東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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短いですすみません。
妹の友達の発表会で帰って来るのが遅れました。
後親の忠告が・・・。

すみません、ではどうぞ


第四章第二十九話「犠牲と共に」

理性が、囁く。

 

止まれ、と。

ここで暴れても、意味は無い。記憶を失い、後悔するだけだ、と。

 

しかし。

俺の黒い霊力・・・俺自身の”破壊衝動”は、本能と共に囁く。

 

お前はまだ、自分自身の全てを受け止めきれていない。黒も白も、どっちも未完成だ。

だから今はもう、暴れろ。大して変わんないさ、と。

 

自分でも分からない。

左手は力なく垂れ下がり、逆に右腕は血管が浮き出るほどに強く拳を握りしめている。

 

黒い刻印の所為で暴走する蒼き霊力はその余波で草を拭き散らし、月に負けない光を漆黒の世界に齎す。

 

陽炎の呟きが、遠い。

自分自身の声すらも、遠い。

 

手の届かない所に光はある。真っ暗な壁の真下、俺は一人そこに佇む―――――

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

蒼い霊力を揺らめかせつつ、俺は軽く地面を蹴り飛ばした。

 

それだけで零になる天久との距離。飛んで行く世界。

早送りの映像のように、俺の拳は真っすぐに天久へと叩き込まれた。

口角を吊り上げ笑っていた天久の顔が一瞬にして歪み、反射的に悪夢が出したであろう黒き霊力が俺の拳を潰した。

 

でも。

 

俺はもう、そこで止まれない(、、、、、)

 

破壊された拳は唯の肉塊。

ならば、それを犠牲にしても構わないだろう。

 

 

拳を天久の腹部に押し付けたまま、俺は小さく呟いた。

 

「スーパーノヴァ」

 

カッ!! と。

凝縮され、容量を大きくオーバーした強すぎる力は純白の閃光を放ち、轟音を轟かせながら勢いよく爆発した!!

いつもよりも強い、右腕全てを犠牲にする大爆発。

その余波によって俺自身も吹き飛びながら、俺よりも強く吹き飛ぶ天久を俺は睨みつける。

 

吹き飛ばされた距離が少ない分、俺の方が速く地面に足が付く。

 

痛みを通り越し、ただただ熱いだけの右腕をダランと垂れ下げながら。

俺は、再び地面を蹴り飛ばし今度は左の拳を天久に撃ちこんだ。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

時間は少し、遡る。

 

 

妖怪の賢者、八雲紫は暁の話を聞いている最中に、少しだけ身じろぎした。

微かな、妖力の反応。

それは指を鳴らすだけの、簡単な動作であり。

 

自分たち全体を包み、中から外の様子が見えない様にする結界を張る動作であった。

 

「?紫、どうしたのよ」

 

隣に居た霊夢が、訝し気に尋ねて来る。

やはりこの子は勘が良い。少しの変化を、不思議に思うとは。

 

紫は改めて霊夢に感心し、そして強い霊力が結界に当たるのを感じつつ。

 

 

「何でも無いわよ?」

 

 

涼しく、まるで何も無い様に呟いた。

 

 


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