紅美鈴には秘密がある   作:テッソルムリア

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遂に次話から最終章へと突入します。
なのでギアをあげていくことにしました。

覚悟はいいか?私は出来てる(震え声)





「そして動き出す色々な」

―――紅魔館 謁見の間―――

 

 

side レミリア

 

 

最近はめっきり使わなくなった謁見の間。

以前使ったのはパチェとお母様について話し合った時だったか。

そんなに時間は経っていないはずなのに、随分と昔のことのように感じるな。

あの時、深刻そうにパチェと話し合っていた私が、今の私を見たら何というだろうか………

 

 

今この場にいるのはあの時と違い私一人―――ではない

 

 

「ねぇーお姉様?一体何があるっていうの?」

「もう少し待ってなさい。あと二人………いや、一人来るから」

「はーい」

 

 

そう、今ここにはパチェではなく、我が妹のフランがいる。

―――もちろんそれは、これから起こることに大きく関わっているからだ。

対するパチェは、今頃八雲紫たちと共に行動しているだろう。

だからこそ私たちは私たちの役目を果たさねばな。

 

 

そこまで考えた時、謁見の間の重厚な扉がギィィ…と音を立てて開き始めた。

 

 

「あれ?誰か来たみたい。お姉様が言ってたもう一人?」

「………そうね」

 

 

そうして完全に開ききった扉の先にいたのは――――――

 

 

「あれ?お母様?」

「……………」

 

 

不思議そうな声をあげるフラン。

そこに立っていたのはにこやかに微笑むメアリー・スカーレットだった。

 

 

「なんだ。お姉様が言ってたのはお母様のことだったのね。それなら勿体ぶらずに教えてくれればよかったのに」

そういって自身も微笑みながらメアリー・スカーレットに近づいて行くフラン。

扉の前に立ったままだったメアリー・スカーレットも微笑んだまま近づいて来た。

 

 

そしてフランが抱きつこうとした瞬間――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガキンッ!

 

 

 

 

()()()()()()()手を伸ばしていたメアリー・スカーレットの間に、何かが割って入った。

 

 

 

 

「―――――――え?」

何が起こったのか分かっていない様子のフラン。

そんな我が妹を尻目に、私は割って入った影に声をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「随分と遅かったな?また、居眠りでもしていたか」

「あはは………こんな時くらい勘弁して下さいよ()()()

 

 

 

紅魔館門番、紅美鈴の姿がそこにあった。

 

 

 

「え?え?お母様がいて美鈴もいて………?」

「申し訳無いのですがフラン様。今は一刻を争います。まずは――――」

 

 

混乱しっぱなしだったフランに声をかけると、途端に鋭い目になる紅美鈴。

その目線は、メアリー・スカーレットへと向かっていた。

 

 

「アレに対処してしまいましょう」

 

 

 

 

 

その言葉が皮切りとなったかのように、微笑みを浮かべたまま再びフランへと飛びかかるメアリー・スカーレット。

先ほどと同じように美鈴がそれを受け止め、動きを止める。

今度はそこに、私が一撃叩き込んだ。

 

 

 

 

 

 

入ってきた扉の辺りまで吹っ飛んだメアリー・スカーレット。

その隙に美鈴が早口で情報を伝達する。

 

 

「紫さんたちとパチュリー様は既に待機しています!アレをフラン様に近づけず、紫さんたちの元へと追いやってしまえば取り敢えず一段落です。その後、お嬢様は異変の開始をお願いします!」

 

 

そう言うやいなやメアリー・スカーレットへと向かっていく美鈴。

未だ固まったままのフランをチラッと確認してから、私もメアリー・スカーレットへと走り出した。

 

 

 

 

 

さて、一仕事始めるとしようか。家族のために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――霧の湖 湖畔―――

 

 

 

「―――つまりなにか?メアリー・スカーレットは”病”に侵されている。それを封じ込め、隔離するために生まれたのが”紅美鈴”という人格だと」

「そうね。正確には病ではないけど、侵されてるのは確かね。いつかはどうにかしないといけないと思っていたけど、思いがけずメアリー・スカーレットが前面に出てきてしまった。あの宴会によってね」

「お前さんが暴露したんだろ」

「そうとも言うわね。とにかくメアリー・スカーレットとしての人格が出てきてしまったが故に、封じ込めていたものも出てきかけてしまった。幸い紅美鈴としての人格が消えた訳じゃないから、すぐさまどうにかなる訳じゃなかったけどね。でもそれも時間の問題だったから………」

「私たちを集めたということね」

「そういうことよ」

 

 

霧の湖の畔には、五つの人影があった。

妖怪の賢者    八雲紫

華胥の亡霊    西行寺幽々子

月の頭脳     八意永琳

山坂と湖の権化  八坂神奈子

動かない大図書館 パチュリー・ノーレッジ

 

 

その五人は一箇所に固まりつつ、話を交わしている。

 

 

「まったく。こっちはたまったものではないわね。お陰で余計な知識ばっかり増えてしまったわ」

「あら?貴女も意外とノリノリだったじゃない」

「………そんなことないわよ」

 

