東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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ラ「阿吽戦終わり、次回は暁のターンか川遊びに入ります」
真「暁の過去は決めてるのか?」
ラ「古い方の夢幻魂歌を書いてるときにはもう決まってたね」
真「・・・お前設定だけ早く決めるよな」
ラ「そしてお蔵入りになった設定が何個かあるんだよね・・・では、どうぞ!」


第四章第十四話「超えて」

1%じゃ無理。

でも、封印を解けば記憶が失われる。

 

暁は、俺が助けなければ死ぬ。

 

 

――――――――――いや。迷う余地何て、始めっから無いだろうが。

 

「暁から・・・離れろおおおおおおおッ!!!」

 

俺は包帯を乱暴に解き、クロス型の鎖が刻まれた右腕を剥き出しにした。

そして、霊力の出力を上げた!!

 

出力、10%。最大。

 

纏っていた青白い光が輝きを増し、光粒を撒き散らしながら俺の体を急加速させる。

霞む視界、一瞬で迫る阿吽。

血管が浮き上がるほどに強く握りしめた拳を、俺は阿吽に向けて放出した!

 

バギィィッ!!!

 

その拳は、金剛の如く固い阿の体を打ち砕き。

その拳は、白銀に煌めく吽の頭にヒビを入れた。

 

暁を空中で抱え、その場から俺は全力で距離を取る。

 

少しばかり間合いを開け、俺は暁に向けて焦りつつ話しかけた。

 

「大丈夫か!?」

「う、うん。・・・真、あの、右腕が・・・」

 

抱えられたまま、暁は小さく頷いた。

その次に俺の右腕を指し、俺も自身の右腕に視線を下す。

 

そこには、もう一面に黒い刻印が広がり始めていた。

 

何かが抜けて行く感覚。それと同時に、熱く沸き上がる絶大な力。

 

鎖の刻印にひびが入り、俺は顔を顰める。

速く終わらせなければ。

 

「阿!何だこいつ・・・急に強くなった!?」

「吽!やばいぞ、阿。直ぐ逃げなきゃ」

 

俺は暁を地面に横たわらせ、音高く桜ノ蕾を鞘から引き抜いた。

沸き上がる霊力を、そのまま熱き炎へと変換する。

 

さっきよりも熱く、まるでマグマのように赤熱した刃を、俺は上段の構えで強く引き絞り―――――

 

「悪いけど、逃がさないから」

 

一言呟き、体の捻りも加えて全力で振り降ろした!!

 

ドッザアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!!

 

 

赤き閃光が煌めくと同時に、無数の灰が俺と暁の視界を覆い尽くす。

 

「・・・ぐっ・・・」

 

少しのうめき声は、霊力を解除した時に思わず出てしまった。

慌てて自分自身の確認をするも、違和感は余りない。

 

「暁、怪我は?」

「えっと・・・浅いのが沢山」

「そっか。あのさ、暁」

「ん?」

 

 

「・・・何でそんな格好してるn

「変態!」

「ふべらっ!」

 

俺は、見覚えの無い暁の新しい服に突っ込んだ。

直後に手痛い反撃が飛んできたのは、気にしないでおきたい・・・。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「・・・何で真ってトラブルに巻き込まれるの?」

「いやその、この右腕の刻印については仕方ないじゃん?」

「全く。今回忘れた記憶は私の服について・・・。ダメだよ?もう霊力使ったら。」

 

香霖堂に戻った俺と暁は、体中に包帯を巻かれた暁の部屋で話していた。

いや、正しくは問いただされた。

 

あの時、一瞬で膨れ上がった霊力には暁も気づいていたのだ。

 

内緒にしておきたかったが、暁のジト目には勝てませんでした。

 

「・・・それに、これ結構厄介な呪力だね。うーん、・・・西海鬼術第二条の奴かな」

「え?なにそれ」

「呪術の教科書みたいなもの。主に鬼が使うんだよ」

「へー・・・」

 

俺の右腕を人差し指でなぞった暁はさも当たり前の事のように呟く。

そして、取り出して来た包帯を俺の右手に巻き付け始めた。

 

「私の家はね、元々呪力の始祖・・・初めて、この世で呪力を生み出し使った人たちの直系なんだって」

「じゃあ、暁も呪力が使えるのか?」

 

初めて明かされた、暁の過去。

興味を持ち、俺は尋ねたが暁は首を横にふった。

 

「私は落ちこぼれ。全然呪力の才能が無かった。・・・ほら、包帯巻き終わったよ」

 

悲しそうに、懐かしむ様に、暁は目を伏せたまま俺の腕をぺちんと叩く。

 

「ありがとう、暁」

 

そのまま俺と暁はお互いに何も言わず、部屋を出て行った。

暁の過去に何があったかは分からない。

でも、いつかあの悲しそうな顔を笑顔に変えることが出来たら、良いと思う。

 

激戦を終えた、午後の柔らかな日差し。

木造りの家の窓から見える景色は、どこか懐かしく映る。


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