「先攻はあたしか。カードを一枚伏せて、《手札抹殺》発動。お互い手札を全て捨てて、その枚数ドローする」
「っ……」
五枚の手札が全て墓地に送られる。
(なかなかいい手札だったのに……つらいな)
新たな手札は、あまり良くなかった。
「お、いいドロー。手札の《ヴィジョン・リチュア》の効果発動。このカードを墓地に送ることでデッキから《リチュア》の儀式モンスターを手札に加える。《イビリチュア・ジールギガス》を手札に」
「【リチュア】か……」
【リチュア】というと、水属性の儀式デッキで、たしか《イビリチュア・ガストクラーケ》という儀式モンスターが準制限カードだった気がする……ぐらいしか知らない。
「儀式魔法《リチュアの儀水鏡》発動。手札の《リチュア》儀式モンスターと同じレベルになるように手札かフィールドのモンスターをリリースし、儀式召喚を行う! そして、手札の《シャドウ・リチュア》は水属性の儀式召喚を行う際、自身のみで儀式召喚を可能とする。《シャドウ・リチュア》をリリースし、降臨せよ、レベル10!」
「レベル10だって……!?」
最高クラスのレベルを持つ儀式モンスターを容易に儀式召喚してくるのだとしたらよろしくない。
(長期戦はまずい、できるなら短期決戦がいいけど……いかんせん手札が……!)
「邪悪な魂が呼ぶ破壊の濁流、巨人の力を喰らって新たな破壊の引き金となれ! 儀式召喚! 《イビリチュア・ジールギガス》!!」
ズズン……と屋内運動場を揺らして多腕の巨人が降臨する。攻撃力は3200、最上級モンスターに見合ったステータスだ。
「ジールギガスの効果発動。一ターンに一度、ライフを1000払って一枚ドローできる」
加古:LP8000→7000
「そしてドローしたカードを確認し、《リチュア》モンスターだったらフィールドのカード一枚をデッキに戻す。ドロー!」
これで《リチュア》だった場合、私のフィールドにカードはないから加古さんのカードがデッキに戻る。できることならそうなって欲しいけど……
「ドローカードは《マインドクラッシュ》。デッキに戻す効果は発動しない」
「《マインドクラッシュ》……?」
カード名を宣言して、そのカードが相手の手札にあれば墓地に送らせる。決まれば強力だけど、なんの情報もなしに成功させられるのは長月が相手の時の菊月ぐらいだろう。
(となれば、確実に相手の手札を確認するカードと組み合わせて使ってくるはず……)
けどピーピングを行うカードはそんなに多くない。加古さんの不明なカードも《手札抹殺》の前に伏せたあのカードしかないし、《マインドクラッシュ》を警戒する必要は……
(……いや、そんなにうまくいくとも思えない。きっと何かしらの手段で加古さんは私の手札を確認してくる……!)
「リバースカードオープン。魔法カード《サルベージ》! 墓地の攻撃力1500以下の水属性モンスターを二体手札に戻す。《シャドウ・リチュア》と《ヴィジョン・リチュア》を手札に。さらに墓地の《リチュアの儀水鏡》の効果発動! このカードをデッキに戻すことで、墓地の《リチュア》儀式モンスターを手札に戻す。対象は《イビリチュア・ガストクラーケ》!」
「《手札抹殺》で墓地に送っていたのか……」
「そうだよ。《シャドウ・リチュア》を墓地に送ることで、デッキから《リチュア》の儀式魔法を手札に加えられる。もう一度《リチュアの儀水鏡》を手札に加え、発動! 《ヴィジョン・リチュア》も水属性の儀式召喚を自身のリリースのみで行える! 《ヴィジョン・リチュア》をリリースし、降臨せよ、レベル6!」
何が召喚されるのかは、さっき回収したからわかっている。
「邪悪な魂が呼ぶ破壊の濁流、海魔の精神を蝕み、破壊の尖兵とせよ! 儀式召喚! 《イビリチュア・ガストクラーケ》!」
「っ……!」
二体目の異形が加古さんのフィールドに並ぶ。《イビリチュア・ガストクラーケ》といえば、
「ガストクラーケの効果発動。自身の儀式召喚に成功した時、相手の手札をランダムに二枚確認し、片方をデッキに戻す」
(そうだ……準制限カードに指定された理由、ハンデス効果……!)
