東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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ラ「な、長い・・・」
真「五章は少し短くなりそうだけどな」
ラ「えっと、真君の能力は霊力を火に変換・・・じゃないです」
真「え?」
ラ「いやまあ合ってるんだけど、もっと奥が深いですね。真自体の能力は」
真「・・・うん。まあいいけどさ」
ラ「?」

真「原作キャラ全然出てこない戦闘とか詰まらねえだろうがああああああああ!!!」
ラ「忘れてたああアアアアアアアアアアア!!!」


妹紅「じゃあ、どうぞ。私は三章に出て来てるからな」


第四章三十話「燃ゆる力・片翼の化け物」

天久の呼吸が激しくなり、顔は焦燥に歪む。

漆黒の霊力で作られた棘の数は今や十を超えているが、しかし一つも俺には当たらない。

 

条件が同じ。

 

確かに通常のバースト、10%ならば俺の負けだったろう。

しかし記憶を代償に強化されている霊力と、唯の人間である天久の使える霊力は悪夢とのリンク度を考えても互角だ。

 

あっちは俺と幻夢よりも密接に関わっているのだろう。

忠誠心か、野望かで。

 

でも。そんなのに。

 

俺と幻夢の培ってきた戦いの歴史や、絆は崩せない。

 

力の入らない右腕を無防備に揺らしながら、俺は左手を開き。

 

「霊刀[羅刹]」

 

蒼く光る、一本の刀を生成した。

抜身の蒼刃は静かに燐光を纏い、切っ先をゆるりと天久に向ける。

 

「来いよ」

 

さっきとは真逆。

俺の方が誘い、天久が憎悪に満ちた目で俺を見据える。

 

一時は、友達だった。

それは嘘でも幻影でも無い、馬鹿みたいな話をしたのも事実。

そして、敵であることも事実だ。

 

目を瞑り、俺は短い間の記憶を掘り返していく。

幻想郷に来て、初めての同年代の友達だった。

楽しかった。

 

でも。

 

 

こいつは。いや、こいつらの野望は、絶対に打ち砕かなければならない。

 

 

「・・・真・・・やっぱり強いな・・・ねえ、僕等と一緒に世界を創りかえるのは

 

「嫌だ」

 

天久が息も絶え絶えに持ち出した交渉を、俺は一言で切り捨てた。

同調する様に羅刹が輝きを増し、強まる霊力が渦を巻き始める。

 

「残念だけど、俺は消しゴムしか持ってなくてな。ボールペンを消すのは無理なんだよ」

 

「そうか・・・ふふふ、僕も残念だよ真!君に・・・ここまで出さなきゃ行けないなんてさ・・・っ!!」

 

突然。

 

天久の口が醜く歪み、前髪で隠され少しだけ覗く両目は狂気に満ちた緋色に染まり始めた。

不気味に、細かく、小さく笑う天久の体から。

 

まるで天久を守護する様に、天久の背から悪夢の影が飛びだした。

 

「何を・・・!?」

 

呆然と呟く俺の目の前で、天久は小さく笑う。

 

 

「ロストバースト」

 

失われた力。

影は天久の体を覆い尽くし、緋色の眼だけが漆黒の体に光る。

黒光りするデザインの、霊力の鎧。

角の様な物が生え、まるで怪物となった天久の背から。

 

 

―――――黒い霊力が吹き出し、片方だけ翼が生成された。

 

異形の怪物。

ぬらりと、殺気が俺の背を撫でた。

 

「オーバーレイ!!」

 

半ば反射的に、俺は夢中で叫ぶ。

蒼い霊力は俺の真ん中で黒と白の霊力に割れ、炎の様に揺らめきだす。

 

(真!今はただ避け続けろ!)

 

一体化した俺と幻夢は、天久の片翼が微妙に動いた瞬間に意思を決める。

 

今一瞬、全力で避k

 

 

ドザンッッ!!!!

