「いや、今年は大変な一年だったねえ」
こたつに下半身を突っ込んだ状態で司令官が言う。一応此処は提督執務室……なのだが、本来あるべき机やら何やらはない。なんでも特注家具職人さんとやらが一晩でやってくれたらしい。
書類仕事はできるから別にいいと言えばいいけれども。
ちなみに今は十二月三一日、二三時五十分。間も無く今年が終わる。
「私は今年初めてこの鎮守府に来たわけだけれど……例年はもっとおとなしかったのかい?」
「おとなしいも何も、私達は制海権を取っている側なのよ? 深海棲艦からの多少の襲撃はあれど、基本的には平和そのものだったわ」
隣の暁がみかんの皮を剥きながら教えてくれる。その傍らにはみかんの皮の山。指はとうに黄色く染まっている。
「確かに、響と出会ってからは日常に刺激が増えたな。……もちろん、いい意味でな」
長月がデッキを確認しながら言う。それは褒められていると解釈していいのか?
「まあ、刺激の少ない日々だったのは事実デース。大本営からの命令で何もできなかったから、と言うのもあるけどネ……」
言って苦笑する金剛さん。その手にはハードカバーの本がある。さっきちらっと中身を見てみたが、あまりに難しすぎて目眩がするほどだった。
「さて、後少しで今年も終わるわけだが……何かやり残したこととかはあるかな?」
「やり残したことか……何かあったかな」
「私はこの本がまだ読み終わってないことですかネー。と言っても、もう直ぐですケド」
「私は特にないな」
「私もね」
長月と暁はないらしい。私、私は……
「……ううん、思い当たらないってことは、ないってことなのかな」
「それならそれでいいんじゃないか? スッキリとした気分で来年を迎えることができると言うことじゃないか」
「なら逆に司令官は何かないのか?」
長月が言う。そうだ、確かに司令官はないのだろうか。
「私か? そうだな……」
しばし沈黙。やがて司令官が口を開いた。
「……数えきれんな。残りは来年に持ち越しか」
「そんなにあるのかい?」
「司令官というのは多忙なものなんだよ」
それはなんとなくわかる。
「だが……うむ、そうだな。一つぐらい解消しておこうか」
「今できることなのかい?」
「ああ。ただ、それには君たちの協力が必要だがね」
「???」
具体的な疑問を口にするより早く、司令官が立ち上がり、ディスクの電源を入れた。
「ーー思い切り、本気のデュエルがしたい。協力してくれるかい?」
「……そういうことなら、望むところだよ……!」
私も立ち上がり、ディスクの電源を入れる。と、暁と長月も立ち上がった。
「なら、私たちも参戦させてもらおう。その方が燃えるだろう?」
「そうね、タッグで勝負よ!」
「じゃあ私は観戦していマース。本も読みきりたいですしネ」
「なら暁はこちらに来い。存分に暴れようじゃないか……!」
四人がそれぞれディスクを構える。きっとこのデュエルの最中に年が明けるだろう。それはそれで一興だ。
「じゃあ、行くぞーー」
「ええ、行くわーー」
「ああ、行くぞーー」
「うん、行こうーー」
「……ふふ、いい勝負になりそうですネーー!」
「「「「ーーデュエル!!」」」」
改めて、2017年もよろしくお願いします!!