東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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ラ「さて、今回のボスは・・・何と、妖夢さんだああああああ!!!」
妖「え!?私何かしましたっけ!?」
ラ「いやほら、暁ボコるとリア友が学校で俺を殺りに来るし、隔は痛めつけすぎたし」
妖「消去法!?消去法なんですか!?」
ラ「妖夢だと話が書きやすい」
妖「それ完璧に貴方の好みですよね!!??」
ラ「魂魄デッキ創るから我慢して!」
妖「小説の話して下さい!!」

幽々子「では、どうぞ~」


第六章第七話「突如」

「んにゃ…」

 

朝の光が障子の隙間から部屋を優しく包み込む。

白い布団、丁寧に掛けられている掛け布団。

もぞもぞとそれは動き、やがて一人の少女が上体を起こした。

 

魂魄妖夢は自身の、やけにぐちゃぐちゃだが固く締められている帯を見つめ、そして部屋を見回す。

特に何の変哲も無い和室。しかし箪笥に掛けられているのは、パーカーに紅魔館の執事服。

木の机の上に置かれている桜ノ蕾は、漆黒の鞘を陽光に煌めかせる。

妖夢は、お酒で酔った時の事を覚えているタイプだ。

もう一度言おう。お酒で酔った時の事を、覚えているタイプだ。

 

誰も居ない部屋の、白い布団の上で。

次々と思い出される昨晩の記憶に、妖夢は顔を真っ赤にした。

そのまま、恐らくとある少年が掛け直してくれたのであろう掛け布団をぎゅっと握りしめる。

彼女を包む羞恥心。何故あんな事をしてしまったのかと、妖夢は思い悩む。

しかし、いつもならともかく今日は皆が泊まりに来ている。

いつまでも此処で悶々としている暇は無い。妖夢は一度ため息を付き、布団を片付け始めた。

 

朝ご飯の時間まで、楼観剣と白楼剣の素振りがてら仕事の庭の手入れをしよう。

 

丁寧に畳んだ布団を部屋の隅に置き、妖夢は障子を開け外に出た。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「おはようなんだぜー!おい、どうしたんだよそんなシケた面して。真らしく無いぜー?」

「オハヨウ、マリサ。ヨクネムレタ?」

 

「お、おい。真面目に大丈夫か?何があったんだよ・・・」

 

朝からハイテンションの魔理沙が、俺の目の前で眉を顰める。

多分俺の眼は死んだ魚の様に濁っているだろう。

心なしか、世界が霞んで見える。というか、全てに色が無い。

顔を覗き込んで来る魔理沙に少し微笑み、俺はレミリア様に頼まれたことを思い出す。

 

「・・・そうだ、魔理沙、少し台所に行ってレミリア様の話し相手になってあげてくれない?」

「おお、そんくらいならいいんだぜ。おーい霊夢ー!ちょっと付き合ってくれー!」

 

元気よくサムズアップした魔理沙は、勢いよく女子部屋へと突っ込んでいく。

数秒後、魔理沙の後ろからはとんでもなく気だるげな霊夢が半ば引きずられるように出て来た。

 

「さー霊夢!行くんだぜー!」

「・・・ん」

 

紅白の服は一応着ている物の、いつもの覇気は感じられない。

寝ぼけたままの霊夢は、そのままずるずると魔理沙に引きずられていった。

 

・・・不運だなあ。

 

 

俺も、食堂代わりに使っている大きい部屋の片づけをそろそろしなければならない。

踵を返し、俺は白玉楼の長い廊下を一歩踏み締め、その場を去った。

 

 

 

――――――――いや、その瞬間、俺・・・いや、白玉楼内の全ての物は一斉に臨戦態勢を取った。

吹き荒れる霊力、魔力、妖力。

圧倒的力の奔流。それらは一つの例外無く、ただ一つの物に向けられていた。

 

さっきまで明るかった空が、紫色に染まっていく。

荒れる妖力。嵐の中に放り込まれたかのように、それは俺達の肌を叩いていく。

 

『・・・真、速く行くよ!!』

 

余りの危機感。俺の中の、陽炎が目覚める。

 

「バースト!」

 

出力、10%。

誰よりも早く、俺は駆け出した。

 

・・・そう。

 

 

 

西行妖へと。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

西行妖だけを見据え、俺は走る。

 

可笑しい。あの雰囲気は、可笑しい。

これは、どこかで、俺が感じた事のある雰囲気だ。

肌を突き刺す緊張感。精神を蝕む圧迫感。

 

そんな中、頭の中の陽炎は呟いた。

 

『・・・暴走妖・・・それと同じ感じがする』

「マジかよ・・・!」

 

刹那。

 

大木の枝が急にしなり、俺の一瞬前に居た場所を貫いた。

意思をもっての攻撃。それをきっかけに、走る俺へと次々に枝の槍が撃ちこまれる。

桜ノ蕾が、手元に無い。つまり俺は、全てを躱すか受け流すしか道が無い。

全神経を集中させろ。擦り切れるまで。

 

右手に纏った霊力を炎に変換しつつ、俺は宙に青白い軌跡を描く。

 

そして、俺は見た。

 

大木の根元。禍々しい妖気が、極限まで高められているその箇所に。

 

 

・・・魂魄妖夢が、居るのを。

 

バーストによって高められた視界は、妖夢から漂う西行妖よりも強い妖力を視る。

そして、普段は蒼い眼が紫紺に染められているのも。

剥き出しになった妖夢の楼観剣と白楼剣。だらんと力無い腕に掴まれたその刀は、妖夢が俺に気づくと同時にゆらりと動いた。

 

――――――――回避。

 

本能に導かれるがままに、俺は其の場で大きく横に跳んだ。

ごろごろと、無様に地面を転がる。

しかし。それは正しい判断だった。

 

直ぐに後ろを見れば、そこには射程距離拡張で伸ばされた楼観剣の、紫色の刃が叩きつけられていた。

地面を抉り、まるで断層の様にそれは綺麗に真っ二つになっている。

ぞっと、背中に冷たい汗が浮き出る。

一瞬でも回避が遅れていたらどうなっていたのか。

危ない所だった。いや、その状況は妖夢が居る限り変わらない。

 

「・・・フルバーストッ!!」

 

苦渋の決断。

今まで積み上げて来た歯車を全て組み替える様に、俺は霊力を更に解放する。

 

「真!これ!」

 

直後、後ろから咲夜さんの声が聞こえた。

何時の間にか来ていた皆は、木の枝を相手に戦っている。

 

飛んでくる桜ノ蕾。それを空中で掴むと同時に、皆は大きく弾き飛ばされた。

攻撃を受けたのではない。西行妖が、暴走した妖力による強い結界を張ったのだ。

だが、今は後ろの事は考えていられない。

再び楼観剣を振り上げる妖夢。

それに対抗する様に、俺も桜ノ蕾を居合いの形で腰に引き付けた。

 

勝負は一瞬。

 

口角を歪める妖夢の腕が動いたと、視界が判断した瞬間。

 

俺は、全力で桜ノ蕾を抜き放った!!


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