意識の白濁から復帰し、ドローカードを確認する。そのカードはもともと私のデッキに入っていたものだ。ということは、
「……やっぱり」
エクストラデッキの一番上のカードをめくると、予想通りそれは見覚えのないカードになっていた。
「このスタンバイフェイズ、除外されていた《刻剣の魔術師》と《ジャンク・ウォリアー》はフィールドに戻る。そしてスケール2の《賤竜の魔術師》とスケール8の《竜穴の魔術師》でペンデュラムスケールをセッティング」
再び私のペンデュラムスケールに二枚のカードが現れる。
「行くよ、ペンデュラム召喚! エクストラデッキから、レベル4《相生の魔術師》、《EM シルバー・クロウ》、そしてレベル7《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」
「復活したか……そしてレベル4が二体、エクシーズ召喚でもする気かな?」
華城さんはそう言ったが、そのつもりはない。
「刻剣の効果を再び発動。自身と《ライトニング・ウォリアー》を次の私のスタンバイフェイズまで除外する。そして私は、オッドアイズとシルバークロウをリリース!」
「ほう、リリース……ということは最上級のアドバンス召喚か!」
「残念だけど違う……これは融合召喚だ!」
「! 《融合》を使用しない融合召喚……?」
長月も驚きの声を上げる。しかしこれはルール上問題ない行為だ。
「このモンスターは、自分フィールドの闇属性、ドラゴン族と獣族を一体ずつリリースすることで融合召喚する事が出来る。ふた色の眼の龍よ。野生をその心に宿し、新たな姿となりて現れよ! 融合召喚! レベル8《ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」
渦の中から現れたのは、宝石のような見た目のオッドアイズとは違う、野獣のようなワイルドな見た目のビーストアイズ。二体目のオッドアイズの融合体だ。
「ほう……ほうほうほう! なるほど、これは驚いた! 私はこんなモンスターは知らない、これもまた君の持つ特別なカードということか!」
そのビーストアイズをみた華城さんは、先ほどまでの余裕のある態度を崩し、まるで子供のように無邪気に言った。
「賤竜は一ターンに一度、エクストラデッキの《魔術師》もしくは《オッドアイズ》を手札に戻すことができる。この効果で私はペンデュラムドラゴンを手札に戻し、さらに相生の効果を発動。このカードは相手に戦闘ダメージを与えられない代わりに、自分フィールドのモンスターと同じ攻撃力になれる。ビーストアイズと同じにするよ」
「ダメージを与えられない攻撃力3000……なるほど、君の狙いはそういうことか」
すぐに感づかれてしまったようだが、だからと言って手を変えるつもりもない。
「さあ、バトルだ。相生で《ロード・ウォリアー》に攻撃!」
「…………」
華城さんの表情は少しも変わらない。あの言葉が本当なのだとしたら予想通りの結果なわけだから、その反応は妥当か。
「続いてビーストアイズでジャンクウォリアーに攻撃!」
「ふふっ……いいだろう、来いっ!」
ビーストアイズの放った炎が、ジャンクウォリアーを焼き尽くし、その余波は華城さんの近くまで及んだ。
華城:LP7500→6800
「これで終わりか?」
何故か若干不満そうに言う華城さん。だがもちろんこれで終わりではない。
「いいや、ビーストアイズが相手モンスターを破壊したとき、融合素材にした獣族の攻撃力分、相手にダメージを与える!」
「融合素材……ということは、シルバークロウの攻撃力分1800か」
華城:LP6800→5000
「バトルフェイズを終了し、私は魔法カード《一時休戦》を発動。お互いにカードをドローし、次の私のターンまでお互いに発生するすべてのダメージをゼロにする」
「自分から散々攻撃しておきながら休戦を申し込む……相変わらずこのカードはなかなか理不尽だな」
「……確かに。でも便利なカードは使わないとね。私はカードを一枚伏せてターンエンドだよ」
「私のターン、ドロー。墓地の《ラッシュ・ウォリアー》の効果を発動。このカードを除外することで、墓地の《シンクロン》を手札に戻す。《ジャンク・シンクロン》を手札に戻し、これを召喚。その効果で墓地のレベル2以下のモンスター、《チューニング・サポーター》を効果を無効にして特殊召喚する」
「レベル1……ということは合わせてレベル4かな?」
いや、もしかしたら最初のターンの《クイック・シンクロン》のように条件付きで特殊召喚できるモンスターがいるかもしれない。
その予想はある意味で当たり、ある意味で外れた。
「私は魔法カード《機械複製術》を発動。自分フィールドの攻撃力500以下の機械族の同名モンスターを、デッキから二体まで特殊召喚する」
