【完結済み】東方贖罪譚〜3人目の覚妖怪〜   作:黒犬51

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37話 闇夜を舞う亡骸

場所は変わって妖怪の山の白狼の集落、其処で椛は一人門の手前で楓の帰りを待っていた。

 

「遅い」

 

楓が集落を出てから既に2時間が経過していた。どんなに飛ぶのが下手であっても鴉天狗の屋敷までは片道で20分行き来で40分。例え大天狗との議論に時間が掛かったとしても1時間を超える事はまずあり得ないだろう。それに楓はもしも相手が拒否する様なら強行手段、能力を使うと言っていた。

楓の能力は感情を具現化する程度の能力。例え形になったとしても感情は覚妖怪という例外を除けば見える者はいない。要は絶対不可視の攻撃という事になる。そんな能力を持ったが故に感情と能力のコントロールが効かない間はずっと皆に恐れられ、監禁されていた。そんな能力があれば恐らくは大天狗も抵抗できないだろう。

となるとやはり楓の身に何かがあったとしか考えられない。そんな時だった。集落の外から木々を揺らしながら風が吹き込んだ。気持ちのいい風だった、せっかくなので1つ深呼吸でもして落ち着こうと思った時だった。肺に送られる新鮮な筈の空気から血の匂いがした。

どうやら集落の皆も気づいた様で集落が騒めいた。流石に血の匂いが全集落民に伝わる程漂って来たという事はそれだけの出血が起きる何かが起きたとしか思えない。

恐らく一人の出血量ではなく何かが一方的に瞬間的に虐殺されたという事だ。少しずつ殺されたのなら少しの血の匂いが段々と強くなっていくはず。

 

「椛様、いかがしますか?」

 

流石に異常だと感じた様で先ほどの会議で集めていた面子が椛の周りに集まり始めた。

 

「あの血の匂い、楓か秦 空、または両方の戦闘と捉えることもできますが。その他の戦力ということも考えられます。私と、そうですね。銀杏あなたの二人で確認に行きます。その他の戦闘のできる者は集落を守ってください」

 

「はっ!」

 

威勢の良い声の後、銀杏という男の天狗が自分の装備とを装着し椛の装備を手渡した。

その間に残った戦闘のできる白狼天狗も装備を整え、集落を守るために動き出した。

 

「父上、行ってまいります」

 

準備は整った。その場には居なかったが、父のいる屋敷に一礼した後。銀杏と共に妖怪の山の血の匂いのする方へと駆け出した。

 

「椛様、どうかご無理はしないで下さい!」

 

遠くから子供達の声が聞こえた。その声に右手をあげるという簡単な動作で応じ山の中に駆けていく。

少し走った後、連れて来た銀杏が突然椛に声をかける。

 

「椛様、なぜ私を選んだのですか?私は白狼の中でも落ちぶれている者ですよ。もっと他にもいた筈です」

 

「貴方は本当は優秀だからですよ」

 

ただ、そう答え。椛は突き出た枝を切り落とし、根を飛び越え。血の匂いへと向かう。

 

「そうですか。有難うございます」

 

俺は椛様が好きだっだ。しかし、それは絶対に叶わない恋。そんな事は分かっている。彼女は頭領の娘、俺は白狼天狗の中でも出来損ない。能力もほぼ無能に近い。それに椛様はきっと集落のどの男よりも楓様の事が好きだ。本人は同性同士という事もあるが、隠そうとしているようだが、正直隠せていない。楓様と話す時が最も気が楽そうだ。

 

「そろそろ、血の匂いの発生源です。十分に注意して下さい」

 

「了解しました」

 

静かに返答し、一度駆けるのを中断。姿勢を落とし、音を立てないよう細心の注意を払い藪の中を進んで行く。にしても酷い血の匂いだ。近付いた事によりはっきりと分かるようになったがこれは本当に酷い。鼻が曲がりそうだ。

 

「椛様、敵影は見えますか?」

 

