艦隊これくしょん ~春の雨・秋の雨~   作:七ツ盾=月桜

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ども!

お待たせしました!


良ければどぞw

2016.11.15追記
鎮守府の名称を変更致しました。


第二話

(もう…大丈夫だよね…姉さん…)

 

(また…いつ…か…ま、た…)

 

 

 

波の音が聞こえている。

 

地面が緩やかに揺れている。

 

周りには何かの気配がする。

 

強い熱が全身を焼く。

 

「ん…」

 

強い光が瞼を通して、眩しい。

 

(暑い…)

 

寝返りをうつ、が汗を大分掻いてる所為か気持ち悪さも相まって起きることにする。

 

(ってか俺いつの間に寝たんだっけか?)

 

まるで直射日光を浴びているかの様な眩しさに、難儀しながらゆっくりと瞳をこじ開けていく。

 

「ん…っと。ふぅ…」

 

何とか瞳が開く。

 

すると、何にも遮られない蒼空が見える。

 

然し流石に日差しがきつく、手で遮る。

 

「……?」

 

何となく違和感を感じる。

 

(なんだろ…?)

 

ふむ、まぁ良いか。

 

取り敢えずいつまでも寝てても仕方ないから地面に手をつき起き上がる。

 

「え…?」

 

妙に硬い地面が一瞬気になったが、それよりも目に映った〈景色〉に最大限の困惑を抱く。

 

「ここ…は?海…?」

 

(なんで…?)

 

慌てて辺りを見回す。

 

「船の…上?」

 

一面の海原。そして自分は船に乗っている様だ。

 

「一体…?」

 

訳が分からず頭を振る。

 

その際長い(・・)髪が右肩に触れる。

 

(ん…?)

 

右手でそれを持ち上げる。

 

「…あれ?」

 

さらさらとした、絹のような銀糸がそこにあった。

 

(…ふむ)

 

改めて自分を検分する。

 

細い腕。黒い手袋をしている。

 

視線を下に。

 

黒いセーラー服を着ており、胸は慎ましやかに膨れている。

 

やはり黒いスカートをはいており、そこから細く白い足が見える。

 

膝ほどのソックスをはいており、靴は茶色の革靴だ。

 

「ふむ…」

 

(えっと、つまり?)

 

自分はどうやら女の子になっている様だ。

 

(何故!?)

 

軽くパニックになる、が。

 

「うっ?」

 

脳裏に何かが閃く。

 

唐突に先程の、海の中の記憶を思い出す。

 

(そう、か…俺は…)

 

思い出す。

 

あの海の中、俺は《秋雨》になったんだった…。

 

(ってことは…)

 

「ここは《秋雨》の、というか《俺》の上、か…」

 

いま居るのは駆逐艦・秋雨の上、なんだな。

 

「………」

 

俺は本当に…艦娘になったのかな?

 

まだ実感は出来ていない。

 

然しそうも云ってられないだろう。

 

いつまでもこんな大海原の真ん中に漂ってても仕方ないし、何処かに行かないと。

 

「さて、と…どうすればいいのかな?」

 

取り敢えず何をしようか、と思いなんとなはしに周りを見回す。

 

(…ん?)

 

今何かが居た…?

 

「えぇっと?」

 

暫しそちらを見つめる。

 

(なにか…ちっさくてかわいい…なんだ?)

 

ひょこっと柱の陰から顔を出してきた。

 

「………可愛い…」

 

ちょっとしか見えないが、間違いなくかわいい…何者か。

 

(ん?)

 

よく周りを見渡すとあちらこちらに隠れている気配が。

 

「えっと…んんっ…」

 

(俺は…じゃない、私は女の子。 だから優しく、穏やかに…)

 

「どうしたの? あなた達は、誰?」

 

(んあぁぁぁ!! なんか激しく違和感!! 早めに慣れないと…)

 

「隠れてないで顔を見せて?」

 

『……』

 

「ん?」

 

なにか意志のようなもの?を感じる。

 

ふむ…。

 

(心の中で遠くに届くように…かな?)

