紅美鈴には秘密がある   作:テッソルムリア

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「天才と天然は紙一重」

―――永遠亭―――

 

 

月夜の光が満ちる永遠亭の縁側。

私こと蓬莱山輝夜はじっと夜空を見上げる。

 

 

―――と

誰かが近くに寄ってくる気配がしたかと思うと、音もなく現れる者がいる。

 

 

「輝夜。そろそろ中に入ったほうが良いわ。身体を冷やすわよ」

 

 

八意永琳。

以前は私の教師であり、今は部下のような形を取っている。

表向きは。

 

 

そのため公の場では私のことを「姫様」と呼ぶが、今のような二人きりのときは名前を呼んでくれる。

……月にいた頃のように。

 

 

「相変わらず、永琳は心配症ね。大丈夫よこれくらい」

 

 

いつものごとく、私のことを案じる言葉をかけてくる永琳に、苦笑交じりにそう返す。

呼び名は変わっても、そういうところは変わらない。

そもそも、私も永琳も蓬莱人なのだから。

これくらいの寒さだったらどうってことないのだけれど。

 

 

「……ハァ」

 

 

私に動く気が無いことを悟ったのだろう。

永琳は更に近寄ってくると、私と同様に縁側に腰掛けた。

 

 

「………」

「………」

 

 

二人の間に沈黙が漂う。

しかし、この沈黙は嫌な感じの類ではない。

互いを信頼しているから。

 

 

 

 

言葉にすると陳腐な印象を受けるが、なんとも言えない安心感のようなものがある。

それはきっと私の勘違いではないはずだ。

 

 

だって……

今までも。これからも。

私の隣にずっといてくれるのは永琳だから。

 

 

そして

永琳の隣にずっといるのも私だから。

 

 

きっとそのために永琳は蓬莱の薬を作ってくれた。

彼女もそれを飲んでくれた。

 

 

だったら私はそれに応えないとね。

何故なら私は永琳の元教え子で、現主人だもの。

 

 

 

 

 

そんなことを考えていた私は、いつの間にか永琳が立ち上がっていることに気付く。

よく見ると外……いえ、竹林かしら?

そちらの方角をじっと見つめているようだ。

表情も心なしか険しいものへと変化している。

 

 

「どうしたの永琳?そんな顔をして」

「……姫様」

「ッ!!」

 

 

私は永琳から返ってきた言葉に驚愕し、息を呑む。

永琳が私のことを姫様と呼ぶのは公の場。

そしてもう一つ。

 

 

「……少し、出てきます」

 

 

()()()()()()()だ。

 

 

「一体誰かしら。こんな時間に」

()()吸血鬼のようです」

「!……分かったわ。気をつけてね」

「ええ」

 

 

そう言うやいなや、永琳はその場から姿を消した。

 

 

残された私はまた、夜空を見上げる。

 

 

 

 

 

「……本当に気をつけてね、永琳」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side メアリー

 

 

どもども。清く正しいメアリー・スカーレットです。

え?

それはお前のじゃないだろって?

 

 

ごもっとも。

何でこんなことしてるかっていうと、軽い現実逃避ですね。

 

 

何で現実逃避してるのかって?

それはですね……

 

 

「さぁ、早く言いなさい」

 

 

月の頭脳殿が殺気振りまきながら、詰問してくるからです(焦り)

 

 

(いやぁ~どうしてこうなったんですかね~)

(ね~)

(絶対貴女たちのせいよ!)

 

 

ひそひそ話で怒って叫ぶって、何気に難易度高いことしますねパッチェさん。

 

 

ああ、何でこうなったかなんですけども。

鈴仙の案内で竹林を歩いていると、いくらも行かないうちに永琳とエンカウントしまして。

 

 

出会ったらアイサツするのが基本。古事記にもそう書いてあります。

あれ?永琳って古事記以前の方でしたっけ。

 

 

まぁそれはともかくアイサツしたわけです。「ドーモ。エイリン=サン。メアリーです」って感じで。

言った後に『これイクサ前のアイサツだった』と気づきましたが時すでに遅し。

 

 

永琳はアイサツを返しませんでした。

それどころか敵対する姿勢をとり、私たちに目的を尋ねてきました。

 

 

そして今に至るわけです。

 

 

(どうすんのよこれ!)