「なるほどな、攻撃力100のサポーターと相性抜群ということか」
後ろの長月が言う。そういえば、彼女の使うデッキも機械族をメインに据え、シンクロを多用するものだったか。
「サポーターはシンクロ召喚に使用するときレベルを2として扱える。行くぞ、レベル2のサポーター二体、レベル1のサポーターにレベル3チューナーのジャンクをチューニング!」
「レベル8……ビーストアイズと同じか」
そして、私の持つ他の『特別なカード』たちとも。
「『想い』と『願い』が結合し、生まれし怒りは永久の闇をも打ち砕く! シンクロ召喚! 現れよ、レベル8《ジャンク・デストロイヤー》!!」
地面を割って現れたのは、合体ロボのような見た目のシンクロモンスター。その攻撃力は2600と《ロード・ウォリアー》より低いが、何か効果があるのは間違いないだろう。
「サポーターをシンクロ召喚に使用した時、一枚ドローできる。三体使用したので三枚ドローし、さらにデストロイヤーの効果を発動! シンクロ召喚に使用したチューナー以外のモンスターの数だけ、フィールドのカードを破壊できる!」
「チューナー以外……つまり三枚破壊する、か」
「そうだ。私は響のペンデュラムスケール両方と、その伏せカードを破壊する!」
再び私のフィールドのスケールが破られる。ペンデュラムモンスターは破壊されてもエクストラデッキに行くが、こう何度も破壊されてはデッキのペンデュラムモンスターが枯渇してしまう。そうなると、新たなスケールが用意できずペンデュラム召喚もできない。
「今破壊された《運命の発掘》の効果発動。このカードが破壊された時、カードをドローできる」
「うまく利用されたか……だがこれはどうかな? 魔法カード《精神同調波》発動! 私のフィールドにシンクロモンスターが存在するとき、相手のモンスター一体を破壊する。ビーストアイズにはご退場願おう」
「くっ……!」
ビーストアイズには、破壊耐性も破壊された時の効果もない。ただ無抵抗に破壊されるのみだ。
「私はカードを一枚伏せてターンエンド。……さて、君の切り札は破壊させてもらったぞ、響。ペンデュラム召喚も容易ではないこの状況で、君はどうする?」
「……わかっているんだろう?」
私がそう返すと、華城さんは軽く笑って言った。
「ふ、まあな。正直、君の次のターンの行動はなんとなく予測がついている」
「やっぱりね。私のターン、ドロー」
ドローカードを確認。どうやら、華城さんの予想通りの展開になりそうだ。
(けど、それが最善だろうから、仕方がない)
「この瞬間、刻剣とライトニングがフィールドに戻る。そして私は魔法カード《死者蘇生》を発動する」
私の墓地には、融合召喚以外では特殊召喚できないビーストアイズしかいない。よって特殊召喚は華城さんの墓地からということになる。
ランク3のエクシーズ召喚ができる《ジャンク・シンクロン》? レベル4のシンクロ召喚ができる《アンノウン・シンクロン》?
(いや、違う)
「私が呼び戻すのはーー」
「おそらく、君が蘇生させるのはーー」
次の瞬間、二人の声はぴったりと重なった。
「「《アクセル・シンクロン》!!」」
華城さんの墓地から、アクセルが私のフィールドに特殊召喚される。
「行くよ、私はレベル3の刻剣にレベル5チューナーのアクセルをチューニング!」
「レベル8……来るか!」
「清き心を持ちし剣士よ。吹きすさぶ吹雪を裂きて、閃光とともに現れよ! シンクロ召喚! レベル8《覚醒の魔導剣士》!!」
私の持つ、特別なカード。未だに謎の多い剣士は、今回は寡黙を貫いている。
「魔導剣士の効果発動。《魔術師》Pモンスターをシンクロ素材にした時、墓地の魔法カード一枚を手札に戻す。《一時休戦》を手札に戻すよ。……そしてバトルだ、魔導剣士でライトニングに攻撃!」
「っ、さらに破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える、だったか」
華城:LP5000→2500
「メインフェイズ2、《一時休戦》を発動しドロー。カードを一枚セットしてターンエンドだ」
「またダメージは与えられないか。まあ仕方がない、私のターン、ドロー。デストロイヤーで魔導剣士に攻撃だ」
デストロイヤーの拳が魔導剣士を打ち砕く。当然、ダメージはない。
「私はカードを一枚伏せてターンエンド」
「ならこのエンドフェイズ、罠カード《ロスト・スター・ディセント》を発動。墓地のシンクロモンスター一体を、レベルを一つ下げ、効果を無効、守備力をゼロにして守備表示で特殊召喚する。よみがえれ、魔導剣士!」
舞い戻った魔導剣士の手に、剣はない。ディセントの効果で攻撃表示にできないが故の演出だろうか?
