今回は長いので三分割です。
※2017/10/12、セリフのミスを直しました
「ーーよし、みんな集まったわね」
鎮守府、特殊物資搬入用港。もはやお馴染みとなったこの場所に、四人の艦娘がいた。もちろん、睦月、瑞鶴さん、川内さん、そして私だ。
なぜか海をバックにして腕を組んでいる川内さんが言う。
「せっかく四人いるんだし、ここはちょっと特殊ルールでやりましょう」
「特殊ルール?」
睦月が尋ねると、川内さんはそれに応えるように私の腕を引いた。
「……え?」
「こういうこと」
川内さんがニッと笑う。それを見て意図を感じ取ったらしい瑞鶴さんは、睦月の腕を引きながら言った。
「なるほど、タッグデュエルってことね」
「そゆこと。駆逐艦たち、ルールわかる?」
タッグデュエル。その名の通り二対二で行うデュエルのことだ。細かいところは違うが、大まかなルールは通常のデュエルと同じだったはず。
「大丈夫、問題ない」
「私も妹たちとやったことがあるから大丈夫ですぅ!」
ふっふーん! と鼻を鳴らす睦月。どうやらルールに関しては問題ないようだ。
「おけ、じゃーー早速始めようか」
ブゥン、と音を立てて川内さんのディスクが起動する。すかさず私たちもディスクを起動させ、タッグごとに距離を開けた。
「「「「デュエル!!」」」」
瑞鶴&睦月:LP8000
川内&響:LP8000
「今回は睦月が先攻ですね、私のターン!」
先攻は睦月。あの長月の姉だ、彼女もシンクロを使うのだろうか?
「私は《H・C サウザンド・ブレード》を召喚し、効果発動! 手札の《ヒロイック》カードを墓地に送ることでデッキの《ヒロイック》を特殊召喚して、自身を守備表示にするのでっす! 《H・C ダブル・ランス》を墓地に送って、《H・C エクストラ・ソード》を特殊召喚!」
しかし予想に反して出てきたモンスターはどちらもチューナーではない。
(というか、同じレベルが二体……ということは、【ヒロイック】はエクシーズテーマなのかな?)
「行きますよう! 私は、レベル4のサウザンドブレードとエクストラソードでオーバーレイ! 二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」
予想通り、二体のモンスターが光の渦の中に吸い込まれていく。
「怒涛の神弓よ。今ここに顕現し、我が手に宿れ! エクシーズ召喚! ランク4《HーC ガーンデーヴァ》!」
光の渦から、馬に乗り弓を構えた男が飛び出してくる。
「エクストラソードを素材としたエクシーズモンスターは、攻撃力が1000アップするよ。さらにカードを二枚伏せて、ターンエンドにゃしぃ!」
ディスクの表示を見ると、どうやら次は私のターンらしい。タッグデュエルでは、通常のデュエルと同じように後攻一ターン目からはドローも戦闘も行えたはずだ。
「それじゃあ私のターン、ドロー」
ガーンデーヴァ。先攻一ターン目からエクシーズ召喚されたからには、おそらくこちらの動きを制限するようなカードなのだろう。ここは慎重に行くべきだろうか?
(……いや、ここは臆さず行こう)
決心し、手札のカードを場に出していく。
「私は《EMドクロバット・ジョーカー》を召喚し効果発動。このカードの召喚に成功した時、デッキから《EM》を手札に加えることができる。《EMドラミング・コング》を手札に。そしてスケール4の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラコン》とスケール6の《EM エクストラ・シューター》でペンデュラムスケールをセッティング」
「えーと……この場合はペンデュラム召喚できるのはレベル5だけ……だけ!?」
睦月が驚いたような声を上げる。ルール的にペンデュラム召喚できるのはレベル5のみであっているのだけれど、何かおかしなところでもあるのだろうか。
「あー……気にしないで、響。続けちゃって」
瑞鶴さんが苦笑いしながら言う。彼女もああ言っていることだし、続けさせてもらおう。
「わかった。なら私は、セッティングしたスケールでペンデュラム召喚。手札から現れよ、レベル5、ドラミングコング!」
今回は一体のみの展開だ。
「魔法カード《破天荒な風》をジョーカーを対象に発動。対象モンスターの攻守は、次の自分のスタンバイフェイズまで1000上昇する。バトルフェイズ、ジョーカーでガーンデーヴァを攻撃。そして攻撃宣言時、ドラミングコングの効果でジョーカーの攻撃力は600アップする」
これでジョーカーの攻撃力は3400。ガーンデーヴァを上回った。
が、そこで睦月が若干苦そうな顔でカードを発動した。
「うぅ……罠カード《ヒロイック・リベンジ・ソード》を発動!」
しかし、ジョーカーが止まる様子はない。
(攻撃反応型じゃない……ならなんだ?)