 

もう一度。

 

「どうしたの? 良ければそこから出てきてほしいな?」

 

『…!』

 

お? 反応があった?

 

ひょこひょこ。という感じで小さな…人?のようなものが出てきた。

 

(なにこれ本気でかわいい…もうぎゅうってしたい…!)

 

外からは冷静に見える様、その子たちに警戒されない様に落ち着いた風を装う、が。

 

心の中は跳ね回っている…!

 

そんな葛藤は置いておいて。

 

やがて目の前に辿り着いたその…小人?は恐る恐るとこちらを見上げてくる。

 

「こんにちは。 あなたは…えぇっと…」

 

『…秋雨さん?秋雨さん?』

 

(うはっ? なにこれものすごく、なんていうか…心が幸せ!!)

 

「…っと。 えっと…ん。 そうだよ? 俺…じゃない、私は秋雨だよ?」

 

そう小人に答えると。

 

『秋雨さん!秋雨さん!』

 

『起きた!起きた!』

 

『元気?痛いトコ、ない? 苦しいトコない?』

 

(心が…もう幸せすぎる…!)

 

「ん? うん、大丈夫だよ? 痛いところも苦しいところもないよ。 ん、っと。 ありがと。 心配してくれて!」

 

笑顔を向け、心配してくれた彼女たちにお礼を云う。

 

『秋雨さん? 動ける?動ける?』

 

「えっと? うん。 こんな感じだよ?」

 

云いつつ、腕を回したり体を捻ったりして動いて見せる。

 

『違う。違う。 からだ、動く?』

 

「身体? うん、動くけど?」

 

『ううん。 そっちじゃなくて。 駆体(からだ)の方』

 

駆体(からだ)って…? …んっ?」

 

彼女の言葉を聞いた時、また何かが頭の中に何かが浮かぶ。

 

「……ん」

 

『秋雨さん? 大丈夫?大丈夫?』

 

(これは…自分の…艦体の動かし方?)

 

「…ん。 なるほど、ね」

 

『秋雨さん?秋雨さん?』

 

心底心配そうな声をしてオロオロとしている小人さん。

 

不謹慎ながらもやはりかわいい…。

 

「ごめんね? 大丈夫。 それと、駆体(からだ)の方けど。 大丈夫だと思うよ? 動くと思う」

 

安心させる様に彼女たちに笑顔を向け、小さく頷いてあげる。

 

『ほんと?ほんと? 大丈夫?』

 

『秋雨さん。 無理してない?ない?』

 

「うん、大丈夫! それで…えっと…あなたたちは…?」

 

『ん? わたしたちは秋雨さんのだよ?だよ?』

 

「えっと?」

 

『ん?ん?』

 

「…んー…あ」

 

もしかして…。

 

「あなたたちは…私の妖精さん?」

 

『そうだよ!だよ!』

 

『秋雨さんの!秋雨さんの!』

 

「そっか。 それじゃぁ、改めて。 よろしくね?」

 

『うん!!』

 

「じゃぁ、ここでこうしてても仕方ないし。 どこか…え?」

 

(何か…聞こえて…? 向こうの方。 距離は…)

 

『緊急警報!緊急警報!』

 

『距離2,000、2時方向に深海棲艦の反応ある! その付近に友軍艦の反応もある! 数1!』

 

「深海棲艦…!?」

 

然も艦娘もいる!?

 

「助けないと!」

 

『秋雨さん。 動く?動く?』

 

『駆体は大丈夫! 動く!動く!』

 

『秋雨さん! 早く!早く!』

 

「ん! それじゃぁ妖精さん! 行くよ!!」

 

『がってん!』

 

号令を掛けて、即座に艦体がとんでもない速度で海を駆ける。

 

(すごい…これが秋雨の…ううん。 《私》の性能…!)

 

(速く…もっと速く…!)

 

なにかが私を急かす。

 

はやくしないと、はやく…助けないと…!!

