駆逐艦響と決闘者鎮守府   作:うさぎもどき提督

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vs瑞鶴&睦月、part2です。

今回もちょっと長めなのですが……いっそバランス取るために次からは非決闘パートも長くしましょうかね(自分の首絞め)


それぞれのデッキ、それぞれの戦略

「これは……このターンで、終わりかもね?」

 

そう言いながら今ドローしたカードを右手でピラピラと振る川内さん。それを見て、瑞鶴さんが眉をしかめながら言った。

 

「どういうことよ。一体何を引いたっていうの?」

 

対する川内さんは、ニッと笑って右手のカードを発動した。

 

「これよ。魔法カード《手札抹殺》発動!」

 

「手札抹殺……!」

 

確か効果は互いのプレイヤーが手札を全て捨て、捨てた枚数分ドローする、だったはず。

 

そしてこの場合の『お互い』は、

 

「くっ……やってくれるじゃない……!」

 

当然、一つ前のターンの瑞鶴さんだ。

 

「で、でも! 確かに《BF-極北のブリザード》は墓地に送られちゃったけど、まだまだこれからにゃしぃ!」

 

(……確かに)

 

睦月の言う通り。確かに瑞鶴さんの目論見を多少崩すことはできるかも知れないけれど、言ってしまえばそれだけだ。『このターンで終わり』というには足りない。

 

しかし、川内さんの表情は変わらず、ニヤリと笑ったままだ。

 

「それはどうかしらね。いいカードも引けたし、あとはその伏せカード次第かな」

 

「……どういうことだい?」

 

たまらず尋ねてしまう。私にもさっぱりわからない。

 

だが川内さんの自信は揺るがない。

 

「まあ見てなさい。まずは墓地の《月光紅狐》の効果発動! このカードがカードの効果で墓地に送られた時、相手フィールドのモンスター一体の攻撃力をエンドフェイズまでゼロにする。《BF-星影のノートゥング》の攻撃力をゼロにさせてもらうわ」

 

「くっ……! あんた、まさか……!」

 

瑞鶴さんが頬を引きつらせながら言う。

 

「そのまさか。私はスケール1の《月光狼》とスケール5の《月光虎》でスケールをセッティング! これでレベル2から4までのモンスターを同時に召喚可能よ」

 

それを聞いて驚いた私は、バッと隣を見た。

 

「え……川内さんもペンデュラムを使うのかい?」

 

「違うわよ。多分川内が使いたいのはペンデュラム効果の方だから」

 

瑞鶴さんから補足が入る。なるほど、ペンデュラム召喚をせずにそのペンデュラム効果だけを使用するという使い方もありか。

 

「そのとーり。私は狼のペンデュラム効果を発動。自分のフィールド及び墓地から素材を除外して、《ムーンライト》融合モンスターを融合召喚する! 墓地の紅狐と《月光蒼猫》を除外し、融合召喚!」

 

【ムーンライト】は融合テーマらしい。融合は暁がたまに使うくらいだったので、メインで使う決闘者は何気に初めてだ。

 

「月の光をその身に纏いて軽やかに舞い踊れ! 現れなさい、レベル7《月光舞猫姫》!!」

 

光の渦から女性の姿をしたモンスターが現れる。これが川内さんの切り札……ということだろうか?

 

「さらに虎のペンデュラム効果発動! 墓地の《ムーンライト》一体を効果を無効にし、守備表示で特殊召喚する! 《月光紫蝶》を特殊召喚!そして、舞猫姫は《ムーンライト》を一体リリースすることで、このターン相手モンスター全てに二回ずつ攻撃できる! 紫蝶をリリースしてその効果を得る!」

 

舞猫姫の攻撃力は2400。それが二回ずつ攻撃すると、合計ダメージは6000だ。相手のライフを削りきるには僅か100足りない。

 

しかし、それは杞憂だった。

 

