駆逐艦響と決闘者鎮守府   作:うさぎもどき提督

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イベントの情報を聞くたびに吐血しかけてます。札きつーい。
今回、ちょっと短めです


デッキの方向性

「で、結局響のデッキは《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を軸にしていくっていうこと?」

 

ズドンッ! と大きな音を立てて私の握る十センチ連装高角砲が火を噴く。その砲弾は目の前の異形、駆逐ロ級へと吸い込まれていく。しかし、撃破には至らない。

 

「ああ、そのつもりだよ。せっかく明石さんからもらったんだし、有効活用しないとね」

 

ズドォ! とこれまた派手な音を立てて暁の十センチ連装高角砲が目の前の軽巡ホ級に向かって砲弾を発射し、これを撃破する。やはり、練度には圧倒的な差がある。

 

北方海域、キス島。ここに、私含む艦隊は本日通算五度目の出撃を行っていた。

 

理由は、私の練度上げ。基本的に敵味方問わず駆逐艦や軽巡洋艦等の一部の艦種は、敵艦隊に潜水艦が含まれるとそちらを優先して攻撃する。それを利用したものだ。

 

なので、

 

『ひえ、おわ、危ないのね!?』

 

海中から悲鳴が聞こえてくる。同じ艦隊の潜水艦『伊19』さんだ。正直あの悲鳴を聞いて思うところがないわけではないが、本人が心配しなくていいと言っていたからひとまず気にしないでおく。なんでも、過去に指令官から聞いた『オリョクル』なるものに比べれば屁でもないのだとか。

 

「ふう。あらかた片付いたわね。それじゃ、帰投するわよ」

 

と、そんなことを考えているうちに、戦闘は終わっていたらしい。旗艦の軽巡洋艦川内さんの号令の下、私たちは鎮守府へと引き返す。

 

今回の戦果は完全勝利。こちら側にはダメージがなく相手艦隊を殲滅できた、ということだ。

 

というか、さすがに慣れてきた。なにせ先述の通りここへの出撃は本日五度目だ。だからこそ、雑談できるだけの余裕が生まれるわけだが。

 

「ふう……流石に少し疲れてきたね」

 

「まあ、ここと鎮守府を行ったり来たりだものね、疲れるのも無理ないわ」

 

隣の暁が苦笑する。

 

その時。横合いから声がかかった。

 

「ふっふっふっ〜、響ちゃんもなかなか砲撃姿が様になってきましたねぇ〜!」

 

声のした方を見ると、茶色のショートカットの駆逐艦娘。睦月型駆逐艦の一番艦、睦月だ。

 

彼女の発言で軽く頬を染めながら、そちらに体を向ける。

 

「そうかな……ならいいんだけど。それより、私の練度上げに付き合わせてしまってすまないね」

 

「いえいえ、気にしなくていいのですよ。私たちだってきちんと出撃しないと、勘が鈍ってしまいますからねぇ」

 

フフン、と鼻を鳴らす睦月。確かに、言ってみれば私たちは深海に対する唯一の対抗手段なわけだから、その私たちがいざ非常時に『体がなまっていて負けてしまいました』では洒落にならない。

 

(私も、早く彼女たちに追いつかないとね)

 

決心し、グッと小さく拳を握る。その為には五回程度の出撃でへこたれてはいられない。一刻も早く鎮守府に戻り、再出撃の準備をしようと加速しーー

 

「そういえば、さっきデュエルの話をしてたよねん? 帰ったら一緒にやらないかにゃ?」

 

ーーその言葉に、思わずコケるかと思った。

 

「にゃにゃ!? 響ちゃん、大丈夫かにゃ?」

 

「……だ、大丈夫」

 

なんとかバランスを戻しながら言葉を返す。

 

なんというかこう、タイミングというものがあるだろう。

 

「あらら、大丈夫? やっぱ疲れが出てきたのかしらね」

 

と、睦月の反対側から声がかかる。そちらを向くと、そこにはツインテールが特徴的な翔鶴型航空母艦二番艦、瑞鶴さんがいた。彼女も、この艦隊の一員である。

 

「いや、別になんともないよ」

 

「あそ? ならいいんだけど。体調悪くなったら、ちゃんといいなさいよ」

 

「わかった、ありがとう」

 

軽く一礼すると、瑞鶴さんは「よし」と小さくうなづいた。

 

「そうそう瑞鶴さん、さっき帰ったらデュエル、って話をしてたんだけど、一緒にやらないかにゃ?」

 

睦月が瑞鶴さんに話を振る。それに対して瑞鶴さんは笑顔で応えた。

 

「いいわね、参加させてもらうわ。……て、面子はこの四人?」

 

そう言って私、暁、睦月の順に見る。どうしたのかと考え、すぐに結論を出した。

 

(……もしかして、気まずいのかな)

 

そう。確かに私達は同じ艦娘ではあるが、私達は駆逐艦で瑞鶴さんは正規空母だ。そんな彼女が私たちに混ざるというのは、なんとなくやりづらいものがあるのだろう。

 

とはいえ、私は気にしないし、それはおそらく他の二人も同じだと思う。それをどう説明したものかと思案し、

 

「……悪いんだけど、今日は私はできないわ」

 

暁がそんな事を言い出した。

 

「……どうしてだい、暁?」

 

首を傾げながら暁に問う。

 

「実は、司令官から頼まれてることがあるのよ。それを早めに終わらせちゃわないといけないし」

 

言って、とても面倒くさそうにため息をつく暁。気持ちはわかるがその態度はどうなのだろう。

 

「とにゃると……奇数になっちゃいますねぇ」

 

睦月がキョロキョロしながら頬を掻く。ここで瑞鶴さんが抜ける事を考えていないあたり、睦月は結構なお人好しなのかもしれない。

 

「そうね、なら……おーい、かわうち!」

 

それを察したのか、瑞鶴さんが私たちの前を行く川内さんに声をかける。それに気づいたのか、若干眉間にしわを寄せながら川内さんが振り向いた。

 

「……いい加減そのかわうちってのやめてよ、瑞鶴さん。ま、それはそれとして、いいよ、私も参加する」

 

「なんだ、聞こえてたの?」

 

瑞鶴さんが聞くと、川内さんは無線機を腰から外して見せた。

 

「さっき、鎮守府から連絡があってね。なんでも提督が今日の出撃は終わりでいいって言ったんだって。だからそれを伝えようとしたらなんか話し込んでたから、なんとなく聞いちゃってたのよ」

 

「ほーん、なるほどねえ。ちなみに理由は?」

 

「わからない。そこは鎮守府のみんなも把握してないんだって」

 

それを聞いて、瑞鶴さんが顎に手を当てて軽くうつむく。今の話に、何か引っかかるところでもあったのだろう。しかし、すぐに首を左右に振った。

 

「だめだわ、あの提督の考えてることを想像するなんて無駄ね。それより、早く戻りましょ」

 

「そうねー。それじゃ、全員鎮守府に戻り次第ディスクとデッキを持って港に集合!」

 

おー! と睦月と瑞鶴さんが腕を上げる。それを尻目に、私は少し離れたところで軽く頬を膨らませている暁に近づいていった。

 

「暁も、その司令官からの頼まれごととやらが終わったら来るといいさ。私だって暁と遊びたい」

 

「響ぃ……そうね、それじゃあ、私も急いで用事を終わらせなきゃね!」

 

そう言うと、暁は若干スピードを上げた。それに合わせて私も加速する。

 

鎮守府までは、もうすぐだ。




次の話はもう少し早く投稿できるといいなあ……頑張ります。
次回、作者の頭がパンクしそうに。

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