駆逐艦響と決闘者鎮守府   作:うさぎもどき提督

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マスタールール4についての告知が公式からありましたが、この作品内での扱いは現在検討中です。方針が定まり次第、発表したいと思います。


猛攻をかいくぐれ

「《幻獣機 ドラゴサック》の効果発動。一ターンに一度、《幻獣機》をリリースすることでフィールドのカード一枚を破壊する。《幻獣機トークン》をリリースすることで《EM カレイドスコーピオン》を破壊させてもらうわ」

 

壁となっていたカレイドスコーピオンが《幻獣機トークン》の自爆に巻き込まれて破壊される。今度は《ペンデュラム・モラトリアム》のようなカードを守れるカードはない。

 

「……永続魔法《補給部隊》の効果発動。自分のモンスターが破壊されたことでカードを一枚ドローする」

 

「関係ないわね。ドラゴサックはオーバーレイユニットを一つ取り除くことで《幻獣機トークン》二体を特殊召喚できる。……バトルよ、《スターダスト・ドラゴン》で響にダイレクトアタックッ!」

 

「待った! 私はカレイドスコーピオンが破壊されたことで罠カード《EM リバイバル》を発動! 自分のモンスターが破壊された時、手札か墓地から《EM》を特殊召喚する。よみがえれ、《EM マンモスプラッシュ》!」

 

しかし、マンモスプラッシュの守備力は2300。スターダストの攻撃力2500にはわずかに届かない。

 

「いいわ、ならスターダストでマンモスプラッシュを攻撃!」

 

「ぐっ……!」

 

これで私を守るものはない。正しく万事休すだ。

 

(ここまで、か……!)

 

ギュッと目を瞑る。いつかこうなることは覚悟していたが、実際に陥ってみると絶望感がとてつもない。

 

の、だが。

 

「カードを二枚伏せてターンエンド。……どうしたの?」

 

「…………あれ?」

 

「ああ、No.11もドラゴサックも、効果を使ったターンは攻撃できないのよ。だから安心していいよ?」

 

「…………………………なる、ほど」

 

嫌な緊張感から解放され、肩から少し力が抜ける。

 

(……強力な効果には、やっぱりそれに見合ったデメリットがあるんだね。良かった、けど心臓に悪い……)

 

何はともあれ、このターンはなんとかしのぐことができた。依然劣勢ではあるが、チャンスが与えられているというのは幸せだ。まだ足掻くことができるのだから。

 

「私のターン、ドローッ!」

 

気を取り直して、新たにカードをドローする。同時に思考を守備的なものから攻撃的なものにシフトする。

 

「魔法カード《死者転生》発動。手札を一枚捨て、墓地のモンスター一体を手札に戻す。《EM スプリングース》を墓地に送って、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を手札に戻す。そしてセッティング済みのペンデュラムスケールでペンデュラム召喚! あらわれよ、我がモンスターたち! エクストラデッキよりレベル4《EM ペンデュラム・マジシャン》、レベル5《EM ダグ・ダガーマン》、レベル6《EM マンモスプラッシュ》、レベル6《EM カレイドスコーピオン》、手札よりレベル7《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」

 

一気に五体のモンスターが私のフィールドに並ぶ。やはり上級モンスターを大量に出すことができるのはペンデュラム召喚の魅力の一つだ。

 

「ペンデュラム・マジシャンの効果発動。このカードが特殊召喚に成功した時、自分のカードを二枚まで破壊することでその分《EM》をデッキから手札に加えることができる。自身とマンモスプラッシュを破壊して《EM レインゴート》と《EM パートナーガ》を手札に、さらに《補給部隊》の効果によりドロー!」

 

「あらら……あんまり良くないかなぁ?」

 

言いつつも、瑞鳳さんの表情からは余裕が消えていない。それが演技なのか、はたまたその余裕を裏付ける何かがあるのかはわからないが。

 

「カレイドスコーピオンの効果発動。自分のモンスター一体は、このターン相手の特殊召喚されたモンスター全てに攻撃できる。オッドアイズにその効果を付与。バトルだ、オッドアイズでNo.11に攻撃、この瞬間《EM オッドアイズ・ユニコーン》のペンデュラム効果発動! デュエル中に一度だけ、自分の《オッドアイズ》がバトルする際、その攻撃宣言時に他の《EM》の攻撃力を加えることができる! ダグ・ダガーマンの攻撃力2000をオッドアイズに加える!! さらに《EM ドラミング・コング》のペンデュラム効果も発動、自分の攻撃モンスターの攻撃力を600上げる!!」

 

これでオッドアイズの攻撃力は5100。これにオッドアイズ自身の効果も加わればこのターンで終わりーー

 

「スターダストをリリースして罠カード《シンクロ・バリアー》、そして永続罠《ナンバーズ・ウォール》を発動!!」

 

(ーーさすがにそう上手くは行かないか……!)

