紅美鈴には秘密がある   作:テッソルムリア

7 / 31




シリアスはしばらく休みだと言ったな。あれは嘘だ。



「私だって悪魔ですから」

side メアリー

 

―――紅魔館 大図書館―――

 

「さて、これからどうしようか」

パチュリーは秘密を知ってしまったので(ゆかりんのせいな気もしますが)運命共同体になって貰いましたけど。

別にみんなに言う必要はありませんね。ネタも出来なくなっちゃいますし。

パチュリーは以前からネタへの反応がイマイチだったのでいいでしょう。

 

「そうね……練習は継続するとして、少しづつでも慣らしていくべきね」

「それなら、まずは一番反応が良かったフランドール・スカーレットの所に行ってみたらどうかしら」

そう言うパチュリーとゆかりん

 

そうですね。ちゃんと話していかないと良くならないですよね。

まずはEasyモードってことでしょうか。

 

「そうだね。じゃあ最初はフランの所に行ってみるよ」

「なら良い時間だし、私はこの辺りでお暇させていただくわ」

どうやらゆかりんはもう帰るみたいですね。

 

「またね~」

「ええ、また」

「……」

流石にパチュリーは無言ですね。まぁおいおいどうにかなるでしょう。

私も行くことにしましょうか。

 

「それじゃあねパチュリー。色々ありがとう」

「……ええ、いってらっしゃい」

 

さて、まずはフランと何を話しましょうかね~

 

 

 

 

 

 

side パチュリー

 

メアリーは実に軽やかな足取りで大図書館から出て行った。

その後ろ姿を見やったあと、一つの本棚に視線を向ける。

 

「……出てきなさい、小悪魔」

「……あれ、バレちゃってましたか」

「これでも契約者よ。あまりナメないことね」

「あはは、パチュリー様には敵いませんね」

そういって苦笑を浮かべながら出てくる小悪魔。

 

「……相変わらずそういった小細工は得意なのね」

「それだけが取り柄なので」

若干自嘲気味に言う小悪魔だが、その技術は目を見張る物がある。

あのスキマ妖怪でさえ欺く隠密術は、卓越した一つの技と言えるでしょうね。

私自身、契約者でなければ気付くことは出来なかったと思うわ。

その意味ではとても優秀な使い魔と言える。

 

「……今度は何を企んでいるのかしら?」

「……あはは。企んでいるなんて……滅相もないですパチュリー様」

……この性格でなければ、なのだが。

 

「……そう言うところも相変わらずね」

「私だって悪魔ですから」

開き直ってそう言う小悪魔。

何というか小悪魔は……とても()()()()()悪魔なのだ。

それこそレミィよりもずっと。

もちろん指示すればしっかり仕事は行なってくれるし、普段はそんな様子は見られない。

しかし一旦スイッチが入ると途端に悪魔的な面が顔を覗かせる。

どうなるかというと、自分の心に従って愉悦を求めるようになるのだ。

それがどんなものかは決まっていないが、大抵ロクなものじゃない。

止めた所で止まるものでもない。まったくはた迷惑な使い魔である。

 

「……あんまり余計なことするんじゃないわよ」

「分かってますよ。限度はわきまえてますから」

それでも一応ストッパーはかけておく。

この小悪魔、自分にもとばっちりが来ないように上手いこと抑えるので心配はいらないでしょうけど。

我が従者ながらしたたかなものだと思う。

 

おそらく最近の様子から見て、ターゲットはメアリー・スカーレットかしらね。

先ほど無理矢理仲間にされた恨みもあるから本人には言わないでおきましょう。

私の怨念もまとめてくらうが良いわ。

―――と、いつもならここで話は終わって傍観に移るだけなのだが今日は違った。

 

「……パチュリー様は気付きましたか?」

「……何にかしら」

小悪魔は妙に頭が回る時がある。大抵は悪ふざけに対してだがはたして……?

 

「彼女の言動の不自然さにですよ」

「……彼女とはメアリーのことかしら」

まさかこの子も感づいたのかしら。あり得ない話ではないけど。

 

「そうです。メアリー様の話にはあるものが欠落しています」

「……それは?」

これは間違いないわ。小悪魔も気付いたようね。

 

Why(なぜ)? つまり理由ですよ」

「理由は一応言ってたけど」

「自分の楽しみの為にネタをやる。なるほど、分かります。それを知られたからパチュリー様も巻き込む。まぁまだ分かります。しかし肝心の話がないではないですか」

「……」

「なぜ彼女は自分が()()()()()()()をこんなにも長く隠していたんでしょうか」

「……」

「ネタの為?いや違うでしょう。現にこれからもネタには走るようですが、今は積極的に紅魔館の皆さんに自分を知ってもらおうとしています。……今までずっと隠してきたのに。八雲紫にバラされてしまったから仕方なく行動している?確かにそれなら今の状況には当てはまりますが、結局隠していた理由は明かされていません」

「……確かにそうね」

「一体彼女は何を隠しているんでしょうか。何故言わないんでしょう。何故門番として過ごしてきたんでしょう。……とても興味は尽きませんね」

そう締めくくる小悪魔。

……今 小悪魔が言ったことは私も違和感を感じていた所だ。

私はメアリー・スカーレットとして、紅魔館に馴染んでいく間に引き出せればと思っていたけど……

 

「フフフ……久しぶりに腕がなりますね……」

……小悪魔はそんな悠長に待つつもりはないようだ。

ここは小悪魔に託してみるのも一興か。

うまく調べられれば御の字だし、完全に分からなくとも手がかりくらいは掴めるだろう。

 

「……ま、適度に頑張ってちょうだい」

「仰せの通りに。我が主」

そういってスルリと大図書館を抜け出す小悪魔。

 

 

 

 

そうして静かな空間が訪れる。

「貴女は何者なのかしらね。メアリー・スカーレット……」

パチュリーが呟いた言葉は、一人きりの大図書館にただ吸い込まれていくだけだった。

 

 

 

 

 




このお話の小悪魔はトリックスター的な役割を担うかもしれませんね。
吉と出るのか凶と出るのか





▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。