【完結済み】東方贖罪譚〜3人目の覚妖怪〜   作:黒犬51

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6話 罪

面倒な状況だ。

風呂場に異性と2人っきり、完全に展開的に18禁だ。

しかも後で入るから今回は出る。

と言って見たのだが、寝てた私が悪かったなどと言って出させてくれない。

流石に直視するのはいろんな意味でいけないと思い、石を挟んで会話している。

ちなみにサードアイはお互い抱えているので読心は出来ない。

 

「本当に俺が出なくて良いのか?」

 

「出ないで良いですよ」

 

表情が見れないので話している口調で大雑把に感情を読み取っている。

サードアイほどの正確性はないが訓練、いやそんなことはしなくてもあちらの世界で生きていれば勝手に身につく。

 

「ペットが来たらマズイだろ」

 

「鍵を作っておいて何を言ってるんですか?」

 

「ばれてたのか」

 

確かに起きた時に俺の事をサードアイで見ていた。

ただ、その時鍵をかけた事を考えていないはずだった。

いや、無意識に考えてしまっていたのかもしれない。

そもそも、あの鍵はさとりなどこの館の住人に対して付けたものだった。

にしても無意識に考える要因にはならない筈だ。

 

「何でわかったんだ?」

 

「サードアイは相手の経験も読むことができるので、無意識に考えずとも簡単にわかります」

 

「成る程、そんなこともできるのか。素晴らしく便利だな」

 

恐らく、さとりは俺に悪意がなかったかの確認と、本当に声を掛けたかどうかの確認のためにやったんだろう。

 

「相手の経験なら何でも読めるのか?」

 

「そうです。トラウマを蘇らせたりも出来ますね」

 

強い。

それができるということは相手が精神が弱い場合なら自ら手を下すことなく潰せるだろう。

これまでの様に、自らがトラウマになる必要はなくなった訳だ。

まぁ、トラウマを植え付けたとしてもすぐに殺すので意味はなかったが。

 

「にしてもそれで力も強かったら最強だな」

 

返事が無い。

もしやと思い岩の後ろを向く。

また寝ていた、と一瞬思ったが違う様だ。

息は荒く、顔は赤い。

のぼせてしまった様だ。

 

「全く」

 

助けを呼ぼうにもこの状況をペットに見られると面倒だろう。

だからと言って裸体の異性を抱え上げるというのも後々問題を招きそうだ。

しかし、大事になってからでは遅いので抱き上げることにした。

ただ、流石に裸体のまま運ぶのは色々問題だったのでまた能力を使う。

空中にあった大量の湯気をタオルに変更、それをさとりに巻きつけ抱き上げた。

妖怪になっているせいなのか本当に軽いのか簡単に持ち上げられた。

そのまま、転ばない様に細心の注意を払って歩き、脱衣所に出る。

その後、俺自身は着替えておいた。そうしなければさとりが起きた時にまたパニックになりかねない。

 

「取り敢えず、応急処置だろ」

 

そう言って脱衣所の洗面台から水を出し最初の少量はタオルに変更しその後の水で冷やした。

それを額に乗せ、さとりが目を覚ますのを待つ。

服を着せるということはしない。

着せる工程で色々な問題があるからだ。

どうすることもできなかったので眠っているさとりの横に座った。

今回のこれは俺が色々聞いてしまったからだという罪悪感があったので相応の罰だろう。

にしてもこの能力の本質が少し見えた。

この変更する程度の能力を使用し対象を変更するには何かしらの代償がいるということだ。

シャワーに変更した時はその物の形を変更するだけだったが、タオルを作る時は気体、液体を個体に変えた。

今回の事でわかったのは後者の方が体力を使うという事。

どうやら対象の三態を変えようとするとその分体力を持っていかれる様だ。

恐らく、落ちている石をダイヤモンドに変更する事よりも辛い筈だ。

試す気にはならないが。

 

「にしても起きないな」

 

