我が鎮守府で最大の広さを誇る第一運動場……の隣にある、その次に大きい第二運動場。そこに、私と夕立はやってきた。解放されている時間は誰が使用してもいいのだが、幸い今は誰も使用していなかったようである。
だが、今ここにいるのは私達二人だけではない。
「さて、じゃあ今回は僕、時雨が審判を務めるよ」
まず、夕立が審判として呼んだ、彼女の姉である白露型二番艦『時雨』。
そして、
「……まさか、デュエルディスクにこんな機能があるなんてね」
『ちゃんと取扱説明書に記載されているぞ? もしかして説明書をきちんと読まないタイプか?』
デュエルディスクから聞こえる声。我らが司令官こと
なんでもデュエルディスクには音声会話ができる機能があるらしい。さらに、デュエル中なら通信相手にデュエルの様子がリアルタイムで送れるという優れものだ。
夕立もディスクを起動させ、私と距離をとった。
「さてと、それじゃあ始めるっぽい!」
「ああ、望むところだよ」
「双方、準備は……できているようだね。それじゃあ、デュエル開始!」
「「デュエル!!」」
夕立:LP8000
響:LP8000
「先攻は私か。私のターン、まずはスケール4の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》とスケール6の《EM リザードロー》でペンデュラムスケールをセッティング」
これでレベル5のモンスターが同時に召喚可能だ。
「天に弧を描け、ペンデュラム。ペンデュラム召喚! 手札より現れよ、レベル5《EM ゴムゴムートン》!」
「守備表示……攻めてはこないっぽい?」
「先攻は攻撃できないからね。私はカードを一枚伏せてターンエンド。このエンドフェイズ、スケールのオッドアイズの効果発動。このカードを破壊することで、デッキから攻撃力1500以下のペンデュラムモンスターを手札に加える。攻撃力100の《EM オッドアイズ・ユニコーン》を手札に加えよう」
手札に加えたユニコーンのスケールは8。これで、次のターンにはオッドアイズをペンデュラム召喚できる。
(それに、ゴムゴムートンは戦闘破壊耐性がある。様子見としては上出来かな)
さて、夕立のデッキはなんだろう?
「夕立のターン、ドロー!」
ドローカードを確認した夕立は、
「カードを一枚セット。そして魔法カード《手札抹殺》を発動するっぽい!」
「なっ……!」
手札抹殺。その名の通り互いに手札を全て捨て、その枚数ずつドローするという効果を持つ制限カードだ。
(くっ、ユニコーンが墓地に……!)
他のデッキならいざ知らず、私のようなペンデュラムを主体にするデッキでは墓地に送られるデメリットを逆手に取ることも難しい。
(しかし……このカードを入れているということは、夕立のデッキは墓地からの展開が主ってことなのかな)
というか、少なくとも私と同じようなペンデュラムデッキではないだろう。
一新された手札を確認した夕立は、「よしっ」と小さくガッツポーズをした。
「カードを追加で二枚セットしてターンエンド! さあ、響ちゃんのターンっぽい!」
「私のターン、ドロー。……カードを二枚伏せてターンエンド」
せめて《EM》のペンデュラムモンスターが引けていればリザードローの効果も使えたのだけれど。
「じゃあこのエンドフェイズ、罠カード《針虫の巣窟》を発動! デッキの上から五枚を墓地に送るっぽい!」
(! また墓地にカードを送る……それも今度はランダムか。よほど墓地が重要なんだな)
しかし、引っかかる点が一つ。それは、
(……なんで、夕立は前のターン、モンスターを召喚しなかった? 手札事故……というわけでもなさそうだったし)
壁となるモンスターすら出さなかった。こちらが《手札抹殺》によって攻め手を失うのを読んでのことだろうか?
まあどのみち、次のターンにはそれもわかるだろう。
(流石に司令官に聞くわけにも、ね)
「夕立のターン、ドロー!」
さあ、どこから動く。手札? 伏せカード?