 

「《ナンバーズ・ウォール》がある限り互いの《No.》は効果破壊されず、《No.》以外との戦闘では破壊されない。さらに《シンクロ・バリアー》の効果により、シンクロモンスターをリリースすることで次のエンドフェイズまで私が受ける全てのダメージをゼロにする!!」

 

「っ、破壊できず、ダメージも通らない……か」

 

となると、オッドアイズの攻撃は事実上無駄ということになる。

 

「だけど、《ナンバーズ・ウォール》が適用されるのは《No.》だけ。なら、オッドアイズで《幻獣機トークン》及びドラゴサックに攻撃!」

 

「………………」

 

ようやく厄介なドラゴサックを除去することができた。

 

「カードを二枚伏せてターンエンドだ」

 

オッドアイズ・ユニコーンとドラミング・コングのペンデュラム効果はいずれもエンドフェイズまでしか持続しない。よってオッドアイズの攻撃力は再び元の2500へと戻った。

 

「私のターン、ドロー! とりあえずNo.11を守備表示にして、さらに効果を発動。オーバーレイユニットを一つ取り除いて、相手モンスターのコントロールを得るわ。オッドアイズのコントロールを頂くわね」

 

オッドアイズのコントロールが瑞鳳さんに移る。予想通りではあったが、対策ができていたわけではないので、私はその様子をただじっと見つめていた。

 

「次に、罠カード《エクシーズ・リボーン》発動! 墓地のエクシーズモンスターを特殊召喚し、このカードをそのオーバーレイユニットとする。よみがえれ、ドラゴサック! そしてその効果も発動、オーバーレイユニットを一つ取り除くことで《幻獣機トークン》二体を特殊召喚し、さらに《幻獣機》をリリースすることでカードを一枚破壊できる。《幻獣機トークン》をリリースし、ペンデュラムスケールのドラミング・コングを破壊。……バトルよ、オッドアイズでダグ・ダガーマンに攻撃!」

 

このまま攻撃を受けたら、ダメージは500の倍の1000。当然、通すわけには行かない。

 

「罠カード《ペンデュラム・リボーン》発動! 自分の墓地またはエクストラデッキのペンデュラムモンスター一体を特殊召喚する。エクストラデッキよりペンデュラム・マジシャンを特殊召喚! さらにその効果により、自身とダグ・ダガーマンを破壊することで《EM エクストラ・シューター》と《EM スカイ・ピューピル》を手札に加え、《補給部隊》の効果でカードをドローする!」

 

ペンデュラム・マジシャンによってダグ・ダガーマンは破壊され、残ったのは守備表示のカレイドスコーピオンだけ。その守備力は2300だ。

 

「……No.11は攻撃表示にしておけばよかったかしら。オッドアイズでカレイドスコーピオンを攻撃よ」

 

「破壊されるけど、ダメージは通らないよ」

 

「わかってるわ。カードを一枚伏せてターンエンドよ」

 

さて。四度目の瑞鳳さんのターンが終わった時点で瑞鳳さんのライフは削られておらず、彼我のライフ差は7400。この差をどうにかして縮めなくてはいけない。

 

(いや、縮めるだけじゃダメだ。逆転する……逆転して、勝つ……!)

 

「私のターン、ドロー!」

 

幸い、ペンデュラム・マジシャンと《補給部隊》の効果で手札は潤沢だ。

 

「スケール3の《EM パートナーガ》をスケールにセット、そのスケールを利用してペンデュラム召喚! エクストラデッキよりレベル4《EM ペンデュラム・マジシャン》、レベル5《EM ダグ・ダガーマン》、レベル5《EM ドラミング・コング》、レベル6《EM マンモスプラッシュ》、レベル6《EM カレイドスコーピオン》!! ダグ・ダガーマンの効果発動、手札の《EM》一枚を墓地に送り、一枚ドローする。《EM エクストラ・シューター》を捨ててドロー!」

 

ダグ・ダガーマンの効果で新たにドローしたカードを見、少々眉をひそめる。

 

