紅美鈴には秘密がある   作:テッソルムリア

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「幻想郷有力者会合(一部)」

みなさんこんにちわ。稗田阿求です。

今日は我が稗田家に幻想郷の有力者たちが集まることになっています。

 

というのも以前、幻想郷の新勢力の代表をお招きして、対談をしたご縁から声がかかったんです。

内容は今、幻想郷で噂になっている吸血鬼姉妹の母親。その顔合わせのようです。

かく言う私も、この機会に幻想郷縁起への加筆をさせて貰おうと思っています。

 

参加者は前回の対談と同じく八坂神奈子さん、聖白蓮さん、豊聡耳神子さんに加え、八雲紫さんと件の吸血鬼となっています。今回は顔合わせと私の個人的な聞き取りだけなので、司会の魔理沙さんはいません。

 

一介の門番から、突如パワーバランスの一角である紅魔の母となった人物。

一体どんな人物なのか今からワクワクしています。

早く皆さん集まらないでしょうか。

 

「ごめんくださーい」

 

あ、誰か来たみたいですね。早速お招きいたしましょう。

 

 

 

 

 

 

side レミリア

 

―――紅魔館―――

 

「……何だこれは?」

「手紙ね」

「そんなことは分かっている!この内容は何だと言っているんだ!」

「まぁ大変。レミィったら耳まで真っ赤よ。今日はもう休んだほうがいいんじゃないかしら」

「あまり今の私を茶化さないほうがいいぞパチェ……」

そういって私はパチェを睨みつけるが、相手は気にした様子もない。

 

私達の話題に上がっていた手紙。これは八雲からのものだ。

……が、その内容が問題だった。

 

「『貴女の母親は預かったわ』だとっ……!言うに事欠いてそれだけかっ!」

「しかもご丁寧に人里の稗田家で行う顔合わせの日程も同封されてるわね」

手紙が入っていた封書をひっくり返しながら、静かにパチェがそう言う。

 

「……今度こそ黙って見ているわけには行かないぞ!私は稗田家に向かう!」

「待ちなさいレミィ」

「止めるなパチェ!確かに罠の可能性もあるが、いくらパチェの頼みでも今度ばかりは……」

「そうじゃないわよ」

 

 

「私も行くわ」

 

 

 

 

 

 

side 神奈子

 

私は今、人里の稗田家にいる。

というのもこの前の宴会で一騒動起こした吸血鬼が、顔合わせを望んでいると通達があったからだ。

宴会で奴が話した時、私は少し離れた所にいたが、あの威圧感はハッキリと感じた。

……奴の力は強大だ。

だからこそ、こちら側に利する存在なのかそうでないのか見きわめねばなるまい。

人里で、しかも他の勢力もいる状況なら滅多なことにはならないだろう。

そう判断したからこそ赴いたのだ。

 

さて、この場にはすでに私の他に、聖白蓮、豊聡耳神子、そして御阿礼の子が揃っているが肝心の主役二人が見えない。

呼びつけておいて待たせるとはとんだ奴らだが、幻想郷では案外普通かもしれないな。

 

そんなことを考えていると、ようやくお出ましになったようだ。

さてじっくり吟味させて貰おうじゃないか……

 

―――そう思っていた私の目にまず飛び込んできたのは……金、だった

まるで金糸もごときその艶やかさは、見るものを惹きつけて止まない美しさを讃え。

対比するかのような漆黒のドレスは、吸い込まれるかのような深さだ。

隣に立つ八雲紫も金髪のせいか、姉妹のように見える。

その場の全員、身動きを止め、口を出せずにいた。

 

「……遅れてしまい、申し訳ありません」

その鈴が鳴るような声にハッとする。

一番最初に応対したのは御阿礼の子だった。

 

「い、いえ、それ程待っておりません。どうぞお座りください」

「失礼します」

そう言って空いていた所に座る二人。

気を取り直した御阿礼の子が話を進める。

 

「えー本日はお忙しい中お越し頂き、誠にありがとうございます。本日はお三方とメアリー・スカーレットさんの顔合わせということでお集まりいただきました」

そこで少し間をおき、私の方を見る御阿礼の子。

 

「それでは八坂様から順番に紹介をお願いします」

一番手か。まぁ普通にいかせて貰おう

 

