東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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最終章第四話「皆で」

アバラが、何本か折れる。硬いものが砕け散る音がして、気づけば俺は吹き飛ばされ、地面の上を削りながら滑って行っていた。

口から空気と同時に血が吐き出される。[恵まれる程度の能力]を総動員して何とかキズを治し、俺は震える足に、手に、体に力を入れて立ち上がった。

博麗幻夢は変わらず黒い霊力を纏い、俺以外の皆は倒れている。そして、幻夢の傍には欠けた紫紺の刃が落ちていた。

俺の右手にあるのは、刃が元の半分程度しかない桜ノ妖。

数々の激戦を潜り抜け、西行妖の妖力を吸収した刀は呆気なく折れてしまった。奥歯を噛みしめ、悔しさから逃れる。

冷静になれ。博麗幻夢に勝つには、感情を押し殺せ。

 

骨折の治療が完全に終わる。青緑の光が渦巻く中で、俺は右手の桜ノ妖を幻夢に突き付けた。

逃げる訳には行かない。博麗幻夢と悪夢を何とか[満たされようとする意志]かわ開放して、幻想郷を救うためにも。そして、動けない皆を助けるためにも。

拳を握りしめろ。刃を向けろ。

 

地面を足の指で掴み、俺は大きく地面を蹴り飛ばす。

亀裂が大きく後ろに走る中で、俺は雄たけびを上げながら幻夢へと急接近し、

 

突然、自身の体に紫の炎が纏わりつくのを感じた。

 

幻夢が、そして俺がその紫炎に驚く。そして更に、欠けたはずの刃が紅の魔力によって生成され、再び一つの長い刃となった。

しかもそこが、虹色に輝く。封印の霊力。

 

――――――――皆の、力。

 

ドクン、と心臓の音が大きく聞こえた。

まるで何かを咎めるように、皆との記憶が脳内を駆け巡っていく。青緑の光が輝きを増すと同時に、俺は幻夢へとその刃を振るっていた。

再度。拳と刃が激突し、拮抗する。

……しかしそれは破られない。お互いに押し合い、留め合う。

 

博麗幻夢の持つ記憶と霊力。これらを完全に解放すれば、さらにこの漆黒の博麗幻夢は強くなるだろう。

だが、そうすると博麗幻夢の魂も同時に解放していることになる。それは、幻夢の制御がし辛くなると言う事。だから漆黒の博麗幻夢は全力を出せない。

そして、だからこそ俺は博麗幻夢と闘えている。

 

ギリギリの、本当にその危なっかしい状態で俺は戦えている。

 

だから、忘れていた。

 

俺は一人じゃない。

皆は、確かに動けない。でも、それでも俺達は一緒に戦っているんだと。

 

強化された桜ノ妖を大きく上に振り上げ、幻夢の拳を上に受け流す。

右手がビリビリと震え、衝撃波が砂煙を起こし。

博麗幻夢が反撃をしようと、体に力と霊力を込めて―――――、

 

その瞬間、俺は高らかに宣言した。

 

「オールバースト」

 

ドドドドドドン!!! と無数の魂が霊夢やレミリアの体から放たれる。

 

それらは全て[恵まれる程度の能力]で恵んでもらった、皆の魂。

皆の力。全てを俺のこの一身に集め、解放するのがオールバースト。

 

目の前の敵は、恐らく最強だ。

 

でも、もう違う。

皆と一緒に戦える今の俺なら。彼女を倒せなくとも。

 

絶対に、救うことができる。博麗幻夢と、博麗悪夢を――――――――!!


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