とりあえず追放を受けて、そのあとの街の探索は別行動を取らせてもらったからトリスがどんなフラグを立てているかは知らない。
というか、そこまで覚えていないというか…。
一回クリアしただけだもんな、俺。
まぁ、ちょっと俺が注意すれば最悪のエンドにはならないだろうし。
適当に見つけた店で内緒で酒と菓子を買い込み(餌付け用)初心者用の武器とアクセサリー、あと回復アイテムFエイドを購入。
派閥から配布されていた剣はあまりにも使い心地が悪かったのでためらいなく売り払った。
あんまり使ってないけど、というか新品同様な品なんだけどなんだか使う気になれないんだよな、あれ。
身に着けてるだけで派閥の空気にさらされている気がするし。
ほんとは派閥に返品しなくちゃなんないんだけどな、そこは内緒にしとけばばれないだろ。
ばれなければなんでも罪には問われない。
「何?」
「見聞だろ」
「賑やかなとこね」
「あ、南」
「決定!!」
この会話でどこのシーンかわかった人はなかなかすごい。
もしストーリーを知っていたらもしかしたらわかるかもしれないけども。
朔耶としてもマグナの記憶の翻訳機がないとまったくわけがわからない。
現にそこにいるネスティや護衛獣たちも内容がわかっているやつはいない。
ちなみに今の会話を訳すと・・・。
「(目的って言われてもわかんないよ)何(だったっけ)?」
「(たしかフリップが)見聞(の旅に出ろみたいなことを言ってた)だろ」
「(じゃあ人が多そうな)賑やかなとこ(に行けばいいの)ね」
「あ、(俺ファナンってとこ知ってる、港ですごいたくさんの文化が交流してるんだって、たしか)南(だったはず)」
「(じゃ、目的地はそこに)決定!!」
…という感じだろう、多分。
絶対にこの双子はテレパシー能力が備え付けられていると思うのはきっと俺だけじゃないはずだ、同士よ求む…。(疲労)
自分で行動しているのにその行動で疲れさせられているのはなんでだ、どうしてだ。
まだ、出発前の目的地を決めるイベントなのに…。
「で?目的地は決まったのか?」
ファナンに着いたらなにしようかー、とか、おみやげ何にしよーとか、何か面白いことあるといいねー、とか、お気楽な会話(というよりはむしろ観光旅行気分の会話)をしている俺たちにネスティが話しに割り込んできた。
トリスがいつもより微妙に眉間のしわがよっているネスティに笑って答える。
「ネスー、ちゃんと話聞いてたでしょー?」
「あんな話でわかるのは君たち二人くらいなものに決まっているだろう。で、南にいくことになったのか?」
「やっぱり聞いてたんじゃん!!」
「南にあるファナンに行ってみようって。あそこなら文化の交流が盛んって聞いたことあるし」
「君にしてはよく考えているじゃないか、マグナ」
「だろだろ?…あっ!?」
笑ってネスティに向かって笑う。
その時俺は間抜けなことを忘れていたのを思い出した。
「どうした?」
「ごめん、忘れてた!この子が俺の護衛獣のバルレルとハサハ。トリスのは?」
「あれ?紹介してなかったっけ?レシィにレオルドよ」
すっかり忘れてた。
名前なんてとっくに知っているから紹介し終わってるとばかり思ってたな…。
今からボロだしまくってるけど大丈夫かな、俺。
レシィやハサハがよろしく、と挨拶しているのを見て考えながらバルレルのほうをみるとものすっごく不審そうに俺を見ている目とかち合った。
あれ、俺またボロだしてた?
「あ、あそこまで競争ねっ!!」
「えっ、あ、ずるい!!」
ゲームしたときにも思ったけどこれって最近はカップルでもやらないよなぁ…。
俺は微妙に呆れながらも表情には出すことなく先に走り出したトリスにつられるようにして走りだす。
ゴール地点である休憩所までたどり着くと俺は息を切らし、トリスは膝に手をついて「しょ、しょーりぃ…」と弱弱しいながらも笑顔だった。
俺はわざと切らした息の合間に「ず、ずるい」と言っておく。
気配
あとからネスティと護衛獣が来て周りを警戒する。
俺とトリスはその直後に気付く。
「い、いつの間に!?」
「どうするのよ!!」
「君たちは馬鹿か!?戦って切り抜けるしかないだろう!!」
や、トリスはその戦って切り抜ける方法を聞いたんだと思うんだけど。最初に召喚術ぶっ放すとか俺が先行するとかのアドバイスを。
野党たちに囲まれ、やんややんやと記念すべき第一回の戦闘が始まった。
最初に飛び出したのはやっぱりというかなんというか、慣れない集団行動にストレスをためているであろうバルレルだ。
次に俺がバルレルの目指している相手とは別の野党に切りかかる。
トリスとネスティは詠唱をしながら相手との距離をうまく詰めて、レオルドは硬い装甲を生かして二人の守りについている。
レシィはなにかわめきながら相手の攻撃をかわし隙をついて地に沈めていて。
ハサハは召雷で俺の援護。
俺の髪が逆立っているように感じるのは気のせいだと思いたい。
あっけないほど簡単に、戦闘は終了し、結局俺たちは街に戻り、派閥にとまることになった。