駆逐艦響と決闘者鎮守府   作:うさぎもどき提督

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今回デュエルなしです。……これからは、もうちょっとスムーズにデュエルに持っていきたいですね。
ちなみにディスクはアークファイブ準拠です。


緑髪の決闘者

春の暖かい日差しが差し込む鎮守府の廊下。そこを、一人の駆逐艦が歩いている。

 

「確か……食堂の隣、だったっけ」

 

もちろん、私こと暁型駆逐艦二番艦の響だ。服は例の入院着ではなく、暁とお揃いのセーラー服である。

 

着任初日に明石さんに怒られて以降、私はずっとおとなしく病室にいた。とはいえ暁や他の駆逐艦が連日お見舞いに来てくれたから退屈ではなかったけれど。

 

そして昨日めでたく退院、自由行動が可能になったので、早速ある場所に向かっているところなのだ。

 

「この先か」

 

曲がり角を曲がり、ひたすらに直進。食堂を通り過ぎた先に、目的地はあった。

 

「いらっしゃ……おお、響さん、早速来てくれたんですね!」

 

「ああ、昨日ぶりだね。明石さん」

 

そう、その目的地とは、明石さんが経営している売店だ。以前話を聞いてから、一度訪れてみたいと思っていたのだ。

 

「それにしても、なんで明石さんは店外にいるんだい?」

 

「ああ、単にお客さんがいないんで、外の掃除をしてたんですよ。ま、ちょうどさっき終わったんですけどね。……と、外で話してるのもなんですし、とりあえず店内に入りましょう? 何か買いに来たんですよね?」

 

「そうだね。ちょっと、カードの調達をね」

 

「お、響さんも順調にハマっていってますねー」

 

ニカニカ笑う明石さんに茶化されながら店内に入る。中は結構広く、ざっと見回しただけでも数々の商品が目に入った。雑誌や食料品、木刀なんかまで。そして当然のように店の一角をカードが占拠していた。

 

迷わずそのスペースに行くと、何故か明石さんまで付いてきた。

 

「えっと、明石さん、接客はいいのかい?」

 

「いいんですよ、今は他にお客さんもいませんし。それとも、お邪魔ですか?」

 

「いや、そんなことはないさ。むしろいてくれるとありがたい。聞きたいこともあったしね」

 

言いながらデッキを取り出す。その内容は初日に暁とデュエルした時から若干変わっているが、主軸は変わらず【EM】だ。

 

「このデッキなんだけど……一昨日あたりから何枚かエクシーズモンスターを暁にもらって、実際に使ってみているんだけど、これがなかなか使い勝手が良くてね。だからこれを機にエクストラデッキを強化してみようかと思って」

 

「なるほどなるほど、確かにエクシーズモンスター入れるのは手っ取り早くデッキを強くする良い方法ですね」

 

明石さんがうんうんと首を縦に振って同意する。

 

(……そうは言っても、まだ一度も暁に勝てていないんだけどね)

 

その言葉は、ぐっと飲み込んだ。

 

「まあ、それはそれとして。具体的にどうします? エクシーズを増やすか、チューナーを入れてシンクロを投入するか、それとも融合を使ってみるのか。どれも一長一短ですけどね」

 

「それなんだけど……実は、もう考えてあるんだ」

 

「ほう。というと?」

 

明石さんの目を見て、私は答える。

 

「シンクロモンスターを、入れてみようかと思ってね」

 

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「色々買わせちゃいましたけど……お金、大丈夫ですか?」

 

「まあ……大丈夫さ。ゼロになったわけじゃないし」

 

パチン、とすっかり軽くなった財布を閉じる。食堂での食事が無料でよかった、と心の中で小さくため息をついた。

 

だがその代わりにデッキはだいぶ強化されたように思う。

 

「それじゃあ、私は行こうかな」

 

「おや、もうですか? もう少しゆっくりしていっても……」

 

「その気持ちはありがたいけれど……早速、このデッキを試してみたいからね」

 

「ほほう、何を試してみたいと」

 

「だから新しくなったデッキを……って、うわっ!?」

 

突然の背後からの声に驚き、柄にもなく大声を出してしまう。バッと振り向くと、そこには緑の髪の駆逐艦がいた。

 

「よう、響」

 

「君は……長月、だっけ」

 

「おお、覚えていてくれたか! 一回病室に行ったきりだったからな、正直忘れられてるかと思ったぞ」

 

言って、にっと良い笑顔になる睦月型駆逐艦八番艦の長月。その腕には彼女の髪と同じ緑色のデュエルディスクがある。

 

「君も、カードを買いに来たのかい?」

 

「いや、別にそういうわけじゃないさ。単に暇だったんでぶらぶらしてたら、お前を見かけたんでな。声をかけたというわけさ」

 

「……なるほど」

 

どうやら本当に暇らしい。

 

と、そこで明石さんがこう切り出した。

 

「そういえば、長月さんのデッキって……」

 

「ん? 前と殆ど変わっていないぞ?」

 

明石さんの質問に、長月が小首を傾げながら応える。それを聞いた明石さんは、何かを小さく呟いたあとに手をパンと叩いた。

 

「なるほど、ならちょうどいいです。響さんと長月さんでデュエルしてみてはいかがでしょう」

 

「へ? 私と、響でか? 別に構わないが……」

 

「私も問題ないけれど……なぜだい?」

 

すると、明石さんは私たちを置いてレジカウンターへ行き、その下をごそごそと漁りだした。私と長月が顔を見合わせていると、ほどなくして明石さんが茶封筒を手に戻ってきた。

 

「これ、私が厳選したレアカードの詰め合わせです。これを、勝利した方に無料で差し上げましょう」

 

瞬間。私と長月の視線が交錯した。

 

そして。

 

「仕方がない、やってやろうじゃないか」

 

「港へ行こう。あそこなら今日も空いているだろうし」

 

同時にディスクの電源を入れて店を出る。レアカード詰め合わせ、甘美な響きだ。

 

「ちょ、ちょっと! 一応この店奥にデュエルスペースあるんですよ!? 座ってやればいいじゃないですか! なんでわざわざディスクで……ちょっと! あーもう、まだシフト終わってないのにー!!」

 

そんな言葉、気分が高揚している今の私たちには微塵も届いていなかった。

 

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「えー、というわけで、明石に頼まれて今回ジャッジを担当する夕張型軽巡洋艦一番艦の夕張よ。響ちゃんは会うの初めてよね、よろしくね」

 

「ああ、今後ともよろしく頼むよ」

 

言いながらペコリと一礼。それを見て薄緑の髪を後ろで束ねた軽巡ーー夕張さんがクスッと微笑んだ。その手には、例の茶封筒。それを振りながら夕張さんは言う。

 

「それにしても、明石の厳選したパックねえ。何が入ってるのかしら?」

 

「さあな。だがあの明石が太鼓判を押したんだ、まさか使えないカードの詰め合わせということはあるまい」

 

長月の言葉に、私も小さく首を縦に降る。まあ多少使いづらいカードだとしても、私の貧弱なカードプールの増強となるだろう。

 

「っと、ごめんね、話そらしちゃって。ーーそれじゃ二人とも、準備はいいかしら?」

 

「問題ないよ」

 

「ああ、私も準備できている」

 

両者ともに、胸の前でディスクを構える。それを見た夕張さんは、大きな声で宣言をした。

 

「オーケー、じゃあ……デュエル開始ィ!!」

 

「「デュエル!!」」

 

さて、新しくなったデッキの使い勝手はどうだろう。




夕張(cv磯野)

冗談はさておき、次回、デュエルです。長月のデッキは、さてなんでしょう?

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