 

不満げに言葉を漏らしたパチュリー・ノーレッジ。

しかし直ぐに西行寺幽々子によって茶化されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――紅美鈴が封じ込めるための人格だというならば今、紅魔館にいる紅美鈴は何だ?何故、紅美鈴とメアリー・スカーレットが別々に存在している?」

 

 

先ほどから八雲紫を質問攻めにしていた八坂神奈子が、新たな疑問を呈する。

 

 

「あれはね、残り滓みたいなものよ。侵食しているものの割合が大きくなっていった結果、本来なら塗りつぶされているところを弾き出された……………というより自分で飛び出してきたのかしらね。そうしてメアリー・スカーレットと紅美鈴の同時存在という奇妙なことになってるわけ。彼女は協力的だし、何より自分が相手ですもの。自分のことは良く解ってるはずでしょう?だからあの侵食メアリーの追い出しを担当して貰ったわ」

「なるほどな。それで紅魔館から追い出した後はどうするんだ?」

「あれを見て頂戴」

 

 

そう言って八雲紫が扇子で指した方向には、湖があった。

今宵は見事な月夜で、湖面にも月が綺麗に映っている。

 

 

「彼女はあそこに行くはずよ。そうしたら私たちも追いかけて向こうに行くわ」

「何?湖面の月に飛び込むのか?」

「いいえ違うわ月になんか行きませんわええ行きませんとも」

「………紫?」

「失礼、少し取り乱しましたわ。そちらではなくて……ほらあっちに」

 

 

 

見ると霧の湖には月だけでなく、逆さになった紅魔館も写り込んでいた。

 

 

 

「あそこを通って()()()()の紅魔館へと赴きますわ。向こうに行けばこちら側に被害を出すこともないし、乱入者を制限することも出来る」

「………そうか、だからレミリアに異変を起こさせるのだな?今回の異変はスペルカードルール無用の殴り合いとなる。そんな異変に人間の解決者………博麗霊夢や霧雨魔理沙だな。それが来てしまっては色々とマズイ。というより死者が出かねない。だからこそ偽物の―――フェイクの異変をレミリアが起こす。私たちが殴り合いでメアリー・スカーレットを打ち倒すまで、()()()()()()はそちらに引きつけておく。そういうことか」

「そういうことよ」

「じゃあそろそろ準備しておこうか」

「いえ、少し待って。あと一人呼んでいる人がいるわ」

 

 

 

そう言った紫に八坂神奈子が「誰だ?」と問いかけようとした時

騒騒しい音を立てながら、命蓮寺の住職、聖白蓮が降り立った。

 

 

 

「おや、貴女だったか。会ったのは人里での会合以来かな?」

「……………」

「これで六人揃ったね。それじゃあ行こうか」

「……………」

「うん?どうした?」

「………まさか貴女がそちらの一味だったとは…誠に愚かで自分勝手であるッ!」

「!?お、おいどうした!?紫!何て言って呼んだんだ!!」

「別に普通に呼んだわよ~?『寅丸星は預かった。返して欲しければ、一人で霧の湖まで来い』って」

「それは!誘拐犯の普通だァァァ!!」

「いざ、南無三──!」

「「ぬわーっ!」」

 

 

 

 

 

三人がドタバタし始めたところで、紅魔館から上空へと何かが飛び出してくるのを八意永琳が確認した。

飛び出してきたものは一瞬対空すると、一目散に湖面の紅魔館へと飛び込んでいった。

 

 

「ほら、お客様がお出ましよ。さっさと行きましょう」

 

 

そう声を掛けるとパチュリー・ノーレッジと共に湖へと向かってしまう八意永琳。

 

 

「紫~?置いてっちゃうわよ~?」

「いたたた!そ、そうだ!あいつ!誘拐したの湖に飛び込んだあいつだから!だから早く追いかけよう白蓮!」

「そ、そうそう!」

「………本当ですか」

 

 

ドサッと音を立てて開放される八雲紫と八坂神奈子。

息を整えた聖白蓮はクルッと振り返ると笑顔で言った。

 

 

 

 

「行きましょうか皆さん!」

「………はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ようやく全員で湖に映る紅魔館に向かうことになった六人。

その道すがら、ふと気になった八坂神奈子は八雲紫に問いかけた。

 

 

 

「なあ紫」

「何かしら?」

「先ほどメアリー・スカーレットは病に侵されていると言ったが、正確には病ではない。とも言っていたな?だったら正確には何なんだ」

「ああ、それね。確かに戦闘になる前に言っておいたほうがいいかしら」

「そうね。知っておきたい」

「じゃあ言うわね。彼女を侵食しているもの、それは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「狂気よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一体いつからメアリーが勇者パーティーだと錯覚していた…?
メアリーさん魔王枠です。
なので勇者パーティが紫さんとパッチェさん入れて六人てのは間違ってません。


月とか儚月抄とか紫さんの策略に関しては、自分の理解したもので合っているのか不安。
というわけでギャグテイストに。





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