東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結 作:ラギアz
隔「次で五章終わり?」
ラ「うん。・・・そういえばさ」
隔「ん?」
ラ「旧夢幻魂歌に出て来た、イクスバースト覚えてる人っているのかな・・・?」
隔「作者も忘れてたし、居ないと思うよ」
ラ「ですよねえ畜生おおおおお!!」
イクスバースト…封印の霊力でのバースト。
えとですね、旧夢幻魂歌の第二章最終話で初登場です。
隔「ではどうぞ!」
夢月と暁は、目の前の光景に目を見開いた。
前の真では出来ていなかった、相手に有無を言わさない攻撃が完璧にこなせている。
少年の前には、鎌鼬は居ない。
それよりももっと、もっと大きい者に真は立ち向かっていた。
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遅い。
幻夢に比べたら、鎌鼬はなめくじの様な速度だ。
俺は右腕の刻印を消し、10%のまま桜ノ蕾を振りぬいていく。
しかし、固い。
かすり傷一つ付けられないまま、膠着状態は続いていた。
さて。
このままじゃ夢月と同じく、俺はじり貧になって負けるだろう。
ならば、どうするか。
俺は桜ノ蕾を大きく横に薙ぎ、鎌鼬を吹き飛ばす。
答えは一つ。
右腕を持ち上げ、そして俺は真っすぐに横へと伸ばした。
すると、黒い刻印が再び右腕に浮き上がる。
だけど、それはさっきとは全然違う軌道を描いていった。
黒い刻印は俺の腕を移動し、肌にぴったりと張り付くリングの様な紋様を作り出す。
鎌鼬が警戒心を高め、尾を体の前に持ってくる。
ブウウン…
突如、俺の右腕が金色に輝いた。
夜の闇を切り裂く、希望の光。
新たな力は、今、開花する―――――――
「フルバースト」
刹那。
リングの様に成った刻印は俺の腕から剥離し浮かび上がり、ゆっくりと縦回転を始め。
はじける様に、金色の光は宵闇を切り裂いた。
ドッドッド、と高鳴る鼓動。
溢れ出しそうな力に、血が、肉が、沸き上がる。
興奮、では無い。
寧ろ俺は落ち着いていた。
では、何か。
多分、これは。
・・・出力30%という、未知の領域に足を踏み込んだ結果なのだろう。
十数m離れている鎌鼬と俺。
俺に怯える様に妖力の鎧を作り出した鎌鼬に向かって、俺は一歩、ゆるりと踏み出した。
そして、切り裂いた。
「!?」
鎌鼬が、切られた鎧を認識するのに掛かる時間は、0.1秒。
俺が奴の尻尾も切り裂くのは、0.01秒。
大ぶりの一撃は奴の固い表皮をも、豆腐を切る様に切り裂いた。
「・・・燃え上がれ」
俺は低く呟く。
すると次の瞬間、俺の持つ桜ノ蕾が紅き焔を纏った。
酸素を著しく消費し、焔は明るい光を放ちながら燃え続ける。
それを俺は。鞘に、納めた。
「ギャアッ・・・ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
鎌鼬が、やった状況を認識した様に金切り声を上げる。
急激に治癒された尾。一瞬で最大まで力と妖力を溜めた鎌鼬は、それを棒立ちの俺に向かって振るう。
そして、俺の体に当たった所で止まった。
服は切り裂いている。が、俺の肌にはかすり傷一つ付いていない。
「・・・散々、夢月を痛めつけたみたいだけどさ」
桜ノ蕾の柄を力なく握り、俺は顔を伏せる。
次いで、長く息を吐いた。
「悪夢と天久に言っておいて?手前らは俺が倒すってよ」
ギャリイイ!!!
俺は、フルバースト状態で初めて
一瞬踏み締められた地面は網目状にヒビを入れる。
地割れが起きそうな程の衝撃波を、波紋状に撒き散らしながら俺は桜ノ蕾を居合いの要領で横に鋭く薙いだ。
「桜花[華散り――焔――]」
抜き放つときにだけ、一瞬強く霊力を暴発させブーストを掛ける。
宵闇を切り裂く紅の斬撃は、鎌鼬の分厚い装甲を瞬く間に切り裂いた!!
再生を、燃え上がる刃の焔が許さない。
反撃を、斬撃が許す事は無い。
「暁!頼む!」
俺は上空へと桜ノ蕾を放り投げ、手を上に上げたまま強く握り拳を創った。
何も言わず、暁は俺に纏・紫炎を付与してくれる。
目の前で悶え苦しむ鎌鼬。見える、二つの核。
俺はそこに狙いを定め、妖力と呪力と霊力の込められた拳を撃ち放つ――――――!!!
「滅壊ノーー星撃ッッ!!!」
紫の尾を引く紅い流星は、轟音と爆風を撒き散らしながら一撃で核を二つとも粉砕した!
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鎌鼬の断末魔が終わり、砂埃が薄まっていく中。
俺はリング状に浮き上がっている刻印を消し、フルバーストを解いた。
初めてだったが、上手くいって良かった。
力が有り余っている感は否めないが、それでも上々だろう。
「おーい夢月ー。大丈夫かー?」
「・・・ええ。今、暁さんの妖力で治癒して貰いました。もう動けます」
よろよろと立ち上がる夢月へと駆け寄り、俺は彼女の顔を覗き込む。
額に浮かぶ脂汗。青ざめた顔。
まだまだ大丈夫じゃないのは、一目でわかった。
「はいはい、無理しない。失礼しますねー」
「えっ・・・ひゃあっ!?」
俺は軽い口調で夢月に断りを入れ、彼女の膝と肩を持って抱きかかえる。
所謂、お姫様抱っこと言う奴だ。
「夢月、お前もっと食べなよ?軽すぎるぞ?」
「えっ、あっ・・・はい・・・」
妖夢の持つ長剣、楼観剣よりも全然夢月は軽い。
抱きかかえ、俺は何故か真っ赤になっている夢月の指示のもと早苗と隔の元へと歩き始めた。
真「あ、あの暁さん?何でわき腹を突いてくるんですか?暁さーん!?」
暁「…」ムスッ