Sword Art Online Wizard   作:今夜の山田

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城を買える方にしようとも思ったけどこっちに。某死を呼ぶ銀です
戦闘シーンなのに進まない!不思議!好きなのに!この技量!
すみません
今回は五千文字


ファンタジー鉱石登場

 残り二十秒。俺の頭の中は色んな文字が飛び交っている。

 敵の構えは。下段攻撃を狙った姿勢。

 俺の構えは。即座に突進攻撃に移れるような前傾姿勢。

 敵の得物は黒の片手剣。俺の得物は赤の長槍。

 リーチはこちらの方が遥かに長いが、槍という事もあって攻撃はほぼ点を突くのみ。

 懐に入られたら面倒になるが、入らせなければこちらが有利だ。

 カウントはいよいよ一桁。ええいままよ。勝負が始まったら定石通りに突進攻撃あるのみだ。

 三。二。一。――カウントが【DUEL!】の文字に切り替わり、即座に弾ける。

 

 キリトは驚いたことに、下段攻撃をせずに突進を仕掛けてくる。

 それを俺は武器で防ごうとせず、後ろに跳ぶ事で8mほどの距離を一気に空ける。

 言っては何だが、俺の《跳躍スキル》はトップクラスだと自負している。瞬発力なら誰にも負ける気はしない。暇さえあればひたすらぴょんぴょん跳びはねてた結果、実用レベルまでのし上がったスキルだ。

 全力なら最大100mもの距離を一瞬で跳ぶ事も可能だ。勿論、そんな事屋内で使用したら壁に物凄い勢いでぶつかるのと同じだ。

 《疾走スキル》と違い、途中でブレーキをかけるのは不可能。事前のコントロールでのみ、飛距離を決定できる。さらには再使用に一秒ほどの待ち時間が必要。

 様々な欠点があり、上げるためにもひたすら跳ばねばならない。非常に面倒で使い勝手が悪い。というのが一般的なイメージだ。

 しかし、この跳躍スキル。速度が非常に速いのが特徴でもある。非常に速いのが特徴だ。再使用待機を含めても直進だけなら全スキル含めても上は無い。

 

「避けれるなら避けろよ」

 

 そう呟いて、技を発動させる。長槍専用突進技《スパイラルチャージ》。たかだか片手で持つ盾や剣ではガードをしたとしても、衝撃で二、三秒のスタンは当たり前。その隙にもう一度お見舞いすれば大ダメージは必至。

 なにより、この技は初見殺しになり得る。攻撃範囲が意外に広く、軽くこの通路全体をカバーできるほどだ。つまりこの通路においては発動さえできれば絶対必中。この狭い通路で避ける術は、後ろに下がるしかない。

 槍の先端に緑色の光が集まる。螺旋状に槍を渦巻く緑色の光は、平時ならとても幻想的に映るだろう。

 ――技が発動する瞬間。跳躍スキルで地を蹴って、壁から壁までを一瞬で突っ切る。後ろに下がる隙すら与えず、あっという間に、あっさりとキリトを弾き飛ばす。

 誰が想定できようか。《聞き耳》や《釣り》とは比べものにならないと言われた跳ぶだけしか能の無い跳躍スキルを伸ばす馬鹿がいると。

 それで誰が予想できようか。高レベルの跳躍が生み出す異常なまでの瞬発力を。

 まるでカーレースでのロケット系アイテムを使用したかのような、有象無象をあっという間に追い抜かす超スピード。

 この通路戦では初めから俺の勝ちは決まっていたようなものだ。距離を空ける事さえできれば、この技での通路における対人戦は無敵だ。ちなみに広場でやると、十中八九距離を見誤って人垣に突っ込む。

 欠点をあげるとすれば、ボスのような高HPにこの技を繰り出してもスタンが起こらなければ使用後硬直に攻撃を叩きこまれて終わり。事実上、雑魚か対人戦にしか使えない欠点がある技だ。

 振り返ってキリトの方を見ると、キリトは大の字になって倒れていた。その表情から察するに、何が起きたか理解が追い付いていないようだ。

 その反応は当然だ。《スパイラルチャージ》ならまだしも、跳躍を完全習得している馬鹿は俺くらいなもんだ。

 もう一度《スパイラルチャージ》の構えを取る。しかし取った所で、決闘が終わっているのに気付いた。よくよく見れば《初撃決着モード》に設定されている。

 これは最初に強攻撃か相手のHPを半分に減らしたほうが勝つというルールだ。《スパイラルチャージ》はその条件を満たしている。

 

「……それが噂のチートか? コクロウ」

 