 

 

 

 

 

one side  in

 

 

「くっ…!? 囲まれた!?」

 

「天龍さん! 大丈夫ですか!?」

 

「時雨! 後ろっぽい!」

 

「時雨姉さん! 危ない!!」

 

「春雨!? ダメ!!」

 

黒髪を三つ編みにした少女に異形が砲を向け、撃ち放つ。

 

黒髪の少女はそれを避けようとするが間に合いそうもなく。

 

それが放たれる瞬間。

 

桃色の髪をサイドテールにした少女が身を投げ出すと同時、相手に向け魚雷を撃つ。

 

「あう!?」

 

直撃。

 

「春雨!?」

 

「なんて無茶を!!」

 

「天龍さん!下がって下さい!!酷い怪我なんですから!!」

 

「春雨!春雨ぇ!!」

 

その異形。 深海棲艦・重巡リ級eliteの砲撃を受け、白露型駆逐艦五番艦《春雨》は甚大なダメージを受ける。

 

が、重巡リ級に春雨の放った魚雷が命中。 撃沈する。

 

春雨は辛うじて轟沈はしていない、が。

 

恐らく中破、いや。大破しているだろう。

 

意識はなんとか保っているが、正直いつ沈んでもおかしくないほどの状態。

 

「春雨! 早く逃げるっぽい!! こっちに来るっぽい!!」

 

「夕立! ダメだ!! それ以上は危険だよ!!」

 

「時雨、どうにか出来ないかしら!?」

 

「それはっ…」

 

「姉さん…」

 

黒髪三つ編みの少女、白露型駆逐艦二番艦《時雨》が何かを云いかけるが、遮る様に春雨が言葉を発する。

 

「姉さん…ここはわたしに任せてください…」

 

「春雨…!?」

 

「なに云ってるの? 春雨も一緒に逃げるっぽい!!」

 

同じく白露型三番艦《村雨》、四番艦《夕立》が必死に声を掛ける。

 

「春雨! お前…死ぬ気なのか…!?」

 

天龍型軽巡洋艦一番艦《天龍》がそれに気付いて慄然とする。

 

「ごめんなさい…わたしはもう…」

 

「春雨!春雨ぇ!!」

 

「夕立! ダメだって!! 敵がどんどん近付いて来てる! これ以上ここに留まってたらみんな沈んでしまう!!」

 

「時雨! 春雨が死んじゃっても良いの!? 夕立は春雨を助けたい!!」

 

「分かってる!! 僕だって助けたいさ!! でも…でも!!」

 

「夕立姉さん、ごめんなさい…時雨姉さん、夕立姉さんを頼みます。 村雨姉さん、いつも優しくしてくれて、嬉しかったです。 天龍さん、司令官に春雨は奮戦しましたと…お伝え下さい」

 

「春雨…! …すまない…オレが至らないばかりに…!!」

 

天龍は部隊の旗艦を務めている。

 

決断しなければならない時には、躊躇はしてはならない。

 

それが例えどれほどの苦渋の決断としても。

 

「時雨、夕立を押さえておいてくれ。 村雨、オレを曳航してくれ。 ……撤退する! 全艦、撤退!」

 

「分かり…ました…!!」

 

「時雨…。 …村雨、了解…」

 

「時雨! 退くっぽい!! 夕立は春雨を…!!」

 

「いい加減にしないか! 春雨がどんな思いでいるか! 夕立だって分かるだろう!? 春雨の想いに答えなくてどうするのさ!!」

 

「でも! でも…!!」

 

「…春雨。 ごめん…。 僕たちは必ず帰って、この事を提督に報告する。 春雨…助けられなくて…ごめんっ…」

 

「時雨姉さん…またいつか…」

 

「うん…また、いつか…!」

 

「よし、全力でこの海域を離脱する!」

 

「「はいっ…!」」

 

「春雨ぇ―――!!」

 

 

one side  out

 

 

 

「まだ!? まだなの!?」

 

『もう少し! 感応範囲まであと3分!』

 

(くっ…速くしないと…! 間に合わない!!)