(このカード……この局面で来るか……)

 

発動するか悩み、しかし結局発動した。

 

「魔法カード《カップ・オブ・エース》発動。コイントスを一回して、表なら自分が、裏なら相手が二枚ドローする」

 

「ギャンブルカード……それに頼らなくちゃいけないくらい、追い詰められてるってことかな?」

 

その言葉には言い返さず、コインを親指に乗せ弾く。コインは一度高く上がった後、金色のカップに落ちた。

 

結果は、

 

「……どうやら裏みたいね。二枚ドローさせてもらうわ」

 

「くっ……!」

 

こんなことなら発動しなければよかった、と心の中で思う。瑞鳳さんに二枚もドローさせてしまうのは非常にまずい。

 

「まだだ……速攻魔法《エネミーコントローラー》発動! モンスター一体をリリースし、相手のモンスター一体のコントロールをエンドフェイズまで得る。ペンデュラム・マジシャンをリリースし、オッドアイズを返してもらう! そしてオッドアイズと獣族のマンモスプラッシュをリリース!」

 

「最上級モンスターのアドバンス召喚……いや、違うか」

 

そう、これはアドバンス召喚ではなく、融合召喚だ。

 

「ふた色の眼の龍よ。野生をその心に宿し、新たな姿となりて現れよ! 融合召喚! レベル8《ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》! そしてカレイドスコーピオンの効果でビーストアイズに全体攻撃を可能とさせる。バトルだ、ビーストアイズで《幻獣機トークン》に攻撃!」

 

「っ……」

 

「ビーストアイズが相手モンスターを破壊した時、融合素材に使用した獣族モンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。マンモスプラッシュの攻撃力は1900、その分のダメージをくらえ!」

 

瑞鳳:LP8000→6100

 

「続けてドラゴサックにも攻撃っ!」

 

「おっと、罠カード《ピンポイント・ガード》発動。相手モンスターの攻撃宣言時に墓地のレベル4以下のモンスター一体を守備表示で特殊召喚する。よみがえれ、《幻獣機 メガラプター》!」

 

《ピンポイント・ガード》で特殊召喚されたモンスターは戦闘及び効果では破壊されない。メガラプターをこのターン中に処理するのはほぼ不可能だ。

 

「だけど、ドラゴサックが破壊されることに変わりはないね」

 

「ええ……くっ」

 

瑞鳳:LP6100→4200

 

「カードを一枚伏せてターンエンドだ。……《幻獣機 コルトウィング》を特殊召喚しておけば、ドラゴサックに破壊耐性を与えられたんじゃないかい?」

 

「いいのよ、余計にライフを減らしてまでドラゴサックを守る必要もないし。私のターン、ドロー!」

 

カードをドローした瑞鳳さんは、そのカードを見もせずに別のカードをフィールドに出した。

 

「《幻獣機 テザーウルフ》を召喚し、効果発動。召喚に成功した時、《幻獣機トークン》一体を特殊召喚する。さらにメガラプターの効果も発動、トークンが特殊召喚された時、《幻獣機トークン》一体を特殊召喚する!」

 

「テザーウルフ……そうか、何ターンか前にメガラプターの効果で手札に加えた……そのためにメガラプターを蘇生したのか!」

 

「ご明察。でもここで終わりじゃないわ。テザーウルフとメガラプターは、自分フィールドの《幻獣機トークン》のレベルの合計分、自身のレベルを上げる。《幻獣機トークン》は二体、よって両方ともレベル10になる!」

 

レベル10が二体。それが意味するのは……

 

「行くわ。私はレベル10のテザーウルフとメガラプターでオーバーレイ! 二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

 

(ランク、10……!)

 

ランク10のエクシーズモンスターの数は非常に少ない。何が出てくるかを予想するのは容易かった。

 

「大地の彼方から、ただいま発車。地面を揺らせ、汽笛をならせ、進路良好出発進行! エクシーズ召喚! ランク10《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》!!」

 

バキバキバキィ!! と激しい音を立てて病室の窓を突き破った巨大な砲門がこちらを向く。プレッシャーだけで押しつぶされてしまいそうだ。

 

「グスタフの効果発動。一ターンに一度、オーバーレイユニットを一つ取り除くことで相手に2000のダメージを与える!」

 

こちらを向いた砲門に弾が込められたのがわかる。

 

「発射っ!」

 