血の匂いの発生源はまだ先だが、椛様の能力である千里眼を使えばこの距離であっても状況どころかはっきりと全てが見える。

 

「...」

 

「どうか、なさいましたか?」

 

闇の支配する闇の先を見つめる椛の体が震えたかと思うと突然後ろを向き、青ざめた顔で木に手を着き地面に嘔吐した。

 

「一体何が?!」

 

流石に尋常ではないと察した銀杏は素早く白狼剣を抜き臨戦態勢をとり状況を把握するため。必死に頭を回しありうる限りの可能性を考える。

突然の嘔吐、毒?いや、それなら俺にも効果が出るはず。なら能力に対する、カウンター?それも考えにくい、椛様の能力はただ見るというものそれに対してのカウンターは俺の知っている知識では不可能。もしそんなものを作れる者が居るならば例え椛様でも敵わない。今すぐ逃げるべきだ。取り敢えずは椛様が落ち着くのを待ち一体何を見たのか聞くべきだろう。

 

「一旦引きましょう」

 

まだこれだけの距離がある。だが、椛様の嘔吐音、それに何かのカウンターだったとすれば位置がバレてしまって居ると考えるのが妥当だ。

 

「大丈夫。ただ、少々想像以上だっただけです」

 

落ち着いたようで、顔を上げ。正面を見る椛。しかし、その気丈な対応とは裏腹に内心非常に焦っていた。

 

「一体何が見えたんですか」

 

「肉塊と臓物です。それもかなりの量」

 

淡々と告げられた事実に銀杏は戦慄する。臓物、肉塊。どれも出来れば見たくないものだ。だが、確認するために来た以上行かざるをえない。それに、それだけの量を一瞬で殺す事が可能な何かがいたという事だ。

それが秦 空か楓様ならばまだいいが、それ以外ということも十分に考えられる。そうだった場合、それはただの脅威でしかない。取り敢えずは死体を確認し、秦 空と楓様の生死を確認しなければならない。

 

「行きましょう。酷い状況なので私の様に嘔吐しない様に」

 

「了解しました」

 

短かく返答し、二人の白狼は再度日の沈みきり不気味なまでの静寂と全てを隠さんとする山の中を濃厚な血の臭いの発生源へと駆ける。

正直、椛様に行かせるくらいなら自分一人で行きたい。だが、そう言ったところでまだ殺戮を行なった者がいるかも知れないという事で行くことは目に見えている。

しばらく走ると突然目の前が開けた。

 

「成る程、これは酷い」

 

地面に生い茂る草はまるでインクでも撒かれたかの様にに赤く染め上げられ、所々に臓物が転がっている。まだ、死んでから時間が経っていない様で、月の光に照らされ、赤い池の中に転がっている臓器はどれも生々しく輝いていた。

 

「ですが、なんで臓器だけ残ってるんでしょうか?肉体は一体どこへ」

 

周囲に転がっているのは臓器のみ、その臓器を納めていたはずの器が見つからない。

 

「確かに妙ですね。肉体は一体どこへ?」

 

「おやおや、どうやら私のショーの客がまたきた様ですね」

 

突然男の声がした。其処に現れたのは黒いフードを被った男。声質的に恐らくは老人。しかし、なぜこんなところに老人が?妖怪の山はその名のとうり妖怪の住む山。其処に老人が1人で無事なわけがない。答えは1つしかないだろう。

 

「一体何者ですか?」

 

「ただの哀れな傀儡師ですよ」

 

老人がそう行った直後、月明かりが消えた。ただ、消えたのではない。同時に空を見上げた二匹の白狼は同時に恐怖した。

突如空に現れたのは大量の妖怪。しかし、その全てに生命の息吹は感じられずどれも体の至る所が使い古された麻袋の様に縫い合わされ、マリオネットの様に空に吊られていた。

 

「ショーを開園します」

 

黒いフードの下に隠された口角が釣り上がる。刹那、上空の傀儡の肉が裂け一斉に手を飛ばしてきた。

 

