東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結 作:ラギアz
前書きを書いている余裕が無いのでこれで失礼します。
では、どうぞ!
森の中を歩く事、数十分。
「さあ、貴方が使えるのは霊力1%と火だけ。私は全力を出す」
白髪は腰まで届き、白いシャツに赤いズボンを着ている少女。
「私を倒す時にだけ全力を出しなさい。行くよ」
「はい!」
藤原妹紅を前に、俺は目を鋭く細めた。
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「あのー、すいませーん!」
「・・・ん?」
いつも通りに、私はイノシシを狩って居る時だった。
イノシシくらいならば炎を使わなくとも霊力だけで十分。死なないから多少の無茶も出来るしね。
そう、私藤原妹紅は迷いの竹林をとぼとぼ歩いていたのだ。
本来そこに人は来ない。道をこの前創ったから迷わないだろうし。
つまり、ここに来た少年と見覚えのある少女―――魂魄妖夢だ―――は私に用があるのだろう。
片手で担いでいたイノシシを地面に落とし、私はそのばで二人を待った。
ドンドン近づく距離に伴い、少年の姿勢が段々と低くなっていく。
そして、私の目の前に来た瞬間、急に少年は正座し地面を滑りながら額を地面にぶつけ、私の前に現れた。
俗に言う土下座である。いやダイナミックすぎないか?
困惑に包まれていると、その少年はそのまま大きく声を出した。
「お願いします!俺に・・・火を使った戦い方を教えて下さい!!」
「・・・ん?」
取り敢えず、私は答える。
「良いよ?」
「良いの!?」
「良いの」
断る理由もないからね。
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「成程、急に火が使える様になったし、強くなりたいから輝夜に聞いたところ私が良いと言われたわけね。」
「そうです。霊力を火に変換できるらしいです」
「ふうん…」
適当な丸太に腰かけ、私と少年少女は向かい合って座っていた。
大体の事情は理解できた。丁度暇してたし、少しぐらいなら良いかな。
「じゃあ、取り敢えず最大出力の火を出してみて?まずはそっからね」
「了解です」
私が興味本位でいうと、少年、天音真は丸太から立ち上がり少し離れた処で足を止めた。
「バースト!」
そして、叫んだ。
瞬間、バヂィッッ!!! と青白い閃光が弾け、少年の体に霊力が宿る。
荒々しい。博麗の巫女とかとは全然違う。
呆気に取られている私の前で、少年は更に体に力を込める。
「ッ・・・あああああ!!!!」
うっすらと滲み出ていた霊力が、今度は明確な意思と形を持って少年の体から噴き出した。
全身を象るかのように揺らめく青白い霊力は昼間でもかなりの光を発し、そのエネルギーをひしひしと感じさせる。
そして、急激に酸素を消費した時に発生する爆発音と共に――――
少年の体が、赤熱した炎に包まれた。
数m離れてても伝わる熱気。周りの草が焦げて一瞬で灰になり、ボッッボッ と猛々しく燃え盛っている。
私の本能が、これは逸材だと告げ、その瞬間に私は立ち上がっていた。
「そうだ、私とタイマンしよう」
「え?」
「私に勝てたら技を真に教える。私が勝ったら真は一つ言う事を聞いてもらう。これで良い?」
「・・・はい、お願いします」
「ああ、ルールを付けようか…」
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こうして、俺と妹紅は今向き合っている。
1%の火だけで妹紅を倒す。無謀にも等しい賭けだが。
・・・乗ってやろうじゃないか
「よーい、どん!」
妖夢が合図を出し、俺と妹紅は同時に地面を踏み締めた。
刹那、俺のちっぽけな”火”と妹紅の”獄焔”がぶつかり、激しい衝撃波を辺りに撒き散らす。
「うん、ここで火力の差が出る」
「!?」
しかし、その拮抗も一瞬だった。
妹紅が小さく呟いたと同時に、全力の拳はパアン!と上に跳ね上げられ、
「こういう時は真正面からぶつからないで、周りから崩す」
剥き出しとなった腹部に、掌底がのめり込んだ。
まるで腹部が無くなったかと錯覚するような衝撃に視界がブレ、意識が持って行かれそうになる。
が、歯を食いしばり何とか持ちこたえた。
乱暴に、それこそ這いつくばる様に俺は地面に着地。
不敵な笑みを浮かべる妹紅は、それを確認してから挑発する様に俺を手招きする。
「・・・ッ!!!」
全身に纏っていた火を、俺は右手に一点集中させる。
拳を中心として小さな太陽の様に燃え始めた拳を構え、俺は大きく地面を蹴り砕いた。
ビュオッ! と風を切り裂き、風流を巻き起こしながら高速で俺は妹紅に近づきくも。
拳を突き出す寸前で、俺は足を止めた。
踏み出していた右足を軸に、左足を大きく回し蹴りを放つ。
「うん、良いね」
しかし妹紅は一切の焦りを見せずそれを片手で受け止めるが、間髪入れずに俺は左拳を突き出す。
それも妹紅の左手に阻まれ、攻撃は一切届かない―――――
そう誰もが確信した、瞬間。
『倒す時にだけ全力を出しなさい』
妹紅の両腕は胸の前でクロスされ、今の拳では貫通すら出来ない。
でも、8%なら・・・!!!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
気合を方向に乗せ、俺は霊力を限界まで解放した。
放たれた右拳は砲弾と見間違えるほどの轟音と風を巻き起こし、爆発的に増幅した炎はあたかも太陽の様に。
「!?」
妹紅の顔が驚愕に染まり、俺の拳がクロスされた両腕に当たる。
一点集中の一点突破。
それは止まる事を知らず。
ドゴォオオオオオオオオオオンッッッ!!!!!
妹紅の両腕と華奢な体躯を、瞬く間に吹き飛ばした。