【完結済み】東方贖罪譚〜3人目の覚妖怪〜   作:黒犬51

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26話 まるで傀儡か機械か

  まずは此処の位置を把握する事から始めよう。1つ目の方法として断層からどの時期に何があったのかを推測する方法が考えられた。これにより火山灰の層を発見できれば大体の位置は特定できる可能性がある。

  が、俺の能力で断層を見ることはでき無い。ならば断層のむき出しになっている場所を探そうと試みたが、来たばかりの場所では何処にそんなものがあるのかわかるわけも無かったため実質的に無理だと判断した。

  ならば周囲の草木を見るという方法に移っろう。この花畑の中では自然に生えている植物を見ることができない。という事はこの花畑の範囲外に行かなくてはならない。

 

「面倒だが飛ぶしか無いな」

 

  俺は自身を浮かせ、花畑の外の森に降りる。ここは流石に花畑では無いだろう。周囲の木々が金木犀や椿であれば話は別だが見た感じではそうでは無いようだ。

  まずは周囲の草花から確認をしていく、それでも大まかな位置は分かるはずだ。その植物がどのような条件で自生するのかをある程度覚えておけばそんな事も可能だったりする。

  だが、これにも大きな問題がある。俺の知識に入っていない植物が見つかったり、周囲に基本的に何処にでも自生できる物ばかりの場合、全く場所が絞れなくなる。

 

「前者か......予想はしていたが」

 

  全く分からない物ばかりだ。

  キノコを食べると成長する男の世界の土管から出てくるやつのような色をしていたり、クネクネと動いていたり。

  妖怪の影響だろうか。

  これでここの場所を割ることは俺の今できる範囲の行動では出来なくなった。

 

「仕方が無い、なら次だ」

 

  俺は再度空を飛び、花畑へと戻り自らで作った椅子に腰掛ける。

  次は今の俺の持つ幻想郷に対する情報の管理だ。

  まず、此処は幻想郷という物は日本の何処かか又は異世界にあると仮定しておこう。

  そして此処には外界の科学の進歩に伴い、ある意味での畏れという信仰が減り、存在理由が不安定になった妖怪が存在している。

  この時点でどのようにして妖怪の畏れを確保しているのかは、あの町の人間たちを使っていると考えるのが妥当だろう。これが現時点でまとめれる幻想郷についての情報だろう。その他にも地底には嫌われた妖怪が住むなどもあるが、それは今の状況では組み込む必要の無い情報だ。

  ただ、1番の問題は俺という存在だ。

  俺は死んだにも関わらず、此処で何故か妖怪となり復活した。紫曰く、俺の魂が何かの手違いで入って来たと言っていた。だが、それにしては俺の肉体が変わっていない。身体の大きさも、傷の跡も、何も変化が無い。ただ、髪の色は変わっていたが。

  にしても、全く持って理解不能だ。肉体が変わっていない事からいわゆる転生という事でもなくただ復活したということになる。

  かつて、キリスト教のイエス=キリストも復活したと言われているが、俺は教祖になるような事はしていない。何方かと言えば悪魔と恐れられる側の人間だ。

  というか俺のことに関しては正直、俺の知識外の事が多すぎる。それの俺の知っている法則に従うと矛盾する。

  まぁ、まとめれるのはこれが限界だろう。少々まとめ方が強引だが仕方の無いことだ。理解できる範疇を超えている。

  そして最後の1つに移ろうか。恐らくこれが1番時間が掛かる。

 

  さとりはなぜ俺を愛しているといったのか。

 

  先ず考えられるのがさとりのあの発言そのものが嘘だという場合。ただ、それは割と厳しいと思っている。さとりが俺に告白をした際、あの部屋には媚薬が充満していた。その状態で綺麗に嘘を吐くのは厳しいと言わざるおえない。

  次に考えられるのはさとりとゆかり達がグルという可能性。媚薬が俺に通用しないことが分かった上で俺にあの煙を媚薬と勘違いさせることにより。さとりに逃げ場を作る。

  ただ、これも考えにくい。わざわざさとりがそんな事で紫に恩を売るとは考えにくい。

  それに俺の知っているさとりはそんなに演技が上手くない。どちらかといえば下手な部類だ。

 

「となると、考えられるのは1つだけか」

 

  それは実に単純な事であると同時に、彼が最も対処に困る物だ。

 

「あれ、先生?」

 

  突然後ろから声をかけられ反射的に振り向くとそこには寺子屋の生徒がいた。と言っても例の妖怪だ。

 

「先生って強い?」

 

「あ?まぁ、弱くはないだろ。」

 

  突然どこから現れたんだか......。正直子供は全く行動が読めないので少々扱いにくい。

  まぁ、今はサードアイと言う最強の道具があるが。いや、サードアイは体の一部なのか?