 

なにがここまで私を焦らせるのか。 はっきりとは分からない…。

 

でも急がないと取り返しのつかないことになる。

 

それだけははっきりしてる。

 

私が私で居られなくなる。

 

それだけの事態を、心の奥底から感じている。

 

(私は《あの娘》を! 絶対に守らなきゃいけないの!!)

 

『感応範囲に到達! サークル・レスポンサー、エンター!』

 

『レスポンサー、パターン・ブラック、アクティブ・ナウ! 及びパターン・サンドリオン、アクティブ・レベル・ロウ!! 推定損傷度、フェイタル・フェイズ!』

 

「くっ!? ここからじゃ…!!」

 

『秋雨さん! アームド・フォーム、起動して!』

 

「アームド・フォーム!? ん…! こう!?」

 

心の中にある歯車を噛み合わせ、動かすイメージを!

 

すると何やら駆体が微かに光り、新しい《感じ》が生まれる。

 

『アームド・フォーム起動! アフェリエス(A)オプテイン(O)フィールド(F)、展開完了!!』

 

その瞬間、駆体()の周囲に何か膜の様なものが広がり包み込む。

 

そしてまた《何か》が頭を過る。

 

「…ん! アイフェオン・システム、ドライブ! 弾種選択・高速度高精度追尾弾(High-speed high-precision tracking crusta)! 目標、全敵性艦!」

 

『全敵性艦捕捉完了! 全弾装填!!』

 

「全弾! 撃て(イグニス)!!」

 

言葉と同時、周囲の所々で膜が歪み《砲弾》が形成され、刹那の後。

 

もの凄い速度で放たれる。

 

『弾着、確認です!!』

 

『全敵性艦、撃沈確認しました!』

 

『サンドリオン、辛うじて健在です! 脅威対象の存在、ありません!』

 

「……はぁ、間に…合った?」

 

張り詰めていた気が抜ける。

 

(良かった…何とか…助けられた…)

 

膝が笑っている。 余程緊張していたのだろう。

 

「…っと、それよりも! 艦娘の様子は!? 急いで接舷して!!」

 

『急ぐ!急ぐ!』

 

「お願い…! 急いで!」

 

(生きてて…!!)

 

 

 

 

one side   in

 

 

 

秋雨到着の少し前…

 

 

「こ、のっ…!」

 

(何とか…姉さんたちが離脱するまでは…!!)

 

先の戦闘で破壊された主砲はもう機能せず。 魚雷発射管はもう粉々に砕けている。

 

艦体で無事な個所は一つもなく、むしろ沈んでない事が奇跡ですらある。

 

「くっ!? 当たりません…!!」

 

奇跡的な回避を続けるが、機関はすでに悲鳴を通り越し焼き切れる寸前だ。

 

…が。

 

奇跡がいつまでも続く事はなく。

 

とうとう機関が機能を停止した。

 

(そ、そんな…!?)

 

まるでそれを待っていたかの様に深海棲艦が先程とは打って変わった動きをしだす。

 

「くっ…!?」

 

確実に止めを刺すかのように、全艦で囲み始める。

 

(…ふふ、ここまで…ですね…。 姉さん…わたし、頑張りましたよ…?)

 

(もう…大丈夫だよね…姉さん…)

 

(また…いつ…か…ま、た…)

 

その瞬間。

 

周りの深海棲艦が前触れもなく爆発する。

 

「…え?」

 

全ての深海棲艦が同時に何者かの砲撃を受けた風に見える。

 

(一体…何が…?)

 

辺りを見回すが、周囲には何も居ない。

 

というより。

 

(…う…意識、が…。 助けてくれたのに…もう…わ…た、し…)

 

そこで春雨は意識を失った。

 

 

 

one side  out

 

 

 

 

 

(えっ…? 気配が…消え…!?)

 

『秋雨さん! 接舷できた!!』

 

「分かったわ! 私は向こうに行って来る! えっと、駆体の方、修理できる!?」

 

『勿論です! 任せてください!』

 

『修理!修理!』

 

『修理修繕お手の物!』

 

『ピカピカにするよー!』

 

「それじゃお願い! 私は艦娘の様子を見てくるね! その間駆体の方お願い!」

 

『行ってらっしゃい!』

 

(まだ沈んでない…だから…生きてる筈!! お願い…生きてて…!!)

