紅美鈴には秘密がある   作:テッソルムリア

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今回、早苗さん視点オンリーです。






「東風谷早苗の独白」

ザッザッザッ

 

 

人里の喧騒の中を一人、雑踏を縫いながら私は前に進む。

 

 

「今日は卵!卵が安いよー!」

「一息つきたい方、茶屋に寄って行きませんかー」

 

 

いつもだったら足を止める。

そんな安売りの声も、甘味処の誘惑も今の私には効果がないようです。

 

 

 

 

 

 

ザッザッ……ピタッ

 

 

通り過ぎ、しばし歩いてから足を止め

店を見るでもなく、そのまま空を見上げる。

 

 

雲一つない澄み切った青空。

 

 

 

 

 

 

ああ……でも、あぁ―――

 

 

私の心はまるで曇天。

そのうち雨が降り出しそう。

 

 

頭を振り、そんな考えを払って再び歩き始める。

 

 

別に目的地があるわけでもないんです。

アテのない歩み。

あの場に居たくなかったから。ただそれだけ。

 

 

 

 

 

 

フフフッ……と微かに笑いが漏れる。

こんなセンチメンタルな気持ちになるのはいつぶりでしょう。

 

 

幻想郷に来る前―――外の世界ではしょっちゅうだった気もします。

こちらに来てからはもっとホームシックになるかと思ってたんですけどね。

割りきってきたからかむしろ少なく―――

 

 

………いえ、敢えて見ないようにしていただけでしょうか。

そういった気持ちを。

そんなものを抱えたままではやっていけそうになかったからかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

―――私は風祝。守矢神社の風祝。

その役目を全うするためにこそ、私はこちらの世界(幻想郷)へとやって来ました。

 

 

あちらの世界(生まれ育った場所)を捨てて。

神奈子さまと諏訪子さまについて。

 

 

お二人は決して、私に強要しようとはしませんでした。

むしろ私が外の世界で、幸せに暮らせる方法を模索していたようです。

 

 

―――それでも、私はお二人についていくことを選びました。

その理由は先ほど行った通り、風祝だから……というだけではありません。

 

 

外の世界に嫌気が差した、お二人と離れたくなかった、違う世界を見てみたい、自分の力を示せる場所を―――

私自身も、様々な要因が混じり合ってどれが本当かなんて分かりません。

 

 

確かに外の世界にいたい、もしくは帰りたいという気持ちも無くはなかったのかもしれないです。

しかし、その気持ちを押し殺せるほど、お二人の側が心地よかったのは間違いないと思います。

 

 

願わくば、その幸せがいつまでも続くことを―――

そう、思ってもいました。

 

 

 

 

 

 

 

―――事の発端は本当に唐突で

 

 

私は以前の彼女とそれほど関わりがあったわけではありません。

せいぜい宴会でたまに見かけるくらい。

 

 

それがあの日は違いました。

いつもの博麗神社での宴会。

その最中、紫さんから語られた衝撃の事実。

 

 

そして―――蹂躙。

あの時の彼女の気迫を、他の人はどう捉えたか分かりませんが、私はそう感じました。

それはとても強力で……ともすれば飲み込まれてしまいそうなほどでした。

 

 

 

 

 

 

 

それでも私には神奈子さまと諏訪子さまがいます。

だから大丈夫。

……そう、思ってしまったんです。

 

 

 

 

 

 

そんな幻想は、彼女らが守矢神社にやって来たことで終わりを迎えました。

 

 

妖怪の山で出会った時、私はそこまで危機感を抱いていませんでした。

紫さんに丸め込まれ、守矢神社に彼女らと赴いたときも

神奈子さまと諏訪子さまに彼女らが対面した時も

「きっとお二人が上手く収めてくれる」

と考えていました。

 

 

―――出来ることなら、その時の自分を殴ってやりたい。

 

 

私が博麗神社の宴会の時点で動いていれば―――

そのあとでも行動を起こしていれば―――

何が何でも神社に入れなければ―――

結末は違ったのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

でも、それこそ文字通り後の祭り。

 

 

私が追加の茶請けを取って、戻ってきた時には全て終わっていました。

―――神奈子さまは彼女らの仲間となっていました。

 

 

幻想郷にきて、妖怪の山の天狗たちと事を構えたときも

博麗の巫女と対峙したときも

地底にエネルギー革命を起こそうとしたときも。

 

 

利用することはあれど、迎合することはあらず

敗北することはあっても、その下に下ることはなかったのに。

 

 

私は何故彼女らに与したのか尋ねましたが、終ぞ教えてはくれませんでした。

そのときの私はどんな表情をしていたのでしょうか。

 

 

我慢できず、そのまま飛び出してきてしまいました。

 

 

 

 

 

 

 

百歩譲って仲間になるのはいいかもしれません。

でも、その理由くらいは知りたいと思うのは私の我儘でしょうか。

 

 

神奈子さまには神奈子さまなりに、考えがあったのだとは分かります。

しかし、それを割り切ることは出来ませんでした。

 

 

 

 

 

百歩譲って、と言いましたが本当は仲間になって欲しくもないのです。

―――三人の空間に割り込まれたように感じるから。

 

 

それに加え、理由を教えてくれないことに疎外感を感じてしまったのです。

我ながら子供っぽいとは思いますが、この感情を抑えきることは出来ない と思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

諏訪子さまは……神奈子さまより一歩引いた立場のように感じました。

 

 

完全にあちら側というわけでもなく

かといって私に味方してくれるわけでもありません。

―――結局、理由を教えてくれないことには変わりありません。

 

 

 

 

 

また立ち止まり、空見上げ

今日何度めかの溜息をつく

 

 

………はぁ………憂鬱ですね―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――ちょっといいかしら?」

 

 

その時、誰かが背後から声を掛けてきました。

聞き覚えのあるこの声は―――

 

 

 

 

「―――咲夜さん」

 

 

そこには紅魔館のメイド長である咲夜さん

そして妖夢さんと鈴仙さんがいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――あぁ―――何てことでしょう。

私、気付いてしまいました。

 

 

彼女たちの瞳に宿る色に。

それが意味するものに。

 

 

 

 

 

 

―――貴女たちも()()()()なんですね―――

 

 

そう、理解した私は

薄く笑いながらこう言いました。

 

 

「私になにかご用でしょうか―――?」

 

 

―――私もそちらに入れて下さるのですよね―――

そう思いながら。

 

 

 

 

 




何か書いているうちにとんでもないキャラになってしまったぞ早苗さん


心理描写ってこれで良いんでしょうか。分かりません(今更)






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