 その呼び名に一瞬怒り狂いそうになったが、気を落ち着かせて寸前で止める。よく考えてみれば、今の俺の名前はコクロウだ。間違ってはいない。そしてこの名前は対戦相手にも表示されている公開情報だ。問題なんか無い。

 断じて、黒狼獄覇迅皇常闇紅蓮帝国第一皇子刹那という名の頃、フレンド達から呼ばれた愛称なんかでは無い。故に、こんな事でいちいち目くじらをたてる必要はない。向こうも茶化して言ってるわけでは無いからなおさらだ。

 

「……いや、ただの高レベルの跳躍と、槍の突進攻撃だよ」

 

 そう言って、倒れているキリトに回復結晶を投げてその場を後にする。傷付き倒れた敵にも回復アイテムを渡してやる俺優しくてかっこいい。

 そんなのは建前で、これ以上MPKの噂を広められるのは面倒というのが本音だ。見つからないように隠蔽スキルを使って、跳躍スキルで通路を跳び抜ける。

 キリトが狩っていたおかげか、敵にぶつかるなんてヘマをすることは無かった。

 

 

 

 

 

 迷宮の通路から出て、外の光と空気を一身に受ける。幸いな事に、外は丁度夕暮れ時だった。今ならまだ安全に帰れるだろう。中で倒れている剣士サマの事は知らないが。

 この後は、適当に野外に情報屋が居れば会って攻略データを渡し、居なければそのまま未開の街――この階層では《フォネルイ》と呼ばれる小さな街に帰って飯食ってまた迷宮区に戻って雑魚の掃除。これの繰り返しだ。

 当然、迷宮区のデータこそ渡すがフォネルイに続く道のマッピングデータは絶対に渡さない。居場所が知られた日には、どうなるか考えただけでも恐ろしい。

 他にも、A、S級食材の場所も伏せておく。これはこのゲームでは非常に貴重な物でもあるが、俺自身もまた非常に貴重な物だと思っているからだ。

 第一層の街でパンを食べた時の、十六年ぶりに感じる事が出来た食感は今でも忘れることはない。あれ以来、ひそかにコツコツと料理スキルも伸ばして完全習得済みだ。寝る間も無く高ランク料理に勤しんだ甲斐があったというものだ。寝る必要は無いが。

 今、一般プレイヤーが俺を受け入れてくれれば彼らの食事環境は一気に解決できるだろう。受け入れてくれればの話だ。

 数か月前に必死に隠蔽スキルを駆使して深夜の内に一層に訪れた際、軍の目をかいくぐってまでA級食材の配給に行ったというのに、反応は軍を呼ばれるというものだった時は本気で泣いた。泣きながら逃げた。

 だめだ。思い出したらまた泣けてくる。

 

 そんな事を考えながらとぼとぼ森の中をフォネルイ目指して歩いていると、森の中から甲高い獣の悲鳴が聞こえてきた。

 その悲鳴はS級食材のラグー・ラビットの鳴き声と同じものだ。しかし、聞こえてきた悲鳴の方向は俺が知ってる群れの方向とは別だ。

 おそらく群れからはぐれたとか、そんな理由で森にPOPしたのだろう。そしてそれを運よく発見したプレイヤーが倒したのだろう。きっとそれだけだ。

 ちなみにラグー・ラビットの群れが存在する場所はもっと奥にあり、さらに非常に高いレベルで隠蔽されている。

 朝から晩まで完全習得した索敵スキルで探しても丸一日かかってようやく見つかるほどだ。俺は索敵スキルのレベル上げの中、偶然発見したに過ぎない。さらに訪れる度毎回探し当てなければならないというのもある。通い続ければ莫大な資産を持つ事ができるだろうが、まず無理だ。

 おそらく何らかの条件も必要だろう。料理スキルの完全習得者限定とか。しかしそんな料理バカ、俺以外に数人いるかどうかだ。加えてここまで来る戦闘力を考えると、もう俺しかいないんじゃないかとすら思える。

 もしそうだったら、あの穴場は俺にしか分からないスポットになるだろう。隠れ家にも使えるかもしれない。

 閑話休題。

 ここからフォネルイまでは意外と近い。万が一にも見つかったら大変な事になる。階層的に考えても、攻略組が徒党を組んでやってくるかもしれない。

 隠蔽スキルを使って気配を消して、足早にフォネルイまで向かう。

 

 

 

 

 

 フォネルイの街は民家数軒と鍛冶屋、武具屋等が存在する程度の小規模の街だ。

 階層主要の街ではないため転移門も無い。はっきり言って、転移結晶を使わない限り非常に交通の便が悪い位置にある。

 この街には現在俺しかいない。正確には、俺以外の住民はNPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)だ。

