「「デュエル!!」」
長月:LP8000
響:LP8000
どうやら今回は私が先攻らしい。
「私のターン。私はスケール2の《EM ドラミング・コング》とスケール6の《EM リザードロー》でペンデュラムスケールをセッティングする」
二本の青い光の柱が現れ、その中にドラミングコングとリザードローが入っていく。
「これでレベル3から5までのモンスターが同時召喚可能、と」
腰に手を当てた長月がつぶやく。それを聞いた私は小さく口角を上げた。
「それはどうかな。リザードローは反対側のスケールに《EM》が存在するとき、自身を破壊することで一枚ドローできる」
「ほほう。なるほど、良い効果だな」
長月が顎に手を当てて感心したように頷く。
「それはどうも。それじゃあ、改めてスケール7の《EM モモンカーペット》でペンデュラムスケールをセッティング。これでレベル3から6のモンスターが同時に召喚可能だ」
「来るかっ」
当然、長月の予感は裏切らない。
「振り子の軌道は未来への道標となる。ペンデュラム召喚! 現れろ、エクストラデッキからレベル3、リザードロー、手札からレベル4《EM プラスタートル》、レベル6《EM カレイドスコーピオン》」
一気に三体のモンスターが私のフィールドに並ぶ。リザードロー以外は守備表示だ。
「さらに私はカードを一枚伏せてターンエンドだ」
「ふむ、もうゼロか」
一ターン目にして手札を使い切った私に対して長月が言う。正直、私もやってから少し後悔している。
(長月のデッキがわかる前からやりすぎた、かな)
「まあいいさ、なら私も存分に動かせてもらおう。私のターン、ドローッ!」
長月が勢いよくカードを引く。さて、どんなデッキなのだろう。
「私は手札からフィールド魔法《風雲カラクリ城》を発動する!」
長月がカードを発動した瞬間、周りの風景がガラリと変わる。大海原やコンクリートの地面が消失し、代わりに石畳と大きな和風の城が現れた。
「なるほど、ここが君の戦場というわけか」
「そうさ。さらに私はチューナーモンスター《カラクリ小町 弐弐四》を召喚!」
長月のフィールドにモンスターが出現する。カラクリ城にカラクリ小町、なるほど、どうやら彼女のデッキは【カラクリ】らしい。
(それにしてもチューナー、ね。なるほど、だから明石さんは彼女と戦うように言ったのか)
シンクロ召喚覚えたての自分には都合のいい相手というわけだ。存分に吸収させてもらおう。
「弐弐四がフィールドに存在するとき、一ターンに一度だけ追加で《カラクリ》を召喚できる。《カラクリ兵 弐参六》を召喚!」
「……来るか」
その予感を、長月の方も裏切らない。
「いくぞ。私はレベル4の弐参六にレベル3チューナーの弐弐四をチューニングッ!」
そう宣言すると、弐弐四が緑色の輪となり、その中を弐参六が通っていく。
(これが、シンクロ召喚ーー!)
「現世に降り立った強者よ、黒き闇を切り裂いて笑え! シンクロ召喚! 現れろ、レベル7《カラクリ将軍 無零》!!」
直後、ズドォン! と大きな音を立てて鎧武者が現れる。暁のレッドアイズに勝るとも劣らない迫力だ。
「無零の効果発動! このカードがシンクロ召喚された時、デッキから《カラクリ》を一体特殊召喚する。《カラクリ忍者 九壱九》を攻撃表示で特殊召喚し、そのままバトルだ! 九壱九でプラスタートルに攻撃!」
「っ、九壱九の攻撃力は1700、プラスタートルの守備力は1800だ。倒せないよ?」
しかし、当然長月はそんなことを失念したりしていなかった。
「分かっているさ。この瞬間、カラクリ城の効果発動! 自分の《カラクリ》が相手モンスターを攻撃対象にした時、その相手モンスターの表示形式を変更できる!」
「なっ……!」
私のフィールドのプラスタートルが攻撃表示になる。その攻撃力は、たったの100。
「そら、改めて九壱九でプラスタートルに攻撃だ!」
「くっ……モモンカーペットがペンデュラムスケールに存在する限り、自分が受ける戦闘ダメージは半分になる」
九壱九のもつクナイによって、プラスタートルが引き裂かれる。だがダメージ自体は抑えられた。
響:LP8000→7200
「この瞬間、九壱九の効果発動! 相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、墓地の《カラクリ》一体を守備表示で特殊召喚する。甦れ、弐参六!」
「こちらもリザードローの効果を発動させてもらう。このカード以外の自分のモンスターが破壊された場合、自分フィールドの《EM》モンスターの数だけドローできる。二枚ドローだ」
それを見て、長月が苦い顔をした。
「攻撃順を間違えたかな」
「仕方がないさ。効果を知らなかったんだろう?」
「まあそれもそうだな。過ぎたことを悔やんでも仕方がないし……すまない、デュエルを再開しよう。無零でリザードローに攻撃だ」
鎧武者の斬撃が大きく砂を巻き上げながら迫る。
「焼け石に水かもしれないけど……ドラミングコングのペンデュラム効果を発動する。モンスターの攻撃宣言時、バトルする自分のモンスターの攻撃力をバトルフェイズ終了時まで600ポイントアップさせる」
「その通り、まさしく焼け石に水だな! リザードローの攻撃力じゃ、600程度の上昇では無零を越えられない!」
結局、鎧武者の刀によってリザードローが切り裂かれた。
「っく……」
響:LP7200→6800
「さて、私はカードを二枚伏せてターン終了だ。どうだ、強いだろう、私の【カラクリ】は」
得意げな長月に対し、涼しい顔で私は返す。
「ああ、確かに強いね。展開力もあるし、シンクロモンスターも強力。流石だ」
「うぇ? ……あ、ああ、そうだろうそうだろう」
素直に褒められたのが予想外だったのか、若干頬を赤く染めながら長月は頷いた。なかなか可愛らしいところもあるじゃないか。
……さて、それでは。
「だから、今度は私が見せよう」
ここからは。
「私なりのーーシンクロ召喚を」
私のターンだ。
「それじゃあ、私のターン。ドローッ!」
【シンクロEM】vs【カラクリ】でございます。詳しい説明は次回です。
次回、ちょっと超展開?