「一旦退散します!攻撃を回避しつつ退避!」

 

状況は危険。我々では勝算がないと判断した椛が銀杏に素早く命令を出す。

「了解しました」

 

銀杏も素早く返事を返し、森の中へ踵を返して入って行く。背後からは大量の手が迫っていた。椛も銀杏の横につき必死に森を駆ける。然し、どこかで戦わなくてはいけないのも事実、この敵だけは集落に近付けてはいけない。それは暗黙の了解で2人とも理解している事もあり。集落とは真逆の方向に走っている。だが、それならどうするか。2人では敵わない。援軍を呼びに行くのでは集落の存在がバレてしまう。

 

「賭けに出ましょう。今はそれしかありません」

 

「賭け?」

 

「そうです。さっきあの男はまた客がきたと言ったんです。なら、恐らく秦 空と楓もあれと遭遇したということになります。その2人を走りながら探しましょう。あの2人と合流できればまだ戦況は変えれます」

 

確かに、そうだ。だが、この賭けは危険すぎる。何せ、秦 空と楓様が生きているという確証がない。秦 空に関しては恐らく天狗の屋敷で拷問を受けていたはず。当然万全な状態ではないだろう。それであれと戦えるとは思えない。

 

「然しそれは幾ら何でも賭けの要素があり過ぎませんか?」

 

「もし、彼らが死んでいたら私達は死ぬしかない」

 

それは事実だ。椛様の能力は戦闘向きではない。例え、どんなに戦闘力が高かろうとそれを上回る能力を行使されれば終わり。それが能力持ちとの戦闘での常識。

 

「了解しました。では、探しながら逃げましょう」

 

探すという行為の上では椛様の能力の横に出るものはいないだろう。やはり今できる最適解は彼らを探すという事。

例え、彼らが死んでいたとしても。未だに背後からは手が追ってきている。状況は悪い、いくら逃げたところで追ってくる手と一方的に消費される此方の体力。相手も能力を使っているのだから何かしらの消費は少なからずあるだろうが此方の消耗に比べれば大したことはないだろう。

 

「椛様!1度あの手をやりませんか?」

 

当然の結論だ、ここまで逃げても追ってくるあたり恐らく距離による効果はほぼ意味がない。

 

「そうですね。最大限警戒して下さい」

 

椛の同意に合わせ、2人は同時に切り返し追ってくる手を切り裂く。

 

「おやおや、やっとショーに参加していただけるのですね」

 

声の聞こえた正面の木の上、そこにフードの男の姿があった。どうやら距離すら取れていなかった様だ。にしても白狼の全速力に付いてくるとはこいつは一体どんな化け物なのか。

 

「あの竜を連れてきたのも貴方ですか?」

 

椛が周囲を囲む手の動きを慎重に観察しながら声を上げる。

 

「時間稼ぎですか?まぁ、急いでもいませんしお答えしましょう。私、と言うよりか私の依頼主と言うのが正しいでしょうね」

 

木の上のフードの老人は薄情に答えた。

 

「依頼主?貴方は一体何が狙いで来たんですか!」

 

椛が続けて質問する。然し、その質問に男は不満そうに唸ると声をあげた。

 

「次は此方が聞く番でしょうに。まぁ、私の任務は果たしたのでいいでしょう。秦 空ですよ、ただ彼は私の力に即座に気付いたようで模範的に逃げてしまったので追いきれませんでしたよ。まぁ、結果としてこの人形達を手に入れたので良いですがね」

 

男がそう言い切った瞬間だった。背後の藪から短剣が突然音もなく投擲され頭上を掠めて男の元へと一直線に飛んで行った。然し、男の眼前で何故か止まってしまった。

 

「ああ、貴方とずっ

 

背後の藪から耳を花火を思わせるような爆音が連続で数発響き男の発言をかき消した。が、それもまた男の眼前で止まってしまう。

 

