駆逐艦響と決闘者鎮守府   作:うさぎもどき提督

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本当はもう少し早く投稿できる予定だったのですが、いざ投稿する段階になって書き直してました。次はもう少し早く……できるといいなあ


ファースト・デュエル

「……うん、ルールはだいたい把握できたかな」

 

「早っ!? ちょ、まだルールブックに一回目を通したくらいじゃない!」

 

鎮守府にある、特殊物資(艤装用の高速修復材、開発資材等)搬入用の港。その一角で私と暁はベンチに座ってデュエルディスクにインプットされていたルールブックを読んでいた。そして今、それが一通り完了したというわけだ。

 

暁の方を向きながら言葉を続ける。

 

「把握したと言っても、基礎の部分……それこそターンの進め方や各召喚の方法、あとはチェーンの組み方程度のものさ。まだ完璧とは言い難いね」

 

「そ、それでも十分な気もするけど? それさえ押さえておけば一応デュエルはできるわけだし」

 

「ああ、そうかもね」

 

暁の言葉に、小さく首を縦に振る。しかし、そうは言ったもののその部分すら完璧かはわからない。自分ではできているつもりでも、他人から見たら猿真似だったら意味がないのだ。

 

「だから」

 

言いながら立ち上がり、デュエルディスクのボタンを押すと、ブゥンという音とともにディスクの外側に光の板のようなものが現れる。それを自分の胸の前に構えて暁に相対する。

 

「ここから先は、実践で覚えようと思う」

 

「……!!」

 

……若干、強引だっただろうか。でもおそらく暁は最初から私とデュエルするつもりだったのだと思う。だからこそ、こんな人気のない場所に連れてきたのだろうし。

 

そして、私のその予想は正しかった。

 

「いいわ……なら、私が本当のデュエルってものを教えてあげるわ!」

 

急に上機嫌になった暁はいい笑顔でディスクを起動させながらベンチから立ち上がり、私と距離を取る。

 

……全く、本当に御し易い。

 

「それじゃ、行くよ」

 

「ええ、来なさい!」

 

「「デュエル!!」」

 

暁:LP8000

響:LP8000

 

先攻後攻はディスクが自動で決める。今回は……

 

「お、私が先攻ね! それじゃ、私のターン! 私はモンスターを裏側守備表示で召喚、さらにカードを一枚伏せてターンエンドよ!」

 

暁がディスクにカードを出すと、連動して暁の前にカードのビジョンが現れる。なるほど、なかなかの迫力だ。

 

「ふむ、それじゃあ私のターン、ドロー!」

 

勢いよくディスクからカードを引く。この感覚、クセになりそうだ。

 

「私は《EM ヘイタイガー》を召喚、そのままバトルだ。ヘイタイガーで裏守備モンスターに攻撃する」

 

私のヘイタイガーが裏側守備表示のモンスターへ突撃していき、そのまま破壊する。

 

「破壊されたモンスターは《キラートマト》、よって効果が発動するわ! このカードが戦闘で破壊されて墓地へ送られた時、デッキから攻撃力1500以下の闇属性モンスターを攻撃表示で特殊召喚する。私が特殊召喚するのは《伝説の黒石》よ!」

 

「私もヘイタイガーの効果を発動。このカードが相手モンスターを戦闘で破壊して墓地へ送った時、デッキから《EM》のペンデュラムモンスターを手札に加える。《EM シルバークロウ》を手札に。さらにカードを二枚伏せてターンエンドだ」

 

一巡して、お互いにライフの変動はなし。まあ1ターン目なんてこんなものかもしれない。

 

(さて……暁はどう攻めてくるかな)

 

「私のターン、ドロー! 私は《伝説の黒石》の効果を発動! このカードをリリースすることで、デッキからレベル7以下の《レッドアイズ》モンスターを特殊召喚するわ。私は《真紅眼の黒竜》を特殊召喚!!」

 

「っ、最上級モンスターを、こうも早く……!」

 

ギャァォォォ!! というレッドアイズの咆哮が空気を震わす。流石、通常モンスターといえど最上級レベルのモンスター。迫力がヘイタイガーや黒石とは段違いだ。

 

「さらに私は《マスマティシャン》を召喚し、効果発動! このカードが召喚された時、デッキのレベル4以下のモンスターを墓地へ送れるわ。この効果で私は《エクリプスワイバーン》を墓地に送り、このカードの効果も発動! ワイバーンが墓地に送られた時、デッキのレベル7以上の光か闇のドラゴンを除外できる。私は《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》を除外……って響聞いてる?」

 

「……い、一応」

 

