憑依召喚   作:虚無_

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つかの間の休息、そして、聖女との出会い

 

 

 

 

 

 

 

 

フォルテの割り込みでリューグとロッカと会った。

…この場合はフォルテのこの行動に感謝したほうがいいのか?いや、やめておこう。なんとなく癪だし。

それから三手に別れ、俺とトリスとその護衛獣は宿を探すことになった。

 

 

「でも探すにしたって六人は多いよな。バルレル、村の様子でも見てきなよ。遊べるかもしれないし」

 

 

バルレルは特に何も言わずに頷いて、それぞれ面白そうなところへ向かった。

意識しなければ気付けない、悪魔の表情を見れば、俺の隠した命令をキチンと汲み取ってくれたはずだ。バルレルが大人しく聞いてくれるかどうかはわからないが。

とりあえず、村の逃走ルートの確認は奴に任せることにする。

 

 

「じゃ、いこっか」

 

 

トリスが嬉しそうに俺の背中に抱きついた。

ハサハがまねをして俺の手のひらをぎゅ、と握った。

 

 

 

 

 

 

 

森の中に入ってしまい、暖かい光が眠気を誘う。

それはトリスも同じようで「ここで一休みしない?」と悪戯っぽく木の根元にねっころがった。

俺ももちろんその隣の場所に木にもたれかかって座った。

このままでも十分に眠れる。

その体勢で落ち着いた俺をみてトリスがもそもそと動き、俺の肩に頭を乗せた。ハサハも反対からもたれかかる。

少々窮屈だったけども、その重みは俺、“マグナ”と“朔耶”を安心させた。

レシィはどうしたらいいかとおろおろしていたので、声をかけて同じように寝かせる。

レオルドは…いくらなんでも無理だからそばで座ってまってもらうことにしよう。

木漏れ日が気持ちよくて、“幸せ”を感じた、ような気がする。

あとから無意識にトリスの髪を梳いていたことに気付いた。

 

トリスの顔が、いつもより幼く見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃーーっ!!危ないっ!!」

 

 

上方からの悲鳴。とっさに腕を差し出すとちょうどそこに落ちてきた少女。

 

 

「うわっ!?」「きゃっ!!」「んぅ…?」

 

 

あ、あぶな。

い、今、俺、寝てたのか…?

いつの間にかトリスとハサハが膝枕状態で、レシィが足元で丸まってるし、気付かなかったな。レオルドは充電中か?寝る前と体勢がまったく同じだ。

わけのわからないことを呆然と考えていたら腕のなかにいた少女が身じろぎしてはっ、と意識が回復する。

もぞもぞと動き出したトリスとハサハを踏みつけないよう気をつけて少女を立たせた。

 

…あぁ、俺が聖女を助けたのか。

 

ここで遅いながらもようやく今の状況を確認した。

腕が震えていることに気付き、軽く振って気にしないようにする。

降ってきた少女の姿を確認する。

こっちの世界の住人にしてはあまり特徴が無いのに服だけはやっぱりちょっと変わっている少女、話の流れとその外見的に間違いなくアルミネのかけら、アメルだ。

 

 

「どうしたの?」

 

 

目をこすりながらまだ眠そうにしているトリスが俺に聞く。

猫みたいだと思った。

 

 

「この子が上から落ちてきたんだよ」

 

 

上を指す。するとミー、と高い音の泣き声が聞こえた。

音の元をさがすと子猫が細めの枝の上で俺らを見下ろしていた。

 

 

「あの子が降りられなくなっちゃったみたいで…、助けようとしたんですけど滑っちゃって」

 

 

目線を落とすとトリスとばっちり目が合った。

落ちたらヨロシクv

…マグナの翻訳機を通さなくてもトリスのアイコンタクトがわかってしまったぞ今。

たしかにあの枝にマグナの体重は支えられなそうだけど…。

っと。

 

 

「レシィ?」

「ぼ、ボクが…」

 

 

どこか必死そうな顔だ。多分、護衛獣としてなにかやらなければとでも思ってるんじゃないだろうか。

俺は普通に任せることにする。

下手して俺が怪我したらいろいろ面倒なことになるし。

…もしかしてアメルと一緒に行動してるときは絶対に怪我しないように気をつけなくちゃなんないのか?

でも全くの無傷っていうのも実力を隠してるとか感づかれそうだしな…。

自分で回復するにしてもあんまり高度な召還術を使うのを見られるわけにはいかないし…。

アメルの負担になりたくないからって薬を大量に買い込まなきゃならないのか?あぁでもお金は大切にとか誰かから言われそうな…。

…あとでまとめて考えておこう。

 

 

「捕まえた!!」

 

 

ん?

トリスは問題もなく、猫を抱えて降りてきた。

俺の記憶を見られるわけにはいかないから、トリスにその役を任せようと思ったけど、ん?

 

 

「この子、怪我してる…」

「あ、私が治します!!」

「君、召還術つか…」

 

 

彼女が傷口に手をかざす。

魔力とは違う、何かの力を感じた。

 

 

「痛くない、痛くない」

 

 

幼い子供に言い聞かせるような口調。

暖かな光がふわりと目に入ってきて、俺は目を細めた。

 

 

「すごい…」

「傷が、治っちゃった」

 

 

猫を一度撫でてから離してやる。

すると使いらしき人の探す声が聞こえてきた。

 

 

「アメル様ーー!!どこですかーーー?」

「あ、いけない。もう休憩終わりだわ」

 

 

それじゃあ、ありがとうございました。と、深くお辞儀をして、彼女は走って行ってしまった。

あ、ばいばーい、と手を振ったあとで、そのことに気付く。

 

 

「様って呼ばれてたってことは…もしかして」

「聖女、だったりして…」

 

 

まさかねー、と顔を見合わせて笑った。

まぁこのくらいの歪みだったら大したことじゃない。

宿を探し忘れるのも、物語のとおりだしな。

 

 

 

 

 

 


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