正解は、どちらでもなかった。
「このスタンバイフェイズ、墓地の《アークブレイブドラゴン》の効果発動! このカードが墓地に送られた次のターンのスタンバイフェイズ、墓地のレベル7か8のドラゴンを特殊召喚するっぽい!」
「……そうか、針虫……あれでそんなカードを墓地に送っていたのか」
ランダムな墓地肥やしでそんなカードを墓地に送るとは、流石はあの時雨の妹といったところか。
「私がアークブレイブで特殊召喚するのは……レベル8《巨神竜フェルグラント》! そしてその効果を発動! このカードが墓地から特殊召喚された時、相手モンスター一体を除外する!」
「! 破壊を介さない除外……!?」
私のフィールドにいるモンスターはゴムゴムートンのみ。防ぐ術は、ない。
「さらにフェルグラントは除外したモンスターのレベル、もしくはランク×100、攻撃力をアップさせるっぽい!」
「ゴムゴムートンのレベルは5。よってフェルグラントの攻撃力は500アップして3300だね」
すかさず審判の時雨が攻撃力を教えてくれた。
「行くっぽい! フェルグラントで響ちゃんにダイレクトアターック!」
「っ、させない、罠カード《EMコール》発動! 相手の直接攻撃を無効にし、守備力の合計がその相手モンスターの攻撃力以下になるようにデッキから《EM》を手札に加える。守備力1600の《EM アメンボート》と守備力800の《EM ペンデュラム・マジシャン》を手札に加える」
なんとか大ダメージを回避し、手札を補充する。
(だけど、コールには次のターン、エクストラデッキからの特殊召喚を封じるデメリットがある。攻め込むのは難しいな)
「じゃ、カードを一枚伏せてターンエンドっぽい」
「私のターン、ドロー。……《EM アメンボート》を召喚してターンエンド」
ペンデュラムマジシャンをペンデュラムスケールにセットしてリザードローの効果を使っても良かったのだけれど。
(まだいいかな。それに、マジシャンはモンスター効果の方が使いたいしね)
「夕立のターン、ドロー!」
夕立の手札は、現在三枚。前のターンには手札は一枚しか使っていない、ということは今ドローした一枚を除けば動ける手札ではないということだろう。それならまだ、私にも逆転の可能性がある。
問題は、ドローしたカードが何なのか、だが。
「手札から魔法カード、《死者蘇生》を発動するっぽい!」
『お、いいカードだ』
観戦している司令官がそんな声を漏らす。確かに、非常にまずい。すでに夕立の墓地には結構な量のカードがある。何が飛んでくるのかわかったもんじゃない。
そんな中、夕立が蘇生させたモンスターは、
「よみがえれ、アークブレイブ! そしてアークブレイブの効果発動、相手の表側表示の魔法、罠を全て除外し、その数×200、攻撃力をアップさせるっぽい!」
「っく、リザードローが……!」
「これでアークブレイブの攻撃力は2400から2600にアップしたよ」
ペンデュラムスケールのペンデュラムモンスターは魔法カードと扱うということは、こういう効果をモロに受けてしまうということだ。
(……除外対策のカード、増やしてみようか)
「さあ行くっぽい! アークブレイブで、アメンボートに攻撃!」
「アメンボートの効果発動! 攻撃表示のこのカードが攻撃対象になった時、守備表示にすることでその攻撃を無効にする!」
さらに、守備表示になったことで次のフェルグラントの攻撃でダメージを受けることはない。
……はずなのに、なぜか夕立はニヤリと笑った。
「ーーその効果、読んでたっぽい!」
「何っ……!?」
「フェルグラントで、アメンボートに攻撃っ!」
当然なすすべもなく戦闘破壊されるアメンボート。もちろんダメージはない。
(いったい何をーー?)
「この瞬間、フェルグラントの効果発動! 相手モンスターを戦闘破壊した時、墓地からレベル7か8のドラゴンを特殊召喚する!」
「! そんな効果がーー!」
「あの響ちゃんが無意味に低い攻撃力を晒すとは思えない、ならそこに、必ず意味があると読んだっぽい! そして、私がフェルグラントの効果で特殊召喚するのはーー!」
夕立の墓地から、一枚のカードが出てくる。そのカードは……
「降臨するっぽい! 《青眼の白龍》ッ!!」
キャオオオオン!! という雄叫びと共に、純白の龍が墓地から舞い降りた。
ちなみに、青眼は原作ほどではありませんがこちらの世界でも大変希少なカードとなっております。
次回、ドラゴンドラゴンアンドドラゴン