憑依召喚   作:虚無_

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ケンカ、というよりは意地の張り合い

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めたのは廊下を通り過ぎる人の気配がしたからだ。

俺が目覚めた直後にいつの間にか一緒のベッドにもぐりこんでいたバルレルが覚醒する。ってか、シングルベッドに三人も寝てたのか、俺たちは。(二人はチビだけど)

ハサハがなかなか起きれなかったけど、ゆすって抱き起こしてやる。

 

あんまりここにいると、派閥の空気に汚染されていくような気分になる。

 

部屋に忘れ物が無いかをもう一度確認して外にでた。

派閥の中でも外でもトリスたちには会わなかったが、とりあえず寄り道しないように気をつけて余計なフラグを立てないようにする。

街の出入り口で待っていればそのうち来るだろうと思って。

しばらくは来ないかな、と思いつつ、そこら辺の芝に座り込んでこの世界に満たされている魔力を感じる。

確かにこの世界は豊かだ。

豊か過ぎてこそ起こる問題もたくさんあるが。

トリスたちが来るまでの間、バルレルとハサハにこれから起こることを簡単に説明して、俺のこれからの行動予定のことも簡単に話した。

ま、どうせその時になれば臨機応変をせざるを得なくはなるけどな。

『奴』の存在を話すところへ移ろうかと思ったところで、待ち人の気配を感じて、バルレルの獲物の話やハサハの好物の話に切り替えた。

俺の気配のレーダーは一キロ弱範囲だ。

 

 

 

 

 

すぐにトリスとネスティが建物の影から現れる。

正直二人の雰囲気が緊迫していてあんまり関わりたくない。

俺がなにもしなくてもトリスがイベントフラグを立ててきてくれたらしい、これからはトリスの行動も考え直して予定を立てることにしよう。

一人心の中でそう決めると俺はおそるおそるという感じで二人に声をかける。

 

 

「ね、ねぇ、どうしたの…?」

 

 

後ろでは少し楽しそうなバルレルと心配そうに見ているハサハが様子を観察している。

どうでもいいけど主人を盾に野次馬しているみたいに見えるのは俺だけか?

トリスとネスティは俺がそんなことを考えているとはまったく気付かないで興奮したように口を開いた。

 

 

「お兄ちゃん!!あのね、流砂の谷に行くの!!」

「…盗賊がそこにアジトを作っているんだ。まぁ捕らえることは君たちには到底無理な話だが」

 

 

俺は目をしばたかせて微妙な笑みを浮かべた。

この『仮面』は高性能だ。そのうちまったく他のことを考えていても自動的に表情を変えてくれるようになるだろう。

このときの場合は、『マグナ』にはよく事の大きさがわからないだろうと思われている。だからあいまいな反応しかできない。

まぁ、これからの大事を知っている『朔耶』にしてみれば、こんなイベント大したことではないのだけれども。

仲間、パーティーを増やすためには重要な、というか必須のイベントだ。人手は多ければ多いほど、俺が後々自由行動に出やすくなる。

…巻き込んで悪いなと思う人物もいないこともないが、俺の都合のためにパーティーに加えさせてもらう。

目指すは全員コンプリートだ。

 

 

 

 

微妙な雰囲気をまとったまま、俺たちは流砂の谷へ向かう。

随分気まずい出発になったけども、まぁ、なんとかなるだろう。

 

 

「――喧嘩するほど仲がいいってか?」

 

この雰囲気のなかでよくそれが言えるな、っとバルレルに突っ込まれた。

悪魔に突っ込まれた、と変なところで嬉しくなる。

そしたらその感情もバルレルに伝わってしまったらしく、呆れられた。

 

 

 

 

 

 


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