東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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明乃・・・あけぼの
     明の明星から




第五章第五話「予兆」

道中、出て来た妖怪などは暁が全て瞬殺し、順調に来れたので三日で博麗大結界の端に着いた。

ずっと歩き続けていたので、やはり疲労は溜まる。

結界をぺたぺたと触る暁を見つつ、俺は黒い刻印が消えなくなった右手を無意識に擦った。

桜ノ蕾の重さを感じつつ、結界を調べ終えたのか一部を両手で抑えた暁に近づく。

 

「・・・んとね、多分ここだと思う」

「離れてた方が良い?」

「うん。危ないかも」

 

確認を取り、俺は近くの大木の後ろへと身を潜めた。

そのまま体育座りをし、ぼーっと呆ける。

 

背後で高まる力。

それが最高潮に達したところで、俺は急いで立ち上がった。

 

バリンッ!!

 

ガラスが弾け、割れる様な音が周囲に響き渡る。

顔を覗かせれば紫紺の輝きが暁を中心に渦を巻いており、その目の前には歪な次元の歪みが出現していた。

 

「真、飛び込んで!」

「分かった!」

 

予想していた言葉。

もう走り出していた俺は跳躍しつつそこに突っ込み、吹き付ける風に急いで顔を覆う。

背後でも暁が飛ぶ気配を感じながら、俺は強く瞼を下した。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

強い衝撃を受け、思わず尻餅を付く。

 

爽やかな風が俺達の頬を撫で、若草の匂いが鼻を吹き抜ける。

座った状態のまま、感じる柔らかい草の絨緞。

瞼をゆっくりと持ち上げると、そこには。

 

「ここが、私の故郷だよ」

 

小高い草原の下、賑やかな人里が広がっていた。

 

草原の頂点で胡坐を掻き、俺は暁の話を聞き始める。

 

「これから、私の事を知ってる人に会いに行くから・・・。その人は呪力が凄い使えるし詳しいから、真の右腕の事も何か分かると思う」

「そっか、じゃあまずはそこだな」

 

背筋を大きく伸ばし、深く空気を吸う。

歩き始めた暁を追う様に、俺も立ち上がった。

 

 

 

人里には、幾つかの民家に露店、周りには大きい森や見た事の無い動物などが沢山居た。

幻夢はこんな物を見た事があるのだろうか。

見る物全てが新しく、俺は興味津々で里を見続けた。

 

 

長老の家。

暖簾の様な布を潜り抜け、俺と暁はそこへと入る。

中は簡素な木造りの家。

初夏の爽やかな風が入るその中は涼しく、照り付ける日差しは縁側へと降り注ぐ。

 

「おばあちゃん!」

 

家の中心。

突然暁が声を上げ、小走りで一人の老婆へと駆け寄った。

俺も少し後ろを着いていきつつ、彼女等の会話に耳を澄ませる。

 

「おばあちゃん、私だよ!暁だよ!」

「・・・おお?・・・ああ!暁ちゃんかい!全く、10年ぶりかな?久しぶりだねえ!」

 

この人が、長老なのだろうか。

木製の杖を片手に、老婆は深く椅子へと腰かけていた。

懸命に話しかける暁を思い出したのか、二人は会話を弾ませる。

 

暫くして、暁が俺を手招きした。

 

「この人が、天音真。私を救けてくれて、それで今話した呪術に取りつかれている人」

「初めまして。天音真です」

「初めまして。私は明乃(あけの)。しがない長老であり、普通の婆さ」

 

カッカッカ、と楽し気に笑う明乃は元気そうで、小柄な体躯と皺くちゃな顔からは想像もできない程元気である。これまた楽しそうに、まるで悪戯を仕掛ける前の子供みたいな表情を明乃は浮かべ。

 

 

「で?暁ちゃんとはどこまで進んでいるんだい?」

 

「「何も無い(です)から!?」」

 

にやりと笑いつつ、問いかけて来た。

勿論冗談の筈なのだが、顔を真っ赤にさせて突っ込む俺達。

それに満足したのか、明乃は俺へと話しかけた。

 

「じゃあ真や。お前の右腕、少し見せてみな」

「は、はい」

 

言われた通りに、俺は右手を前に突き出す。

手首から肘辺りまで刻まれた漆黒の刻印。

人差し指で、感触を確かめる様に明乃はなぞっていく。

 

「・・・これまた厄介だね。成程、代償とは言っても消える訳では無いんだねえ・・・吸い取られて、蓄えられる感じだねえ・・・」

 

ぶつぶつと、呟く明乃。

暁も俺の右手を覗き込みながら、口を開いた。

 

「解呪は、出来ますか?」

「私には無理だね。・・・暁ちゃんのお父さんが生きていれば、もしかしたら・・・」

 

首を振り、前のめりになっていた体を明乃は再び深く椅子へと沈める。

残念そうに身を引く暁に代わり、俺は頭を下げた。

 

「見て下さり、ありがとうございました」

「いやいや、私こそそれを解いて上げる事が出来なくてごめんねえ。お詫びと言っては何だけど、困ったことがあったらおいで。何かあったら、出来るだけの事はさせて貰うよ」

「ありがとう、おばあちゃん」

 

にっこりと微笑む明乃に、暁も優しく笑う。

右拳をそっと握りしめ、俺は暁と明乃の会話を見守っていた。

 

 

「で?彼氏は激しいかい?」

「だから何も無いんだって!真も何か言ってよ!」

「・・・まだですね」

「まだって何!?予定があるの!?」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「ほっぺたが痛い・・やべえ、暁のビンタめっさ痛い・・・」

 

ひりひりする頬を抑えつつ、俺は部屋のベッドへと倒れ込む。

時間帯としては夕暮れなのだが、俺と暁はもう宿屋へと来ていた。

あの後明乃と話し続けていたのだが、何故か急に拳が吹き飛んできた。

 

何故だろう。俺は暁の新しい服の感想を言っただけなのに。

 

ため息をつきつつ、俺は天井を見上げる。

桜ノ蕾とは別に持って来た荷物。その中から俺は竹刀を取り出し、桜ノ蕾を腰から外す。

 

俺の戦闘スタイルは、主に一刀流からの物理だ。

でも最近、それだと手数が足りなくなってきている。

 

妖夢の様な威力も速さもある連撃で削り、確実な隙に強力な技を叩き込めれば。

 

ただ拳を振る事しかできていない俺でも、多少は強くなれるかもしれない。

 

竹刀を羅刹に見立て、俺はヒュンと音を立てて振ってみる。

 

妖夢の、見様見真似じゃあダメだ。

何か。他に何か、無いのか。

 

力でも押し切れるし、技もある。

そんな、強い人が――――――――

 

「・・・!!」

 

一つ、俺は思い当たる人が居た。

竹刀と桜ノ蕾を壁に立てかけ、俺は真っすぐにベッドへとダイブする。

 

そしてそのまま、眼を閉じた。




ラ「そろそろ真君を、霊力以外でも強くしなきゃね」
隔「あの人との絡みも入れたいんでしょ?」
ラ「うん。俺の中で一番良くできたキャラであり、強いから」
隔「あの人、刀使えるの?一部では薙刀使ってたじゃん」
ラ「幻m・・・ゲフン、あの人は何でも使えるし、博麗の技は色々応用できるからね。結界を足場にしたり、滅壊ノ星撃だって、真君の滅壊ノ星撃はロケット的な奴でブースト掛けて、霊力で強化した拳を叩きつけてるだけだから」

隔「やろうと思えば、刀でも出来ると」
ラ「そゆこと」

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