私の手札からランダムに選ばれた二枚が、デュエルディスクの液晶に表示される。
「《調律の魔術師》と《死者蘇生》……そうだね、《調律の魔術師》をデッキに戻してもらう」
「……《死者蘇生》も、《マインドクラッシュ》で墓地に送るんだろう?」
「まあね、カードを一枚伏せてターンエンド」
「私のターン、ドロー!」
「ほい、罠カード《マインドクラッシュ》発動! カード名を宣言し、そのカードが相手の手札にあれば全て墓地へ送る。《死者蘇生》を送ってもらうよ」
「…………………………」
ガストクラーケの効果で、手札を二枚見てうち一枚をデッキに戻す。そして残りを《マインドクラッシュ》で墓地に送る。……いやなハンデスコンボだ。
「……カードを一枚伏せてターンエンド」
「悪いけどこれも戦術の一つだからね。あたしのターン、ドロー! そしてジールギガスの効果発動、ライフを払ってドロー!」
加古:LP7000→6000
「ドローカードは《一時休戦》。バウンスはなし。まあいいけどね、ガストクラーケでダイレクトアタック!」
「くっ……」
響:LP8000→5600
「ジールギガスもダイレクト!」
「……………………」
響:LP5600→2400
「バトルフェイズ終了、魔法カード《一時休戦》発動! お互い一枚ずつドローして、次のターンまでプレイヤーが受けるダメージをゼロにする。……あたしはこれでターンエンド」
「待った、エンドフェイズに《針虫の巣窟》発動! デッキの上から五枚を墓地に送る」
これで《手札抹殺》と合わせて十枚もの墓地送り。その甲斐あって、目当てのカードを墓地に送ることができた。
(その分手札に欲しいカードも結構墓地に行ってしまったけど……仕方がない、かな)
「私のターン、ドロー!」
このターンはダメージを与えられない。だがそれはプレイヤーに対してだけだ。
「魔法カード《ネクロイド・シンクロ》発動。自分の墓地から素材となるモンスターを除外し、その合計と同じレベルを持つ《スターダスト》をシンクロ召喚する! 私はチューナーモンスター《ミラー・リゾネーター》と《竜穴の魔術師》を除外!」
「! 墓地からシンクロ召喚……!」
レベルの合計は8だ。
「星屑の竜よ、暗雲を裂いて、果ての青空より降臨せよ! シンクロ召喚! 現れよ、レベル8《スターダスト・ドラゴン》ッ!!」
「スター……ダスト……?」
「バトルだ、スターダストでガストクラーケに攻撃!」
「っ、《一時休戦》の効果でダメージはない」
「わかってるさ。カードを一枚伏せて、ターンエンド」
「あたしのターン、ドロー! そしてジールギガスの効果を発動、ライフ払ってドローする!」
加古:LP6000→5000
「ドローカードは……《水霊術ー「葵」》。バウンスは発動せず、っと」
「なかなか発動しないね」
「ねー。デッキにそこそこ入ってるのに……」
まあ、私としては発動しないでくれた方がいいんだけど。
「墓地の《リチュアの儀水鏡》の効果発動、このカードをデッキに戻し、墓地のガストクラーケを手札に戻す。そして魔法カード《強欲なウツボ》を発動! 手札の水属性を二体デッキに戻し、三枚ドローする。ガストクラーケと《イビリチュア・プシュケローネ》をデッキに戻してドロー! ……バトル! ジールギガスでスターダストに攻撃!」
「その宣言時、永続罠《追走の翼》を発動させてもらう!」
ガッ! とジールギガスの拳が巨大な翼に阻まれる。
「このカードが存在する限り、自分のシンクロモンスター一体は破壊されない。さらに、対象のモンスターがレベル5以上のモンスターとバトルする際、ダメージステップ開始時に相手モンスターを破壊し、エンドフェイズまでその攻撃力分攻撃力をアップする!」
「何……ってことは!」
「レベル10のジールギガスを破壊し、その攻撃力3200をスターダストに加える!」
スターダストの攻撃力が一気に倍以上、5700まで跳ね上がる。エンドフェイズまでとはいえ、これで仮に加古さんの手札に追撃用のカードがあったとしても強固な壁となる。
(さあ、どう動く……!)
「……バトルフェイズを終了、メインフェイズ2に移る」
予想通り、バトルフェイズでこれ以上動くことはなかった。
「《リチュア・ディバイナー》を召喚し、効果発動。一ターンに一度、カード名を宣言してデッキトップをめくり、宣言通りのカードなら手札に加え、それ以外ならそのまま戻す」
「《デーモンの宣告》みたいなカードだね」
「ま、デッキトップは操作できないけどね。あたしは《儀式の準備》と予想する。……結果は《マンジュ・ゴッド》。よって手札に加わらず、そのまま戻す」
《マンジュ・ゴッド》……召喚するだけで儀式魔法かモンスターを無制限でサーチできる強力なカードだ。そして、加古さんのデッキが弄られない限り次のドローは《マンジュ・ゴッド》で確定。
(できるなら効果を無効にするカードが……いや、今更《マンジュ・ゴッド》を止めても意味は薄いか)
「カードを二枚伏せてターンエンド。さ、あんたのターンだよ」
加古さんのフィールドに強力なモンスターはいない。伏せカードは二枚あるが……攻めに転じるチャンスか?
全ては次のドロー次第、だろうか。
「……ああ。私のターン、ドロー!」
【リチュア】vs【スターダスト】です。
次回、限られた選択肢で、勝利へ。