東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結 作:ラギアz
アバラが、何本か折れる。硬いものが砕け散る音がして、気づけば俺は吹き飛ばされ、地面の上を削りながら滑って行っていた。
口から空気と同時に血が吐き出される。[恵まれる程度の能力]を総動員して何とかキズを治し、俺は震える足に、手に、体に力を入れて立ち上がった。
博麗幻夢は変わらず黒い霊力を纏い、俺以外の皆は倒れている。そして、幻夢の傍には欠けた紫紺の刃が落ちていた。
俺の右手にあるのは、刃が元の半分程度しかない桜ノ妖。
数々の激戦を潜り抜け、西行妖の妖力を吸収した刀は呆気なく折れてしまった。奥歯を噛みしめ、悔しさから逃れる。
冷静になれ。博麗幻夢に勝つには、感情を押し殺せ。
骨折の治療が完全に終わる。青緑の光が渦巻く中で、俺は右手の桜ノ妖を幻夢に突き付けた。
逃げる訳には行かない。博麗幻夢と悪夢を何とか[満たされようとする意志]かわ開放して、幻想郷を救うためにも。そして、動けない皆を助けるためにも。
拳を握りしめろ。刃を向けろ。
地面を足の指で掴み、俺は大きく地面を蹴り飛ばす。
亀裂が大きく後ろに走る中で、俺は雄たけびを上げながら幻夢へと急接近し、
突然、自身の体に紫の炎が纏わりつくのを感じた。
幻夢が、そして俺がその紫炎に驚く。そして更に、欠けたはずの刃が紅の魔力によって生成され、再び一つの長い刃となった。
しかもそこが、虹色に輝く。封印の霊力。
――――――――皆の、力。
ドクン、と心臓の音が大きく聞こえた。
まるで何かを咎めるように、皆との記憶が脳内を駆け巡っていく。青緑の光が輝きを増すと同時に、俺は幻夢へとその刃を振るっていた。
再度。拳と刃が激突し、拮抗する。
……しかしそれは破られない。お互いに押し合い、留め合う。
博麗幻夢の持つ記憶と霊力。これらを完全に解放すれば、さらにこの漆黒の博麗幻夢は強くなるだろう。
だが、そうすると博麗幻夢の魂も同時に解放していることになる。それは、幻夢の制御がし辛くなると言う事。だから漆黒の博麗幻夢は全力を出せない。
そして、だからこそ俺は博麗幻夢と闘えている。
ギリギリの、本当にその危なっかしい状態で俺は戦えている。
だから、忘れていた。
俺は一人じゃない。
皆は、確かに動けない。でも、それでも俺達は一緒に戦っているんだと。
強化された桜ノ妖を大きく上に振り上げ、幻夢の拳を上に受け流す。
右手がビリビリと震え、衝撃波が砂煙を起こし。
博麗幻夢が反撃をしようと、体に力と霊力を込めて―――――、
その瞬間、俺は高らかに宣言した。
「オールバースト」
ドドドドドドン!!! と無数の魂が霊夢やレミリアの体から放たれる。
それらは全て[恵まれる程度の能力]で恵んでもらった、皆の魂。
皆の力。全てを俺のこの一身に集め、解放するのがオールバースト。
目の前の敵は、恐らく最強だ。
でも、もう違う。
皆と一緒に戦える今の俺なら。彼女を倒せなくとも。
絶対に、救うことができる。博麗幻夢と、博麗悪夢を――――――――!!