シャワーを浴び、制服を着て、一階の食堂に行く。
食堂には木曾達がいて、すでに半分ほど食べ終わっていた。木曾がこちらを向くと、にやっと笑った
「面白いもんは見れたか?」
「いいえ、見なかったけれど?もしかして桜のことかしら?」
「いや、違うけど?おっかしいな…。陸奥のやつ半徹してたはずなんだけどな?」
ぶつぶつと一人で考え始めた木曾を尻目にMAMIYA-Ⅲの画面を操作する。
出てきたトレーには目玉焼き、鰆の切り身、胡瓜の漬物、味噌汁、ご飯。MAMIYA-Ⅲの横に置いてある調味料箱から醤油を取りだし、目玉焼きにかける。木曾の前に座ると、木曾がうわっと顔をしかめた。
「普通ソースだろ。醤油なんざ合わねえよ。」
この反応には少々ムッとする。
「何を言っているのかしら。ここは日本よ。醤油に決まっているじゃない。ソースこそが一番なんて欧米かぶれも甚だしいわ」
「つまんねえプライドに捕らわれやがって。味覚に国籍なんざねぇんだ。旨いもんを食う。これが一番。」
「美味しいものを食べるのが一番だという考えには賛成よ。私は別にプライドうんぬんで醤油にしているんじゃないの。一番美味しいのは醤油だと思うからよ。ただその理由は私が日本生まれだからじゃないかと推測したから言ったまでよ」
「へえへえご高説ありがとさん。ソースのうまさもわかんないやつの説なんて屁理屈に等しいがな」
「なんですって…!」
自分は我慢強いほうだと思うが、さすがに限界だ。こうなればいかに醤油がすばらしいか説明してやろう。いかな反論も全て論破し、泣かせてやる。そう大鳳がいきりたっていると
「はあ、ふたりともこどもね。しおがイチバンに決まってるじゃない」
暁が参戦してきた。
「お前ゴマだれ教だろうが。邪教者はおとなしくしとけ」
「ゴマだれ教は滅んだわ。これからは塩教の時代よ」
いつの間にか宗教が出来ていた。誰を崇めるんだろうか。ゴーマダ・レニ・スッダールタとかか。
「もしかして陸奥さんは塩教信者なの?」
塩教って言ってみた
「なんだよ塩教って。塩派でいいじゃん。」
理不尽に怒りを覚えてはいけない。大鳳は余裕のある笑みを浮かべる
「陸奥さんは塩派なのかしら」
「そうよ。陸奥さんは塩教信者よ」
堪えろ。堪えなければならない。
「やっぱり。暁ちゃんは陸奥さんの真似をしているのね?」
「別にまねしてないわ。たまたまよ。れでぃどうし通じるものがあるのね」
「でも、あかつきちゃん、陸奥さんがいないとき、こっそりゴマだれかけてたの見たことあるー」
島風が暴露してしまった
ちなみに島風はなにもかけていない。渋い。
「あ…う…ち、ちがうもん。あれはそう!ゴマだれ味の塩なの!」
ゴマだれでいいんじゃないとは絶対に言わ「それゴマだれで良いだろ」やめてあげて!
暁がぷくぅーと頬を膨らませる。可愛い。
「ほんとだし。わたしいつも塩かけてるし」
「まあそう意地張るな。これからソースの魅力に気づけばいいさ」
木曾が慰めるようにポンポンと肩を叩く。そして、こちらを向き、不敵な笑みを浮かべた。
「というわけで、2対1でソースの勝ちだ」
「なんでそうなるの!
「まあ、そもそもゴマだれは醤油というよりソースの部類に入るしな」
「違うわ。暁ちゃんは塩が好きだから、塩分高めな醤油派よ」
「なんで塩派じゃだめなの…?」という暁の訴えは無視された。
大鳳はくっと歯噛みした。実際には暁はゴマだれ派だろうから、ソース陣営に入るだろう。陸奥は塩派らしいから、こちらの醤油陣営。島風はなにもかけない派なので中立だ。これで2対2。木曾も同じことを考え込んでいるだろう。
後もう一票…!清き一票を…!
暁と島風が呆れた表情をしているが全く気にならない。
大鳳の中で電球が光った。
「提督!提督はどうかしら!?」
「あっ!あ~~~、知らんな。」
木曾は数秒記憶を掘り返したが、そんな記憶は残っていないらしい。
「じゃあ、これから訓練だし、直接聞くか」
「さすがにそれはダメじゃない?」
そこでふたりはハッと時計を見た。
集合時刻をちょうど指したところだった。
目を疲れさせてしまってごめんなさい。
ちなみに私はゴマだれ教徒です。
次は艤装の話になります。
大鳳の甲板からぶら下がるあのコードについて考えてみました。