紅美鈴には秘密がある   作:テッソルムリア

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第五章 人里は今日も平和です()
「紅美鈴な一日」


―――紅魔館 大図書館―――

 

side レミリア

 

 

 

「………まだ帰ってこないの?」

「焦りは禁物よ、レミィ。それでは私たちが手に入れたいものも取り逃がすわ」

「分かってるわよ!それくらい!!」

「………はぁ。やれやれね」

 

 

吸血鬼と七曜の魔女の声のみが響く大図書館。

いつも―――白黒の魔法使いが突撃してくる時以外だが―――その空間は静かである。

だが、今は紅魔館全体が殊更静まり返っていた。

 

 

それは何故か。

 

 

なぜなら今この時、紅魔館の主要メンバーが私とパチェ以外存在していないからである。

 

 

お母様は八雲紫と出て行ってからまだ帰っていない。

 

 

咲夜は人里へ買い出しに行かせるのと同時に自由時間も与えてあるため、しばらく帰ってこないだろう。

仕事はキッチリこなすが、そういう所はしたたかな人間である。咲夜は。

 

 

小悪魔はフランの子守……もとい、連れ立って外出してもらっている。

こちらの事情も把握している小悪魔なら、上手いこと気をそらしてくれているはずだ。

 

 

妖精メイド達もしばらくの間、大図書館近くに近づかないようにしてある。

 

 

そこまで念入りに人払いをしているのはどうしてかって?

 

 

決まっている。

これより私たちが踏み込む話は、他人に聞かれると非常にマズイ可能性もある。

 

 

フランは当事者だが、その内容如何によっては聞かせるべきではないかもしれない。

少なくとも今すぐは。

 

 

だからこそ、私とパチェでそれを聞き出し吟味してやろうと思っていたのだが………

 

 

「……本当に帰って来ないわね」

「……だから言ったじゃない」

 

 

問題はその当事者たちが帰ってこないことだ。

このままでは咲夜やフランの方が先に帰って来かねない。

すぐに戻ってくる的な事を言っていたらしいが………

彼奴等の言葉を信用したのが間違いだったか。

 

 

「―――あら?」

「……どうしたの?パチェ」

 

 

親友のあげた不思議そうな声に聞き返す。

 

 

「結界に反応があったわ。何の気まぐれか知らないけど、律儀に門から入って来たようね」

「………スキマ妖怪ね―――待って。()()()()()

「………三人ね。行くときと変わらないわ」

「―――そう」

 

 

ということは、お母様、八雲紫、西行寺幽々子の三人だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思っていた時が、私にもあった。

 

 

 

「はぁーい、御機嫌いかが?吸血鬼さん♪」

「………お母様は何処だ」

「あら、恐い顔。大丈夫よちょっと別行動してるだけだから」

「何処にいるのか聞いているんだ」

 

 

―――大図書館に姿を現したのは八雲紫と西行寺幽々子。

そしてお母様ではなく、八坂神奈子だった。

 

 

………やってくれる。

パチェが気付かなかったということは、認識阻害やら何やらしていたのだろう。

どうせすぐにバレるというのに、何のためにそんなことをしたのだろうか。

もっとも、コイツだったら「その反応が見たかった」とか「面白そう♪」やらの理由だけでやりかねん。

 

 

「そんなに急かさなくてもちゃんと教えるわよ~」

 

 

間延びした声で西行寺幽々子が言ってくる。

口ではそう言っていても裏では何を考えているのやら。

なまじ、声の調子も表情も変わらないから予測出来ないわね。

八雲紫と比べたらどっちがマシ?

どっちも碌なもんじゃないわよ。

 

 

そんなことを考えているうちに、ようやく八雲紫がお母様の居場所を教える気になったようだ。

さっきから黙ったままの八坂神奈子も気になるが……後でそれも聞き出すか。

 

 

「そうそう、貴女のお母様だけどねー………多分今頃は人里にいると思うわ」

 

 

………お母様は人里か。どうする………

帰るのを待つか、人里に向かうか……

それともこいつらに話を聞くか―――

 

 

 

「―――――紅美鈴としてね」

 

 

 

 

 

 

 

―――――なに?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――人里―――

 

side 紅美鈴

 

 

いやぁ、人里はいつ来ても活気がありますねぇ。

あ、どうも。紅美鈴です。

今日は門番スタイルでやってきています。

 

 

 

それにしても、そんな長いこと門番休業していたわけではないのに随分久しぶりに感じますね。

それだけメアリーとして過ごした期間が濃かったってことでしょうか。

 

 

 

