憑依召喚   作:虚無_

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掘り出し物

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずは薬や壊れた武器防具の買出しに行くことになった。

俺も前使っていた剣をゼルフィルドに折られたから新しいのに買いかえたい。

いつまでも敵から奪い取った大剣を使うのも気分が悪いし。使えないこともないけど大剣は街中で持ち歩くには目立ちすぎる。

トリスは短剣のために四六時中もっているが、他の仲間たちは大した武器を街中で持ち歩いていない。

そのことに無防備だなと感じることが多々あるが、まぁ黒の軍団たちは街中で襲ってくるようなことはないのでその判断は一応間違ってはいないということになるか。

 

――まだ、あいつらの存在はこれっぽっちも出てきていないからな。

 

バルレルもハサハも連れているので、ついでに二人の武器もどうだろうと見てみる。

アメルとトリスは服を見るために別行動、とは言っても何か騒ぎがあればすぐに駆けつけられる距離にいるのでそんなに問題はない。

常に気配の動きに注意しながら、飾られていた剣を手に取り、軽く振ってみる。

どれも使えないこともないが、なかなか相性の良いものにはめぐり合えないものだ。

元々俺の扱っていた獲物って剣じゃなかったからな、しょうがないか。

そこそこに丈夫でそこそこに値の張らない剣を一つ選び、ハサハには予備の小刀を、バルレルには酒を一本買ってやる。

先ほど聞いたのだが、バルレルの槍は本人の魔力によって生成される性質らしいので壊しても復元でき、形も本人の意思一つで自由に変えられるらしい。

そして魔力を込めればこめるほど強力な武器になると言う。

とりあえずバルレルの武器分の経費は浮くので、その分で酒を買ってやったというわけだ。

魔力なので出し入れ自由だから戦闘時以外は持ち歩かなくていいし、便利なことばかりだ。

だが武器代の変わりに酒代がかかる。

まぁ、集団生活のストレス解消問題が酒一つで解決されるのなら、安いものかもしれないが。

 

 

「ま、マグナさん…」

「ん?どうしたんだ?レシィ」

 

 

おずおずと何かを持って来たレシィ。

持っていたのはケープだった。

 

 

「そういえばレシィの前のケープ、買いかえないといけなかったんだっけ。ごめん、すっかり忘れてた」

「は、はい。すみません…」

「別に謝らなくていいって。じゃあまとめて買っちゃおう。グローブのほうは大丈夫?」

「あ、ハイ。もう少しは大丈夫だと…」

 

 

レシィのケープは前回のイオスとの戦闘時にぼろぼろになったから買いかえようってことになっていたことを忘れていた俺は眉に少し力を入れる。

今は装備していないグローブも結構痛んでいたような覚えがあって、そのことも聞いてみると「えっと…もう少し…」というぎこちない答えが返ってきた。

それって、もう少し、の後は壊れかねないってことだろう?

もしかしたらお金の心配をしてくれてるのかもしれないけど、それじゃあいざというとき、もしもというときに困る。

確かに吐いて捨てるほどの金は無いけども、必要最低限の武器を買うのをためらうほど貧乏なわけじゃない。

よくフリーバトルに出かけるからパーティのなかでは一番稼いでいるんじゃないだろうか、俺らは。

 

 

「もしものときに使えなくなるのも困るから、新しいのを選んできてよ。俺はここにいるからさ」

「あ、そ、そうですよね。じゃあすぐに戻ってきますね」

 

 

高めに設定した予算をレシィに伝え、早歩きで目的のコーナーへ向かうレシィの後姿を確認する。

店主に購入した品を預かってもらい、手近にある商品を見てまわる。

それを見つけたのは、杖を並べているコーナーの隅だった。

?なんだこれ?

 

 

「おじさん、これ何?」

 

 

気になったそれを店主の元へ持って行き見せる。

店主は俺の手を見てあぁ、と感心したように声を漏らした。

 

 

「それは召喚師用の杖だよ。最近出回り始めたんだ」

「杖?これが?」

 

 

こんなに細くて短い、枝のような棒が召喚師たちが扱う杖?

魔力に耐えられるんだろうか、こんな細いもので。

 

 

「それは一番質の良い物でね、なんでも異界からのものっていう噂まである。貴重なものさ」

「へぇ…」

「めったに手に入らないからすぐに売れるのが惜しくなってな。すぐに見つけられないように隅のほうに置いてあったんだが、よく見つけたなぁ」

「うん、これ、魔力感じるから目立ってたんだよね」

 

 

そう、この細い杖から微量ながらに魔力を感じる。

その魔力自体がなにかの現象を起こすようなものではなくて、他の魔力を増幅させるような感じか…。

よくしなるし、意外と丈夫そうだ。

何か中に埋め込まれているのかもしれない。

 

 

「――、おじさん、これいくら?」

「ん?あぁ、ちょっと坊主には高いかも知れないが…」

 

 

そういって提示された金額は確かに少し高かった。

それでも躊躇わずに買うことにする。

レシィのほうも、一つのグローブをきちんと選ぶことができたようだ。

 

 

「これだけたくさん買うんだから、少しくらいまけてよ、ね?」

 

 

店主は苦笑いしてんー、と思案しだした。

 

 

 

 

 

 

 

 


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