 

指揮室から飛び出て全力で駆けだす。

 

甲板に辿り着き、《彼女》の駆体へ、飛び移る。

 

難なく飛び込めた。

 

(何処に居る? …多分、そこ…!)

 

先程感じた感覚はもう殆ど感じない。

 

でも僅かに、まだ感じる。

 

本当に。 僅かに。

 

(急がないと…!)

 

やはり全力で走りだしまるで引き寄せられる様に、辿り着く。

 

(あそこ! あの扉の向こうに!)

 

ぶつかる勢いのままに開け放つ。

 

「あ…!」

 

(居た…春雨…)

 

倒れている彼女を見て瞬間、立ち尽くす。

 

が、すぐさま立て直し駆け寄る。

 

そばに膝を着き、ゆっくりと抱き起す。

 

(息は…うん、大丈夫。 良かった…ホントに…間に合った…)

 

多分駆体を治せば大丈夫な筈。 今は弱弱しいけど艦娘は駆体と密接につながっている。

 

だから艦娘本体は怪我をしてなくても駆体にダメージがあるとそれに影響されて痛みを感じたり意識を失ったりする。

 

故に本人が怪我をしてなくて、駆体にのみダメージがある場合は駆体の修理が終わればまた元気になる…筈。

 

(大丈夫…駆体はまだ沈んでない。 それに妖精さんたちが絶対に駆体を治してくれる。 だから大丈夫。 私は春雨が苦しくない様に、傍にいて楽な姿勢をさせて…ってどうすれば? えぇっと…あ)

 

ふと浮かんだのはよくある風景。

 

意識を失った人に膝枕をする、というもの。

 

(と云っても、私は経験ないけど…)

 

効果はあるか分からないけど、取り敢えずやってみる。

 

(まずは膝を…そして、頭を…)

 

やってはみたが。

 

(これで良い…のかな? 辛くないかな?)

 

改めて彼女の様子をうかがう。

 

応急修理が上手く行ってるのか、最初見たときの苦しさは軽減されてるみたい。

 

呼吸もゆっくり、穏やかになってきている。

 

(流石だね…ありがと、みんな)

 

「ふぅ…良かったぁ…」

 

そう言葉を云った瞬間、体中が震えた。

 

「あ…」

 

安心したのか、何なのか。

 

一滴、涙が零れた。

 

それは春雨の頬に落ちる。

 

急いでそれを拭おうと手を伸ばす、と。

 

「ん…あ…」

 

その小さな口から声が漏れる。

 

「っ…!? 春雨…?」

 

「ん…う…」

 

意識が戻ったのだろうか?

 

瞼が震え、ゆっくりと瞳を開く。

 

「………」

 

私は何も云えず、ただそれを見つめる。

 

「…う…ここ…は?」

 

やがて意識がはっきりとしてきたのだろう。

 

徐々に体を起こす。

 

「…? えっと…あなた…は?」

 

「…ん。 あーっと、ん。私は春雨型広域戦術駆逐艦三番艦《秋雨》です。 …初め、まして」

 

《私》と《彼女》は初対面だ。 それが何故か…悲しく感じてしまい、言葉に少しだけ詰まる。

 

「あなたは…?」

 

「あ、はい。 私は白露型駆逐艦五番艦《春雨》で…す? あれ? 《春雨型》?」

 

「それは、また後で。 少し待ってて?」

 

「あ、はい…。 …?」

 

一応断りを入れ、妖精さんに声をつなぐ。

 

〈妖精さん? そちらはどんな感じですか?〉

 

『秋雨さん! こちらは完全洋上修理が終わりました! 駆体は完全駆動する筈です!!』

 

『秋雨さん? 艦娘は? 大丈夫?大丈夫?』

 

〈うん、艦娘は無事だよ。 今目を覚ましたところ〉

 

