【完結済み】東方贖罪譚〜3人目の覚妖怪〜   作:黒犬51

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14話 命知らずは命を捨てる

俺は体を揺すられて起こされた。

正直、自然に目が醒めるよりは辛いし、寝起きも悪い。

 

「ん?ああ?さとりか」

 

「昨日私、何かしましたか?」

 

言うべきか言わないべきか、少し迷ったが言わないことにした。

 

「いいや、何もしてなかったぞ」

 

「したんですね」

 

気付けばさとりのサードアイがこちらを見ていた。

どうやら寝起きで思考回路が鈍くなっていたようだ。

という言い訳をしておきたい。

正直、忘れていた。

自分も他人の心が読めるので、読心を特別な物という認識が置けず。

結果今回の様に油断してしまった。

気をつけなければ。

 

「私は何をしたんですか?」

 

「俺をベットに押し倒した。その後すぐにまた寝た」

 

もう嘘も無駄だろうと読み、素直に嘘を交えた真実を言った。

嘘というのはそのままノーマルにつくのが一番バレやすい。

一番バレない嘘と言うのは、嘘を真実で覆い隠した嘘だ。

この嘘を吐かれるとどうしても真実の方に目が行きそれ以上は探ろうとしない、それによって嘘がばれにくくなる。

要は大切な物をしまうのと同じ感覚と言ったところだろうか。

例えば今回の件なら俺に対して本当は寂しいやら色々言っていたが、あえて押し倒されたという真実は認め。

その発言をした事を言わないわけだ。

 

「本当ですか?本当なら私のサードアイの前に手を置くのをやめて下さい」

 

「わかった」

 

俺はそう言ってゆっくりとさとりのサードアイから手を離す。

この動作は俺の思考を読まれないためでもあり、俺のサードアイをさとりに向ける時間稼ぎでもある。

 

「さとりがもし俺に何かをしてたとして何をしたと思う?」

 

少しいじりたくなった。

 

「え?そ、それは。き、キスとかですか?」

 

「安心しろ、してない。」

 

それは事実だキスはされていない。

 

「じゃあ、もっと先の行為を?!」

 

「してねーよ。落ち着け」

 

さとりは焦っているのを必死に隠してはいるが、心が読めるので意味はない。というか表情に出てしまっている

 

「そ、そうですか」

 

「所で、元気になったのなら地上を観光しないか?」

 

観光という名を打ってはいるが本音は地上にはどんな生物が住んでいるのか知りたいだけだ。

 

「わかりました。行きましょう」

 

そう言ってさとりは立ち上がり、ドアを開けて出て行く。

俺はすこし慌てて、それを追いかけた。

 

「あら、退院かしら?」

 

「そうです」

 

「じゃあ、頑張って」

 

いや、何を頑張るのだろうか?

特に頑張る要素はない様な気がするが。

取り敢えず先に歩いて行ってさとりの後を追おうか。

見失ったらおしまいだ。

外は、日がかなり登っていた。

太陽の位置から予測するに恐らくは10時から12時ぐらいだと思われる。随分と寝たな。

 

「所で何処に行くんだ?」

 

「取り敢えずここの管理をしている巫女のところへ行きます」

 

巫女に管理させるとは、やはり少し外の世界と比べて生活水準が低いのかも知れない。

まぁ、自分で思っておいてだが、巫女が管理者だからと言って生活水準が低いと言うのは酷すぎる憶測かも知れないが。

まずまず生活水準など低くても生きていて楽しければそれでいいのだろう。

 

「あそこです」

 

さとりが指差す先は山の上にある赤い鳥居、鳥居があるということは神社だろう。

 

「どんな人が居るんだ?」

 

「博麗霊夢という紅白の衣装が目立つ巫女がいます。」

 

接近するにつれてその神社の全貌が見えてきた。

どうやら山のある程度高い位置にある様で、木々に隠れてはいるが所々石の階段が顔を出している。

 

「こんなところにあったら参拝できないだろ」

 

