後の彼の様子に関しては、故人の名誉のためにコメントは差し控えさせてもらう。

 さて、猛獣が獲物に引っかかっている間にこっちはすべき事をしようではないか。

 事態の推移(すいい)について行けてないリアス姉達を正気に戻し、俺は呆然と薔薇園の方を見ている鎧男に接触を試みる。

「あー、そこの紅い鎧の人。もしかして、イッセー先輩か?」

「あ……え……、慎?」

 俺の声に振り向いた鎧男は、信じられないモノを見たかのような声で俺の名を口にした。

 うむ、どうやら間違いはなさそうだ。

「イッセーなのね、ようやく見つけたわ」

「部長……」

 目に涙を溜めて出て来たリアス姉の姿に、紅い兜の内から呆然とした声が漏れる。

 その特撮ヒーロー染みた格好は何なのか、とか腕に抱いた女の子は誰なんだとか。

 ツッコミどころは満載なんだが、今それを言うのは無粋だろう。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん! ぶちょおぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

「ひゃあっ!?」

「あわっ!?」

「あっぶねぇっ!?」 

 何かを耐える様にプルプルと震えていた鎧イッセー先輩(命名)は、腕に抱いていた少女を放り出し、一流のラガーマン顔負けのタックルでリアス姉に飛びついた。

 先輩の勢いに耐えられずに倒れるリアス姉を尻目に、俺は突然の事で反応も出来ずに宙を舞う少女を慌ててキャッチする。

 さすがにこの扱いはないだろうと、文句の一つでもを言おうかとイッセー先輩に視線を向けたが、リアス姉の胸に顔を埋めて号泣している姿に言葉を飲み込む。

 男の先輩が人目に憚らず大泣きしているのだ、よほどの事があったのは想像に難くない。

 まあ、ちゃっかり兜を脱いでいる事や泣いている癖に微妙にエロイ表情だったことは、今回は見逃す事にしよう。

 

「それでイッセー、一体ここでなにがあったの? 鎧姿もそうだけど、さっきの貴方の様子は普通じゃなかったわ」

「それにこの娘の事もありますわ」

 自身の胸で泣いていたイッセー先輩が落ち着いたのを見計らって、リアス姉と俺から渡された少女を保護した朱乃姉は問いかけた。

「それは────」

 鎧姿から駒王学園のジャージに戻ったイッセー先輩は、まだ赤い目を擦りながらも戸惑う様に口を開く。

 曰く、黒いシスターのけしからんバスト(先輩言)に誘われて彼女の水浴びを覗いていたところ、ヘタを打って見つかり背負った棺に飲み込まれて研究所のような場所に転送されたらしい。