その宣言、いや命令の直後、風圧で病室内をメチャクチャにしながら砲弾が発射された。

 

私のライフは残り600、これを受けたら敗北ーー

 

「ーー《EM レインゴート》の効果発動!!」

 

ボフンッ! と。グスタフの砲弾が、私を守るように広がった青い布に防がれる。

 

「何……?」

 

「このカードは、手札から捨てることで効果ダメージをゼロにできるんだ」

 

やっぱりだ。戦闘ダメージを与えることにここまで失敗しているが故に、瑞鳳さんなら効果ダメージで勝負をつけにくると思った。

 

(……瑞鳳さんがレインゴートの効果を知らなくてよかった……)

 

「でもまだよ。グスタフでドラミング・コングを攻撃!」

 

グスタフの攻撃力は3000。ドラミング・コング自身の効果を使用しても超過ダメージで敗北してしまう。

 

だが、その程度では折れない。

 

「罠カード《ドタキャン》発動、自分のモンスターを全て守備表示にする! さらに《EM》が破壊された場合、そのモンスターは墓地へは行かず手札に戻る!」

 

「っ、モンスター数が変化していないから攻撃対象を変更できない……」

 

ドラミング・コングが戦闘破壊され、手札に戻る。当然ダメージはゼロだ。

 

「自分のモンスターが破壊されたことで、《補給部隊》の効果によりドローする」

 

「……悉く、躱されてしまったわね」

 

困ったようにため息をつく瑞鳳さん。しかし私は、そんな表情を見ても一切安心できなかった。何をしてくるかわからない。その恐怖は十分に私の足枷となっていた。

 

「バトルフェイズを終了し、魔法カード《トークン復活祭》を発動。トークンを全て破壊し、その枚数分までカードを破壊する。トークン二体を破壊し、ペンデュラムゾーンのカード両方を破壊させてもらうわ。そして、カードを一枚伏せてターンエンド」

 

「っ……」

 

手札にペンデュラムスケールは揃っていない。つまり次のターンのペンデュラム召喚は実質不可能になったのだ。

 

「……私のターン、ドロー」

 

ドローカードは悪くない。

 

(後は、あの伏せカード……私の予想通りなら、あるいは……)

 

「魔法カード《星屑のきらめき》発動! 墓地のドラゴン族シンクロモンスター一体と同じレベルになるように自分の墓地のモンスターを除外し、選択したシンクロモンスターを特殊召喚する。レベル5の《EM スプリングース》とレベル3の《EM エクストラ・シューター》を除外し、レベル8《スターダスト・ドラゴン》を特殊召喚する!」

 

「……………………」

 

この特殊召喚に対してのアクションはなし。ということは、あの伏せカードは少なくともフリーチェーンでカードを破壊するものではない。

 

「続いてカレイドスコーピオンの効果発動。自分のモンスター一体に全体攻撃の権利を与える。そして、カレイドスコーピオンをリリースしてドラミング・コングをアドバンス召喚!」

 

ペンデュラム召喚できずとも、アドバンス召喚なら可能だ。《ドタキャン》で手札に戻しておいてよかった。

 

「バトルだ、ビーストアイズでNo.11に攻撃!」

 

「! 《ナンバーズ・ウォール》があるのに……!?」

 

そう。本来であれば意味のない行為。しかしそれ故に、この局面でそんな行動をする必要はない、何かしらの理由があるはずだと人は勘ぐってしまうのだ。

 

「っ、罠カード《次元幽閉》発動! 攻撃モンスターを除外する! このカードはカードを破壊しない、だからスターダストでも守れないわ!」

 

グバッ! とビーストアイズの()()()()()()()、ビーストアイズはそこに吸い込まれるようにして消えていった。

 

「………………」

 

現状、ドラミング・コングの効果とスターダストの攻撃力があればグスタフを戦闘破壊することは可能だ。だがそれで与えられるダメージは100。瑞鳳さんのライフは初期値の半分以上残ってしまう。

 

……が。

 

「……だと思った。そのカードが《次元幽閉》であることは読んでいた……!」

 

「!?」

 

「バトルだ、ドラミング・コングでNo.11に攻撃! この時、ドラミング・コングの効果発動。自分のモンスターがバトルする際、その攻撃宣言時に攻撃力を600上げることができる!」

 

これでドラミング・コングの攻撃力がNo.11の守備力を上回った。

 

「それでも、《ナンバーズ・ウォール》がある限りーー!」

 

