導きの公園へ行くと、運良くトリスたちと合流することができた。
ミニスのことを紹介し、ペンダント探しを手伝うように頼むと簡単にうなづいてくれる。
一応知り合いたちには声をかけ、注意をしてくれるようにしてから街中を歩き回った。
俺はこの場面では見つからないということを知っていたからとにかく体力を回復させることに集中する。
ゆったりとバルレルとハサハをつれて散歩する気分で商店街を歩いていると、向かい側からあわただしい気配が向かってくるのを感じた。
確か、このあたりで起こるイベントって…。
記憶を掘り返そうとし、そしてそれを助長するように上がった元気な声が聞こえた。
「どいたどいたどいたーーー!!どかないとユエルがひいちゃうよーー!!」
「どろぼうーーー!!!」
――あぁ、たしか仲間を増やす布石だったか?
まっすぐこちらへ走って、というよりも爆走してくる青い髪と人ではありえない獣の耳に、進行方向をふさぐ位置へと微妙に移動する。
腕を出して待ち構えていれば、あとは勝手に子供が腕にかかってくれた。
勢いがつきすぎてしかも俺の腕が胸に思いっきり入ったらしい。ぎゃん、という痛そうな悲鳴をあげてユエルがけほけほとむせる。
「ごめん、大丈夫?」
少なくとも大丈夫とは返されなさそうな様子だったが、すさまじい回復力で復活して腕の中で暴れ始めた。
じたばたと抵抗しながら、がばっと大きく口を開けたのを見てあわてて腕の拘束から開放させる。
噛み付かれて喜ぶような怪しい趣味は持ってない。
「へっへーんだ♪ ユエル、そう簡単には捕まんないもんねー!!」
そういい残しながら走り逃げる彼女の後姿を見送りながら、あのテンションにはついていけないなと素直に思った。
というか、あれが仲間になったら、四六時中あのハイテンションが近くに…。
やめよう、想像するだけで疲れが倍増してくる。
「あれ、はぐれかァ?」
「とりあえず主から逃げてるけどな、今は。そのうちこちら側につくことになる」
「…あの人、元気いっぱいだったね…」
そしてまたペンダント探しという名目の散歩を続けることにした。
このことばかり考えててもしょうがないだろうし、何よりも俺が疲れる…。
街の思い当たるところを一巡して、最後に残された導きの公園内をくまなく探し回る。
ここが一番落とした可能性が高いと言うミニスの証言から、念入りに探し回っている。
が、見つからない。
導きの公園は、結構広い。
しかも、障害物というか、備品というか、設置されているベンチや玩具、オブジェなどが多いために必然的に探す場所が多くなって捜索作業がなかなか進まないのだ。
時間ばかりが無駄に過ぎていく。
街中を歩きまわった疲労が、仲間たち全員の空気を重くする。
ついに、トリスがその空気に耐え切れずに口を開いた。
「これだけ探しても見つからないなんて…」
「トリスさん!!」
「あ…」
アメルが慌てて注意するが、すでにその言葉はミニスに届いてしまっている。
不安でしかたのなかった少女は、たったのそれだけで簡単に感情を乱した。
「どうしよう…。私が、ちゃんとあの子を見てなかったから…」
「ミニス」
あんまりにも自分を追い込む前に、自分の声を割り込ませる。
感情を爆発させるという行為は実はものすごく体力を消耗するものだ。
この後に控えている戦闘のこと、自分の体調のことなどのものも含めて思い、本格的に取り乱す前にそれを止める。
表面には出してはいないが、俺はミニスよりも疲れているんだ。俺は。派閥による呼び出しで。
マグナの肉体に宿る魔力はどういう原理か実験ですっからかんだし血は明らかに足りていないし体は筋肉痛のような痛みでちょっと腕を上げるのにもつらいくらいだし視界には極彩色のカーテンがかかってる。
とにかく、もし今の俺の体調が万全であったとしても、俺はそれほどやる気はない。
だって今回の相手は、あいつらとはなんら関わりのないものだから。
というか、後々味方側、ということになるんだったよな…?
「おーっほっほっほっほ!! ようやく見つけましたわよチビジャリッ!!」
――正直言ってこんな奴とは一切関わりたくないんだけどな。
戦闘に入る前から疲労度マックスの俺は、静かに遠い目をした。