本当にさとりは目を覚まさない。

ただ、息はしているので生きてはいるだろう。

にしても、今一度さとりを見ていると見た目はただの少女だ。

本来の人間ならここで恋愛感情が起きるのかもしれない。

そういえばもう人間ではなかった。

ただ、俺は起こらない。

いや、そう思えない。というのが正しいかもしれない。

さとりにだけは俺の罪を教えようかと思ったが結局教えていない。

しかし、覚妖怪である彼女から隠し続ける事は出来ないだろうし、いつかはバレるだろう。

しかし、自分から言いだす気にはなれない。

自分が暗殺者だったなどと。

言い出せない。

ここまで温かく迎えてくれたからこそ言えない。

 

「う〜〜ん」

 

もう考えるのは止めておこう。

読まれてしまう。

俺の秘密が。

俺はすぐにその考えを頭から排除してさとりの体を揺する。

今は、気付かれるまでは、この生活を続けたい。

無理だというのも分かっている。

間違いなくいつかは気付かれる。

ならその時が来るまでここを守ろう。

それが俺の贖罪となるのなら。

 

「あれ、私のぼせました?」

 

「ああ、見事にな」

 

にしても、なんだろうか。

自分にタオルしか巻かれていない事に気づいていないのか立ち上がった。

勿論、巻いただけのタオルは落ちて裸体が晒される。

今回は先にそれを読んだので見ずに済んだ。

 

「こっちまで持ってきてくれたんですか?」

 

どうやら本気で気付いていないらしい。

 

「取り敢えず、タオルを巻いてはくれないか?」

 

俺は俯いたまま、さとりを見ずに言った。

 

「あっ」

 

恐らくまた真っ赤になっているんだろう。

というかさとりは真面目そうに見えて以外と天然というか、おっちょこちょいな感じがする。

だからこそ、ここにいるペットに好かれているのかもしれないが。

 

「今日は何かする事はあるか?」

 

「いいえ、特にはないです」

 

サードアイで無言の会話をしてもいいがサードアイにも風景は見えるのであえて使わなかった。

 

「泊めてもらってるだけだとあれだから何か手伝いたいんだが。」

 

「と言われても、、、じゃあ、私の話し相手して下さい」

 

意味が分からない。

それは手伝いでも何でもない。

ただ、話すだけ。

 

「わかった」

 

「ああ、そう言えば」

 

一応俯いている俺の近くにさとりが歩いてきた。

どうやらまだ服は着ていないらしい。

 

「どうした?」

 

「見てください」

 

「は?」

 

今さとりは服を着ていないはず、着ていたとしても下着のみ、そんな状態で異性に見ろ。

とはどういう事か。

 

「見てくれないんですか?じゃあ、こうです」

 

俺はさとりに突き飛ばされ床に転がる。

そのまま起き上がりさとりに理由を問おうと思ったが体が起こせない。

どうやら全身を使ったタックルだったようでそのまま俺の上に乗ったらしい。

 

「どうした?」

 

仰向けに倒れながら上に乗るさとりに理由を聞く。

仰向けになっている俺の上に完全に全裸のさとりが乗っかっている。

そしてそのまま倒れ込んできた。

さとりの鼓動が胸に当たって聞こえる。

 

「やっぱりそうでしたか」

 

「何がしたかったんだ?」

 

俺はさとりが退いてくれたので立ち上がる。

床にぶつかったところが痛い、受身程度取れればよかったがあそこまで不意打ちでは流石に厳しかった。

 

「私と話すときにお教えしますね」

 

そう言っているさとりの顔は真っ赤だった。

恐らく、そこまでして確かめたい事があったのだろう。

 

「わかった。取り敢えず服を着てくれ」

 

「わかりました。一足先に戻っていてください。あとで呼びますので」

 

「そうか」

 

俺はそうとだけ言って浴室の出口の扉に手をかけ、錠から形を戻す。

その光景を見てさとりは驚いたようだがサードアイで見たようですぐに着替えに戻ったようだ。

俺はそのまま扉を開け外へ出る。

にしてもさとりのわかったこととは何だろうか。

まさか俺の経験を読んで暗殺者だったという事に気付かれたのか、などと思うと安心できなかった。

そんな事に不安を抱きながら歩いていると割とすぐに部屋に着く事ができた。

すぐにドアを開け中へ入る。

 

「一体さとりは俺の何を知った?」

 


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