「さあバトルよ、舞猫姫でノートゥングに攻撃! この攻撃宣言時、舞猫姫の効果で相手に100ポイントのダメージを与える!」

 

「………………」

 

瑞鶴&睦月:LP6100→6000

 

これなら、合計ダメージは6400。このターンで勝負が決まる。

 

(ハラショー……まさか、本当にやってのけてしまうとは……)

 

心の中で小さな拍手を送る。さすが先輩、といったところか。

 

ところが、だ。

 

「……確かに、このターンで決める気だったみたいね」

 

あくまで冷静な表情の瑞鶴さんが言う。このままだと自分たちの敗北となってしまうのに、その顔に一切の焦りがない。

 

まさか……

 

「でも残念ね。私は《BF-蒼炎のシュラ》をリリースして罠カード《BF-アンカー》を発動!」

 

「!? アンカー……?」

 

どうやら川内さんも聞き覚えがないらしい。

 

「知らないかもね。だって普通は入れないカードだし。効果は単純、このカードの発動時にリリースした《BF》の攻撃力分、自分のシンクロモンスターの攻撃力をエンドフェイズまでアップさせる!」

 

「っ、なるほどね。リリースすることで舞猫姫の的を減らしつつ、自分はノートゥングを強化、と。やるじゃん」

 

「あんたに褒められても嬉しくないんだけど」

 

しかし、となるとダメージは……

 

「でもま、なら仕方ない。舞猫姫で改めてノートゥングに二回攻撃!」

 

「っくっ……!」

 

瑞鶴&睦月:LP6000→5400→5300→4700

 

本来なら削り切られるはずのライフが、半分以上残った。川内さんだけではない、瑞鶴さんもまた先輩なのだ。

 

攻撃を凌がれた川内さんは、しかし平然としていた。

 

「やっぱり罠があったか。まあいいわ、私は永続罠《連成する振動》の効果でスケールの狼を破壊してドロー」

 

「! 破壊してしまうのかい?」

 

両者のスケールは1と5。私のデッキでも十分活用できる値だ。

 

その私の疑問に対して、川内さんは人差し指を揺らしながら答えた。

 

「チッチッチッ。狼には《ムーンライト》以外のペンデュラム召喚を禁止する効果があってね。だから連成する振動で破壊したのよ」

 

「……なるほど。デメリット効果もあるわけか」

 

なら、連成する振動を発動しておいてよかった。

 

「それじゃ、カードを二枚伏せてターンエンド。次は……睦月のターンね」

 

「はいにゃしぃ! それじゃあいきますよーぅ、私のターン、ドロー! ……ん?」

 

睦月がなぜか自分のドローしたカードを見て首を傾げている。なぜかはわからないが、これを好機とみなして今のうちに一度フィールド全体を把握しておく。

 

現在、残りライフは私たちが5400、睦月たちが4700と数値上ではこちらの方が上だ。それに見たところ、舞猫姫には戦闘耐性がある。少なくとも、このターンで終わるなんてことはなさそうだ。

 

なんていうのは、甘かったらしい。

 

「むむむ! これなら、このターンで終わりかもしれません!」

 

「えっ……」

 

先のターンの川内さんと同じような宣言をする睦月。私たちのフィールドには戦闘耐性を持つモンスターがいるというのに、なぜああ言えるのだろう。

 

「………………」

 

ちなみにその睦月に対して、川内さんの表情は変わらずニヤリとしたままだ。だがこれは、何か対策があるというよりも『面白いものが見れそうだ』と思っているだけじゃないか?