 この男はなにをナチュラルに覗きをしているのか。

 というか、そんなカミングアウトいらんわ。

 さて、突然ホラー映画さながらの研究所に送られた先輩は、施設内をゾンビやハンター等のクリーチャーから逃げ回っている最中にさきほどの少女と出会い、彼女を保護。

 その後、紆余曲折を得て研究所を脱出して控室への道を探していると、あの怪僧に邪気に憑りつかれていると因縁を付けられて、半裸で追いかけられていたそうだ。

「それで、さっきの鎧姿は何なのだ?」 

「ドライグは赤龍帝の籠手の禁手化だって言ってたッス」

 サイラオーグの兄貴の問いかけに、イッセー先輩は自信なさげに応える。

 ああ、言われてみればヴァーリの禁手化とどこか似てるわ。

「そうだったの。禁手に覚醒するなんて、よっぽど危険な目にあったのね……」 

「いや……さっきのおっさんから逃げてるうちに、なんか出来る様になったんで」

『あの時は流石に俺も驚いたぞ。男に貞操を奪われそうになって覚醒する奴なんて、相棒が最初で最後だろうな』

 気まずそうに語るイッセー先輩と呆れを隠さないドライグのやりとりに、思わず哀れみの視線を向けてしまう。

 そりゃあ、そんな体験をすれば禁手の一つや二つ使えるようになるわ。

 ……何はともあれイッセー先輩と合流できたのだ、あとは脱出ルートを見つけるだけだな。

「塔城、聞こえるか?」

『……ふぁい』

 インカムで塔城を呼び出すと、返ってきたのは口にモノを詰めたようなくぐもった声だった。

『……失礼。小腹が空いていたもので』

「……いや、いいけど。それより、イッセー先輩と無事に合流できた。街から脱出したいんだが、そちらでルートは解るか?」

『……少し待ってください』

 イヤホン越しにゴソゴソと音が、次いで拙いタイプ音が聞こえる。

 その間にこちらを不思議そうに見ているイッセー先輩に事情を説明すると、なんだか妙に感謝されてしまった。

『……お待たせしました。確認してみましたが、やはりこちらには脱出経路に関する情報はありません』

「俺達が来た道が塞がれているのは確かなんだな?」

『……こちらに提示された情報では間違いありません』

「了解した。こっちは独自でルートを探してみる」

『……気を付けてください。残り時間は12時間を切っています』

 塔城の言葉に小さく舌打ちが出る。八時間程度でイッセー先輩と合流できたのは上出来だが、こっから脱出経路を探すとなると半日足らずでは少々心許ない。

 最悪、空を飛んで強行突破を図るという手もあるが、街中ならともかく脱出となれば迎撃される危険性も大きいだろう。

 ここは無限の闘争が作り出したラクーンシティだ。

 対空迎撃できる奴なんて腐るほどいるだろうし、追跡者に見つかって下からロケットランチャーを撃ちこまれるなんて事は御免被りたい。

「わかった。何かあったら連絡をくれ」

『……はい』

 塔城との通信を終えた俺は、腕を組んで頭を捻る。

 ここでバイオの知識があれば脱出ルートの一つでも思い出すのだろうが、生憎俺は未プレイである。

 美朱もホラーは全般的にダメだと言っていたので、恐らくやってはいないだろう。

 かといって考えなしの虱潰しでは時間がいくらあっても足りないし、どうしたものだろうか。

「街の外に出る道、私知ってるよ」  

 さして良くもない頭が妙案を出さない事に(うな)っていると、救いの声は思わぬところからかけられた。

「私のいた研究所の地下に特別製の列車があったの。それに乗れば町から出れると思う」

 少女は朱乃姉の腕の中から紅玉のような瞳でこちらを見ている。

「本当なのか、フェイト?」

「うん。イッセーはこの街から出たいんだよね? イッセーはあの研究所で私を怪物から助けてくれた。だから、私もイッセーを助ける」

 イッセー先輩の確認の声に、フェイトと呼ばれた少女は意志の(こも)った瞳で頷いた。

「偽りを口にしている目ではないな。赤龍帝、お前がいた研究所とやらに案内してくれ」

 自身を覗き込んでいるイッセー先輩の後ろから、頭一つ大きいサイラオーグの兄貴が現れた事で身体を強張らせるフェイト嬢。

「サイラオーグ兄様、その子が怯えてますよ?」

「む……、すまん」

 それを見とがめたミリキャスに指摘されて、兄貴はスゴスゴと一団の後ろに下がっていく。

「怖がらせてごめんね。でも、サイラオーグ兄様は見た目は怖いけど、本当は優しい人なんだよ」

「うん」

「僕はミリキャス・グレモリーっていいます。君はフェイトさんでいいの?」

「うん、イッセーはそう呼んでるよ」

 ふむ、子供同士仲良くなるのはいい事だ。フェイト嬢の言い方には少し引っかかるものがあるが、今は置いておこう。

「みなさん、よければ私も同行させていただけませんか?」

 いざ出発と足を踏み出したところ、突然掛けられた声に思わず足を止めてしまった。

 声をした方を見ると、何もない空間から激しくスピンしながらラスプーチンが生えてきていた。

 おい、試合開始デモと同じ登場の仕方すんな。

「ぎ……ぎゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 ラスプーチンを見た瞬間、悲鳴を上げながらリアス姉の背後に隠れるイッセー先輩。