「酷いですね。まだな

 

刹那男の背後に現れた影が、男の体を引き裂く。吹き上がる血が重力によって落下し。突然現れ、その木の下に着地した黒いフードを濡らしていく。

 

「逃げましょう!これは本当に駄目です!」

 

直感的に生命の危機を感じた椛がそう指示する。然し、本能的な恐怖のせいか眼前に現れた絶対的強者のせいか声にならず足も動かない。

 

「安心しろ。秦 空だ」

 

その一言で腰が抜けてしまったのか地面にぺたりと座り込む。それを庇うように銀杏が前に出る。

 

「悪い、敵ではないと言った方が良かったな」

 

まるで機械が文字を読まされるような全く感情の捉えられない声が響く。フードの中からサードアイが覗き、銀杏を見据えた。

 

「銀杏、安心して下さい。秦 空に間違いありません」

 

それを聞いた銀杏は構えていた白狼剣を下ろし息を吐いた。

 

「まさか2度も助けられるとはなんと礼を言ったら良いか。所で楓は何処ですか?」

 

「地底に逃がした。流石に1人の方が動きやすかったからな」

 

「地底に逃がした?!そんなことしたら2度と上がって来れなくなってしまうのでは?」

 

「そこは俺が話を通す」

 

楓も無事と言うことに安心したのか椛は座ったまま大きく息を吐く。そして立ち上がろうとした瞬間だった、周囲から音がしたかと思うと一本の手が椛を標的にし高速で動き出した。

 

「まだ死んでないのか」

 

なんの感情も篭っていない声を上げ、空が椛の元に向かうが間に合うわけがない。椛の体に手が触れそうになった瞬間だった。

 

「椛様!」

 

「銀杏?!」

 

椛を突き飛ばし、銀杏がその手に掴まれた。するとそのまま森の奥の方へと引きずられていく。

 

「不味いな。椛と言ったか?集落の守りを固めろ。俺はあいつの所に行く」

 

返答を待たずして、空は銀杏を追って。藪の中へと駆けて行った。椛はそれでも銀杏を追おうとも考えたが、先ほどの状況を考え集落へと駆けて行く。その目には自らの無力を呪った涙が流れていた。

 

一方、空により地底に送られた楓は地霊殿へと駆けていた。楓をまるで呪うように見つめる周囲の目が痛い。門のない地霊殿に入り、扉を叩くと直ぐに桃色の髪の秦 空と同じ目を持った幼い少女が現れた。古明地 さとりで確定だろう。

 

「何の用ですか、天狗」

 

全く好意的とは思えない反応。なんなら敵意すら感じる。

 

「秦 空の使いのものです。話を聞いてくれませんか?」

 

秦 空。そのワードに反応した様で体がピクリと動いた。

 

「わかりました。付いてきて下さい」

 

そう言うと少女は門を開き、中へと楓を迎え入れ、進んで行く。楓はその後にゆっくりと付いて行く。中は洋風で、天井からはシャンデリアが吊られている。然し、そこから発される光はあまりにも少なく全体的に薄暗く。外から入った光はステンドグラスの影響で明るく照らしはしていない。そんな館内を少女とともに歩く、その腰には何故か短剣が携えられていた。ホルダーに入っている為形状は伺えない。だが、覚は近距離戦闘はしないと聞いていたはずだがまぁ、誤報だった様だ。そんな少女の後を歩いていくととある一室の前で少女が止まり入って行った。何も言わず付いて行き、部屋の中に入って行く。

 

「座って下さい」

 

手で示された椅子へと座ろうとした時だった。

 

「その背中についているのは何ですか?」

 

「背中?」

 

さとりは楓の背後に近付くと背中にテープの様な物で付けられた白い花を取った。

 

「彼岸花?」

どうやら、背中に白い彼岸花が付いていた様だ。いや、でも私は白い彼岸花のある場所を通った覚えはない。それに走っているうちに普通なら落ちてしまう筈。となると秦 空の能力だろうか。秦 空と言う単語が脳裏に浮かぶたびに先程の行為が浮かんでしまい赤面する。