 俺はこの街に一つの家を持っている。購入費は五〇万コル。家にしては破格の安さだ。当然、交通の便が悪い、風景が楽しめない、ボロっちい等の欠点こそあるものの、住むだけなら特に問題は無い。

 俺からすれば、塔が近いから階層がクリアされた時すぐに上に行ける、S級食材がすぐ近くにある等の理由で、気に入っていたりする。

 

 この街の中央には噴水があり、その近くにはクエストを出す老人がいる。内容はラグー・ラビット料理を渡すという、非常に面倒なクエストだ。

 俺はさっくりクリアできたが、普通のプレイヤーからすればまずクリアできない。ラグー・ラビットを探すだけでも面倒なのに、更にそれを料理する必要があるのだ。そしてそのS級食材を材料に作られた料理に一切手を付ける事無く老人に渡さなければならない。

 それで得る報酬はと言うと、敏捷と筋力が上がる特殊アイテム一個。非常に割に合わない。上がる割合も高く、何度でも受ける事ができるのが利点だが、このクエストをうけるくらいならドロップを狙って他のモンスターを狩る方が格段に楽だろう。

 あとは特殊ダンジョンの開放。夜間限定で特殊鉱石が採取できるダンジョン。出てくる敵はその特殊鉱石でできたゴーレム。おそらく強さは九〇層相当で、これまた勝てる実力が無ければ割に合わない。

 俺は跳躍スキルでヒットアンドアウェイを繰り返すという少々卑怯な手段で倒せるから問題は無い。ここしばらくはこのダンジョン通って鍛冶スキル上げの毎日である。ちなみにこの特殊鉱石を使った武具は、俺の鍛冶スキルの低さもあって成功例はほとんど無い。

 運よく出来上がっても耐久値が激減していたり、耐久値が減り易かったりするものばかりだ。しかし威力自体は非常に高く、貫通力を強化する、近くに居る幻獣、精霊、死霊等に高い継続ダメージを与えるという特殊な性質があるため槍の素材として非常に使い勝手の良いものだ。

 ただ利点ばかりではなく、装備している者の戦闘時回復スキルを無効化し、回復アイテムを受け付けなくなるという欠点もある。つまり使い捨ての投げ槍には適しているという事だ。しかしいまだに投剣スキルで槍や斧を投げる事ができるのが納得いかない。便利でいいのだけれど。

 

 他にもクエストはある。塔のリザードマンが街の近くに出てきていると言われ、受諾すると該当マップに強制転移される。

 いきなり六体の《リザードマンソルジャー》に囲まれるというのは、ある意味初見殺しだろう。どうにか包囲を抜け出さないと、そのまま袋叩きだ。

 どうにか六体の剣兵を退けても、その後もどんどん敵が投入されてきて、最終的にはリザードマンロード四体とリザードマンキングとの戦闘という階層ボスと錯覚するような戦闘に突入する事になる。

 それで得る報酬は《蜥蜴革の鎧》という高性能防具だ。敏捷と筋力にボーナスはかかるし、武器スキルや軽装備スキル、戦闘時回復スキルにもボーナスがかかる。唯一の欠点は見た目が非常に気色悪い。リザードマンロードの緑色とリザードマンキングの黄色の縞々模様が俺には合わなかった。

 

 あとは簡単に、森の薬草採取等々。簡単だが報酬もしょっぱい。嬉しいのはせいぜい中ランクの回復結晶くらいだ。

 これもまた繰り返し受けれるのが魅力なぐらいだ。はっきり言って、この街は色々美味しいのか美味しくないのかわからないクエストが多い。

 

 俺は倉庫から特殊鉱石を出して、この家の二階の鍛冶場に向かう。この街の住民は俺以外NPCだ。騒音公害なんて特に意味は無いだろう。

 今頃あの黒の剣士は何をやってるんだろうか。少なくとも、俺のように寂れた街で鍛冶なんか、してないだろう。




街の名前は適当です。フォルネイ図書館は一切関係がありません
主人公のスキル構成とか誰得だろうけど投剣と槍は確定してるよ
Q.キリトさんに勝つとか主人公チートじゃないの?
A.小石が飛んでくるならまだしも、突然小石が大岩になって音速で水平に突っ込んでくるなんて予想できないとかそんな感じ。そして一撃決着で終了。ただの初見殺し
ああ、もっと主人公の無双シーンとか書きたいけど技量が低くて文は長いけど内容が上手くまとめられていないです。すみません。今後もご指摘お待ちしております。

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