東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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ラ「はい、恒例ですね。ラギアの予定がまた崩れ去りました。」
真「うん。殴るぞ?」
ラ「次回こそ一章終わりです!そして、今回黒幕登場します。」
真「うん。・・・何か、お前にしては珍しいタイプだよなあ。」
ラ「今回のサブタイトルに関わるからね。とある一族の歴史を紐解居ていくよ」
真「八割がたもう何の一族か分かってるよな。」
ラ「うん。・・・まあ、この話のタイトルも少女も掛けてるし。」
真「そうか。・・・じゃあ、どうぞ!」



第一章第四話「深紅の瞳」

「うう、痛いんだぜ・・・」

「自業自得よ」

 

「ふおお・・・痛くて泣けてきた・・・!!」

「ごめんね!?大丈夫、真?後で氷嚢持ってくるわね?」

 

魔法の森。

暗くジメジメし、今にも妖怪が出て来そうな太陽の差し込まない森の、更にその一角。

まるで何かでぶち抜いたかのように不自然に太陽が入ってきており、そこに立って居る家の看板には”霧雨魔法店”と刻まれている。

そう、ここは霧雨魔理沙の家だ。

あの後、どうやら少し遅れて咲夜さんが到着し、事情を聴くために気を失った俺と魔理沙を担いで移動したらしい。

目が覚めると、早速魔理沙はもう一発殴られていた。痛そうだった。

 

机の上に散らかっていた本などを腕で薙ぎ地面に落とし、どこからか取り出して来たボロボロの椅子に俺達は腰かけている。

 

「おい!霊夢、私と真の扱いの差が全然違うんだぜ!?」

「うるっさい。私の栗饅頭の栗だけ食べた罰よ。」

 

拳で机を叩き喚く魔理沙に、霊夢も机を揺らしながら火花を散らした。

 

「はいはい、それよりも魔理沙に理由を聞かなきゃでしょ?二人とも押さえなさい」

 

しかし咲夜さんが声を掛け、一色触発の場を静かに宥める。

二人してため息を付き、頭を抱えながら魔理沙は話し始めた。

 

「あー・・・まあ、記憶が途切れ途切れなんだが・・・最初はな、二日前の事だ。」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

あー、何か美味しそうなキノコ落ちてないかな。面白そうなのでもオッケーだぜ?

真が帰って二か月。

最近は特に音沙汰も無く、良い事なのだが平和な日々が続いている。

ああつまらん。異変でも起こしてやろうか。

 

「幻想郷中にキノコが大量発生とか・・・いいや、そんな事したら重要な食糧元として霊夢が解決しねえな。」

 

ぼそりと呟き、誰も返してくれない寂しさに空しさを覚える。

まあ当たり前だ。こんな魔法の森、幻想郷の中でも辺鄙なところ・・・いや、もっと色々あるが・・・こんな所に人は居ない。私と私の友人くらいだz

 

「っていたああああああああああああああああああ!!??」

「え!?何!?」

 

・・・その瞬間、失礼ではあるが私は全力で人差し指を目の前の人間に向けてしまった。

流石に呆気にとられたのか、目の前の少女も大袈裟に驚く。まあ自分も少女なんだがな。

 

そして、私は次にその眼に吸い込まれたんだ。

 

鮮やかな深紅。例えるなら、血。

不気味だし怖いけど不思議な魅力があってな。気づけば私はそいつに近づいていってたよ。

 

服も、どこか見覚えがあるんだ。

紫と白、黒い刺繍が入った――――――――

 

そう、巫女服だ。

 

「お前・・・誰なんだぜ?」

 

私は、八卦路をいつでも取り出せるように右手を服の中に入れた。

霊夢とか、真とか。

比べ物にならない程の絶大なエネルギー、禍々しさが肌に突き刺さる様だった。

 

でも、私は少女が答える前に違う事を聞いてしまったんだ。

 

 

「おい!?足元の新種のキノコは何なんだぜ!?」

「うわっほう!?・・・え?この紫色の?」

「そうそれだ!なあ、一個くれないか?」

「え?食べるつもり?」

 

「勿論だぜ!」

「いや明らかに毒キノコでしょっ!!」

 

グッ、と右手を突き出したのにも関わらず少女は的確な突っ込みを入れて来た。こいつ、中々やるな。

確かに毒キノコだ。紫色の胞子が盛んに跳び盛っているし、茎は細い。

うん。完璧に毒キノコの特徴を押さえているな。

 

「・・・良いか。人には、冒険すべき時があるんだ」

「冒険の方向性を間違ってるからあ!?」

 

「ナイス突っ込み!」

「人で遊ぶなあ!!」

 

何だろう、何か楽しくなって来たんだぜ。

しかし、私は冒険者。己の目的を果たすため、交渉に持ち込む。

 

「で?そのキノコを良かったら譲ってくれないか?」

「別に良いけど。・・・そうだ!一つお願いがあるの!」

「お?なんだ?」

 

「キノコ上げるから、今の幻想郷の事を教えてほしいな、って」

 

まるで、絶対零度に包まれた気分だった。

一瞬で空気が凍り付き、肌を殺気が差す。

マヒし始めた脳が無理やり口を動かそうとするが、それを本能的な震えが拒否させる。

少女の深紅の瞳は細められ、憎しみも何も無い。

あるのは。ただの虚無。

悪気はないのだろう、私を殺す気も無いのだろう。

 

 

「あ、ああ。それくらいなら任せろ!」

「そっか!嬉しいな!じゃあ、はいこれ!」

「おっ、せんきゅー」

 

胸を張ると、少女は嬉しそうに手を打った。

空気は元通りになり、一つ、キノコが私に投げ渡される。

 

「よし、冒険してくる」

「今から!?」

 

そして、私は。

 

一思いに、そのキノコを齧った。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「・・・で案の定毒キノコでな。副作用が魔力の異常増幅、理性の破壊だ。」

 

 

「「「結局キノコかああああああああああああああああ!!!!」」」

 

 

魔理沙の長くも短い茶番が終わった所で、俺と霊夢と咲夜さんが一斉に叫んだ。

予想通り過ぎて涙が零れる。あの努力とはいったい何だったのか。

 

 

 

 

 

そこで、俺は気づいた。

 

 

どこからか、足音が近づいて来ていることを。

 

 

「で?その・・・深紅の瞳の奴の名前は?」

「あ・・・ああ、それなんだがな・・・・」

 

それは着実にこの家に向かってきている。

 

隠しきれていない圧倒的霊力に、俺の背筋を嫌な汗が流れた。

 

「その、霊夢。覚悟して聞いてほしいんだぜ。」

「何よ、さっさと言いなさいよ」

 

神妙な面持ちで、魔理沙は歯切れ悪く霊夢と言葉を交わす。

意を決したのか、彼女は大きく息を吸い、言葉を紡ぎ始めた。

 

 

 

「そいつの名前は――――」

 

 

音が止まった。

 

 

ドアノブが握られ、そして、回される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博麗悪夢(はくれい あむ)

 

 

 

 

その言葉が紡がれ、同時にドアが開け放たれる。

・・・中に、入って、来たのは。

 

 

 

―――――――――深紅の瞳の、持ち主だった。

 

 


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