憑依召喚   作:虚無_

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近づきたくない人種って、誰にでもいるだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「間違いないだろう。それは聖女だ」

 

 

さっきあったことを話すと、ネスティは傷を癒すしくみについて話した。そこで俺は少し疑問に思う。

もし、彼女がその心の傷に触れるのも嫌だと感じたら、それかアメルでは癒せないほどの深い傷だったら体の傷も治らないということだろうか。

そして、完全に心を閉ざしていて、傷の存在すらアメルに気付かれなかったら、アメルはその人の過去を知ることはできないのだろうか。

…もしそうだとしたら俺にもアメルの治癒を受けることができるけども。

どっちみち、『マグナ』と『朔耶』の傷は、アメルには癒せないだろうと、思った。

もともと、アメルに触れさせるつもりはさらさらないが。

 

なんというか、人種が違いすぎてあまり関わりたくないと思う。トリスはある程度好感をもっているようだけども。

もし、『マグナ』がここにいたら、彼女に恋をしていたのかもしれないけども。

少なくとも、『朔耶』はできるなら近寄りたくもない人種だ。

あぁ、もしかしたらバルレルが抱くものと似ているかもしれない。朔耶がアメルに抱く感情は。

 

 

 

 

 

 

 

ネスティに忘れていた宿のことで怒られながら別のことを思考する。

よく、気を紛らわすために俺はこういう思考の流し方をする。

今考えてもしかたのないことを、いままでためてきた考えるべきことを、気を紛らわせながら考えを練るこの手を、俺はよく使う。

もちろん、少しは返事をするとか、聞かれたときのために話の内容を聞いておくけども。

 

これから、この夜、この村は燃やされる。壊れる。消える。

 

ネスティが説教し終わったちょうどその時にバルレルが俺のところに戻ってきた。

同じく並んでいたフォルテとケイナが合流し、ネスティが紹介されたという家へ向かう。

アグラバインともう一度会うのか、と思ったらその家が見えてきた。

 

 

「なぁに、お兄ちゃん」

 

 

かけられた声にハッと我に帰る。

いつの間にかトリスの頭を撫でていたらしく、周りを見て他の人が見ていないことを確認して息をはいた。

って、俺は別に悪いことをしてないはずなんだが。条件反射でやってしまった。

だけどよかった、一番後ろにいて。

性能のいい仮面をつけていたって今はどんな顔をしてたかわかったもんじゃない。

 

 

「なんでもない」

 

 

トリスの頭をまた撫でて、手を離した。

不思議そうなトリスの視線が、すこしだけ痛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか爺さんの家だったとはなぁ」

 

 

すげー偶然じゃん?というフォルテの言葉に俺も同調し、アグラバインに話しかける。

 

 

「さっきはほんとすみませんでした。俺、なんか手伝いますよ」

「珍しいな、君が自らそんなことを言うなんて」

「失礼な、俺だって世話になる人の手伝いくらいはするよ?」

「だったらその労力を少しは勉強に使ってほしいところだ」

 

 

こいつは…。

まぁ、ネスティに初めて会ったのはたったの数ヶ月前くらいだったからしょうがないとも思える。

トリスが俺に懐くのが気に入らないみたいだし。

だから今はそっちにトリスを預けるからそんなに俺のことを嫌うなよ。まぁ、それは嫉妬からきてるんだろうから本当に俺を嫌ってはないとは思うんだけど。

いくらネスティだってまだ成人して…たっけかこいつ??

あー、キャラのプロフィなんて細かく知らないから適当でいいか。

別に年齢のこと知らなくたって特に困ることもないし。

 

 

 

 

 

 

 

 

ベッドに入る、ものの、ゆっくりと眠れるわけがない。

気が張っていて、体の緊張が解けない。

目を閉じても、じりじりと体のどこかで音をたてているような錯覚に陥る。

まるで、死刑囚のようだ、俺が実体験したわけじゃないからそれの気分ってだけだけども。

バルレルも俺の感情に触れているのか、口元に笑みを浮かべ、自身の武器を抱えて壁によりかかって座っている。

ハサハは俺の腕のなか。

他の連中はそのままぐっすり眠ったようだ。みんなあの山道に疲れているのだろう。

 

静か、静寂な闇夜。

 

マグナ心の中を思い出す。

目を閉じると、マグナが安らかに眠っているような気がした。

今、俺の大切な存在は、どんな気分なんだろう。

俺は、おまえを守ってやれているんだろうか、その傷を癒してやれるだろうか。

思い出すのは最初に出会ったときの、傷だらけのマグナ。

 

 

 

 

 ドォォオオォォオオオゥンン

 

 

 

来た。

始まりの、合図だ。

 

 

 

 

 

 


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