東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結 作:ラギアz
明の明星から
道中、出て来た妖怪などは暁が全て瞬殺し、順調に来れたので三日で博麗大結界の端に着いた。
ずっと歩き続けていたので、やはり疲労は溜まる。
結界をぺたぺたと触る暁を見つつ、俺は黒い刻印が消えなくなった右手を無意識に擦った。
桜ノ蕾の重さを感じつつ、結界を調べ終えたのか一部を両手で抑えた暁に近づく。
「・・・んとね、多分ここだと思う」
「離れてた方が良い?」
「うん。危ないかも」
確認を取り、俺は近くの大木の後ろへと身を潜めた。
そのまま体育座りをし、ぼーっと呆ける。
背後で高まる力。
それが最高潮に達したところで、俺は急いで立ち上がった。
バリンッ!!
ガラスが弾け、割れる様な音が周囲に響き渡る。
顔を覗かせれば紫紺の輝きが暁を中心に渦を巻いており、その目の前には歪な次元の歪みが出現していた。
「真、飛び込んで!」
「分かった!」
予想していた言葉。
もう走り出していた俺は跳躍しつつそこに突っ込み、吹き付ける風に急いで顔を覆う。
背後でも暁が飛ぶ気配を感じながら、俺は強く瞼を下した。
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強い衝撃を受け、思わず尻餅を付く。
爽やかな風が俺達の頬を撫で、若草の匂いが鼻を吹き抜ける。
座った状態のまま、感じる柔らかい草の絨緞。
瞼をゆっくりと持ち上げると、そこには。
「ここが、私の故郷だよ」
小高い草原の下、賑やかな人里が広がっていた。
草原の頂点で胡坐を掻き、俺は暁の話を聞き始める。
「これから、私の事を知ってる人に会いに行くから・・・。その人は呪力が凄い使えるし詳しいから、真の右腕の事も何か分かると思う」
「そっか、じゃあまずはそこだな」
背筋を大きく伸ばし、深く空気を吸う。
歩き始めた暁を追う様に、俺も立ち上がった。
人里には、幾つかの民家に露店、周りには大きい森や見た事の無い動物などが沢山居た。
幻夢はこんな物を見た事があるのだろうか。
見る物全てが新しく、俺は興味津々で里を見続けた。
長老の家。
暖簾の様な布を潜り抜け、俺と暁はそこへと入る。
中は簡素な木造りの家。
初夏の爽やかな風が入るその中は涼しく、照り付ける日差しは縁側へと降り注ぐ。
「おばあちゃん!」
家の中心。
突然暁が声を上げ、小走りで一人の老婆へと駆け寄った。
俺も少し後ろを着いていきつつ、彼女等の会話に耳を澄ませる。
「おばあちゃん、私だよ!暁だよ!」
「・・・おお?・・・ああ!暁ちゃんかい!全く、10年ぶりかな?久しぶりだねえ!」
この人が、長老なのだろうか。
木製の杖を片手に、老婆は深く椅子へと腰かけていた。
懸命に話しかける暁を思い出したのか、二人は会話を弾ませる。
暫くして、暁が俺を手招きした。
「この人が、天音真。私を救けてくれて、それで今話した呪術に取りつかれている人」
「初めまして。天音真です」
「初めまして。私は
カッカッカ、と楽し気に笑う明乃は元気そうで、小柄な体躯と皺くちゃな顔からは想像もできない程元気である。これまた楽しそうに、まるで悪戯を仕掛ける前の子供みたいな表情を明乃は浮かべ。
「で?暁ちゃんとはどこまで進んでいるんだい?」
「「何も無い(です)から!?」」
にやりと笑いつつ、問いかけて来た。
勿論冗談の筈なのだが、顔を真っ赤にさせて突っ込む俺達。
それに満足したのか、明乃は俺へと話しかけた。
「じゃあ真や。お前の右腕、少し見せてみな」
「は、はい」
言われた通りに、俺は右手を前に突き出す。
手首から肘辺りまで刻まれた漆黒の刻印。
人差し指で、感触を確かめる様に明乃はなぞっていく。
「・・・これまた厄介だね。成程、代償とは言っても消える訳では無いんだねえ・・・吸い取られて、蓄えられる感じだねえ・・・」
ぶつぶつと、呟く明乃。
暁も俺の右手を覗き込みながら、口を開いた。
「解呪は、出来ますか?」
「私には無理だね。・・・暁ちゃんのお父さんが生きていれば、もしかしたら・・・」
首を振り、前のめりになっていた体を明乃は再び深く椅子へと沈める。
残念そうに身を引く暁に代わり、俺は頭を下げた。
「見て下さり、ありがとうございました」
「いやいや、私こそそれを解いて上げる事が出来なくてごめんねえ。お詫びと言っては何だけど、困ったことがあったらおいで。何かあったら、出来るだけの事はさせて貰うよ」
「ありがとう、おばあちゃん」
にっこりと微笑む明乃に、暁も優しく笑う。
右拳をそっと握りしめ、俺は暁と明乃の会話を見守っていた。
「で?彼氏は激しいかい?」
「だから何も無いんだって!真も何か言ってよ!」
「・・・まだですね」
「まだって何!?予定があるの!?」
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「ほっぺたが痛い・・やべえ、暁のビンタめっさ痛い・・・」
ひりひりする頬を抑えつつ、俺は部屋のベッドへと倒れ込む。
時間帯としては夕暮れなのだが、俺と暁はもう宿屋へと来ていた。
あの後明乃と話し続けていたのだが、何故か急に拳が吹き飛んできた。
何故だろう。俺は暁の新しい服の感想を言っただけなのに。
ため息をつきつつ、俺は天井を見上げる。
桜ノ蕾とは別に持って来た荷物。その中から俺は竹刀を取り出し、桜ノ蕾を腰から外す。
俺の戦闘スタイルは、主に一刀流からの物理だ。
でも最近、それだと手数が足りなくなってきている。
妖夢の様な威力も速さもある連撃で削り、確実な隙に強力な技を叩き込めれば。
ただ拳を振る事しかできていない俺でも、多少は強くなれるかもしれない。
竹刀を羅刹に見立て、俺はヒュンと音を立てて振ってみる。
妖夢の、見様見真似じゃあダメだ。
何か。他に何か、無いのか。
力でも押し切れるし、技もある。
そんな、強い人が――――――――
「・・・!!」
一つ、俺は思い当たる人が居た。
竹刀と桜ノ蕾を壁に立てかけ、俺は真っすぐにベッドへとダイブする。
そしてそのまま、眼を閉じた。
ラ「そろそろ真君を、霊力以外でも強くしなきゃね」
隔「あの人との絡みも入れたいんでしょ?」
ラ「うん。俺の中で一番良くできたキャラであり、強いから」
隔「あの人、刀使えるの?一部では薙刀使ってたじゃん」
ラ「幻m・・・ゲフン、あの人は何でも使えるし、博麗の技は色々応用できるからね。結界を足場にしたり、滅壊ノ星撃だって、真君の滅壊ノ星撃はロケット的な奴でブースト掛けて、霊力で強化した拳を叩きつけてるだけだから」
隔「やろうと思えば、刀でも出来ると」
ラ「そゆこと」