東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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第十二章第三話「渾身の一撃」

炸裂する。

霊力と霊力の衝撃波が大気をビリビリと振動させ、突風を巻き起こした。

悪夢の滅壊ノ星撃、妖夢の未来永劫斬。お互いの高威力の技は相打ちに終わる。

……が、その次の結果を見れば。それは相殺した時点で、悪夢の勝ちだったのだろう。

 

霊力の奔流が風に乗って霊夢達の視界を塞ぐ。その瞬間に、妖夢は地面へ叩き付けられていた。

一瞬、気が飛びかける程の強さ。地面に落ちた衝撃で30cmくらい跳ねた妖夢は、詰まった呼吸を必死に整えながら何が起きたのかを確認し、理解する。

 

悪夢と一番遠い場所に居た妖夢。

 

それが、今の一瞬で距離を詰められ殴られたのだ。

戦慄する。自身の相手している者の大きさに、強さに、震える。

すっと紅い瞳を細めて、悪夢は両手を大きく左右に広げた。ズズズ、と黒い霊力が彼女の背中で蠢き、次の瞬間に背中から無数の黒い腕が生えた。

霊夢やレミリアが、慌てて臨戦態勢を取る。ドッ!! と突き出される黒い手のひら。空を裂き、飛びかかるそれの路線上に、霊夢は全力の結界を貼った。

 

――――しかし、その抵抗も一瞬のみ。

 

 

その掌が触れた瞬間に、結界は一瞬で無に帰る。霊夢がその光景に目を見開く時にはもう、無数の掌が霊夢に触れようと手のひらを限界まで開いていた。

しかし。それらは、フランのレーヴァテインによって切り飛ばされる。掌にしか、触れたものを無に帰す能力は付いていない事が幸いか。

魔力を放出し、フランは高速で飛び回り一気に全ての腕を切り裂いた。悪夢が顔を顰める中で、そっと声が聞こえる。

 

「うし、皆庇ってくれてありがとうなんだぜ」

 

魔理沙の声だった。

淡々と、事務報告をする様に。冷静に。

だが。その知らせは、霊夢たちに活気を付ける。

 

今この場に置いて、最高火力はレミリアかフランだろう。

単体では。

さっきの腕を切り裂いたのはフラン。レミリアでも消し飛ばす事は出来たはずなのに、何故やらなかったのか。

それは、魔理沙の八卦炉に魔力を集中させていたからだ。

八卦炉は、魔力を集中させ解き放つ道具。それを応用したのが恋符[マスタースパーク]である。

 

普段は、魔理沙のみの魔力を集合させた物だ。

 

それに、レミリアの魔力をプラスさせたのが、今の状態。

 

妖夢と霊夢が交戦している中で、その二人は必死に魔力を貯め続けていた。

 

悪夢が、やっとその存在に気付く。回避するその直前に。

魔理沙はもう、その魔砲を放っていた。

 

木々を吹き飛ばし、渦巻く暴風を創り出し、その衝撃波は遥か下の地面をも抉り進み続ける。

虹色に紅の奔流の加わった、魔力の砲撃。反動を必死に耐えながら、その砲撃は悪夢へと突き刺さろうと、一層火力を増した。

 

回避不可能。悪夢はそう判断し、右手をだらんと下す。

諦めにも見えるその姿勢に、霊夢達はダメージを確信する。

紅の目が閉じられる。悪夢の小さな唇がそっと開いて、彼女は長く息を吸い込んで。

 

右手に、純黒の霊力を燃え上がらせた。

 

真の滅壊ノ星撃を彷彿とさせる霊力。真下に下げられた腕の肘から肩を通り越して、天を刺すように尾を引く霊力を纏う右手。

軽く拳を握りしめる。そして彼女は、右手を上に振り上げた。

魔砲と拳が、接触する。バヂィッッ!! と力が弾け。

 

 

 

 

 

――――――――ドガアアアアアアアアアアアアンンンン!!!!!

 

 

 

 

 

吹き荒れた衝撃波。真下の地面を抉り取るエネルギー。

右拳は上に振り上げられている。魔砲は、途絶えている。

 

………悪夢は、無傷だった。

 

今度こそ、今度こそ霊夢や魔理沙、レミリアやフランは絶望する。

渾身の一撃を、真正面から突破されたのだ。

 

そして思い出す。

 

彼女が、初代博麗の巫女博麗幻夢の娘であると言う事を。

 

 

博麗悪夢。その霊力は、博麗幻夢より多いと言う事を。


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