「八坂神奈子です。妖怪の山の神社を経営しています。どうぞよろしく」

こんなものだろうか。次は聖白蓮か。

 

「聖白蓮です。命蓮寺で住職をしています。よろしくお願いします」

表面上は穏やかな感じだね。最後に豊聡耳神子はどうかな。

 

「豊聡耳神子です。道教の仙人をしております」

こっちも見た目は普通だね。何考えてるかは分からないけど。

ん?ああ御阿礼の子と八雲紫も一応やるのか

 

「ひ、稗田阿求です。九代目稗田家当主をしています。本日はよろしくお願いします」

「じゃあ私も一応。八雲紫です。どうぞよしなに」

……さて、最後の大取があいつか。どうくるか。

 

「……メアリー・スカーレットよ」

……

……

……それだけか?

何とも反応しづらい奴だ。見ると他の参加者(八雲紫以外)もなんとも言えない顔をしている。

 

「……この後はどうするんだ?まさかこれで終わりじゃないでしょう?」

もしそうだったら色々と拍子抜けだ。

 

「あ、この後はお三方も含め、幻想郷縁起の加筆にご協力頂きたいのですが……」

御阿礼の子がそう言う。

ふむ……まぁその中で分かることもあるだろう。

私含め、聖白蓮と豊聡耳神子も参加を表明する。

 

「あら、それならちょうどつまむのにいいものを持ってきたのよ」

そう言って懐から何か取り出す八雲紫。

サンドイッチか?

……正直あいつの持ってきたものは胡散臭くて堪らないのだが。

ま、流石にこの場で何か入っているものは出さないだろう。

軽く見てみたがその痕跡もないようだしね。

 

「それなら一つ頂こうか」

私が手に取るのを見て、聖白蓮と豊聡耳神子も手を伸ばす。

私は毒見役では無いのだがな。

……うん、味は普通に美味しいな、

 

「……本当に食べてしまったのかしら?」

「何……?」

唐突にそう言う八雲紫。

まさか本当に何か入っていたのか?

 

「フフフ、冗談よ」

「そうよ。こんな所で倒れられても困るじゃない」

口元に扇子を当てながらそう言う八雲紫とそれにツッコむメアリー・スカーレット。

まったく……あいつらは漫才でもやっているのだろうか。

その時まではそう思っていた。……メアリー・スカーレットの、あの言葉を聞くまでは。

 

 

「腹が減っては戦は出来ぬって言うから持ってきたのに」

 

……!

その言葉ににわかに緊張が走る。

どういう意味だ……?まさかそのままの意味ではないだろう。

今この場で…人里で戦争を起こすほど愚かなはずはない。

ではそういった心持ちでかかってこいという意味?

馴れ合うつもりはないということか。

そうなった場合、こちらは三、あちらは二か……

自然と聖白蓮と豊聡耳神子をこっち側に数えていたが、それがあながち間違いとも思わない。

数の上ではこちらに利がある……

いや、待て……本当にそうか?

確か最初は西行寺幽々子も来るという話ではなかったか。

彼女はどこにいる?

 

「……そういえば西行寺幽々子はどうしたのかしら。彼女も来ると聞いていたけど」

「……ああ、幽々子なら別件があると言っていたわ」

 

……!

やられたっ……!

おそらく西行寺幽々子はバックアップ要員……

先ほど人里で戦争を起こすはずがないと考えたが、そもそも前提が間違っていた……

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これではカゴの中の鳥……逃げ出すことすら出来ない!

豊聡耳神子も気付いたのか表情を固くしている。

どうする…どうすればいい!

 

 

 

「待ちなさい」

 

その時思ってもみなかった声が聞こえた。

 

「失礼だけど、呼びかけても返事がなかったから上がらせてもらったわ」

そう発したのは紅魔の魔女。

何故彼女がここに……?

そう思う間に彼女は部屋に入るとこう言った。

 

 

「その姿で会うのは初めてね、メアリー・スカーレット。私はパチュリー・ノーレッジよ」

 

 

 

そうして魔女と吸血鬼の視線が交錯した―――

 

 

 

 

 




パチュリーとメアリーが交差するとき、物語は動く(禁書風)

冗談はこれくらいにして真面目な話、パッチェさんはこの物語では珍しい、シリアスを引っ張って来れる人物なので重要です。
彼女の活躍に期待しましょう。




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