(華城さんの残りライフは、2500。ドロー次第では、次のターンで決められるかもしれない)
キーカードは、ほぼ手札に揃った。あと一枚、それで勝負を決められる。
「行くよ、私のーー!」
気合の入った掛け声とともにカードをドローしようとした、
その時だった。
「ちょ、ちょちょちょっとー!!? なーにしてるんですかぁー!!」
鎮守府本館の方から、見覚えのある影が走ってきた。
「……明石か。遅いぞ」
長月が軽くため息をつきながら言う。どういうことか理解しかねていると、明石さんは私の方ではなく華城さんの方にずかずかと近づいていった。
「あ、の、で、す、ねー! 前に言いましたよね、私! 『戻ってくるなら事前に連絡を』と! それなのになんで貴女は毎度毎度唐突に帰ってくるんですか!!」
「い、いやー、今回はほら、事態が事態だろう? だからなるべく早く戻ってこなくてはかなー、と……」
「だからと言ってなぜノー連絡! ホウレンソウを大事にするのは社会人の常識でしょうがっ!! やっぱり頭の修理が必要ですか!!?」
「えと……あ、あの? よくわからないのだけど、落ち着いてくれないかい?」
ものすごい剣幕で華城さんに食ってかかる明石さんをなんとか抑える。興奮気味の彼女に話を聞くのは無理そうなので、事態を理解していそうな長月に話を聞くことにする。
「長月、これはいったい……?」
「……まあ、こうなっては隠す必要もないだろう。お前は会ったことがないからわからないのも当然なんだが、この人はーー」
それを合図にしたように、華城さんはサングラスを勢いよく外し、ニッと笑った。
「この鎮守府の、司令官だ」
……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………はい?」
理解が、全く追いつかない。
(どういう、ことだ……? だって、華城さんは華城型戦艦の一番艦だって……)
対する華城さんは、サングラスを胸ポケットにしまい、両足を揃えて言った。
「バレしまっては仕方がない。そうだ、私が華城型戦艦一番艦『華城』改め、横須賀鎮守府総司令官の『
ビッ、と音がしそうなほど整った敬礼を見せられて、混乱が吹き飛ぶ。冷静になればどうということはない、要するに彼女が嘘をついていたというだけだ。
「……長月、君は知っていたのかい?」
聞かれた長月は、バツが悪そうに頬を掻きながら答えた。
「すまない、本当は最初に言おうかと思ったんだが……なんというか、こう、司令官から無言の圧力のようなものを感じてな。なかなか言い出すタイミングが掴めなかったんだ」
「……そうか」
まあ、ここで長月を責めるのは筋違いだ。
さてどうしたものかと考えていると、華城さん……もとい司令官がディスクを構えなおしながら言った。
「さあ響、君のターンだぞ? もっと見せてくれ、君の可能性を!」
そういえばそうだった。今はデュエルの真っ最中。勝手に終了するなんて、失礼もいいところだ。
「わかったよ、華城さん……いや、華城司令官」
「少々堅苦しいが……いいだろう、来い!」
何を引けばいい? いや、ドローすべきカードなどわかりきっている。
「改めて私のターン……ドロー!!」
ドローカードを確認し、思わず小さく笑みがこぼれる。狙ったカードをドローすることができた。
「私は魔法カード《融合》を発動! フィールドの魔導剣士と手札のオッドアイズで融合!」
「オッドアイズと魔法使い族の融合……ということは!」
そう。三枚目の、特別なカード。
「ふた色の眼の龍よ。神秘の力をその目に宿し、新たな姿となりて現れよ! レベル8《ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」
「来たか、ルーンアイズ……! だが、この状況ではその効果を生かすことはできないぞ!」
「構わないさ、ルーンアイズでデストロイヤーに攻撃!」
ルーンアイズの背中の輪から発射された光線がデストロイヤーの胴体を貫き、そなまま爆散させる。
「くっ……」
華城:LP2500→2100
「だが……だが足りないぞ、私のライフはまだ初期値の四分の一も残っている!」
モンスターがフィールドに一体もいないにもかかわらず、司令官の余裕は変わらない。
だが。
「それはどうかな?」
