東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結 作:ラギアz
真「合わせて、日間ランキング12位と13位!ラギア的にも結構上位だと思っているらしい。これも読者様のおかげです!本当に、ありがとうございます!」
ラ「これからもどうか宜しくお願い致します!ではどうぞ!」
あのまま押し切られ、妖夢達の殺気を全身で受け止めつつ、明後日に咲夜さんと一緒に人里に行く事になった俺は今博麗神社へ向かっている。
何故か、それは勿論幻想郷の巫女である博麗霊夢に会うためだ。
俺の霊力の使い方、そして戦い方は主に初代博麗の巫女博麗幻夢、そして霊夢に教えて貰った。
だから、と言う訳では無いが俺は遠距離から中距離戦闘が苦手であり、近距離戦闘が一番得意だ。
霊夢は中距離も近距離もこなすが、幻夢は全力で至近距離戦闘に持ち込む。
豪快な戦法は全てを圧倒し、絶大な力を持って全てを真上から押さえつける。
その力の片鱗、霊力をこの身に宿していると思うと、今の自分の不甲斐なさが少し悲しい。
ため息を付きつつ、俺は博麗神社へと続く長い階段を上っていく。
見えて来る朱色の鳥居。
階段を上り終え、それをくぐると、
「あ、真じゃない。久しぶり」
境内を箒で掃除している、霊夢が挨拶してきた。
「久しぶり、霊夢」
俺もそれに返し、そこで止まる。
白玉楼で借りた和装の帯に括り付けてある桜ノ蕾、俺の刀に手を乗せつつ俺は話を続ける。
「えっと、今日はどうしたの?」
「ああ、真がこっちに戻って来たって聞いたのよ。それで、久々に手合わせしたいなって」
箒を後ろの方に投げ、霊夢はにやりと笑みを浮かべる。
「そう言う事か。じゃあ、本気で行くぞ?」
「精々泣かない事ね。行くわよっ!!」
いつも通り。
そう、突発的に戦闘が始まる霊夢との日常を、三か月前まで続いていた日常を思い出し―――――
俺は、叫ぶ。
「バースト!!」
出力、10%。限界。
青白い光の粒子が一気に噴き出すと同時に、俺は空から降ってくる霊夢の蹴りに左拳を突き合わせる!
鈍い、骨と骨がぶつかる音。霊力同士が弾ける音が空に響き、同時に俺と霊夢は距離を取った。
霊夢はどこから取り出したのかお祓い棒を右手に構え、俺は甲高い金属音を鳴らしつつ桜ノ蕾を抜刀する。
「行くぜ!射程距離拡張!!」
そして、抜刀の勢いのまま俺は刀を真横に振り払う。
刹那、その白銀の刃から青白い霊力の刃が10m程噴出し、空を切り裂いた。
射程距離拡張。
手や刀に霊力を纏わせ、その霊力で刃を作ると言う業だ。
10m伸ばすのにもかなりの集中力と技量が必要になり、俺は主に刀で射程距離拡張を使って居る。
例えば、斬るのと同時に伸ばしたり。
例えば、伸ばした刃を急に縮めてフェイントをかけたり。
苦手な中距離戦を補い、一気に至近距離に持ち込むことも、離れて行った相手を追撃することも出来る便利な技である。
霊夢はその刃を軽々と避け、お祓い棒を持って居ない左手を此方に突き出す。
「霊符[陰陽印]」
そして、スペルカードを唱えると同時に霊夢の掌に陰陽玉の陣が浮かび上がった。
それは段々と大きさを増し、籠められる霊力の量も威力も増幅していく。
しかし、俺はそれに敢えて突っ込んだ。
刀を右手に、低空姿勢で地面を這う様に駆け抜ける。
そして、そのまま切り上げようと更に右手に霊力を込めた瞬間。
ブウン…
不思議な機動音と共に、俺の右手に黒い刻印が浮かび上がった。
止まる事を知らないかのように刻印―――――文字は俺の右手から首までを侵食していき、それと同時に。
爆発的に、霊力を増幅させた。
「なっ・・・!?」
「ッ・・・!!」
霊夢が眼を見開き、俺は急激に増幅した霊力による痛みに顔を顰める。
青白い光がまるで焔の様に大きく揺らめき、その力で境内の地面を少しばかり削る。
まるで、精神が食われていくかのような感覚。
「ぐっ・・・あッ・・・ああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
自分の中から何かが抜けて行くと同時に沸き上がる激痛に、俺は思わず叫び声を上げた。
刻印が頬まで侵食し、視界が鮮明に、鮮明に映り始める。
ゆっくりと動いていく世界。
その中で、目の前の霊夢は声を発す。
「真!あっち!私の後ろの森に向けて、霊力をぶっ放しなさい!!」
そう言い、霊夢は俺の直線状から姿を消した。
刻まれていく刻印は侵食を続け、俺の蒼い眼を黒く染め上げて行く。
「あっ・・ううううああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
ギリギリの所で理性を保ち、俺は右手を振るった。
刹那。
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアァアアンンンンッッッッ!!!!!!!!!
俺の右手から放たれた絶大な霊力は、まるで嵐の様にその猛威を、暴風を幻想郷に撒き散らし。
|博麗大結界にヒビを入れると同時に、30m以上、直線状の森を更地に変えた。《、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、》
自分から霊力が大きく抜けたのを本能で理解した俺は、バーストを一度解く。
黒き刻印が肌に吸い込まれるように消えて行くのと同時に、俺は。
―――――何故か更地になっている、俺の目の前の景色を初めて見た。
荒く肩で呼吸をする。
心臓が早鐘を打つ。
何でだ?
俺は低空姿勢で、走っていただけの筈なのに・・・?
「真!大丈夫!?」
慌てた様子で、霊夢が駆け寄って来る。
「え?大丈夫だけど・・・どうしたの?」
「どうしたの?じゃ無いわよ!!今の霊力の昂りは何!?普通じゃ無かったわよ今のは!」
焦燥を表情に浮かべながら、霊夢は更に俺を問い詰める。
そんな霊夢に、俺は呟く。
「だから、
「・・・は?」
記憶にないから尋ねただけなのに、霊夢は口をぽかんと開け硬直する。
「何で更地になってるのさ。それに、霊力の昂ぶりって?」
「・・・覚えて、無いの?」
「覚えてるも何も、やってないじゃん」
「・・・・はああああああああああっ!!??」
今度こそ、霊夢が驚きに眼を見開き、大きく叫んだ。