「罠カード《シューティング・スター》発動!」

 

突進するドラミング・コングの後ろでスターダストが咆哮する。

 

「フィールドに《スターダスト》が存在する時、カードを一枚破壊できる。《ナンバーズ・ウォール》は破壊させてもらう!」

 

厄介な壁が破壊され、攻撃がNo.11に届く。さすがに破壊耐性までは持ち合わせていなかったらしく、問題なく破壊された。

 

「でも……それでも、グスタフは超えられないっ!!」

 

確かに、ドラミング・コングの効果を使用してしまった以上、攻撃力で超えることは不可能だ。

 

攻撃力、では。

 

「ドラミング・コングを手札に戻して、手札の《EM スカイ・ピューピル》の効果発動。自分フィールドのレベル5以上の《EM》を手札に戻すことで特殊召喚できる。そしてそのまま、スカイ・ピューピルでグスタフに攻撃!」

 

「!! 自滅……!?」

 

「バカな。スカイ・ピューピルが攻撃する時、他の《EM》が自分のフィールドに存在するなら、相手モンスターをダメージ計算前に破壊する!」

 

スカイ・ピューピルの蹴りを砲身の側面に受けたグスタフはそこからどんどんとひび割れ、やがて砕け散った。

 

「そん、な……」

 

気づけば瑞鳳さんの顔から余裕の表情が消えていた。

 

「ダグ・ダガーマンでダイレクトアタック!」

 

「くっ、ぅう……!?」

 

瑞鳳:LP4200→2200

 

「トドメだ……スターダストで、ダイレクトアタックッ!!」

 

「あ、あああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

瑞鳳:LP2200→0

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

勝利、できた。その筈なのに安心感はまるでなく、全身を疲労感が覆っていた。

 

壁に打ち付けられた時に痛めたのか、背中と肩が痛い。

 

(……お風呂、入るか。この痛みを明日まで引きずりたくないしね……)

 

大浴場は同じ建物の地下一階だ。すぐに行ける。

 

(瑞鳳さんは……放置でいいかな。金剛さんなら何があったかは察してくれるだろうし……)

 

そんな結論を出した私は、若干頼りない足取りで地下に向かった。

 

 

 

 

「…………………………」

 

それを物陰から見ていたものが一人。そう、金剛だ。

 

響と別れた後、金剛は手早く食事を済ませて戻ってきていた。その時にはすでに響と瑞鳳のデュエルは始まっていたのだ。乱入も考えたが、ひとまずは様子を見ることにした。

 

(響のライフが大きく削られた時は助けに行こうかとも思いましたガ……行かなくて正解だったようデース)

 

結果論だが、響は誰の助けも借りずに瑞鳳に勝利した。以前の彼女だったらこうは行かなかったかもしれない。

 

(But、今の響は少々危うい気がしマース。きっと彼女は、自分が戦っている理由すら曖昧なのでショウ)

 

もちろん、こんなものは直感に過ぎず、実際は違うかもしれないが、少なくとも金剛からはそう見えていた。

 

(……私も、何か響にしてあげられることがあるといいんですケド)

 

しかしそれは今ではないだろう。そのうち、響が本当に迷った時だ。

 

では、今すべきことは何か。そう考えた金剛は、ディスクの電源を入れた。

 

「Hey、提督。瑞鳳が《No.》から解放されたヨ。《No.》は多分もうすでにこの鎮守府のどこかに移動している筈ネ」

 

『そうか。……ちなみに、だが。誰が瑞鳳を倒した?』

 

「決まってマース」

 

口元に薄っすら笑みを浮かべて、金剛は言った。

 

「ちっちゃなheroデース」




【EM】vs【幻獣機】でした。デッキ解説のお時間です。

【EM】、今回は《補給部隊》と《EM ペンデュラム・マジシャン》のコンボで永続的にハンドアドバンテージを取っていくことを軸にしました。おかげで手札が尽きない。

【幻獣機】。《シンクロ・バリアー》は《幻獣機 コンコルーダ》等をリリースして発動する用です。盤面が埋まりやすいので作っててちょっと混乱しました。
《No.11 ビッグ・アイ》、前回に続き汎用性の高い《No.》です。現実でもよくお世話になってます。あと、初登場の《No.》サポートカード《ナンバーズ・ウォール》。汎用カードの肩身がせまいこの世界では非常に強固な壁として機能します。自分で使わせといてなんですが、辛かった。

次回、久しぶりの海。

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