「あら~。イッセー先輩のトラウマが増えちゃった」

「どうして私の後ろに隠れてくれないんですかぁ!?」

 美朱よ、そんな可哀想なモノを見る眼を向けるのはやめてやれ。

 あと、アーシア先輩は手に持ったシメサバ丸を仕舞おうな。

「いきなりなんなんだよ、あんた」

「これは失礼を。私の名はラスプーチン、愛の伝道師です」

 目の前で優雅に礼をするラスプーチン。

 その仕草は冥界の貴族に対しても十分に通用するものだったが、怪しすぎる自己紹介の所為で台無しである。

「で、何であんたを連れて行かなきゃならないんだ? そもそも、あんたは俺等の連れを襲ってたじゃねえか」

 痛む頭を押さえながらジトリとした視線を向けると、ラスプーチンはその髭面を引き締めてこちらを見据えてくる。

「それは誤解です。私はそちらの彼から邪な力を感じたので、それを祓わんが為に追っていたのですよ。そして貴方達に同行しようと思ったのは、彼が接触した邪気の正体が掴めるかもしれないと思ったからです」

 先程の変態染みたキャラからは考えられない程に真剣な光を宿した目がこちらを射抜く。

 どうやら、このおっさんが言っている事は嘘ではないらしい。

「どうして、その邪気とやらに(こだわ)るんだ?」

「私は宗教家にして神の使徒です。人に仇名すモノがいれば祓うのは当然でしょう」

 さも当然のように答えるラスプーチンに思わず頷いてしまう。

 なんか、このおっさんイメージと違うな。ゲームではイロモノのイメージが強かったのに、これじゃまるでマジの僧侶だぞ。

「どうする、皆?」

 判断に困ったのでみんなに振ってみると、返ってきたのは賛成4反対4のイーブンだった。

 賛成はミリキャス、サイラオーグの兄貴、美朱、アーシア先輩。

 反対はリアス姉、朱乃姉、イッセー先輩、フェイト嬢だ。

 真っ二つに割れてしまうとは思わなかったが、実は俺の意思は決まっていたりする。

「……わかった。一緒に来いよ、おっさん」

「おおっ! ありがとうございます!!」

「なんでだよっ!? そのオヤジが俺を狙ってたの見てただろ!!」

 喜色満面のラスプーチンのおっさんと対称に、絶望の表情で声を荒げるイッセー先輩。

「悪い、イッセー先輩。なんつうか、このおっさんが嘘ついてるようには見えないんだよ。それに打算と成り行きでなったとはいえ、俺も神官の端くれだからさ。こういう理由の頼みは断りづらいんだわ」

「で、でもよ……!!」

「心配はいりませんぞ。貴方に纏わりついていた邪気は彼らと合流した事で消滅しましたから」

「だそうだ。さっき聞いた通り、このおっさんが先輩を襲ったのは除霊目的なんだから、もう大丈夫だろ」

 それでも恐怖と不満を綯交ぜにしていたイッセー先輩は、万が一の時は護ってやると約束して黙らせた。

 なんだかんだと遅れたが、こんな街からはおさらばしよう。

 早くトンズラすれば、今回は死なずに済むような気がするし!!




 ここまで読んで下さってありがとうございます。
 長文の割にまたもやあまり話は進んでいません(白目
 次でMUGEN編を終わらせて本編に戻る予定なので、頑張ろうと思います。
 さて、今回の話の中にニコニコ動画で投稿されていらっしゃるナリ様のMUGEN動画『餓狼・SPECIAL 』からの設定や引用が多くあります。
 拙作の無限の闘争にいるリョウ・サカザキは『餓狼・SPECIAL』の設定のものだったりします。
 うん、往年の餓狼や龍虎好きがこの動画を見たら影響を受けるに決まってますわ。
 というわけで、用語解説です。

〉テュホンレイジ(出典 ザ・キングオブファイターズ99)
 KOF99のラスボス、クリザリッドの必殺技。
 内回し蹴りのようなモーションと同時に巨大な竜巻を放つ飛び道具。
 弱強の違いは竜巻の性質のみ。
 初段の内回し蹴りは2ヒットし小技から繋がる程発生が早い。
 しかし至近距離では空振りし、この部分が潰されると竜巻は出現しない。
 弱は竜巻を端の直前まで飛ばし、強はその場に停滞させる。
 攻撃判定が広く、避けるのは困難。
 牽制、対空、連続技、ジャンプ防止と多方面で使える強力な技。
 ちなみに劇中で慎が使っているのは、テュホンレイジとは名ばかりの蹴りの軌道で衝撃波を放つ技だったりする。