「事実、参拝客はほぼいないです」

 

「だろうな」

 

まずまず妖怪が出るという時点でここまでわざわざ来る普通の人間はいないだろう。

これもまた俺の勝手な妖怪への偏見からだが。

妖怪は人を食べる。

そうとしか聞いたことが無かったからだ。

見たことはない、ただ聞いただけでそれを信じてしまう。

それが人間の愚かな所でが且つ残酷な面でもあるんだろう。

しかし、今俺は覚妖怪になっているわけだが人間を食べたいとは思わない、まぁまだこの姿になってから見てないというだけかも知れないが。

 

「なんか、白と黒の奴もいないか?」

 

「ああ、霧雨 魔理沙という魔法使いでしょう」

 

距離的にはまだあるが一応視力は左右2.5以上はあるので判断は出来る。

そう思った瞬間、俺とさとりの上をビームのようなものが通った。

 

「は?」

 

「もっと早く飛べますか?嫌な予感がします」

 

「ああ」

 

確かに、加速してからその霊夢であろう人物と霧雨という人物が周囲に光弾のような物を放っているのが見えた。

 

「何だ?光弾を周囲に放ってるぞ?」

 

「戦闘中の様ですね」

 

俺とさとりが残り数十メートルまで来た時、博麗と言われていた人物が札を掲げ何かを言い放つ。

刹那、その札が光り大量の光弾が四方八方に放たれる。

必殺技の様なものだろうか?

取り敢えず、宙にいるのは得策とは言えなそうなのですぐさま飛行を中断し眼下の森に降りる。

しかし、降りた先にまで大量の光弾が迫ってきていた。

どちらにしても他人の前であの動きをすれば無駄に詮索をされてしまう。

相手がただの人間であるならまだしも、覚と言う心を読む妖怪が居ては上手く隠せそうにもない。

いち早く、サードアイに見られていても思考が読まれない策を講じなければ。

そんな事を考えつつも正面から飛んでくる光弾を躱していく。

色は虹色の様で稀に大きな光弾が正面から飛んで来るが木々をなぎ倒して来るので非常に読みやすい。

正面から光弾が4つ、飛んで避けてもいいがそれではブラインドされたいた場合にどうしようもなくなってしまう。

と言う事でスライディングをして下を潜る。

そしてすぐに立ち上がる。

どうやらブラインドはなかった様だ。

軽くホッとするがそんな暇はなくすぐさま次の光弾の群れが来る。

今度は左右から俺を狙ってのホーミングに、正面から2つのブラインド。

本来ならブラインドは分からないが先に来る光弾よりも後ろから来る光弾の方が大きかったので直ぐに気付けた。

彼はホーミングの2つをギリギリまで引きつけながら後ろへ走り、そのまま上をへし折られ幹だけ残った木に足を掛け後ろへとバク転しそのまま地面に受け身を取りながら倒れ、ブラインドしてきた光弾も避ける。

まぁ、少々危険なドッジボールと言ったところか。

この頃運動不足だったので丁度いいが。

まぁ、銃弾よりは格段に躱しやすい。

その後1.2分程避け続けた所で光弾は止んだ。

俺は1つ息を吐いてからさとりの居るであろう上空へと飛ぶ。

 

「無事ですか?」

 

「ああ、なんとかな。伏せていたら頭上を越えていった」

 

さとりは俺の心配をしているがどうやら避けきれなかった光弾が複数あった様で、服は破れ、あまり直視できない様な状態に陥っている。

 

「直すか?その服」

 

さとりは今の自分の状況に気付いた様で少々頬を赤らめながら頷いて。

 

「ほらよ。直った」

 

「便利ですね」

 

「そういう能力だ」

 

彼はそう言って博麗という人物が居たと思われる処へと飛んでいく。

背後から気配は消えていないのでさとりも付いてきているだろう。

彼はそのまま、まるで爆弾でも落とされたかの様な状態になっている神社へと降り立った。

 


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