「何っ……!」
「私の手札は、まだ一枚残っている!」
これが、最後の切り札。
「私は手札から速攻魔法《融合解除》を発動! フィールドの融合モンスター一体をエクストラデッキに戻し、その融合素材一組を墓地から復活させる! よみがえれ、魔導剣士、そしてオッドアイズ!!」
『特別なカード』である魔導剣士と、司令官からもらった私の切り札オッドアイズがフィールドに並ぶ。
「これで終わりだ……オッドアイズで、ダイレクトアタック!!」
オッドアイズが発射した光線が司令官に迫る。あの伏せカードはルーンアイズの攻撃時には発動されなかったということは、攻撃反応系ではないはず。
しかし。
「……なるほど、君の『今』の実力はよくわかった。こんなに熱くなったデュエルはいつぶりだろうかね」
司令官の表情から、余裕は一切消えていなかった。
「だが詰めが甘かったな。リバースカードオープン、罠カード《墓地墓地の恨み》!!」
「なんーーそのカードは……!?」
「このカードは相手の墓地にカードが八枚以上存在するときに発動できる。その効果により、君のフィールドのすべてのモンスターの攻撃力をゼロにする!」
それを聞いて、慌てて墓地を確認する。今私の墓地にあるカードは、
(《揺れる眼差し》、《一時休戦》、《運命の発掘》、《ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》、《死者蘇生》、《ロスト・スター・ディセント》、《融合》、《融合解除》……合計八枚ちょうどだ……!)
だけど、それならルーンアイズが攻撃した時にも発動できたはずだ。あの時私の墓地には《融合解除》はなかったが代わりにオッドアイズと魔導剣士がいたのだから。そうしていれば、攻撃力ゼロのルーンアイズでデストロイヤーを攻撃してしまい、その反射ダメージで私は敗北していた。
(まさかこの人がプレイングミスをするなんてとても思えない。……ということは……?)
「あー……響さん。それ、その人の癖なんですよ」
私の思考を呼んだかのように明石さんが答える。顔に出ていただろうか?
「癖?」
「はい。相手がどこまで自分を追い詰めることができるのかを試すんです。だから相手の行動を阻害することもほぼないんですよ」
なるほど。確かに、司令官のターンに私のカードが破壊されることは多々あったけれど、こちらのターンに妨害されたのは最初のターンの《デモンズ・チェーン》くらいだ。
「さて、君のターンは終了でいいのかな?」
「……うん。私はこれでターンエンドだ」
発動できるカードはなく、手札もゼロ。フィールドには二体のモンスターが存在するが、両者のレベルが違うのでエクシーズ召喚する事も出来ない。
「では、私のターンな訳だが……ここから君のライフを削り取ることは簡単だ。しかし、それでは少々味気ない。だから、いいものを見せてあげよう」
「いいもの……?」
「ああ。私は罠カード《転生の予言》を発動! 墓地のカード二枚をデッキに戻す。《ジャンク・シンクロン》と《ジャンク・ウォリアー》をデッキに戻し、私のターン、ドロー!」
ジャンクウォリアーがデッキに戻った。ということは、おそらく……
「ジャンクシンクロンを召喚し効果で墓地の《ドッペル・ウォリアー》を特殊召喚。さらに墓地の《ジェット・シンクロン》の効果発動。手札を一枚デッキトップに置くことで特殊召喚。そして墓地の《ボルト・ヘッジホッグ》は私のフィールドにチューナーが存在するとき特殊召喚できる」
「《ボルト・ヘッジホッグ》……? そんなのいつ……」
「最初のターンの《調律》だろう。……よくもまあピンポイントで墓地に送れたものだ、とは思うがな」
長月に言われて思い出す。そう言えば司令官がこのデュエルの一番最初に発動したのは《調律》だった。
(本来はただのコストのはずのデッキトップを墓地に送る効果……それで都合よく墓地で効果を発揮するモンスターを墓地に送るだなんて……なんて運だ)
「永続魔法《連合軍》発動。私のフィールドの戦士族は自軍の戦士族及び魔法使い族の数×200ポイント攻撃力がアップ。さらに装備魔法《団結の力》をジェットに装備。その効果でジェットの攻撃力は自分フィールドのモンスターの数×800アップする」
「この流れ……まさか」