〉原子力単三電池(出典 菊池秀行著『魔界都市シリーズ』)
 魔震と呼ばれる大地震で謎の大地震によって瞬時に壊滅し、魔物や妖物と共に生きる事を余儀なくされた並行世界の〈新宿〉で開発された携帯用バッテリー。
 人類の天敵に対抗する為に異常発達した科学技術で造られており、既存バッテリーとはけた違いの性能を誇る。劇中ではキロトンライフル等の動力源に利用される。

〉シメサバ丸(出典 GS美神)
 GS美神に登場した、持ち手の意思とは無関係に人を斬りまくる恐怖の妖刀。
 その切れ味は鋭く神通棍も切断したが、強化セラミックのボディコンを切れずに折れた。
 その後は包丁に鍛え直された。

〉大南流合気柔術(出典 餓狼伝説)
 餓狼伝説に登場する日本の古武術。
 時の格闘技界において「武を志す者にとって、其の名を知らぬ者なし」と言わしめた伝説の武術で、投げられる事に気付く間もなく敵を吹き飛ばす様は、武術とい域を遥かに越えて、「妖の者」「闇天狗」等の言葉で形容され恐れられたという。 
 龍虎の拳2でリョウに敗れたギースが極限流に対抗するために学んだ流派でもある。
 当身投げ、羅生門はこの流派の技を原型としている。
 主な使い手は坂田冬次、ブルー・マリーの祖父である周防辰巳。

〉狂雷迅撃掌(出典 ナリ様作MUGEN動画 餓狼・SPECIAL)
 ギースの使うサンダーブレイクの大南流合気柔術における正式名称。
 本来は魔物や妖怪を倒す為に編み出された祓いの技と言われている。

〉内氣功と外氣功(出典 ナリ様作MUGEN動画 餓狼・SPECIAL)
 外氣功とは周囲の自然から氣を取り込む氣功術、内氣功とは自身の肉体で生成される氣を使う氣功術。技の威力は高いが使うたびに氣を練らないといけないのが内氣功(龍虎の拳の技がこれ)周囲から氣を取り込む為に、氣を練る必要が無く技を連発できるが、威力が低いのが外氣功(餓狼伝説の技がこれ)とされている。
 尚、内外双方の氣功を極めた真の達人は、内氣功の威力の技を連発できるという。

〉天地神明掌(出典 押忍!! 空手部)
 神極拳の究極奥義、己が身体に秘められた潜在能力、最大限に引き出して一撃に集約する技。
 正しく身体全ての力を出し切る為にその負担は大きく、最大威力では一日に一発しか打てない。

〉ラスプーチン(出典 ワールドヒーローズ)
 『ワールドヒーローズ』シリーズに登場した自称魔法使いで教祖も兼ねる。
 モデルはロシア帝国を揺るがし崩壊へ導いた(と言われる)怪僧「グリゴリー・ラスプーチン」。
 戦うことの虚しさ、愛の素晴らしさを説いて回っており、マッドマンをライバル視している。
 色物キャラが多いこのゲームの中でも、最も突出したキャラの一人。
 特に究極奥義「秘密の花園」は『相手を掴んで薔薇の園に入り込み、怪しい事をする』という格ゲー界でも奇抜な技である。
 色物キャラではあるが全体的に判定が強く、遠近バランスよく技が揃っており、見た目と裏腹に安定した戦いが出来る。
 ただし、無敵切り返し技がないため至近戦闘は苦手としている。

〉Fate_Copy (出典 魔法少女リリカルなのは MUGEN)
 魔法少女リリカルなのはシリーズに登場するもう一人の主人公、フェイト・T・ハラオウンのクローンという設定のMUGENオリジナルキャラ。
 製作者はみなづき氏。
 ProjectF MK-2。通称F2。
 Project F発端時に、フェイトのスペアとして作られた中の一体で、物静かでおとなしめなオリジナルとは違い、比較的活発な性格をしている。

 今回はここまでとさせていただきます。また、次回でお会いしましょう。

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