  それに関しても後で考えようか。

 

「名前はチルノだったか?いきなり何しにきた。それに俺の名前は秦 空だ。これからは空と呼んでくれ」

 

「わかった!空、アタイと戦え!」

 

  こいつも戦闘狂か?ここは何だってこんな戦闘今日だらけなのか......

  だが相手は子供、俺は元教師。ならば、頭脳戦でも文句は無いはずだ。

 

「じゃあ、先に15を言った方が負けというゲームを提案しよう。一度に言える数字は3まで。やるか?」

 

「何それ、あたいのやりたいのと違う......

 でもいいや、あたいはサイキョーだから何しても負けない!!」

 

  すまないなチルノ、お前が必勝法を知らない限り俺に勝つことは無い。

 

「あたいは、1.2.3」

 

  どうやら必勝法は知らないようだ。もう既に9割は勝てただろう。

 

「4.」

 

「5.6.7!」

 

「8だ」

 

「そんなに少なくていいの?」

 

「ああ、これで良いんだよ」

 

  正直な所、必勝法を相手が知っていた場合、先行でないと勝てないが今回は確認がてら先行を取らせた。

  先行という状況で俺の知っている策をとらなければほぼ俺の勝ちというわけだ。これによりチルノが必勝法を知っているかどうかも判断できる上に、次からもこの戦い方で戦える訳だ。

  非常に平和的な策だと思う。

 

「ふーん、9」

 

「10.」

 

「また?やる気あるの?」

 

「もうやる気が満ち溢れてやばいぞ。」

 

  まぁ、この時点で俺の勝利が確定した。

  実際は一手前から必勝出来たが、相手が必勝法を知らないとわかった以上悟られてはいけない、という事であえて外した。

 

 

「11.12.」

 

「13.14.」

 

「あっ。」

 

「俺の勝ちだな、また挑戦待ってるぞ。」

 

  そう言って花畑へと向かう。まぁ、あれは非常に簡単に必勝法が見つかるゲームだ。

  あのゲームの性質上14という数字を言った方が勝ちとなる。そこらから自分が14という数字を確実に言える様に逆算する。すると、10、6、2、となる。そして2という数字を言うには先行が条件となる。よって先行が勝者になる訳だ。

  ただ、これを知らない奴からすればただひたすらに勝てず。ストレスが溜まるだけだが。

 

「全く、探したわ。貴方に客人が来てるわよ」

 

  どうやら、俺の事を探していたようだ。特に収穫もなかった事だし、花畑から出なくても良かったのではないかとも思うが。

  それは結果論に過ぎない。

 

「ほぉ、どんな奴だ?幽香」

 

  にしても俺に客人とは、中々興味深いな。一体何のようで俺を訪ねるのか。

 

「忠犬と言ったところかしらね」

 

「ああ、成る程」

 

  この時点で相手が何を求めているかまで大体想像が付いてしまった。

  まずはこの忠犬という言い方からして何処かの下っ端、またはどこかからの使いと考えられる。

  そして、訪問対象が俺ということは......

  恐らくだが、戦闘技術を教えて欲しいのだろう。流石に人里や、地底で戦い過ぎたか。これからは避けれるものは避けた方が良いだろう。既に手遅れという感じもしなくも無いが。

 

「あれよ。」

 

  幽香の指し示す先には白い何かがいた。

  流石にまだ遠すぎるせいか正確には判断できないが、取り敢えず、人ではないだろう。

 

「人ではなさそうだな。」

 

「ええ、ご名答よ。あれは天狗。中でも階級の低い白狼天狗よ。」

 

「天狗に階級があるのか。」

 

  外は完全なる階級社会だが、天狗既にそうなっているらしい。

  おや、どうやらこちらに気づいたようだ。白い塊がこちらへと飛んで来た。

 

「貴方が秦 空ですね。」

 

「そうだが、何の用でここまで来た?」

 

「貴方にお願いがありまして。」

 

  さぁ、サードアイの出番だ。

 

(どうまとめるべきか、いかにしてこの覚妖怪を納得させるか。でもここはシンプルに行くしか無い。)

 

「是非、私に戦闘を教えてくださいませんか?」

 

  シンプルイズベストという思考に落ち着いたようだ。

 

「ほぉ......では俺の質問に答えてくれ、それだけで良い」

 

  何もそんなにも難しい問題をぶつける気は無い。ただ、俺から学んだ戦闘がどのように使われるのかが知りたいだけだ。

  本当に、ただそれだけだ。

 

「俺から戦闘を学ぶのはわかった。だが、それを何に使う?」

 

「それは......」

 

  さぁ、どう答える?その答えによって俺の行動は決まる。

 

「私は、仲間を守りたい。同族の皆を!」

 

「そうか。なら......教えることは出来ないな。」


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