手に取るのは紫と赤のサモナイト石。
なぜか試験内容は難しくなっていて、二種の異界の護衛獣を呼べといわれたからだ。
これでもし一種しか召喚術を使えなかったとしたらどうするんだろうと余計なことを考えながら位置について息を吐く。
緊張はしていない。これから起こってしまうことばかり考えていて、正直それどころじゃない。
「~~~~~~~」
自然に口の中で流れる言語、そして反応するように体の中を駆け巡るのは魔力。
言葉のなりそこないのような詠唱は、朔耶の感覚にさえ、何を言っているのかが読み取れない。
これが、マグナの召喚の仕方だ。
その言葉というよりも音にちかいだろうそれは、たしかに魔力を帯びて異界の者を呼び出すきっかけとなる。
異界の門は開き、リィンバウムにその者が呼び出される。
光、それに昔の記憶を思い出しそうになるのを抑え、現れた二人を見た。
小さな悪魔と、妖孤。
画面上で見ていた姿を認め、失敗はせずにすんだことを確認した。
そして、二人と目が合う。
これから、生死を共にするであろう、二人の目。
「よろしい。ではこの召喚獣たちとともにこのモンスターを倒して見せろ」
フリップの馬鹿にしたような声に、出てきたのは五匹ほどのゼリー状のモンスター。
一応、そんなことは聞いてないと反論するラウルに俺はやると宣言し、戦闘体制に入ると浴衣を着た子狐が俺の隣に移動し、殺気だった悪魔が武器を構えた。
「ハサハ…お兄ちゃん…守る…!!」
「ケッ、むしゃくしゃするぜ、…全部ぶっ殺してやらぁ!!」
相当に苛付いているいるのあろう、悪魔が一番最初に動く。
俺も遅れぬように支給された剣を構えて間合いを取った。
子狐は後ろで宝玉を胸に魔力を練っているようだ。
ゼリー状のモンスターの耳障りな鳴き声が、うざったい。
戦闘が始まると、ほとんどバルレルしか働いていないかった。
俺は邪魔をしたり、とどめを刺したりしたくらいだ。
まぁでも、初めての戦闘にしては息があっていたと思う。
特にダメージも食らわずに終わらせることができた。
はたから見たら俺はかなり危なっかしい動きをしていたと思う。終わったときに落ち着かなかったラウルがホッとしたように息を吐いたから。
とにかく、フリップはまだ気に入らなそうな表情をしていたが俺に合格を言い渡した。
トリスはきっとこの後に試験を受けるのだろう。
そして俺と同じように護衛獣を二匹出せと言われるんだろう。
でもきっと、成功するんだろう。
そうすると、最初からネスティ含めて七人で行動することになる。
随分大人数になるなとか思うがこれからもっと多くなるのだ。このくらいでうんざりしていられない。
部屋を出て、自室へたどり着く。
後を黙ってついてきた二人に中に入るように促して自分は入らないままドアを閉めた。
中で文句やら気まずい雰囲気やらを感じたが無視。
この時のために酒と菓子を用意しといたからまぁ大丈夫だろう。
もし違う護衛獣が召喚されていたらこの準備も無駄になってなっていたとか考えちゃいけない。
…そういえば、まだ名前も名乗りあっていなかったか?
4/22 一部訂正