 

「まずは墓地の《BF-精鋭のゼピュロス》の効果発動! 自分フィールドの表側カードを手札に戻し、400のダメージを受けることで蘇生できるにゃしぃ! 《黒い旋風》を手札に戻して特殊召喚!」

 

「? ゼピュロス? そんなのいつ……」

 

「……多分、手札抹殺の時だと思う。ほら、あの時瑞鶴さんの手札は二枚あっただろう? 恐らく、ブリザードじゃない方があのカードだったんだよ」

 

川内さんの疑問に補足説明を入れる。その間に睦月たちがゼピュロスの効果でダメージを受けた。

 

瑞鶴&睦月:LP4700→4300

 

「ん……この瞬間、墓地の《H・C サウザンド・ブレード》の効果を発動! 自分がダメージを受けた時、墓地のこのカードを特殊召喚します! さらに永続罠《リビングデッドの呼び声》を発動! 墓地のモンスター一体を特殊召喚するのにゃ! よみがえれ、《H・C ダブル・ランス》!」

 

「レベル4が、三体……」

 

「そして! レベル4のサウザンドブレードとダブルランスでオーバーレイ! 二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

 

ゼピュロス以外の二体が光の渦へと吸い込まれていく。また《HーC ガーンデーヴァ》だろうか。

 

「歴戦の戦士の魂が一つとなりて、伝説の剣は形作られる。エクシーズ召喚! 現れるにゃしぃ、ランク4《HーC エクスカリバー》ッ!!」

 

「エクスカリバー……!?」

 

あまりにも有名な伝説の王の剣。その名を冠したエクシーズモンスターが、光の中より現れた。

 

「エクスカリバーの効果発動! 一ターンに一度、オーバーレイユニットを二つ取り除くことで、次の相手エンドフェイズまで攻撃力を元々の倍にする!」

 

元々の倍、ということは……攻撃力4000。とんでもないカードだ。

 

「さらに魔法カード《ヒロイック・チャンス》を発動! 自分フィールドの《ヒロイック》一体の攻撃力をエンドフェイズまで倍にします! 対象はもちろんエクスカリバー!!」

 

「攻撃力8000……なるほど、舞猫姫がいてもライフを削り切れるってことね」

 

舞猫姫の攻撃力は2400、その貫通ダメージは5600。

 

(さすがに少しまずいんじゃないか……?)

 

冷や汗が頬を伝うのを感じる。川内さんの表情を見るに、何かあるのかも知れないけれど……いややっぱりないかもしれない。

 

「行くのにゃしぃ! エクスカリバーで、舞猫姫に攻撃!!」

 

一撃でライフを根こそぎ消し飛ばす大剣が振るわれる。このターンの私にカードの発動権がないのもスリルに拍車をかけている。

 

そして、案の定川内さんがカードを発動させた。

 

「おっと、罠カード《地殻変動》発動。属性を二つ宣言し、そのどちらかを相手は選択する。そして選ばれた属性のモンスターを全て破壊する! 私が宣言するのはーー光と闇!!」

 

「え……!?」

 

驚いて思わず川内さんの方を見てしまう。運次第ですらない、完全に相手に依存したカードだ。そんなの、相手がエクスカリバーを破壊するわけないのだから無意味ではないか。

 

のだが。

 

「……なるほど、やってくれたわね」

 

瑞鶴さんがため息まじりに言う。さらにはその隣の睦月までどこか悲しそうな顔になっている。

 

「……え、選ぶのは闇です。そして、ヒロイックチャンスの対象となったモンスターはダイレクトアタックできないのにゃ……」

 

「あ……なるほど、そんなデメリットが……」

 

よく考えたら、デメリットなしに攻撃力倍化などあり得ないか。

 

必殺の一撃を躱された睦月は、しかしすぐに立ち直り手札のカードを発動した。

 

「しょうがにゃい、魔法カード《マジック・プランター》を発動! フィールドの永続罠一枚を墓地に送って二枚ドローするのにゃ! リビングデッドを墓地に送りドロー! そしてカードを二枚伏せてターンエンドですっ!」

 

「ふむ、私のターン、ドロー」

 

再び巡ってきた私のターン。けど、私のデッキにはエクスカリバーの攻撃力を上回るモンスターなど入っていないのだが……。

 