「さすがに気づいたか。私はレベル2のドッペルにレベル3チューナーのジャンクをチューニングッ!!」
緑色の光輪をドッペルが潜っていく。一ターン目と全く同じ組み合わせ、さらにフィールドには攻撃力の上がったレベル2以下のモンスター。もう間違いないだろう。
「『想い』と『願い』が結合し、生まれし力はさらなる『加速』を生み出してゆく!! シンクロ召喚! 現れろ、レベル5《ジャンク・ウォリアー》ッ!!」
白いマフラーをたなびかせ、再びフィールドに召喚されたジャンクウォリアー。その攻撃力は、本来なら2300だが……
「この瞬間、ドッペルの効果で私のフィールドに二体のドッペルトークンが特殊召喚される。そしてジャンクウォリアーの効果発動! このカードがシンクロ召喚に成功した時、自分フィールドのレベル2以下の攻撃力の合計を、自身に加える!!」
今司令官のフィールドにはジェット、ヘッジホッグ、二体のドッペルトークンと計四体のレベル2以下が存在する。その攻撃力がジャンクウォリアーに加わっていき、合計は、
「攻撃力……10200……!!」
「さあ、バトルだ。《ジャンク・ウォリアー》で《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を攻撃!!」
初期ライフすら軽く超えた攻撃力。その攻撃を止める手は、
「う、ああああああああ!!!」
当然、ない。
響:LP300→-9900
「お疲れ様。いいデュエルだった」
「……とんだ茶番だった気もするけどね」
差し伸べられた手を掴みながらぼやく。それに対して司令官は苦笑しながら言った。
「まあそう言うな。私の目的は君の実力を図ることだったわけだし……それに、攻撃力一万越えなんてそうそう観れるものじゃないぞ?」
「そうですね。それでは満足したところで業務に戻りますよ提督!!」
「おわっ!?」
後ろから近づいた明石さんに腕を引かれる司令官。その様子を見ていると、どちらが上司だかわからなくなってくる。
「ま、待て明石! まだ話が終わってない!」
「それどころじゃありません! スケジュール管理をするのは大淀、その愚痴を聞かされるのは私なんです! それにどうせ本部の人たちには何の連絡もなしなんでしょう? その始末書も書かなきゃいけないでしょうが!」
「いいや、今回はちゃんと許可もらって帰ってきたぞ! ほら!」
言って、司令官が胸ポケットから一枚の紙を取り出し明石さんに見せる。それを見た明石さんは、何も言わずに腕をつかむ力を緩めた。
「……後で大淀には頭を下げに行くさ。連絡を怠ったのは事実だしな。だが少し待ってくれ」
「……わかりました。ではなるべく手早くお願いしますね」
「ああ。……さて」
と、司令官は急に改まった顔になると、手を腰の後ろに回し、私の方に向き直った。つられて私の背筋も伸びる。
そして、言った。
「駆逐艦響。君に一つ、命令がある」
「命令……?」
その言葉に、思わず身体がこわばる。司令官からの命令は、すなわち上官命令。どんな内容であれ絶対なのだ。
数瞬の沈黙ののち。司令官の口が、開かれた。
「……響。君には明日から我が鎮守府の『臨時秘書艦』の業務に就いてもらう」
「………………えっ?」
浮かぶは、疑問符。数秒後、脳が冷静さを取り戻して、司令官の言葉をゆっくりと噛み砕いて理解しようとして、
「…………………………えっ?」
疑問符は、全く消えなかった。
まあ華城さんの正体についてはピンときていた人もいるかもしれませんね。というわけで【オッドアイズ】vs【ジャンド】でした。
それではデッキを解説。
司令官こと華城さんが使用、【ジャンド】。特に変わった点はありませんね。【ジャンド】はフルモン気味になりがちなんで《調律》でモンスターを墓地に送るのは案外簡単だったり。
対する我らが響さん、【オッドアイズ】です。
今回はオッドアイズの進化体及び《覚醒の魔導剣士》を次々に出していくのが目的でした。ですから、使用してるカードも結構少ないです。
全体的にイベント戦みたいなデュエルとなりました。
……と、言ったところで。今回はこんな感じですね。次話なんですが、ちょっと間があいてしまうと思います。お話のストックが切れちゃったのです。なるべく早く投稿できるように頑張りまっす。
次回、臨時秘書官って?