『良かった!良かった!』

 

『わたしたち、頑張ったよ?よ?』

 

〈うん! ありがとう! あとでご褒美あげるね?〉

 

『やった!やった!』

 

『ご褒美!ご褒美!』

 

〈ふふっ…それじゃ後でね? …とそうだ! 一応曳航出来るように準備しておいて?〉

 

『りょーかーい!』

 

妖精さんとの通信?を終え、春雨に声を掛ける。

 

「えっと、体の様子はどう? それと駆体(からだ)の方も?」

 

「あ、はい。 …特に異常はないです。 …というより、むしろ体が軽いというか…なんでも出来そうというか…?」

 

「そう? なにかしたのかな? 妖精さん…」

 

私達は首を傾げてしまった。

 

さっき聞いておけばよかったかな?

 

「あ、でも嫌な感じはしないです! こう…その。 気持ちがいいというか…なんて云ったらいいのかな?」

 

「…ん。 なら良かった。 それじゃぁ立てる?」

 

「はい。 大丈夫です! …あ」

 

「ん? なにかしら?」

 

「あ、あの! 助けて頂いて、ありがとうございます!! 最初に云わなきゃですよね…すみません…」

 

「あぁ、ううん。 大丈夫。 助けられて…本当に良かったよ…」

 

「…はい」

 

「それで、春雨の所属は? 送っていくよ?」

 

「え? でも…」

 

やっぱり助けられっぱなしというのは気になるのかな?

 

「まぁまぁ。 乗りかかった船…って私たちが船なんだけどね…。 まぁそんなわけだから。 折角助けたんだから最後まで面倒を見させて?」

 

「…はい、それではお願いします」

 

と、丁寧なお辞儀をしてくれる。

 

「ん! それじゃ海図を借りれる? 引っ張ってくから」

 

「そ、そこまでは…!」

 

「ね? お願い?」

 

「分かりました…えっと…海図はそこにあります」

 

「ありがと。 んっと…?」

 

海図を眺める。

 

春雨が自身の所属する母港を教えてくれ、先ずはそこを目指す。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…何とか…なったね…これから私はどうなるのかな…?」

 

(まずは無事に送り届けないと! 話はそれから! だね!)

 

「錬律機関、起動! 目標、美桜坂鎮守府! 巡航速度を維持、同行艦に配慮を最優先に! 発進!」

 

 




お読み頂き有難う御座います!

取り敢えずこんな感じですが如何でしたでしょうか?


早速空想科学ものが…汗w


一応解説をw


サークル・レスポンサー
云っちゃえば電探的なやつですw
性能は後々w

アームド・フォーム
春雨型広域戦術駆逐艦各艦に搭載されている謎技術の兵装。
それぞれに特徴がある。
やはりこまいのは後々w

アフェリエス・オプテイン・フィールド(A・O・F)
簡単に云えば便利空間。
各兵装がこの膜により展開され、全周囲への攻撃が可能。
ついでに云うとAOFとサークル・レスポンサーとを同期させることにより感応範囲の全ての敵に同時対応が可能である。

サンドリオン
艦娘の事
この作品内の一部で活用
本来の意味は、シンデレラの事…らしい
色の名称にもある。

春雨型広域戦術駆逐艦
何処かでありえたかもしれない駆逐艦の一つの系譜。
一番艦《春雨》・二番艦《夏雨》・三番艦《秋雨》・四番艦《冬雨》の四隻。
船体は通常の駆逐艦より大きく、軽巡以上重巡以下程度で一つお願いします。
各艦にアームド・フォームが搭載されており、それぞれに機能が違う。
ただ、どの艦も単艦で多数の敵艦との戦闘を行うことを前提としており、所謂駆逐艦の皮をかぶった何かである。

広域戦術駆逐艦
細かい事は云いっこなしw

錬律機関
不思議性能の謎機関。
性能等はやっぱり後々w


とまぁ、こんなとこですかねw

後々機会があれば枠を作って纏めておきますw


突っ込んだら負けですんでw

良しなにw

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