(……いや、あのカードなら……)

 

一つだけ、案が浮かぶ。そのためには、まだカードが足りない。

 

いや、ドローソースなら、ある。

 

「川内さん、連成する振動の効果を使ってもいいかい?」

 

「いいわよ、別に気にしなくても」

 

「ありがとう。……なら、連成する振動の効果を発動。虎を破壊しドロー」

 

ドローカードを確認する。よし、これならいける。

 

「私はスケール1の《星読みの魔術師》とスケール5の《慧眼の魔術師》でペンデュラムスケールをセッティング。さらに慧眼のペンデュラム効果発動、反対側のスケールに《魔術師》か《EM》が存在するとき、自身を破壊してデッキの《魔術師》一枚をスケールにセットする。スケール8の《時読みの魔術師》をセット」

 

「《魔術師》……ね」

 

ボソッと瑞鶴さんが呟く。その反応にも慣れたものだ。

 

「いくよ、見果てぬ世界へ。ペンデュラム召喚! 手札からレベル3《EM ジンライノ》、エクストラデッキよりレベル3《EM エクストラ・シューター》、レベル4《EM ドクロバット・ジョーカー》、レベル5《EM ドラミング・コング》、そしてレベル7《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」

 

「はにゃっ!? 五体同時ペンデュラム召喚……!?」

 

これだと、まだエクスカリバーには届かない。だが、ここから届かせることは可能だ。

 

「そしてレベル3のジンライノとシューターでオーバーレイ。二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! 次元の狭間を彷徨いし龍よ、失われし魂を今一度この場に呼び醒ませ。 エクシーズ召喚! 現れて、ランク3《虚空海竜 リヴァイエール》!」

 

まず、第一段階。リヴァイエールのエクシーズ召喚は、まだ第一歩でしかない。

 

「リヴァイエールの効果発動。一ターンに一度、オーバーレイユニットを一つ使い除外されているレベル4以下のモンスターを特殊召喚する。私は《月光蒼猫》を特殊召喚し、レベル4のジョーカーと蒼猫でオーバーレイ! 二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

 

「なるほど、私の除外した《ムーンライト》も利用しての連続エクシーズ、と」

 

感心したような川内さん。それには反応せず、エクスカリバー撃破への道筋を作っていく。

 

「奏でるは至高の唄、指揮者の魔人の力をここに。エクシーズ召喚! 現れて、ランク4《交響魔人 マエストローク》!」

 

これで私のフィールドにエクシーズモンスターと上級モンスターが二体ずつ並んだ。これなら、エクスカリバーを乗り越えて相手のライフを削りきることも可能だ。

 

「マエストロークの効果発動。オーバーレイユニットを一つ使い、相手モンスター一体を裏側守備表示にする。対象はエクスカリバーだ」

 

「にゃにゃっ!? そ、それだと攻撃力も関係ない……!」

 

壁が越えられないのなら、その壁を低くすればいい。

 

「バトルだ、ドラミングコングで裏守備モンスターに攻撃、この瞬間自身の効果で攻撃力を600アップさせる。さらに星読み、時読みの効果で自分のペンデュラムモンスターが戦闘を行うとき、相手は魔法・罠を発動する事が出来ない」

 

「にゃしっ!?」

 

無抵抗で破壊されるエクスカリバー。あとはライフを削りきるのみだ。

 

ーーという、油断があったのは否定しない。

 

「さらにマエストロークでダイレクトアタック!」

 

「え……響?」

 

川内さんが意外そうな声を上げる。しかし、その理由はいまいちピンとこなかった。

 

そしてそれはすぐにわかった。

 

「そこにゃっ! 罠カード《聖なるバリア ーミラーフォースー》を発動!」

 

「えっ……あっ!」

 

しまったーーマエストロークはペンデュラムモンスターでないから星読み・時読みの効果の範囲外だ。

 

この場面なら、先にオッドアイズから攻撃するべきだった。それならこのターンで決めることができたのに……。

 

「響! やっちゃったことはしょうがない、それよりも早くしないとタイミングを逃すよ!」

 

川内さんの声が聞こえる。そうだ、まだ終わったわけではない!