まぁ何にせよ、これで八雲紫の指令其の一「紅美鈴の姿でくる」は達成ですね。

 

 

さて、お次は……

あっ、あそこで威勢よく客引きしている甘味処にしましょう。

 

 

「すみませーん。お団子とお茶1つずつ」

「はいよー」

 

 

店の奥に入っていくおばちゃんを見つつ、縁台に腰掛ける私。

そのままぼんやりと空を見上げます。

 

 

あーいい天気ですねー。

ボーッと見ているだけで心が洗われそうな快晴ですし。

また何かの形の雲とか探してみましょうか。

 

 

 

 

「お待ちどう!団子と茶だよ」

「あ、どうもありがとうございます」

 

 

そう思っているうちにお団子が来たみたいです。

じゃあいただきましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぁーあったかいお茶が身体に染み渡りますねぇー

え?年寄りくさいですか?

年寄りで何が悪いんですか(開き直り)

 

 

 

 

 

んー十分休憩しましたし、そろそろ行きましょうかね……

いや、あと五分………おや?

 

 

 

通りの向こうからやって来るのは………早苗さんでしょうか。

何だかうわの空のような……

ちょっと気配遮断(光学迷彩レベル)して見つからないようにしつつ、観察してみましょう(ワクワク)

 

 

………何か急に立ち止まって空を見上げたと思ったら、またぼんやりと歩き出したり挙動不審ですね……

どうしましょう。お勘定しちゃって付いて行ってみましょうか。

いや、八雲紫さんの指令もありますし………

 

 

 

 

 

そんな風に逡巡していると、新たな人影に気付きました。

早苗さんが通りすぎてからしばらくすると現れた三つの影。

 

 

 

 

あれは……咲夜さん?

それに妖夢さんと鈴仙さんですね。

三人とも早苗さんの後を付いて行ってる様子。

 

 

よし、それなら私もその後を『ちょっとメアリー?』そ、その声は!?

ゆ、紫さん!?

 

 

『いま貴女の脳内に直接語りかけているわ。……それよりも。私が指示したことはどうなったのかしら?』

い、嫌だなあー分かってますよー

『そ。ならいいわ』

 

 

そう言うと紫さんの声は聞こえなくなりました。

………どうやらしっかり見られてたみたいですね。ははは………

それじゃあ非常に気になりますけれども、付いて行くのは諦めて当初の目的地に行きましょうか。非常に気になりますけども。

と、その前に。

 

 

「すみませーん。このお団子、お土産用にいくつか包んでくださーい」

「一包で良いのかい?」

「ええ」

「よし……はいよ、団子一包ね」

「ありがとうございます。お代はこれで」

「ちょうどだね。毎度ありー」

 

 

甘味処のおばちゃんの声を背に、目的地に歩き始めます。

これで八雲紫の指令其の二「お土産を手に入れる」もクリアです。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、目的地に歩き始めるとは言ったものの、実はすぐ目の前なんですよね。

もう着きましたし。

そこそこ立派な山門と、その奥まで続く石畳の参道。

そう、命蓮寺です。

 

 

 

 

 

「ごめんくださーい」

そう言いながらも足は止めず、どんどん中に入っていきます。

縁日の時には大層賑わっていたこの場所ですが、今はひっそりとしています。

何故なら―――

 

 

「あっ、参拝希望の方ですか?すみません今日は――――――おや?貴女は紅魔館の………」

「どうも、こんにちは。紅美鈴と申します」

奥から出てきた毘沙門天の代理……寅丸星さんに挨拶を返します。

 

 

「これはご丁寧にどうも。寅丸星です」

「これ、お土産のお団子です」

「あ、わざわざすみません」

「いえいえ、お構い無く」

そんな感じに会話を続け、ほんわかとした空気になったところで寅丸星さんが困ったような顔をしました。

 

 

「あの~お土産まで持ってきて貰って申し訳無いのですが………今命蓮寺には聖や他の子達がいない状態で………私だけなのですが………」

なるほど。私が聖白蓮さんに会いに来たと思っているようですね。

そういえば以前稗田家で行なった会合で一度会いましたね。

ですが―――

 

 

「いえ、大丈夫ですよ」

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が会いに来たのは寅丸星さん。貴女ですから」

 

 

 

 

 

 




正直、書くべきか迷ったこの章。
第四章の最後に何話か付け加えて、そのまま最終章行っても良かったんですけどね。


思った以上に「書いた方が良いかな」ってものがあったので個別で章を分けました。


後は……そうですね。
ギャグ要素入れられる役割の側面とか


何となく予想はついてると思いますけど、後々シリアスブッ込みます(テヘペロ)





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