「白い彼岸花ですか。珍しいですね」

 

「そうですね。所で、空の使いという事ですが。空は無事ですか?」

 

表情には出ていないが語気が強い。やはり同族としてかなり心配しているんだろう。

 

「秦 空は無事です。今は妖怪の山に現れた何かを討伐に行っています。伝言を受けていますがここで言うより読心した方が早いかと」

 

「無事ですか。本当に良かった。では伝言を受け取ります。端的でも構いませんので思い出して下さい」

 

さとりのサードアイが動くのを確認した後、地上で秦 空に救助してもらった事、竜を殺したこと、恐らく鴉天狗から拷問を受けた事、彼の負った酷い傷の事を順に思い出していく。

「そうですか、そんな事が...でも。空ならきっと何とかするでしょう。何せ彼は相当強いですから」

 

まるで自分の家族を誇る様に胸を張っているさとりを見てそのギャップに少し笑ってしまった。

 

「な、何で笑うんですか?」

 

「いえ、すこしおかしくなってしまって。でも、彼が本当に強いのは事実ですから、引き時も知っているでしょう。きっと何もなかったかの様に帰って来ますよ」

 

どこから湧いてくるのか、全くわからないが。何故か彼なら大丈夫だと、そう思ってしまう。それに、彼が私を置いて行ったのも全力を出す為だろう。

 

「そうですね。お茶でも飲みますか?待っていれば紫も来るでしょうし」

 

「いえ、私は集落を守りに行かなくては」

 

そこで、少し辛そうな顔をする。

 

「それはやめた方がいいと思います」

 

「何故です?」

 

彼はなんとかすると言ってくれていた。ただ、今思うとあの発言の根拠は一体どこにあったのか。

 

「地底を出る際には、勇儀さんの試験をパスする必要があるんです」

 

「勇儀様の?内容は」

 

「想定はしていると思いますが。戦って勝つことです」

 

戦慄した。勇儀様は元妖怪の山の四天王。昔、勇儀様と同じ種族の鬼が暴れた際には竜の同等の被害が出たはず。それに私1人で勝つのは無理がある。

 

「じゃ、じゃあ、私は地上に戻れないんですか?」

 

「いいえ、そこはきっと空が何とかするでしょう。ただ、帰って来るまでは出れないでしょうね」

 

「そんな...」

 

さとりは肩を落とす白狼をみて多少可哀想だとは思ったが。彼女にはどうもしようもない。私と一緒に動くという条件ならば地上に連れていくことはできるが。永住はできない、必ず帰ってこなくてはいけない。

 

「でも、空が何とかすると言ったのならきっと大丈夫でしょう」

 

一応励ましてはいるが、空が本当に一度降りると2度と上がれない事を理解した上で言っていたかは彼女にもにも分からない。

「空が言ったんですから。きっと大丈夫です」

 

未だに心配そうな楓をさとりはそっと励ます。だが、それ以上にさとりも心配を抱えていた。正直、それ以前の問題だった。空が本当に帰って来てくれるのか。無事で帰って来てくれるのか。もし、彼が死んでしまったら。私はまた、1人残されてしまう。やっとあの孤独から逃れられた。もうあの孤独には戻りたくない。

 

「紅茶です」

 

お燐が扉を開け机の上に高級であろうカップを洗練された動きで置き、その中に湯気をあげる液体を注いでいく。2人分の紅茶を注ぎ終わったところで砂糖を机の中心に置き、茶菓子を並べた皿を置き。一礼して部屋を後にした。

 

「そう、きっと彼なら帰って来ます」

 

一体誰に向けて告げられたのか。地底に残された2人の少女は互いに不安を抱えながらお燐によって机の上に置かれた紅茶を啜り茶菓子を摘む。

彼ならばきっと帰って来る。そう信じて。

 


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