 

「っ、マエストロークの効果! オーバーレイユニットを一つ使い、自分の《魔人》の破壊を無効にする! よってバトルは続行だ!」

 

「くっ、うう……」

 

瑞鶴&睦月:LP4300→2500

 

「この瞬間、墓地のサウザンドブレードを自身の効果で特殊召喚にゃし」

 

「……カードを一枚伏せてターンエンドだよ。すまない、川内さん」

 

「いいよいいよ、ミスは誰にだってあるんだし。……ただし、次はないからね?」

 

「……肝に銘じておくよ」

 

川内さんもああ言ってくれたし、気持ちを切り替えていこう。次は瑞鶴さんのターンだ。

 

「ほいじゃ私のターンね。ドロー!」

 

瑞鶴さんの手札はこれで四枚。ブリザードは墓地に送られたわけだが、果たして。

 

「私は魔法カード《貪欲な壺》を発動。墓地のモンスター五体をデッキに戻し二枚ドローするわ。《HーC ガーンデーヴァ》、エクスカリバー、《H・C エクストラ・ソード》、《BF-白夜のグラディウス》、そしてゼピュロスの五体を戻してドロー!」

 

「あれいいカードよね、私や響のデッキとは結構相性悪いけど」

 

確かに。墓地のカードがたまりづらい私のデッキと、墓地のカードを利用する川内さんのデッキにはあまり採用できるカードではない。

 

「よし。私は魔法カード《ダーク・バースト》を発動。墓地の攻撃力1500以下の闇属性一体を手札に戻す。対象はもちろんブリザード!」

 

「やっぱり引かれたか。まあ瑞鶴さんのデッキのキーカードだもんね、ブリザード」

 

「……川内さん、もしかして暇なのかい?」

 

「まあ、そりゃね。タッグデュエルだと私のターンまで結構間があるから」

 

「ちょっとー、私のターン中に何雑談してんのー」

 

瑞鶴さんからのブーイング。当然と言えば当然か。

 

「まったく。私は永続魔法《黒い旋風》を再度発動、さらにブリザードを召喚して、ブリザード、旋風の両方の効果を発動! まずブリザードの効果で墓地のレベル4以下の《BF》を守備表示で特殊召喚。《BF-蒼炎のシュラ》を特殊召喚、さらに旋風の効果でデッキからブリザードの攻撃力以下の《BF》を手札に加える。《BF-そよ風のブリーズ》を手札に、そしてブリーズはカードの効果でデッキから手札に加わった時、特殊召喚できる」

 

「……………………」

 

「響ちゃん大丈夫にゃ……?」

 

流れは理解できなかったが、とりあえず鳥がいっぱい並んだ。

 

「さあ行くわ、レベル4のシュラにレベル3チューナーのブリーズをチューニング! 黒き翼もつ戦士よ。その力をもって闇夜の鳥を飼いならせ! シンクロ召喚! レベル7《BF T-漆黒のホーク・ジョー》!!」

 

最上級レベルのモンスターがシンクロ召喚されたが、まだ瑞鶴さんのフィールドにはチューナーとそれ以外一組が残っている。

 

(【BF】……恐ろしいデッキだ)

 

「ホークジョーの効果発動! 一ターンに一度、墓地のレベル5以上の鳥獣族を特殊召喚する。よみがえれ、《BF-星影のノートゥング》! そしてノートゥングの効果で響たちにダメージ、さらにマエストロークの攻撃力をダウンさせる!」

 

「ホークジョーで蘇生したモンスターの効果は無効にならないのか……」

 

川内&響:LP5400→4600

 

