【完結済み】東方贖罪譚〜3人目の覚妖怪〜   作:黒犬51

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我は罪人である。一切の許しは得られず、ただ贖罪の道を歩む。貴様の罪を、贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え贖え


50話 Past

暗い暗い森の中、少年は1人。月に照らされ立ち竦む。右手には真紅に染まり、落ちることのないであろう血肉が付いた短剣。左には紫の硝煙をあげる拳銃が握られている。

 

 

「素晴らしい!!成功だ!我々の実験は遂に成功した!」

 

 

彼は被験体であった。内容は、人間の記憶、感情、経験、全てを度重なる拷問の末に消し去り、その上に記憶を書き入れる。要は洗脳である。

例え、どれだけ強靭な肉体を持つ者も、どれだけ知識の多い者でも。殺し合いでは情が少なからず入る。だが、感情を持たず圧倒的な能力を持った者がいれば。それは、人の形、体をとった何かであり、ただの殺戮人形だ。

 

 

「総理に報告を!すぐに!」

 

 

広がった惨状を嬉々として眺め、騒々しく騒ぎ立てる白衣の男。顔は老け、目にはクマが広がって居るがまだ二十代といったあたりだろうか?だが、明らかに異常者だった。

 

 

「ドクター、次の任務は?」

 

 

少年は短剣を鞘に収め、ドクターと呼ばれた白衣の男に声をかける。

 

 

「今日はこれで終わりだ。よくやった、コードネーム彼岸花、君には次からこの国の総理に従ってもらう」

 

 

「了解しました」

 

 

その後、少年はドクターに連れられ、首都のとある建造物に連れていかれた。賑やかな繁華街を抜け、人の海を車がかき分け、目的地に到着する。直ぐに中に迎え入れられ、豪勢なシャンデリアの垂れた客間へと通される。

 

 

「ドクター、よくやった。これで私の国は護られる。君の力をどうか、この国の為に使わさせてくれ」

 

 

笑顔で黒い服を着た男に握手を要求される。少年は無言で返し、椅子に腰掛けた。他人から見ればかなり無愛想、かつ礼儀のなっていない者だが、総理にきにする様子はない。

 

 

「ドクター、彼は一体どれだけのスペックを持っているんだ?」

 

 

総理の質問を聞くやいなや、痩せこけ、目の下にクマのできたドクターがおもちゃを買い与えられた少年の如く口を開く。

 

 

「まず、今ある全ての銃器を扱えます。それに加え、武器の使用、拷問、暗殺。その全てを確実にこなせるだけの記憶と経験を入れました。極め付けには、こいつには感情が無いんです」

 

 

「ほう」

 

 

総理が興味深そうに、顎に生えた薄い髭をなぞり、少年を見据える。顔は一般人、見た目は中学生程度。こんな少年が本当にそんなスペックを持ち合わせているのか。そう思うのも当然だった。

 

 

「証拠はどこだ?」

 

 

「ここに」

 

 

ドクターは右手にぶら下げられたキャリーケースから誇らしげにCDの入れられたプレーヤーを取り出すと再生ボタンを押して総理に渡す。総理はそれを受け取り、画面に目をやった。

 

 

そこには数十人の武装した男に囲まれたこの少年が映っていた。状況は正直厳しいだろう。幸いなことに男たちは銃器は持っていないようだが、彼の持っている拳銃では全員を撃ち抜くには弾が足りない。リロード用の弾を持っていてもこの量ではその隙があるかどうか。

そこでドクターが動画を一時停止、状況を説明する。

 

 

「この男達は全員殺人を犯し、殺人などを犯した罪人です。日本だけでは無く海外からも連れて来ました。この少年を殺害すれ罪を免除し、1000万の金を渡すという餌で釣って戦わせています。人数は丁度30人、武器は銃器以外の好きな物を取らせています。対する彼には一発の銃弾と一振りの短剣のみを持たせました」

 

 

「成る程、続けたまえ」

 

 

ドクターが再生ボタンを押し、動画が再開。一斉に男達が彼に襲い掛かる。一人は雄叫びをあげながら、一人は無言で駆け寄り、目の前のただの少年を我先に殺さんと殺到する。だが、勝負は特に激戦となるわけでもなく、簡単に決した。一人目の男のナイフを躱し、そのまま背後から迫っていた男にぶつける。バランスを崩した男達を片目に、正面から刀を振りかざして来た男の剣戟を短剣で受け流し、懐に飛び込んで喉を引き裂き、その男の裏から来た男に男を蹴りわたし、その男の刀を奪い、裏の男ごと串刺しにする。地面に突き刺すことで行動を封じ、刀を強引に左に振り抜く。いとも簡単に大の男二人の体は裂かれ、臓腑が飛び散る。最初は観戦に徹するという判断をした男達が目の前で起きた地獄に怯え、逃げ始めるが、一人の男が思い出したように叫ぶ。

 

 

「逃げるな!全員でやれば希望はある。このガキをやった後には研究員も皆殺しにすればいい。それに、逃げた所で俺たちは死刑囚だ」

 

 

それに励まされたのか、残りの男が再度彼に敵視を向ける。だが、そこからは一方的だった。数分とも経たないうちに男達は抹殺され、森には静けさが帰る。誰一人として生かされず、死が芽吹いた森の中、少年は無傷でただ立っている。

そこでビデオは終了した。

 

 

「なるほど、素晴らしい。まさしく私の求めていた人間の殺戮人形。この世を正す為に生まれた人だ」

 

 

総理はにこやかに笑うと、彼の情報を手短にドクターから受け取り、ドクターを下がらせる。総理は軽く、その書類に目を通すと頷き。彼に微笑みかける。まるで自分の大切な玩具を守る子供ような目だった。

 

 

「君には、今日からわたしの部下として働いてもらう。申し訳ないが初仕事だ。まず、あの白衣の男を今日の夜、殺害しろ」

 

 

「了解しました」

 

 

それが、彼に与えられた最初の任務であり、殺しだった。それ以降、彼は国に従事し、国を乱すものを殺していった。そこに慈悲はない。彼はただ、過去に犯した事にされた罪を贖う。その果てに、彼は自害を命じられ。今に至った。


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