 

 

 

 

今、何をされたのか。

何が起きたのか。

分からないまま、俺は左手から羅刹がはじけ飛び、そして手の甲がザックリと切り取られたのを何処かで理解する。

 

「・・・は・・・?」

 

 

呆然と呟く俺の中では、幻夢も陽炎さえも何も言わなかった。

いや、言えなかった。

 

 

紅い紅い、黒ずんだ鮮血がまるで早送りの様に噴き出し始める。

痛くない。ただ、熱い。

鉄板に手を押し付けている様に、段々と感覚が麻痺していく。

動かせない。

 

動けない。

 

その場に佇むままの俺に、天久は再び片翼を振るう。

 

(三山月華!!)

 

しかし、それは俺の中で幻夢が叫んだ技によって阻まれた。

分厚い霊力の壁が、俺の首を切り裂こうとしていた翼をギリギリの所で受け止めている。

 

勝てない。

 

 

奴の片翼の射程、威力に、適うものは―――――

 

 

 

―――お疲れさん、真。

 

 

 

そんな中で、脳内に甦ったのは一つの記憶。

修行を終えた俺の目の前で笑う妹紅は本当に愉快そうに、話していた。

 

 

―――いやはや、まさかプロミネンスまで覚えるとはね。吃驚だよ。

 

 

何と、言って居たっけ。

 

 

―――ご褒美だ。まだ真には出来ないだろうけど、私の奥義を見せてやる。

 

 

ああ、そうだ。

妹紅はそう言って、俺から何十mも距離を取って。

 

 

―――行くよ。良く、見て置きな。

 

 

苦しそうに、何かに耐える様に顔を歪めて。

 

 

―――双翼!!

 

 

心の内から、まるで妹紅の悲惨な過去そのものを現したかのように。

 

 

 

叫んで、居たっけ。

 

 

 

(真!来るよ!)

 

 

俺を引き戻したのは、幻夢の焦った声だった。

天久は微動だにしないまま、やはり片翼を傾け漆黒の羽毛を月夜に散らす。

 

 

・・・あそこまでとは、言わない。

でも。

 

ギギギ…と軋むほどに、天久の翼は力を極限まで溜める。

 

皆を助けられるように。希望になれる様に。

 

 

 

 

・・・空を、天を翔けたい。

 

 

 

 

ボッ!!!

 

突き出された、必殺の一撃。

今までとはスピードも威力も格段に上の一撃を、俺は片手で掴み取った。

 

(!?)

 

幻夢が息を飲む。

陽炎が、眼を見開くのが分かる。

 

胸の奥が、熱い。

 

それは痛みでは無く。

 

寧ろ心地よい、不思議な力の焔。

 

 

稼働やバーストを使う時とは全然違う。

そう、それはまるで―――――

 

 

俺自身の力が、強く強く、願いに呼応している様な。

 

 

金色の焔が、俺の胸の中心から燃え上がる。

それは太陽の様に。夜を切り裂き、闇を照らし、道を作り出す。

 

黒い鎧を纏った天久が、初めて拳を振るうも。

 

俺はそれを紙一重で避け、妹紅との、最後の時の記憶を思い出した。

 

そう。

 

あれは、獄焔の、朱き不死鳥。

絶える事の無い炎。決して燃え尽きない殺意は、段々と力の方向性を変えて行くごとに火力を高めて行った。

 

―――昔は、輝夜を殺すためだけに無理やりこれを使ってた。

 

―――でもな。今は違うんだ。

 

 

妹紅は大きい双翼を羽ばたかせつつ、力強く笑みを浮かべた。

 

 

 

―――慧音や人里の皆、それと幻想郷を守る為に私は羽ばたくのさ。

 

 

 

決して軽くない風圧が俺の体を押し、山頂の断崖絶壁から俺の体を空へ吹き飛ばした。

宙へ浮いた、両腕の使えない無防備な俺。

緋色の瞳を一瞬、強く輝かせ。

 

天久は、俺へと片翼を―――――!!

 

そして、俺は胸の奥に燃ゆる力を―――――!!

 

 

 

同時に、解き放った!!!


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