「そして! レベル4のサウザンドブレードにレベル2チューナーのブリザードをチューニング! 黒き翼もつ戦士よ。漆黒の闇を纏いて、壁を打ち砕く力となれ! シンクロ召喚! 現れよ、レベル6《BF-アームズ・ウィング》!!」

 

とうとう三体目のシンクロモンスターがフィールドに並ぶ。総攻撃力は7300、オーバーキルもいいところだ。

 

「バトルよ! ホークジョーで、マエストロークに攻撃!」

 

「っ、ぐぅ……」

 

川内&響:LP4600→3000

 

「まだまだ、ノートゥングでダイレクトアターック!」

 

「永続罠《EM ピンチヘルパー》の効果! ノートゥングの攻撃を止め、デッキから《EM》一体を効果を無効にして特殊召喚する。現れよ、《EM ラ・パンダ》!」

 

当然ながら守備表示だ。

 

だが、

 

「残念ね、攻撃表示だったらダメージも少なかったのに」

 

「? どういう……」

 

攻撃表示だったらダメージが少ない? 貫通効果を持つとしても、パンダの攻守は同じ。ダメージが増えるなんてことは……。

 

「アームズはね、守備表示モンスターを攻撃するとき攻撃力が500上がるの。さらに、守備表示モンスターを攻撃した時、相手に貫通ダメージを与える!」

 

「しまっ……!」

 

「今さら変えられないわ! アームズでそのパンダに攻撃!!」

 

「ぐ、ぅあぁ!」

 

川内&響:LP3000→1000

 

まさしく虫の息。《火炎地獄》で消し飛ぶライフだ。

 

「私はカードを二枚伏せてターンエンド。……さて、川内のターンね」

 

だというのに。

 

「安心しな、響。この状況、ちょっとめんどいけど、まだ勝ちを諦める理由はないよ」

 

「でも……相手のフィールドにはシンクロモンスターが三体もいる。ここから勝つことができるのかな?」

 

どうしても気弱になってしまう。先刻ミスをやらかしたから、余計にだ。

 

そんな私に、川内さんはニッと笑って見せた。

 

「勝てる、なんて断言は私はしないよ。そんな確信があるわけでもないしね。でもさ、できないって思い込んで成功することなんてほとんどない……少なくとも、デュエルはそう。だからーー信じよう、私たちの、可能性ってヤツを」

 

「川内、さん……!」

 

こんなにも先輩が頼もしく見えたことはない。この人となら、どこまでもいける気がする。

 

「さあ、それじゃあ行くよ! 私のターン、ドローッ!!」

 

希望を込めたカードが、ドローされた。

 

 

 

「いや、あんたらどんだけこのデュエルに気合い入れてんのよ……」

 

聞かなかったことにしておこう。




読んでくださりありがとうございました。【ヒロイック】&【BF】vs【ムーンライト】&【EM魔術師】です。今回、全員妨害されてなければ相手のライフを刈り取れてるんですよね。恐ろしいです。

というわけで前回のあとがきでの宣言通り、今回もデッキ解説をしていきます。……といってもネタバレしたくないんであんまり書くことありませんけど。興味ねえぜ! な方はスルーどうぞ。

睦月の使用する【ヒロイック】は……特にひねりはありません。タッグデュエルだと《H・C アンブッシュ・ソルジャー》が使いづらいのが辛かったです。

瑞鶴のはいわゆる【旋風BF】ですが、一応《BF-大旆のヴァーユ》も入ってます。

川内使用、【ムーンライト】。《月光紅狐》はいいカード。

問題児響さん、エクストラデッキがカオスな【EM魔術師】です。
……実は今回投稿が遅れたのって、この人の使った《EM ピンチヘルパー》の効果をアホな作者が間違えてたのが原因なんですよ。本当にすいません。

……と、いうことで、今回はこの辺で。次回、ストーリーが、少しだけ動き始めます。

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