(そういわれても…)

(ね~)

 

 

こういうとき私(とゆかりん)が取る行動はだいたい決まってます。

 

 

 

 

一つ目。そのまま戦闘に移る。

あれですね。河原で殴り合って

「なかなかやるじゃねえか」

「へっ、お前もな」

方式の解決法です。

 

 

 

 

二つ目。逃げる。

戦って勝ってもメンドクサイ相手にはこちら。

ゆかりんは閻魔様にはこの方式をとることが多いです。

 

 

 

 

そして三つめは……

 

 

 

 

……うん。これにしましょう。

若干嫌な予感はしますけど、その程度で私たちのリビドーは止まりません!

 

 

素早くゆかりんに目くばせをします。

私の意図を理解したゆかりんは頷くと、ブツブツ言っていたパチュリーを拘束。

 

 

「えっ、何よ!」

 

 

パチュリーが驚き、拘束から逃れようともがきますが構わず次に移ります。

 

 

いやー実はですね……

パッチェさんの魔法少女姿を見たときからやってみたいことがあったんですよね。

そしてこのシチュエーションはなかなかおあつらえ向きです。

ゆかりんにやりたい()()を伝えると、一瞬ニヤッとしました。

 

 

なかなかレアなんじゃないでしょうか、ゆかりんのにやけ顔。

どっちかというと胡散臭い(神社の巫女談)笑顔の方が多いですしね。

 

 

そうして暴れるパチュリーと共に私たちは光に包まれ―――

 

 

―――セーラー服を纏って現れた。

 

 

ポカンとし、固まったパチュリーの腕を取るゆかりん。

スキマを器用に使い、ポーズを取らせます。

私はパチュリーの背後に隠れると、渾身の声真似(パチュリーの)であのセリフを言う。

 

 

「月に代わって、お仕置きよ!(パチェ声)」

 

 

そうしてパチュリーがハッと気が付いた時には私もゆかりんも両隣でポーズを取っていました。

ここまでセリフ抜きで約0.2秒です!

 

 

名付けてセーラームーキュリーなんてどうですかね。

セリフがムーンのだろというツッコミは無しでお願いします。

いやぁこれが出来て私は満足です。

 

 

「そう……そういうことね」

 

 

あ、永琳が反応しました。

月と絡めるのはブラックジョークが過ぎましたかね。

まぁしっかりと冗談だと説明すれば大丈夫でしょう。

 

 

 

 

 

―――そう思っていた時期が、私にもありました。

 

 

あれ?いつの間に永琳は弓を取り出したんでしょう。

あれ?どうして無言で弓を構えるんでしょう。

あれ……?

 

 

次の瞬間、私たちのいた場所が爆発四散しました。

バックステップで回避する私とゆかりん(と引っ張られたパチュリー)

 

 

爆発する弓とかラ◯ボーですか!

これはいけない流れです。戦闘はもはや避けられないでしょう。

やってしまいましたね(テヘッ)

 

 

 

 

……さて、とりあえず永琳を説得(気絶)させましょうか。

話はそれから―――

 

 

 

 

 

―――その時私は、確かに永琳が笑うのを見ました。

何故笑ったのか一瞬分かりませんでしたが、次の瞬間理解しました。

 

 

 

 

 

 

 

背中に人差し指()を突きつけられたから。

 

 

「動かないで。動けば心臓ぶち抜くわよ」

 

 

……あぁなるほど。

あの爆発はブラフだったんですね。

当たれば儲け物くらいには考えていたかもしれませんが。

 

 

永琳の存在が大きかったとはいえ、鈴仙を一瞬でも意識から外したのはマズかったですね。

私はこの通り動けない。

ゆかりんとパチュリーは迂闊に動けばラン◯ーの餌食でしょう。

 

 

普通に考えればこれで降伏して終わり。

捕らえられて尋問されるのがオチですかね。

まぁそれでも目的が達成できるのなら別に良いのですが……

 

 

―――私たち勇者パーティーはそんなモンじゃないですよね?

 

 

 

 

 

「そこまでよ」

 

 

その時、場に新たな声が響きました。

ほら、やっぱり来ました。

 

 

「……なぜ貴女がここに……っ!」

 

 

来てくれると信じてましたよ。

さて、ここから巻き返しといきましょうか。

 

 

「西行寺幽々子……!」

 

 

ね、幽々子?

 

 

 

 

 

 




あれ…?何かヘタしたら輝夜さんにヤンデレフラグが立ちそうな……
いや、よそう。私の勝手な推測でみんなを混乱させたくない(目そらし)






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