「このカードは、発動後装備カードとなって自分フィールドの《ヒロイック》に装備できるにゃしぃ! そして、装備モンスターの戦闘で発生するダメージを相手にも与え、さらにダメージ計算後に相手モンスターを破壊するのにゃ!」
「っ、痛み分けか……!」
なるほど、このカードに戦闘を阻害する効果はない。だからジョーカーが止まらなかったのか。
そうこうしているうちに、ジョーカーの杖とガーンデーヴァの弓がぶつかり合って派手な爆発を起こした。
「オッドアイズの効果! 自分のペンデュラムモンスターの戦闘で発生した自分へのダメージを、一度だけゼロにする!」
瑞鶴&睦月:LP8000→7700
「続けてドラミングコングでダイレクトアタックだ」
「うくっ、うぅ……」
瑞鶴&睦月:LP7700→6100
「私はカードを二枚伏せてターンエンド。そしてエンドフェイズ、オッドアイズは自身を破壊することで攻撃力1500以下のペンデュラムモンスターをデッキから手札に加えることができる。私は《慧眼の魔術師》を手札に加える」
初期ライフの四分の一を減らすことに成功。なかなか幸先がいい。
「なるほどねえ……オッドアイズに慧眼、初めて聞くカードばっかね」
ふむ、と瑞鶴さんが顎に手を当てて感心したように言った。なんとなく気恥ずかしくなって、誤魔化すように頬を掻く。
「ま、関係ないか。ーー全部、踏み倒していくから。私のターン、ドロー!」
不穏なことを言いながらドローした瑞鶴さん。彼女のデッキは……
「私は手札から永続魔法《黒い旋風》を発動する」
「! 【BF】……!」
さすがの私もすぐにピンときた。【BF】、一時期猛威をふるったデッキで、その結果幾つものカードが制限カードとなったという。
「やっぱ知ってるか。でも一応説明するわ。このカードがフィールド上に存在するときに《BF》の召喚に成功すると、デッキからその召喚されたモンスターの攻撃力以下の《BF》を手札に加えることができる。私は《BF-蒼炎のシュラ》を召喚し、デッキから《BF-極北のブリザード》を手札に加える」
「げ、厄介なカードを……」
川内さんがゲンナリした口調で言う。ブリザード……確か召喚時に墓地の《BF》を蘇生する効果だったか。確かに厄介だ。
瑞鶴さんは止まらない。
「手札の《BF-白夜のグラディウス》の効果発動。このカードは自分フィールドのモンスターが《BF》一体のみの時、特殊召喚できる。さらに手札の《BF-疾風のゲイル》は自分フィールドに《BF》が存在するとき手札から特殊召喚できる」
ペンデュラム召喚した訳でもないのに、次々にモンスターが現れてフィールドを埋め尽くしていく。個々のステータス自体は高くないが、
(ゲイルはチューナー……恐らく、いや、絶対にシンクロがくる……!)
「ゲイルの効果発動! 相手モンスター一体の攻守を半分にする。ドラミングコングの攻守を半分に。そして、レベル3のグラディウスにレベル3チューナーのゲイルをチューニング!」
見慣れた緑のエフェクトとともに、二匹の鳥が姿を変えていく。
「黒き翼もつ戦士よ。星の光を背に、未来切り拓く剣を振るえ! シンクロ召喚! 現れて、レベル6《BF-星影のノートゥング》ッ!!」
旋風とともに一振りの大剣を持った男が現れる。あまりの迫力に、思わず半歩後ずさってしまった。
「ノートゥングの効果発動! このカードの特殊召喚に成功した時、相手に800ダメージを与え、さらに相手モンスター一体の攻守を800ポイントダウンさせる! 対象はもちろん、ドラミングコング!」
「なーーっく、ドラミングコング……!」
川内&響:LP8000→7200
ゲイルの効果で半減されていたドラミングコングの攻撃力が、とうとうゼロになる。そして今の伏せカードに、ドラミングコングを守れるカードはない。
「行くわよ、ノートゥングでドラミングコングに攻撃!」
「その攻撃宣言時にドラミングコングの効果発動。自身の攻撃力を600上げるよ」
「それでもノートゥングの足元にも及ばないわ。やっちゃえノートゥング!」
「うくっ……」
川内&響:LP7200→5400
「さらにシュラでダイレクトアタック!」
「させない、永続罠《EM ピンチヘルパー》発動。一ターンに一度、相手のダイレクトアタックを無効にしデッキから《EM》一体を効果を無効にして特殊召喚する。《EM ヘルプリンセス》を特殊召喚させてもらうよ」
さすがに二撃目は通さない。だが、ノートゥングの一撃によって私たちのライフは瑞鶴さんたちのそれを下回ってしまった。
すんなり攻撃の通らなかった瑞鶴さんは、若干唇を尖らせて言う。
「ちぇ。まあいいわ、私はカードを一枚伏せてターンエンドよ」
「おっと、その前に永続罠《連成する振動》を発動させてもらうよ。一ターンに一度、自分のペンデュラムスケールを破壊することで一枚ドローできる。エクストラシューターを破壊しドロー」
きっちりと手札は補充しておく。永続的なドローソースとなり、かつスケールを張り替えられるこのカードは結構便利だ。
「さぁて、なら次は私のターンね」
隣の川内さんがなぜか肩を回しながら言う。そのストレッチは必要なのだろうか?
「といっても、あんまり手札良くないのよねー。から、このドロー次第ね」
「あんたのデッキは爆発力があるから……油断してらんないわね」
瑞鶴さんが真面目な顔でつぶやく。しかし、タッグパートナーである私も彼女のデッキを知らない。いったいどんなデッキなのだろう。
「それじゃ、ドロー!」
引いたカードを確認した川内さんがーーニヤリと、笑った。
「これは……このターンで、終わりかもね?」
三分割と言いましたが、デッキ解説は次回に。次からは効果ミスとか無くしていきたいです……。
次回、全員の殺意がマシマシ。