正直、呪文を唱えているようにしか聞こえない。《マスマティシャン》、恐ろしいカードだ。

 

「ふーん、まあいいわ。バトルよ! レッドアイズでヘイタイガーに攻撃!」

 

「……!」

 

その宣言に、ニッと口角が上がる。

 

「かかったね、暁。私は罠カード《幻獣の角》を発動。このカードは発動後、攻撃力を800上げる装備カードとなって獣族か獣戦士族のモンスターに装備される。私はこれを獣戦士族のヘイタイガーに装備だ」

 

それを見て、暁は露骨に嫌そうな顔をした。

 

「うえ、確かそのカードって……」

 

「おや、知ってたか。そう、このカードを装備したモンスターで相手にダメージを与えると、私は一枚ドローできる」

 

「しかもヘイタイガーは相手を戦闘破壊したらサーチができる、その上攻撃力も私のレッドアイズを100上回ってる……すごい噛み合いようね」

 

その上、これはダメージステップでの発動。これに他のカードをチェーン発動して対処するのは至難の技だ。

 

「でも」

 

不意に、暁がそう言った。

 

「対処できないわけじゃないわ。カウンター罠、《王者の看破》発動!」

 

「……!? そのカードは……?」

 

「私のフィールドにレベル7以上の通常モンスターが存在するとき、相手の魔法、罠の発動、もしくはモンスターの召喚行為を無効にし破壊する! 《幻獣の角》は破壊させてもらうわ!」

 

「くっ……!」

 

「バトル続行、改めてレッドアイズでヘイタイガーに攻撃よ! やっちゃえ!」

 

「っ、ぐうぅ……!」

 

レッドアイズの吐いた炎がヘイタイガーを貫き、その余波が私のところにまで来る。衝撃自体はほぼないが、爆風などはきっちり再現されるようだ。

 

響:LP8000→7300

 

「続いて《マスマティシャン》でダイレクトアタック!」

 

「させない、速攻魔法《イリュージョン・バルーン》発動!」

 

その発動とともに、私の周りに色とりどりの風船のビジョンが現れる。

 

「《イリュージョン・バルーン》?」

 

「さすがに知らないか。このカードは自分フィールドのモンスターが破壊されたターンに発動できる速攻魔法。デッキの上から5枚を確認して、その中から《EM》を一体特殊召喚できるのさ」

 

「また《EM》……なんとなくわかってたけど、響のデッキは【EM】ってわけね」

 

「まあそうなるのかな。そういう暁のデッキは……【レッドアイズ】、かな」

 

「正確には【真紅眼の黒竜】かしらね。……って、それはいいから効果の処理、早くしてよ」

 

一応暁の方から話を振ってきた気がするけれど、そこには触れないでおこう。

 

「それじゃ行くよ。まず一枚目……《魔法の筒》」

 

「ハズレね」

 

「まだだ、二枚目《バリア・バブル》、三枚目《和睦の使者》、四枚目《ブロック・スパイダー》……」

 

「全然来ないわね……」

 

「ま、まだ……五枚目っ!」

 

気合を込めてドローしたカードは……

 

「…………五枚目、《オッドアイズ・ドラゴン》」

 

「……うん、ま、まあたまにあるわよ、たまに」

 

「……暁、フォローありがとう」

 

でも今はその気遣いが辛い。

 

「えーと、とりあえず《マスマティシャン》でダイレクトアタックよ」

 

「っく……」

 

逆転の手が空振りした私は、無抵抗でマスマティシャンの攻撃を受けた。

 

響:LP7300→5800

 

「カードを二枚伏せて、ターンエンド。……さて響、ここからどう攻めて来るのかしら?」

 

ふふん、と得意げに笑う暁。対するこちらも負けじと不敵に笑う。

 

「……さあね。それは、私にもわからないかな」

 

格好つけて言ったが、単に今の手札に暁のレッドアイズに勝てるカードがないだけである。

 

だけど。いや、

 

「だから、このドロー次第だね」

 

言って、山札の一番上のカードに手をかける。

 

「そう……よくわかんないけど、とにかく来なさい!」

 

「ああ、遠慮なく行かせてもらう……!」

 

自然と、口角がニッと上がった。やはり、いつの時代もこういう娯楽は楽しいものだ。

 

「私のターン……ドローっ!」

 

気合の入った掛け声とともに、私はカードを引いた。このカードが、逆転の一手であることを信じて。

 

 

 




と、いうわけで【EM】vs【真紅眼の黒竜】の初デュエルでございます。詳しい解説は次回行います。

では、短いですが今回はこの辺で。次回、vs暁後半戦です。

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