東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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ラ「うーん、次回は川遊び、次は肝試し・・・」ボソッ
真「え?何か言った?」
ラ「なんも言ってないぜよ」

ラ「あ、黒い甲冑いるじゃん?」
真「うん」
ラ「真打ち登場って言うじゃん?」
真「うん」
ラ「あれこのすばのパクrッ!」メギュイッ!
真「馬鹿かお前はあああああああ!!!」


第四章第九話「道場にて」

その後、俺はぞろぞろとやって来た天久の門下生の指導をする事になったのだ。

うん。短い間に色々あったな。

思い出し、やっと納得したところで突如、門下生の一人が不満げに呟いた。

 

「つーかよお、天音だっけ?お前強いの?」

 

素振りを終わらせた後の、室内に充満する熱気が、一瞬で冷たくなった。

シン、と誰も何も言わず、神妙な面持ちで俯く。

 

まあ、うん。

こうなる事は分かってたんだけどね。

 

「こ、こら!言っただろ?真は僕よりも強いんだよ!?」

 

俺がそのまま突っ立っていると、慌てた様子で天久が前に飛び出た。

そのまま説得しようとするも、周りの冷たい空気はそれを許さない。

 

「天久先生、俺達はそれを見てないんだぜ?天音が見えない所で反則したかもしれねえじゃん」

 

その少年は天久よりも身長が高く、まるで俺が正義だと言う様に天久を見下ろす。

周りは防具を外す手を止め、そわそわと動かない。

しかし、それは少年の意見に同意しているのと同じで―――――

 

 

「おい、天久に喧嘩売る前に俺に喧嘩売れよ」

 

少しイラついてしまった俺は、気づけばそんな事を口に出していた。

静まっていた空気がピリッと緊張感を含み始め、俺は天久に視線で許可を取ろうとする。

 

「・・・分かった。真、軽く相手してやってくれ」

「ん、了解」

 

諦めたように、それでいて直ぐに、天久は許可を出した。

 

それに一度頷いた俺は、手に持っていた竹刀をその門下生に突き付ける。

 

「どっからでもかかって来い。」

 

相手を上から見下すような微笑を浮かべ、俺は道場内にギリギリ響く程度の声量で呟いた。

 

「・・・てめえっ・・・!!」

 

少し意地が悪い気もするが、目の前の門下生は一気に地面を蹴り飛ばし、俺に向かって両手で竹刀を振りかぶる。

 

が、

 

「踏み込みがまだ弱いね」

 

俺は相手の、両手の一撃を片手で持った竹刀で受け止めた。

 

呆然と固まる少年。

眼を見開いた目の前のそいつに向かって、俺は追い払う様に竹刀を薙ぐ。

 

顔を悔しさに歪めつつそいつは一度後ろに飛び退り、今度はじりじりと間合いを詰めて来た。

すり足を微妙に、微妙に、少しづつ近づいてくる。

高まる緊張感。他の門下生が固唾をのんで見守り―――――

 

先に動いたのは、やはり少年だった。

 

 

「あああああああああああああああああああああっ!!」

 

砲声、全力の気合を込めた一撃。

 

大きく振りかぶられた高速の竹刀は、ヒュン!!と空気を切り裂き。

 

「だから、踏み込みが甘いっての」

 

俺が軽く横に薙いだ竹刀に、弾き落とされた。

そのまま軽く少年に面を打ち込み、相手を見ずに一礼。

 

剣道の作法としては最悪だが、相手が礼儀知らずだ。しょうがない。

 

試合が終わった瞬間、天久が俺に駆け寄って来た。

 

「ありがとう。手加減してくれて・・・。怪我は・・・無い、よね。彼は本当は良い奴なんだけど、少し威張っちゃうところがあってね。僕も少しだけ、一回しっかりとした試合を彼とやろうかと思ってたんだ。」

 

「うーん、天久にも色々あるんだな。・・・まあ悪者は俺だけでいいよ、今日はもう帰るわ」

 

最後の部分を小声で呟き、俺は道着を脱ぎ始める。

竹刀を籠に入れ、パーカーとジーンズを履き、天久に向き直った時だった。

 

 

 

「ふざけんな!!てめえ、舐めてんじゃねえぞ!!」

 

礼もせずに固まってた少年が、再び吠える。

それに同調する様に、数人の門下生が竹刀を構えた。

 

「勝ち逃げすんじゃねえよ!俺が勝つまでやるんだ!行くぞ天音ぇ!!!」

 

刹那。

 

竹刀を置いて無防備になった俺に、数人が一斉に飛びかかって来た。

 

「え、ちょ、ま」

 

しどろもどろになりつつ、俺と天久は後ずさり。

 

衝撃に備え、眼を閉じた。

 

 

ドドドドド!!!!

 

聞こえたのは、数回の打突音。

一瞬の内に放たれた斬撃は。

 

 

俺達に向かって突撃してきていた門下生を、全員遠慮容赦なく吹き飛ばしていた。

 

 

「「ふぇ?」」

 

俺と天久の声が重なる。

 

何せ。

 

 

 

「―――――真打ち登場っ!」

 

 

目の前に居たのは、黒い甲冑を纏い右手に竹刀を持つ何かだった。

 

やけに元気よく、ノリノリでそいつは竹刀を門下生たちに突き付ける。

 

 

「ふっふっふ、天音真と戦いたければこの私を倒してからにしなさい!」

 

 

「し、真!今の内だ!ほとぼりが冷めたら改めて僕が呼びに行く!」

「分かった!そ、それじゃあな!」

「じゃあ!」

 

謎の甲冑と天久に後を任せ、俺は急いで道場を飛び出した。

 

 

そして、大事な事を思い出す。

 

 

 

「・・・帰り、どうしよう」


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