東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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ラ「最後、こいしファン少し注意です」
真「絶対に救いはあるから、少しだけ我慢してほしいです・・・」
ラ「・・・救い、ねえ。こいしと暁にはあるけどな・・・」
真「意味深だな。まあいいか。では、どうぞ!」


第四章第二十六話「敵」

「真さん!?」

 

突然動き出した俺に、美鈴が慌てて声を掛ける。

暗い森の中に俺は迷いなく突っ込み、前を見据えつつ口を開いた。

 

「美鈴、隔と他の人を皆連れて焚火の所まで!レミリア様に話せば多分全部やってくれる!」

「わ、分かりました!」

「ちょっ、真!?」

 

ツタを乱暴に引きちぎり、泥がこびり付くのを気にもせずただただ前へと進む。

足りない、足りない。

 

「バースト!」

 

バヂィッ!!と霊力が弾け、俺の体に微々たる力が流れ込んだ。

1%しか使えないもどかしさ。

焦るばかりで足は進まず、目の前に広がる木々の壁に終わりは見えない。

 

「・・・真さん、失礼しますね!」

 

それを見ていた美鈴は、突如俺を押しのけ自身が壁へと向き合った。

 

「少しばかし、お手伝いをさせて頂きますよっ・・・!!」

 

そして、ミシッと骨と筋肉が軋みあう微かな音を鳴らし、美鈴は右拳を腰ダメに構える。

目を閉じて、深く深く、長く、自身の体に気を流し込み。

余りのエネルギーに空気が振動し始め、俺が顔を腕で覆った瞬間。

 

「三華[崩山彩極砲]」

 

静かに響いた声を掻き消すかのように、虹色の砲撃―――――極限まで高められた気を纏いし拳が、頂上までの道を作り出した!!

 

その名の通り、山をも崩しそうな威力を持った砲撃は山肌を少し削り、撃ち終わった今になって鼓膜が張り裂けるくらいの轟音と大気の振動を俺達にもたらす。

 

「さて、では・・・行ってらっしゃい!」

「ありがとうございます、美鈴さん!」

 

笑顔で送り出してくれた美鈴さんに短く返し、俺は開けた道を全力で走り出した。

 

 

 

 

「さて、隔さん。皆の所へ戻りましょうか」

「あ、あの・・・」

「はい?」

 

おずおずと、笑顔のまま手を差し伸べて来る美鈴に、隔は話しかける。

 

「真は・・・大丈夫なんですか?」

「大丈夫ですよ」

 

心配そうに話した隔に、美鈴はにっこりと笑った。

 

 

「真さんは、絶対に皆の為に動いてくれます。そして、最後には必ずハッピーエンドを持って来てくれますからね!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

『真、今のあんたは霊力が1%しか使えない。そこを良く覚えて置いて』

 

作り出された道を駆け上る間に、陽炎が俺へと注意事項を話す。

それに小さく頷きつつ、痛み始めたわき腹を俺は掴み、力を込めた。

 

「分かってる。後は・・・霊力をもっと強く開放したいと願うたびに、大事な記憶が抜けて行くんだよな」

『それはあんた自身の事かもしれないし、咲夜や妖夢、霊夢や暁、隔の事かもしれない』

 

荒く息を吐きつつ、鋭い視線を段々と迫って来る山頂へと向ける。

 

 

 

『誰かを助けても、助けられた人が傷ついたら意味が無い』

 

 

 

陽炎は、何回も繰り返した言葉を俺に向かって繰り返す。

 

 

『あんたの、真が正しいと思った方を護りなさい』

 

 

俺が正しいと思った方。

意思に、正義に正解は無い。

お節介でも、迷惑でも良いから。

 

俺はもう、伸ばせる手を伸ばさないなんて事はしない。

後で、死ぬほど後悔するだろうから。

 

 

桜ノ蕾は置いてきた。

もしも天久が、博麗悪夢をその身に宿していたら俺に勝ち目はない。

 

でもそれが、逃げる理由にはならない―――――

 

 

目の前に迫った山頂。

俺は一歩、強く蹴り飛ばし。

 

 

ダンッ!! と、強く山頂に両足を付けた。

 

 

「・・・ああ、待っていたよ、真」

「俺も、探したよ・・・天久」

 

縛られた暁。

そして、微笑む天久。

 

そして。

 

 

 

 

天久に腕を掴まれ、頬や口から血を流しているこいしが、そこに居た。

 

 


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